コア技術を再確認 もしなければ早急に確立を…

小売業にとっての資産というと、店舗の土地・建物と商品在庫など、どちらかと言えば目に見える物が中心となる。ただし、ブランド価値が言われるようになると、ブランドも重要な資産だし、月並みではあるが人も大切な資産だということになる。
それでは、コア技術は?というと、なかなか難しくなる。
例えば、出店候補地を探す・交渉する、商品や取引先を探す・交渉する、といったことも大切な技術のはずであるが、このような「人」についてまわるものは、昔から「技術」とは認識されていない。
筆者がイトーヨーカ堂を辞めた時、チーフバイヤーは「一度辞めると決めたものを止めはしないが、フォーマットをまとめたファイルだけは置いていけ」と言っていた。
販売・仕入れに使うデータをどのように収集し、整理すればよいのか、それをまとめたフォーマット、しかも使いながら修正を繰り返し、進化したフォーマットは技術とノウハウが集約した立派な財産である。
いまでは知的財産ということも当り前であるが、小売業、チェーンストアには技術、ノウハウと認識されず、保護もされず、ブラッシュアップもされず、個人の技量に任され、放置されたままになっている技術、ノウハウがたくさんある。
売場レイアウト、什器配置、陳列、商品開発方法、チェーンとして店舗を管理運営するチェーンシステム、バイヤー、ディストリビューター、スーパーバイザーなどの専門職組織と機能設定・具体的な業務の仕組み、人の育成方法、….等々。長年かけてつくり上げてきた業務の仕組みは有用な技術である。しかし、未だにそのような認識はあまり持ち合わせてないようである。
組織、業界の中に居たのでは分からないことが多いという言い方もできるが、自社の重要な資産に対する認識が甘いと価値ある宝を次から次へと無意味に捨てていることになる。
「コア技術」というモノがある。自社独自の技術・ノウハウであり、それによって独自の価値を創出し、他社との違いを際立たせて存在感を強め、競争を生き抜いて行くための武器である。
「コア技術は何か?」と聞いても答えに窮してしまうケースが小売業に多いのは、製造業と違って「技術」という意識・認識をあまり持つことがないからだろう。
急激な人口減少・高齢化によって、従来のような店舗販売というビジネスモデルだけで企業が成り立つことは難しくなる。その時に、いままで意識していなかった様々な技術・ノウハウを生かしたビジネスモデルが必ず役に立つ。特にチェーンシステム、商品開発システムなどは様々な分野に応用できる有効なコア技術である。
いままで見過ごしてきた財産を早急に見つけ出す(認識する、再認識する)必要があるだろう。店舗と現品販売いう物理的に制約される範囲の中でいま以上の生産性を確保することは難しいが、「システム」をビジネスの柱、特にプラットフォームに高めることができれば、従来の物販とは比べものにならない生産性を上げることは可能である。
おそらく、セブン-イレブン・ジャパンが所有する様々なシステムを本気になって他分野のビジネスに応用しようとすれば、世界のトップ企業として君臨することも可能だろう。そのためには、小売企業であるという意識を捨て、システム企業であるというように事業定義、事業に対する認識を改める必要がある。
特に農業、魚の養殖分野などにフランチャイズシステムは有効であり、世界的な規模で事業展開することも十分可能である。店舗と物流というリアルネットワークを持つ強みもこれらの分野への参入にプラスに働く。単に自社販売の原材料の調達に終わることなく、事業として確立すれば、楽天やヤフーのリアルネットワーク版のような農業、漁業の形態をつくり出す可能性もある。
チェーンシステムはコア技術であり、財産であるという認識をもって新たなビジネスモデルに取り組む企業が現れれば、小売企業も大きく変わることができるだろう。
そのためには、「物売り」とは全く異なる次元から事業を発想する必要がある。経済、産業の進化の仕方を見ていけば、一時は物に集中することはあったとしても徐々に物から離れ、物とのかかわり合い方は大きく変わっていく。
どの時点を見て事業を組み立てていくのかは、非常に重要なテーマである。数十年の歴史を見た上で、数十年先の状況を想定すれば、総合スーパー(GMS)云々を言っている時ではないのかもしれない。
いまを前提として使用来を考えるのではなく、10年、20年先から逆算する形でいまをデザインする必要があるだろう。

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