生鮮食品を買おうとすれば食品スーパー(SM)に行くし、収納用品や自転車など生活関連の大物や園芸用品、ペット用品を買おうとすればホームセンター(HC)へ行く。医薬品や健康食品、化粧品やシャンプーなどの他、ちょっとした日配品、飲料、菓子類はドラッグストア(Dg.S)ストアで十分間に合う。価格も結構安く、何よりも短時間で必要な買い物ができるから(ショートタイムショッピング)、使い勝手が良い。
ある意味、どんな商品が、どんな価格で売っているのか、分かっているから行く店 といってよいだろう。
それに対し、総合スーパー(GMS)は、「どんな商品を買いに行くのか」といった時に具体的なイメージがあまりない。いろいろな商品はあるが、どれも、そこそこの品揃えであるから、特徴がない。
むかし、ある企業の商品部長の奥さんが、オープンしたばかりのその企業の新店を見て 「大きなコンビニエンスストアみたい」 と言っていた。一般消費者としての素直な感想があまりにも印象的で筆者もこの表現をよく使わせてもらっている。色々集めてはいるが、どんな店、何の店といったといった明確な特徴、イメージがないということだろう。
だからSMS(Specialty Merchandise Store)という新業態を提案したのだが…。
結局、「ワンストップショッピング」という言葉にこだわって、限られた売場面積の中であれも、これも、と多くの人が買える中庸=特徴のない商品を押し込めば、個々の部門は小さな専門店よりも劣ることになる。「大型総合店」が陥るパラドックス(自己矛盾)、大きな弱点である。
「ワンストップショッピング=とりあえず何でも揃う」ことにこだわると、いざ何か買おうとした時には「欲しいものがない」「同じ商品は他の業態の方が品揃えがよくて、しかも安い」「広すぎて探すのが大変」「時間ばかりかかって疲れる」など、マイナス面ばかりが目立ってしまう。まして急激な高齢化という日本の状況を考えれば、ある意味、行き方が逆行しているとも考えられる。
もし、「何でもある」ことにこだわって作った店が、消費者から「何もない」と見られたとすれば、業態としてのコンセプトそのものを修正する必要がある。
日常使う最寄り店という位置づけであれば、「何でも揃う」必要はないし、買い物に何時間もかかるような「広い売場」も必要はない。
そう考えると、「分かっているから行く店」に対し、「分かっているから行かない店」 という言い方がなんとなく当てはまるような気がする。
すでに「何でも揃う」ワンストップショッピングに低価格を加えた形ではWebやカテゴリーキラー、専門業態が実現している。
消費者が何か必要だ、買いに行く必要がある、買い物に行こう、…と思った時に「店を選ぶ理由」 が明確な業態、店であることが必要になる。
あるドラッグストアで調べたことがあるが、実際にお客が買っている点数は約5点、その内お客が買おうとし、その店を思い描くのにつながった商品は1~2点(その商品を買うのに、その店を思い描く、イメージが結びついている)、あとの3~4点は、店に来てからの衝動買いやついで買いである。
その店を思い描くのに使われた商品が、その店のイメージ(お客にとってその商品を買う店 例えばシャンプーは〇〇店、お茶2Lペットボトルなら△△店など)と考えれば、お客に思い描かせるのに用いる商品をどう設定するのか、お客に印象付けするのか、ということが重要になる。
これだけデジタル化が進んだことで、取れるデータも多く、やろうと思えば様々な分析もできる。もっとも目的が明確にならなければ必要なデータも分析方法も決まらないが….。
そう考えれば、「分かっているから行かない店」から「分かっているから行く店」に変えるための、業態としての方向付けが先のようである。こればかりは、どんなにデジタル化が進んでも簡単ではない。
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