売場を科学する② 発想を変えてデジタルを使いこなす

デジタル化がものすごいスピードで進んでいる。様々な形でデータが取れるから分析の技術次第で様々なことを知ることができるし、あらゆる物事の本質が抜本的に変わってしまう。
ただし、「売場を科学する」には、デジタル化とは別に我々の思考=これまでの常識や経験にとらわれない柔軟な発想と問題意識、そして想像力が必要になる。
データがたくさんあれば何でも分かるかと言えば、全くそんなことはない。POSが普及して何十年もたつがPOSデータをまともに使いこなしていると言える企業は数えるほどしかない。
理由は簡単である。POSデータは販売数量しかわからないから、在庫数量やフェイス数、競合する商品の価格、チラシ掲載、競合他社のチラシ、販促など、販売数量に影響を与えると思われる周辺の状況までは分からない。単純に販売数量だけ見ても、その理由までは分からない。単に販売数量の多いか少ないかという限られた範囲の中で判断するしかない。
言い換えると、データの解釈には実態としての売場状況を経験的に知っている、あるいはある程度周辺の状況をイメージできる人が何らかの形で補完するしかないということになる。
そのような意味では、いろいろな法則が普遍化されるということが非常に重要になる。
まさに「売場を科学する」ことの意味がそこにあることになる。
ただし、残念なことに「売場を科学する」ための方法論が確立されていないし、そのような機関もない。これまでのように、現場で問題意識を持つ人が個人的に試行錯誤し、「個人の経験」として蓄積していくのでは、いくらデジタル技術が進歩しても、個人の経験・ノウハウを普遍的な法則としてデジタルの世界に生かすことはできない。
現在、デジタル技術だけがどんどん進化しているが、逆に小売の現場からは経験的に売場を知る人がどんどんいなくなっている。要するにデジタルとリアルの間に大きな溝ができていることになる。
デジタルは、現状はまだ道具でしかないから、本来であればデジタルを活用するコンテンツ(デジタル活用の対象・目的物・様々な法則など)が必要になる。ただし、この2つが上手くつながらないまま行けば、いずれAI(人工知能)をはじめとするデジタル技術がコンテンツ(デジタル活用の対象・目的物・様々な法則など)を自ら整理するなどして内包し、リアル(実態としての小売・売場)は、それにただそれに従属する、あるいは消滅することになるだろう。(主体がデジタルに変わり、デジタルがつくり出した枠組みに従ってリアルが動く)
商品構成、フェイシング、陳列・演出、POP、売り方…等々、すべてがAI(人工知能)などのデジタル技術によって組み立てられ、それを実現するために人が作業する、あるいはすべてをデジタルが行う、...あまり考えたくない状況だが、現在のまま進んでいけば、考えられない状況ではない。
できれば、売場の様々な法則を見出し、同時にデジタル技術の特性も理解した上で、上手く活用することができれば、精度の高い売場運用も可能になるだろう。
人口が減少すれば、売上のつくり方、売場づくり、売場作業など様々な意味で精度を上げ、生産性を高めることが必要になる。すでにPOSでも分かるようにいくら投資をしても機械化・デジタル化だけでは精度も生産性も上げることはできない。
デジタル技術をどう活用するのか、デジタルの進化が著しい今こそ非常に重要なテーマである。答えのヒントは、一部ではあるかもしれないが、昔、多くの先人達が試行錯誤して蓄積してきた経験・ノウハウにあると考えている。それらをデジタルの時代に合わせて如何に取捨選択し、将来に生かせるようにアレンジ、補完するか、...知恵が必要になる。
リアルなしにデジタルだけで全てが成り立つことは考えられないから、いずれデジタルの世界でもリアルとどう上手く一体化していくかが、意識されてくるはずである。
両方の特性を理解し、結び付けていくことが重要なテーマであれば、少なくとも「小売とは何か」「売場とは何か」ということを改めて小売側が整理しておくことが必要になる。

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