都市部への人口集中、地方の過疎化が新しい商品販売のシステムを生み出す

2月26日に平成27年国勢調査 人口速報集計結果が発表された。平成27年10月1日現在の人口は1億2711万人(平成22年比▲94.7万人)、大正9年の調査開始以来、初めての人口減少となっている。
都道府県別には東京都が1,351. 4万人(全国の10.6%)、以下、神奈川県(912.7 万人)、大阪府(883. 9万人)、愛知県(748. 4万人)、埼玉県(726 .1万人)、千葉県(622. 4万人)、兵庫県(553 .7万人)、北海道(538 .4万人)、福岡県(510 .3万人)と続き、上位9都道府県で6847.3万人、全国の過半数(53.9%)を占める。(ただし、大阪府、兵庫県、北海道は、人口は多いが減少している。)
特に東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は3612.6万人、実に全国の約3割(28.4%)が集中し、5年前に比べると1都3県で50. 8万人(東京都が35.4万人、うち23区32.7万人)、最も人口が少ない鳥取県 の人口(57.4万人)に匹敵する規模の人口が増加している。
東京一極集中がかなりのスピードで進んでいることになる。特に港区3.8万人増、江東区3.7万人増、板橋区2.6万人増、大田区2.4万人増、世田谷区2.3万人増、台東区2.3万人増など23区で極端である。50階超の超超高層マンションが1棟できると800~1000戸が増える計算になるから限定されたエリア内に急激に人口が増えることになる。
全国を市町村単位で見ると、1,719ある市町村のうち1416、実に8割超(82.4%)で人口が減少し、そのうち5%以上減少が約半分(48.2%)の828、同10%以上減少も227(13.2%)ある(いずれも平成22年比)。増加はわずか303(17.6%)であるから、いかに東京都の一部に、しかも急激に人口が集中しているかが分かる。

このようなデータを見ると、立地ごとに将来的にも存続可能と考えられる小売業態、不足すると考えられる新規業態についてある程度の予測ができる。
例えば、超超高層マンションの建設に伴い人口が局地的に急激に増加した地域では日常生活に必要な食料品や日用品、実用衣料などを買う店舗が確実に不足する。超超高層ビルの建設に伴って急激に昼間人口が増加した地域では、ビル内でカバーすることができれば別であるが、そうでなければ昼食ニーズに対応することが難しくなる。
店をつくるにも土地がなく、仮に土地があったとしても、高くて既存業態の経費構造で対応することは難しいから出店することは難しくなる。

一方、地方の過疎化地域では、移動手段を持たない高齢者が増えることで商圏は狭まり、来店頻度も下がる。人口減少で商圏密度は下がるから地域一番転であったとしても固定費負担ができずに店舗を維持することが難しくなる。

そう考えると、過疎地の状況は、アメリカで通信販売が誕生し、発展した時代と環境的にはよく似ている。また、超超過密地域もマーケットサイズが大きいのにそれに対応可能な店舗が身近になければ、商品の調達手段は通信販売や移動販売しかないから過疎、過密どちらの地域も店舗によらない商品調達手段に頼るしかない。場合によっては、シェアリングエコノミーの形とコストこのような業態が一緒になって一つの業態(形態?)が成り立つことも考えられる。

従来の実店舗が成り立つのは、足元人口の密度が高い都市部周辺のベッドタウン、足元人口にビジネス客、観光客などが加わるオフィス街周辺、ターミナル立地、観光地など、人が集まる限られた地域ということになる。

日本という国は、このようにいくつかのパターンに分かれ、それぞれの特徴に合わせた商品供給形態に収束していくと考えられる。
ナショナルチェーンといった発想は、遠い過去の話ということになるのかもしれない。
昔は、都市ごとに陣取り合戦をして店づくり競争をしていたが、今後を考えれば物理的な都市の陣取り合戦ではなく、セグメントされたマーケットの陣取り合戦ということになるだろう。
いつまでも、昔のように実店舗での陣取り合戦をしていたのでは、いずれ既存店の固定費で立ちいかなることになるだろう。(CGP;チェーンストア・グローイング・パラドックス 参照)
時代の変化は量的変化に質的変化が加わり、物(所有)の時代から機能とサービス(非所有)の時代に変わっている。物事の本質を理解しないまま、現在の延長線上で全てが動いていくと考えるのには無理がある。
20年以上も総合スーパー(GMS)の不振が変わらないことを見ても分かるが、時代の変化を読み取り、次なるシナリオを描くことができなければ、ただいたずらに時間が過ぎていくだけである。

 

 

 

 

 

 

コア技術を再確認 もしなければ早急に確立を…

小売業にとっての資産というと、店舗の土地・建物と商品在庫など、どちらかと言えば目に見える物が中心となる。ただし、ブランド価値が言われるようになると、ブランドも重要な資産だし、月並みではあるが人も大切な資産だということになる。
それでは、コア技術は?というと、なかなか難しくなる。
例えば、出店候補地を探す・交渉する、商品や取引先を探す・交渉する、といったことも大切な技術のはずであるが、このような「人」についてまわるものは、昔から「技術」とは認識されていない。
筆者がイトーヨーカ堂を辞めた時、チーフバイヤーは「一度辞めると決めたものを止めはしないが、フォーマットをまとめたファイルだけは置いていけ」と言っていた。
販売・仕入れに使うデータをどのように収集し、整理すればよいのか、それをまとめたフォーマット、しかも使いながら修正を繰り返し、進化したフォーマットは技術とノウハウが集約した立派な財産である。
いまでは知的財産ということも当り前であるが、小売業、チェーンストアには技術、ノウハウと認識されず、保護もされず、ブラッシュアップもされず、個人の技量に任され、放置されたままになっている技術、ノウハウがたくさんある。
売場レイアウト、什器配置、陳列、商品開発方法、チェーンとして店舗を管理運営するチェーンシステム、バイヤー、ディストリビューター、スーパーバイザーなどの専門職組織と機能設定・具体的な業務の仕組み、人の育成方法、….等々。長年かけてつくり上げてきた業務の仕組みは有用な技術である。しかし、未だにそのような認識はあまり持ち合わせてないようである。
組織、業界の中に居たのでは分からないことが多いという言い方もできるが、自社の重要な資産に対する認識が甘いと価値ある宝を次から次へと無意味に捨てていることになる。
「コア技術」というモノがある。自社独自の技術・ノウハウであり、それによって独自の価値を創出し、他社との違いを際立たせて存在感を強め、競争を生き抜いて行くための武器である。
「コア技術は何か?」と聞いても答えに窮してしまうケースが小売業に多いのは、製造業と違って「技術」という意識・認識をあまり持つことがないからだろう。
急激な人口減少・高齢化によって、従来のような店舗販売というビジネスモデルだけで企業が成り立つことは難しくなる。その時に、いままで意識していなかった様々な技術・ノウハウを生かしたビジネスモデルが必ず役に立つ。特にチェーンシステム、商品開発システムなどは様々な分野に応用できる有効なコア技術である。
いままで見過ごしてきた財産を早急に見つけ出す(認識する、再認識する)必要があるだろう。店舗と現品販売いう物理的に制約される範囲の中でいま以上の生産性を確保することは難しいが、「システム」をビジネスの柱、特にプラットフォームに高めることができれば、従来の物販とは比べものにならない生産性を上げることは可能である。
おそらく、セブン-イレブン・ジャパンが所有する様々なシステムを本気になって他分野のビジネスに応用しようとすれば、世界のトップ企業として君臨することも可能だろう。そのためには、小売企業であるという意識を捨て、システム企業であるというように事業定義、事業に対する認識を改める必要がある。
特に農業、魚の養殖分野などにフランチャイズシステムは有効であり、世界的な規模で事業展開することも十分可能である。店舗と物流というリアルネットワークを持つ強みもこれらの分野への参入にプラスに働く。単に自社販売の原材料の調達に終わることなく、事業として確立すれば、楽天やヤフーのリアルネットワーク版のような農業、漁業の形態をつくり出す可能性もある。
チェーンシステムはコア技術であり、財産であるという認識をもって新たなビジネスモデルに取り組む企業が現れれば、小売企業も大きく変わることができるだろう。
そのためには、「物売り」とは全く異なる次元から事業を発想する必要がある。経済、産業の進化の仕方を見ていけば、一時は物に集中することはあったとしても徐々に物から離れ、物とのかかわり合い方は大きく変わっていく。
どの時点を見て事業を組み立てていくのかは、非常に重要なテーマである。数十年の歴史を見た上で、数十年先の状況を想定すれば、総合スーパー(GMS)云々を言っている時ではないのかもしれない。
いまを前提として使用来を考えるのではなく、10年、20年先から逆算する形でいまをデザインする必要があるだろう。

大型ショッピングセンターが林立する港北ニュータウンは高齢化にどう対応するのか?

2040年時点で65歳以上の人口増加率(2010年=100)が全国で最も高い値を示すのは東京都小笠原村である。その次に多いと位置付けられるのが、現在、30歳代、40歳代を中心に人口増加が著しく、ららぽーと横浜、IKEA港北、港北TOKYUショッピングセンター、モザイクモール港北 都筑阪急、Northport Mall、港北みなも、LuRaRa KOHOKU、…等々、数多くの大型ショッピングセンターが集中して注目される港北ニュータウンがある横浜市都筑区(2010年人口201千人)である(図表 横浜市都筑区年齢構成推移 )。 同様に都筑区に隣接する横浜市青葉区(同304千人)、緑区(同178千人)、港北区(329千人)、川崎市高津区(同217千人)、多摩区(同214千人)、東京都港区(同205千人)、中央区(同123千人)(図表 横浜市都筑区隣接5区年齢構成推移)など、東京圏にあって人口の多い都市が65歳以上の人口増加率30位以内に数多く並んでいる。 港北ニュータウンがある都筑区は2040年時点でも人口は増加しており、隣接する周辺5区も人口が横這いで推移するが、増加する人口分はみな高齢者であり、年齢構成は大きく変わる。
*高齢者数の増加率は約1800ある市区町村の中でも都筑区2位(2010年=100として274.3)、青葉区9位(240,7)、高津区10位(229.8)、宮前区14位(215.2)、緑区24位(206.6)、港北区28位(203.6)、中原区32位(202.9)である。

つまり、周辺まで含めた巨大な商圏人口全てが急激に高齢化し、マーケットの性格が短期間のうちに全く異なるものになると予測されている。  高齢化に伴いマーケットの購買力が著しく低下した場合、街としての活力低下はもちろんであるが、何よりも周辺地域に与える経済的影響は計り知れない。 商業集積は、地域外からの集客を可能にするが、周辺都市も高齢化した場合、広域にわたり社会構造が大きく変わる。 一定の年齢層を確保するためには観光客の誘致も考えられるが、それには現在の物販、しかもマーケットが縮小するアパレルを中心としたショッピングセンターばかりの街からアミューズメントやテーマパークなどサービスウエイトを高めた街へと大きく修正する必要がある。 コモディティ中心の大型店舗だけでなく、現在の30~40歳台を中心に想定したテナント構成のまま、ショッビングセンターが生き残ることは難しくなるだろう。

訪日外国人マーケット(インバウンド消費)を活かせるか?

平成28年3月30日、第2回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、訪日観光客の目標が大幅に引き上げられている。
すでに2015年の実績が2000万人弱(1974万人、消費額は3兆4771億円、買い物代金は全体の約4割)と当初の2020年目標をほぼ達成するような状況にあることから、目標は大きく修正され、2020年4000万人、訪日外国人旅行者の消費額8兆円、2030年6000万人、同15兆円という数値まで提示されている。
さらに、現在、東京、大阪に宿泊、インバウンド消費が集中していること、またリピーターが増えたことで、メジャーな観光地から地方に残る日本の文化、日常生活へと訪日外国人の興味が変化しつつあること、LCC(Low Cost Carrier;低コストの航空会社)を中心に地方空港への乗り入れが増えたこと、…などから、訪日外国人を都市部だけでなく、地方部(三大都市圏;埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫 県以外の地域)に呼び込む施策を強化する方向にある。
3大都市圏以外の外国人宿泊者数の目標を、2015年実績2519万人泊に対し、オリンピックイヤーの2020年には7000万人泊、2030年には1億3000万人泊と大幅に増やすとし、それに伴う様々な施策も具体的に明示されている。
外国人リピーター数は、2020年には2015年の約2倍2400万人、2030年には約3倍3600万人を目標にしている。
観光に関するニーズも民泊やKitchHike(キッチハイクhttps://ja.kitchhike.com/ 例えば日本人家庭=ホストが設定した有料メニューをゲストが選択し、ホスト宅で一緒に調理し、食事をしながら交流するマッチングサイト)に象徴されるような普段着の日本を見たい、経験したいというように変わっていくと考えられる。当然、その周辺にあるニーズも変わるから新たなビジネスチャンスが様々な形で生まれることだろう。
その他、日本人の旅行消費額についても2020年21兆円、2030年22兆円を目指すとしており、過去5年間の平均伸び率を参考に5年ごとに約5%ずつ伸びると想定している。
このような想定を前提として、規制緩和、制度改革の議論、各施策についての行動目標も具体的に示されているから、周辺マーケットへの動きは今後ますます活発になることが予測される。
政府が観光ビジョンとして挙げた政策は、・迎賓館など公的施設の一般開放、・規制緩和による国立公園の宿泊施設誘致、・著名外国人による広告宣伝活動の強化、・外国語観光ガイドの規制緩和、・通訳などがそろう医療施設の5倍増、・美しい景観作り(電柱の地中化など)、・観光地におけるクレジットカードへの対応、…な多岐に渡る。
すでにセブン銀行では、このような状況を踏まえ、他行に先駆けて海外で発行されたキャッシュカード、クレジットカードで日本円が引き出せるATMへ切り替えている。コンビニエンスストアのセブンイレブン、総合スーパー、百貨店、ショッピングセンターなどの商業施設、主要空港など身近な設置場所、22000台という設置台数の多さ、ほぼ24時間可能な利用時間など(4月8日時点セブン銀行のホームページより)、多くの点で優位なポジションを確立しており、他行との比較においてその優位性は揺るぎないものになっている。特に訪日外国人はSNSを通して様々な情報を発信しており、その情報に基づいて次の訪日来訪者も行動するという傾向にある。海外発行カードが使えるATMがまだ少ない状況で「セブン銀行は使える」「セブンイレブンへ行けばよい」という情報が流れれば、実際のATMの数以上のメリットがあると考えてよいだろう。
免税店だけでなく、マーケットの変化に素早く対応した企業は確実に次のステージの主役の座を確保していくと考えるべきである。

政府が提示する施策に関し、特に小売業と関連すると思われる項目をあげると、地方の商店街等における観光需要の獲得・伝統工芸品等の消費拡大に向け、◍地方部の免税店数2015年10月1日時点11137店を2018年2万店(当初2020年目標を前倒し)、◍2020 年までに計50 箇所の商店街・中心市街地・観光地で街並み整備、◍計1500 箇所の商店街・中心市街地・観光地で外国人受入環境(免税手続カウンター、Wi-Fi 環境、キャッシュレス端末、多言語案内表示、観光案内所等)を整備、◍市町村が旗振りとなり、ふるさと名物の開発、◍世界に知られていない、日本が誇るべき優れた地方産品を500選定し、海外販路を開拓する、…などの他、「東北6県見るもの・食べるもの100選」を国内外に発信など、様々なものがある。
内容を見れば、大手小売業を対象としているという印象はなく、地元密着の中小零細企業、個人が中心と考えられるが、これだけの内容を、しかも短期間で実現することは実質的にかなり難しい。
すでに「地方創生」で明らかなように、人材、技術、経験、資金など、新たな事業を展開するのに必要な資源が豊富にあるわけではなく、行政が音頭を取っても、実際に動く中小零細企業、個人はなかなか前に進めないという状況が見えてくる。
展示会への出店も盛んだか、ちょっと注文が入ると生産能力が間に合わず、全ての活動が止まってしまうという。
そのような意味では、チェーンストア企業が持つ経験やノウハウ、人材、資金力は非常に重要であり、地元企業、自治体と一緒になって取り組むことはいろいろな意味で有効である。
ちょっと考えただけでも、商品企画・開発、販売チャネル、オペレーションシステム、リクルート・教育システム、資金調達など、チェーンストア企業が持つ資源は多い。
地域を運命共同体と考えるか否かで選択肢は大きく変わるが、もし運命共同体と考えるのであれば、小売業という限定された事業だけにこだわらず、企業組織としての動き方、成長・発展の仕方を地域に還元しながら、共に成長していくような関与の仕方が必要になる。単に地元商品を仕入れるという協力の仕方ではなく、調達や生産まで踏み込んだ指導、あるいは複数の中小零細企業、個人の機能統合をリード、コーディネイトするようなかかわり方が必要になるだろう。

チェーンストア、特に総合スーパー(GMS)生き残りのヒントは「集中」と「分散」…?

システムを考える時、分散か集中かというという見方がある。
分散型は集中型と比べ、一つ一つに対する投資が軽微で済み、リスク分散できる。個別に設定するため、環境的な違いにも比較的柔軟に対応できる。
現在のようにチェーンストアが普及する以前は、百貨店と商店街を構成する生業店、専業店くらいしかなかったから、どちらかと言えば集中型といってよいのだろう。
それに対し、チェーンストアは百貨店のような大きな投資もせず、数多くの店舗を分散していろいろな都市やロードサイドなどに出店する。
一店舗当たりの投資が小さく、限られた資金でいろいろな立地、いろいろな規模・形態の店舗を出店することが可能であるから急激な環境変化などに対するリスク分散も可能になる。
バブル時代、ドーナッツ現象と言われるように土地の高騰から住宅が郊外へと広がり、それに伴って商業施設も郊外に拡大していった。その後、バブル崩壊とともに土地の価格が下がり、今度はアンパン現象と言われるように都心に人口、商業施設なども集中してきている。
現在の状況を考えると、集中と分散が複雑に入り組んでいる状況と見ることができる。
インターネット通販は、店舗のように分散することなく、一つのサイトで全国に対して販売でき、しかも商品ジャンルと関係なく販売することができるから集中型ということができる。ただし、一方ではインターネット環境さえ整備されていれば、どこに本社、サーバーを持ってもよいから必ずしも都心である必要はなく、地方を拠点とする分散型でも十分成り立つ。
情報システムに限定して考えると、向かっている方向はクラウドなど集中型ということができる。IoTという視点からも様々なモノ・コトを統合する巨大なシステムが想定されており、セキュリティ上の問題からも分散する膨大な数のデバイスを個々に管理することには無理があるということが理由である。
携帯電話の普及で一家に一台だった電話は個人が持つように変わったから集中から分散型に変わった。一方、インターネットの普及によって、携帯電話がスマホに替わったことで、電話、メール、インターネット、電子マネー・クレジットなど、あらゆる機能が集約した。
このような進化のプロセスから分かることは、分散型が成り立つのは個々を構成するデバイスが持つ機能の完成度合いが高い場合であり、自己完結できる場合にその可能性が高まっている。
そう考えると、チェーンストアが分散型でも成立するための条件は、インターネットなどをうまく活用することで自己完結できるように機能を集約することなのだろう。
ただ、限定された商品を扱っているだけの単機能では、いくら店舗を拡大し、取り扱い商品を増やしてみても限界がある。
スマホが進化することで、手帳も、時計も、地図も、ナビゲーターも、パソコンや財布さえも必要なくなってしまった。その分、スマホの存在価値は増し、必要不可欠な存在となっている。
チェーンストア、特に総合スーパー(GMS)などが生き残るヒントはこの辺にあるのだろう。
あとは、その本質が理解できるか否かにすべてがかかっている。

セブンイレブン鈴木会長退任 10~20年後はどうなっている?

セブンイレブン鈴木会長の退任でマスコミは大騒ぎだし、様々な解説も飛び出している。
「5期連続で最高益を更新しているのに、なぜ?」といった論調もあるが、そうやって改革が遅れ、取り返しがつかなくなったのがソニーのテレビやシャープの液晶に代表される日本の家電メーカーだったことも忘れてはならない。
規模が大きくなれば抜本的な構造改革には多くの時間が必要になる。まして物からデジタルへと大きく構造が変わろうとしているタイミングである。
周辺にあるしがらみなど、細々とした状況を全て排除して、鈴木会長が何に違和感を感じ、何を変えようとしていたのかを一度客観的に整理してみる価値はあるだろう。
セブンイレブン、イトーヨーカ堂の業務改革、消費税5%還元セール、セブン銀行、DS業態ザ・プライスなどの仕掛けが生まれてきた、そのベースにある感覚、時代の読みが論理的に整理されることが必要である。
現在、業績がいいのは、現在ではなく、過去の意思決定の結果、その延長線上にあるから、現在の意思決定が評価されるのは10~20年後になると考えるべきだろう。
セブンイレブンができた時、誰もセブンイレブンやイトーヨーカ堂が現在のような状況にあるとイメージする人はいなかったはずである。
「周囲が反対すること」というよりは「周囲の人間には理解できないこと」を独自の感覚で見出しているとすれば、そのことを感覚的、論理的に理解、解説できる誰かが明らかにしなければ、永遠にわからずじまいで終わってしまう。それはそれで大きな損失と考えるべきだろう。

総合スーパー(GMS)の衣料品の問題点と再生の方向

◆ GMSの衣料品を考える上で、重要な意味を持つと考えられるのが以下の3点である。
①現在の状況に至ったプロセス
GMSの衣料品では、ヤング向けのカジュアル商品が成長してきた際にそれらを平場から外し、事業部化、別会社化して本体の衣料品売場から切り離した。その結果、平場はシニア、ミセスを中心としたベーシックな単品商品中心に構成するようになった。
その後、バブル時代にプチ百貨店を目指してブランド品や高額品を扱い、売場を広げたことで、ファッション衣料を接客して売っていくのか、日常的な実用衣料をセルフで単品大量販売していくのか、という方向性、MD、売場づくり、運用の仕組などさまざまな点でブレており、整合性が取れていない。
②歴史的に採用してきたMD手法
かつては、百貨店や専門店が扱う商品の内、成長期から成熟期にある商品をコピーして低単価で大量販売するのが量販店の手法と説明されてきた。
前述のようにバブルをきっかけとして、GMSが提供するのはファッション性の高いトレンド商品なのか、それともベーシックな実用衣料なのか、業態としてのポジションに対する解釈がさまざまにブレている。コピー中心のMDから開発中心のMDにシフトする試みも見られるが、コンビニエンスストアにおける惣菜やスイーツ開発のような本当の意味での企画・開発型MDにはなっていない。やはり、ヒートテックのようなコピー対応のMDが得意と言わざるを得ない。
近年、高齢化への対応で重要になるのは、表面的なデザインやディティールだけではなく、加齢に伴う体型変化や運動能力低下に伴う着やすさと考えられるが、型紙、構造、素材など機能的な対応の遅れは否めない。
③バブル期に拡大した広過ぎる売場とMD
GMSでは、バブル崩壊後も広がった衣料品売場を埋めるためにかなり多くのアイテムを投入している。しかし、競合する業態・チャネルが増え、商圏・購買するオケージョンが狭まったことで広すぎる売場の運営、MDにムリが生じている。

図表1は、商品の取扱い方から「アイテム売場(接客販売に向く商業型商品)と品種売場(フェイス管理によるセルフ販売に向く工業型商品)(筆者が命名)」について定義したものである。
以前、ユニクロ、他の専門量販店1社、大手GMS2社について、品揃えと在庫状況からMDを比較したことがある。その結果、ユニクロだけが品種を構成するアイテム数を絞り込む一方で、SKU数(色×サイズ)を増やして豊富感を演出し、さらに1SKU当り在庫数を多く持つことで欠品を予防するというセルフ販売の仕組を確立していた。
GMS2社は、一見するといろいろな商品があるように見えるが、いざ買おうとして個別に色×サイズを見ていくと、かなりの確率で欠品していた。品種を構成するアイテム数は多いが、アイテム別に在庫数をSKU数で割った1SKU当り在庫数を見ていくと1.0を切る商品が結構目立つ。
MDが定番商品の継続よりも、短いサイクルでの商品切り替え、スポット投入中心になっていることが原因である。
このように商品構成と在庫状況を見ると、GMSの売場は結果的にSKUを限定して数多くのアイテムで構成するブティックのような売場(接客販売に向く商業型商品の扱い方。ただし、はじめからそのようにMDを設定したのではなく、結果として在庫が歯抜け状態になったアイテムが増えている。)であり、セルフ販売、単品量販に向くようような運用になっていない。
広すぎる売場を埋めるためにアイテム数を増やしたこと、および取扱商品の特性(短いサイクルで回すファッション衣料なのか、定番的に継続発注するベーシック商品なのか)が整理できていないことが原因であり、やろうとしていることと、実際の売場運営、MDなど仕組との間にミスマッチがある。

◆ MD概念の変化
前述の構造的問題に追い打ちをかけているのが、マーケットの構造変化である。
従来、アパレル業界では、オン=ビジネス、オフ=プライベートという概念でマーケットを見ることが多い。ところが、クールビィズ、ウォームビィズなどノーネクタイ、カジュアルな服装がビジネスシーンに定着するとオン/オフ概念は曖昧になる。さらに高齢化によって、リタイアする人が増えてくると、年中オフという人の比率が高まる。
すでに従来のオン/オフ概念、ファッションをテイストだけで分類して構成するMDでは対応が難しくなっている。
例えば、ただ決まりだからと毎日会社に着ていくスーツと休日にオシャレに決めて出かける際のカジュアルウエアを比べたら、どちらがファッション的に気を使うだろうか?
毎日会社に着ていく制服のようなスーツは、定番的普段着のビジネスシーンバージョン、それに対し、休日にオシャレに決めるカジュアルウエアは、気持ちの入り方、こだわり方などから考えても、個人のアイデンティティ、その時の気分を表現する重要なアイテムとしての意味合いが強い。
ハレ(祭)とケ(日常)というとらえ方をすれば、明らかに毎日着るスーツがケ(平日)、カジュアルウエアがハレ(祭)ということになるだろう。
ビジネスシーンがカジュアル化し、高齢化によってビジネスシーンを持たない人が増えてくれば、オン=ビジネス、オフ=プライベートではなく、オン(ハレ)=本気度・こだわり、オフ(ケ)=定番・日常というようにとらえた方が消費者の価値観、マーケットの実態により近い。
そう考えれば、ビジネス/プライベートに関係なく、消費者が持つさまざまなオケージョン=服を着るシーンへの気持ちの入り方、本気度をベースにとらえるべきだろう。
銀座に買物に行く時の服がオン、近くのGMSに買物に行く時の服がオフというように、同じプライベートのショッピングでもオケージョン(行く場所、店、一緒に行く人など)によってオン/オフがあると理解すれば、いろいろな状況に応じた服装も見えてくる。
セオリー通りの定番的着こなしやオーソドックスなドレスアップ、遊び心のドレスダウンなどファッションに関する考え方を深耕し、オケージョン別に細分化して考えれば、ファッション=オケージョン、結果的に機能やテイスト、グレード、....等々、というように変わるだろう。
マーケットの状況を考えれば、MD概念の修正が重要なテーマになる。

◆ オケージョンをMDに活かす
すでに商圏やマーケットの状況を考えても売上を以前のように大きく伸ばすことは難しい。業績改善を考える上でも、まずは、さまざまなミスマッチを修正することで効率的な売場運用を実現することが優先になる。
そう考えると、オケージョンをMDに活かすことで得られるメリットは多い。特にGMSが抱える広すぎる売場をアイテム数を増やすことで埋めるにはムリがあるから、全体をビジネスユニットによって一定のスペースに切り分け、それぞれの特性に応じたMD、運用システムに整理し直す必要がある。
紳士、婦人、子供といった分類や、ビジネス/カジュアルといったオン/オフ概念はすでに粗すぎるし、GMSが抱えるさまざまな問題を解決することにつながらない。
例えば、家計調査の結果から、高齢者世帯では「国内旅行」の支出が全年齢平均よりも高いということが指摘(経済産業省 産業活動分析(平成24年1~3月期)「高齢者世帯の消費について」)されており、「トラベル」関連商品を強化する企業が確実に増えている。
東京駅などで定期的に行っているストリート調査(ココベイ株式会社シニアストリートリサーチ)などを見ても、シニア世代の国内旅行における服装や持ち物(服飾雑貨)の傾向はある程度見えているが、それらはアチコチ探し回って買い集めなければ揃わない。
夏以外のシーズンにハワイに行こうと思っても水着を売っている売場は限られるし、ゴールデンウィークにヨーロッパに行こうとしても、長袖のインナーを手に入れることは難しい。
クルージングがシニアの間で注目されているが、くつろげる服装からディナー、パーティと幅広いオケージョンに対応できる服装が必要になる。しかも、ペアでの行動が基本である。
同じフォーマルでも、遊び感覚の強いドレスダウンしたフォーマルもあれば、クラシックなフォーマルもあるし、自己主張したい時のクセの強いフォーマル、目立ちたくない時のベーシックなフォーマル、...等々、オケージョンや気分によっていろいろなバリエーションが考えられる。
同じゴルフでも近所の打ちっぱなしとコースでは違うし、同じコースでもメンバーやコースのグレードでもまた変わる。ランニングも近所をちょっと走るのと、ホノルルマラソンや東京マラソンに出るのでは気合いの入り方、走る意味が全く違う。
単に旅行やスポーツという粗いとらえ方では、現在のマーケットに対応することは難しい。
さらに視点を広げると、オケージョンの中には、結婚式に招待された若い女性のように、似たようなメンバー(特に学校時代の友達や会社の同僚など)が繰り返し違う結婚式で顔を合わせるようなケースもある。
このようなケースでは、毎回同じ服装ということにもいかず、バッグ、靴、アクセサリーなどを購入して使い回すより、その都度レンタルで切り替えていく方がより実態に合っている。
消費者が持つさまざまなオケージョンを考えれば、物販だけが唯一の選択肢ではなく、レンタルも中古買い入れ・販売も有効なMDの選択肢の一つと考える必要があるだろう。
オケージョン売場と言いながら、ただ旅行用品やスポーツ用品のコーナーをつくって終わるのか、それとも消費者のニーズ、ソリューションを念頭において(例えば旅行代理店・添乗員、旅行のベテランなどのアドバイス)、新たなビジネスモデルへと舵を切ることができるのか、というビジネスの進化が今後のGMSにとって重要な意味を持つ。

分かっているから行く食品スーパー(SM)、ホームセンター(HC)、ドラッグストア(Dg.S)、分かっているから行かない総合スーパー(GMS)…???

生鮮食品を買おうとすれば食品スーパー(SM)に行くし、収納用品や自転車など生活関連の大物や園芸用品、ペット用品を買おうとすればホームセンター(HC)へ行く。医薬品や健康食品、化粧品やシャンプーなどの他、ちょっとした日配品、飲料、菓子類はドラッグストア(Dg.S)ストアで十分間に合う。価格も結構安く、何よりも短時間で必要な買い物ができるから(ショートタイムショッピング)、使い勝手が良い。
ある意味、どんな商品が、どんな価格で売っているのか、分かっているから行く店 といってよいだろう。

それに対し、総合スーパー(GMS)は、「どんな商品を買いに行くのか」といった時に具体的なイメージがあまりない。いろいろな商品はあるが、どれも、そこそこの品揃えであるから、特徴がない。
むかし、ある企業の商品部長の奥さんが、オープンしたばかりのその企業の新店を見て 「大きなコンビニエンスストアみたい」 と言っていた。一般消費者としての素直な感想があまりにも印象的で筆者もこの表現をよく使わせてもらっている。色々集めてはいるが、どんな店、何の店といったといった明確な特徴、イメージがないということだろう。
だからSMS(Specialty Merchandise Store)という新業態を提案したのだが…。
結局、「ワンストップショッピング」という言葉にこだわって、限られた売場面積の中であれも、これも、と多くの人が買える中庸=特徴のない商品を押し込めば、個々の部門は小さな専門店よりも劣ることになる。「大型総合店」が陥るパラドックス(自己矛盾)、大きな弱点である。
ワンストップショッピング=とりあえず何でも揃う」ことにこだわると、いざ何か買おうとした時には「欲しいものがない」「同じ商品は他の業態の方が品揃えがよくて、しかも安い」「広すぎて探すのが大変」「時間ばかりかかって疲れる」など、マイナス面ばかりが目立ってしまう。まして急激な高齢化という日本の状況を考えれば、ある意味、行き方が逆行しているとも考えられる。
もし、「何でもある」ことにこだわって作った店が、消費者から「何もない」と見られたとすれば、業態としてのコンセプトそのものを修正する必要がある。
日常使う最寄り店という位置づけであれば、「何でも揃う」必要はないし、買い物に何時間もかかるような「広い売場」も必要はない。
そう考えると、「分かっているから行く店」に対し、「分かっているから行かない店」 という言い方がなんとなく当てはまるような気がする。
すでに「何でも揃う」ワンストップショッピングに低価格を加えた形ではWebやカテゴリーキラー、専門業態が実現している。
消費者が何か必要だ、買いに行く必要がある、買い物に行こう、…と思った時に「店を選ぶ理由」 が明確な業態、店であることが必要になる。
あるドラッグストアで調べたことがあるが、実際にお客が買っている点数は約5点、その内お客が買おうとし、その店を思い描くのにつながった商品は1~2点(その商品を買うのに、その店を思い描く、イメージが結びついている)、あとの3~4点は、店に来てからの衝動買いやついで買いである。
その店を思い描くのに使われた商品が、その店のイメージ(お客にとってその商品を買う店 例えばシャンプーは〇〇店、お茶2Lペットボトルなら△△店など)と考えれば、お客に思い描かせるのに用いる商品をどう設定するのか、お客に印象付けするのか、ということが重要になる。
これだけデジタル化が進んだことで、取れるデータも多く、やろうと思えば様々な分析もできる。もっとも目的が明確にならなければ必要なデータも分析方法も決まらないが….。
そう考えれば、「分かっているから行かない店」から「分かっているから行く店」に変えるための、業態としての方向付けが先のようである。こればかりは、どんなにデジタル化が進んでも簡単ではない。

エクセルで相乗積のシミュレーション

相乗積を使えば一瞬で粗利率や売上のシミュレーションをすることができる。しかも、変数をいろいろと入れ替えることもできるから、手作業では絶対にできない様々なケースについての想定が可能になる。
粗利率の相乗積は、粗利率×売上構成比だから、例えば、列(縦)ごとにA商品名、B売上、C売上構成比、D粗利高、E粗利率、F相乗積とする。
使用する商品や分類(相乗積を計算する要素)の分、行(横)をとって、最後に合計欄(オートサムΣを使う)をとる。

C売上構成比は、B売上合計Σで、それぞれの商品Bi(iはそれぞれの商品など)売上を割ればよいから、B売上/B売上合計Σ(小数点のままで%にはしない)で求める(例えば$B$15というようにB売上には必ず$をつける カーソルを式のB15に置いてF4を押す)。

Ei粗利率は、Di粗利高/Bi売上(×100で%にする)、Fi相乗積は、Ei粗利率×Ci売上構成比 で求められる。(最終的な粗利率はFi相乗積の合計Σ D粗利高合計Σ/B売上合計Σで求めた値とほぼ一致する 誤差は四捨五入による)
これらの式を一行入れれば、あとはコピーすることで必要に応じて何行でも作ることができる。
この場合は、売上と粗利高さえ入れれば、あとは式が入っているので自動計算する。瞬時に計算結果が出るから、いくらでも数値を入れ替えてシミュレーションすることができる。

各種相乗積の計算パターンは「Excelでの相乗積計算例」に示すとおりである。

このような同じ計算を繰り返す場合には、1行の式からコピーして計算表ができ、このようなシートを一つ作れば、あとはシートのコピー、ファイルのコピーで多くの人が同じように使うことができる。
Excelフォーマットは、まず誰かが一つ使いやすいものを作ればよいが、できれば使いながら使いやすいように修正していくとよいだろう。

ポイントは、ふだん手作業では絶対にできないし、やらないようなシミュレーションを、エクセルシートを使うことで瞬時に数多くこなし、ふだん考えないようないろいろなバリエーションを想定することである。そうすることを繰り返すことで見える世界が大きく変わり、判断も早くなる。

見える世界が変わることが重要である。

 

売場を科学する② 発想を変えてデジタルを使いこなす

デジタル化がものすごいスピードで進んでいる。様々な形でデータが取れるから分析の技術次第で様々なことを知ることができるし、あらゆる物事の本質が抜本的に変わってしまう。
ただし、「売場を科学する」には、デジタル化とは別に我々の思考=これまでの常識や経験にとらわれない柔軟な発想と問題意識、そして想像力が必要になる。
データがたくさんあれば何でも分かるかと言えば、全くそんなことはない。POSが普及して何十年もたつがPOSデータをまともに使いこなしていると言える企業は数えるほどしかない。
理由は簡単である。POSデータは販売数量しかわからないから、在庫数量やフェイス数、競合する商品の価格、チラシ掲載、競合他社のチラシ、販促など、販売数量に影響を与えると思われる周辺の状況までは分からない。単純に販売数量だけ見ても、その理由までは分からない。単に販売数量の多いか少ないかという限られた範囲の中で判断するしかない。
言い換えると、データの解釈には実態としての売場状況を経験的に知っている、あるいはある程度周辺の状況をイメージできる人が何らかの形で補完するしかないということになる。
そのような意味では、いろいろな法則が普遍化されるということが非常に重要になる。
まさに「売場を科学する」ことの意味がそこにあることになる。
ただし、残念なことに「売場を科学する」ための方法論が確立されていないし、そのような機関もない。これまでのように、現場で問題意識を持つ人が個人的に試行錯誤し、「個人の経験」として蓄積していくのでは、いくらデジタル技術が進歩しても、個人の経験・ノウハウを普遍的な法則としてデジタルの世界に生かすことはできない。
現在、デジタル技術だけがどんどん進化しているが、逆に小売の現場からは経験的に売場を知る人がどんどんいなくなっている。要するにデジタルとリアルの間に大きな溝ができていることになる。
デジタルは、現状はまだ道具でしかないから、本来であればデジタルを活用するコンテンツ(デジタル活用の対象・目的物・様々な法則など)が必要になる。ただし、この2つが上手くつながらないまま行けば、いずれAI(人工知能)をはじめとするデジタル技術がコンテンツ(デジタル活用の対象・目的物・様々な法則など)を自ら整理するなどして内包し、リアル(実態としての小売・売場)は、それにただそれに従属する、あるいは消滅することになるだろう。(主体がデジタルに変わり、デジタルがつくり出した枠組みに従ってリアルが動く)
商品構成、フェイシング、陳列・演出、POP、売り方…等々、すべてがAI(人工知能)などのデジタル技術によって組み立てられ、それを実現するために人が作業する、あるいはすべてをデジタルが行う、...あまり考えたくない状況だが、現在のまま進んでいけば、考えられない状況ではない。
できれば、売場の様々な法則を見出し、同時にデジタル技術の特性も理解した上で、上手く活用することができれば、精度の高い売場運用も可能になるだろう。
人口が減少すれば、売上のつくり方、売場づくり、売場作業など様々な意味で精度を上げ、生産性を高めることが必要になる。すでにPOSでも分かるようにいくら投資をしても機械化・デジタル化だけでは精度も生産性も上げることはできない。
デジタル技術をどう活用するのか、デジタルの進化が著しい今こそ非常に重要なテーマである。答えのヒントは、一部ではあるかもしれないが、昔、多くの先人達が試行錯誤して蓄積してきた経験・ノウハウにあると考えている。それらをデジタルの時代に合わせて如何に取捨選択し、将来に生かせるようにアレンジ、補完するか、...知恵が必要になる。
リアルなしにデジタルだけで全てが成り立つことは考えられないから、いずれデジタルの世界でもリアルとどう上手く一体化していくかが、意識されてくるはずである。
両方の特性を理解し、結び付けていくことが重要なテーマであれば、少なくとも「小売とは何か」「売場とは何か」ということを改めて小売側が整理しておくことが必要になる。