コラム

売場を観察して売上を上げよう!

◆ なぜ売上が上がらない?
多くの店舗に共通する「売上が上がらない理由」は、ある程度限られている。特に現在の状況を考えると、人口は減少し、高齢化によってマーケットのボリュームは相乗的に縮小する傾向にある。さらにコンビニエンスストアのドミナント戦略がカニバリゼーション(cannibalization;自社競合、共食い)を起こしていると問題になっているように、同質化するチェーンストアの集中出店によって売上の奪い合いが激化している。
チェーンストアがドミナント戦略をとり、他社とのシェア競争のために過剰に出店すれば、個店レベルの売上ばかりでなく労働力の確保にも大きく影響する。
同じ商品を扱う、同じような店を特定エリアに配置し、面を構成するからお客も確実に分散する。ネット通販をはじめとした他チャネルへのシフトなどを考えると、単店、ドミナントどちらをとらえても購買力が低下する難しい状況にある。
問題は購買力が低下する固定的な商圏の中で、固定された客層の、固定されたニーズに対応しながらシェアを高めようとしているが(減少傾向にあるパイの奪い合い)、商圏を広げる、客層を広げる、対応するニーズのバリエーションを広げるという戦略の転換を志向しないことだろう。

1.売上をどうつくるのか
店舗の売上を伸ばすには、①積極的に攻めて売上を拡大する、②マネジメントを強化して売上のモレ、ロスをなくす、という2つの方法がある。さらに①は、ⓐ固定された商圏、マーケットでシェアを上げる、ⓑ商圏、マーケットを広げるという2つに分かれるから、選択肢は3つということになる。
いずれの場合も原理原則を理解した上で、知識・技術・経験・ノウハウなどを駆使し、基本に忠実であることが求められる。
②を実現するには、マネジメントレベル、販売技術の精度を上げるために手間と時間がかかるため、多くの企業は改装・増床、イベント、価格訴求など比較的簡単で取り組みやすい①-ⓐに走る。①-ⓑは、店舗形態、商品構成、販促手法、業態などを変える必要があるから簡単には手を出しにくい。
ほとんどの企業が取り組みやすい方向に向かうことで結果的に勝ち組なしの疲弊戦状態をつくり出す。
また、現在はデジタル技術の進化によって様々なデータが取れるが、データを用いてマネジメント、実施の精度を高めるには、データを読み取り使いこなし、なおかつその結果を売場に反映できるだけの知識・技術・経験・ノウハウなどが必要になる。
いろいろな意味で、広範囲にわたる知識・技術・経験・ノウハウなどブレインワークと実施能力を高める必要がある。

単なる思い込み、過去の成功体験ばかりに頼っていては、本来のポテンシャルが生かされないばかりでなく、その後の店舗運営を難しくするリスクもある。
例えば、一般的に商品の陳列スーペース・陳列量を大きくすれば売上が伸びることはよく知られている。価格を安くする場合も同様である。
ただし、すべての商品が同じように売上が伸びるわけではない。場合によっては売上が伸びないばかりか、在庫が増えて商品回転率が落ち、値下げによって粗利率が下がる、あるいは販売数量が多少伸びても販売金額・粗利率が落ちるといったことも珍しくはない。
商品それぞれが持つ特性、お客の購買心理・商品による買い方(売れ方)の違いなどを考慮し、適した手段を選ばないと思わぬ結果になる。
よくあるのが、実需の先取りである。昔、会員セールを多用していたS社、J社などでは、会員セールで売上を上げても、その前の買い控えと売上の先取りによるセール後の落ち込みによって、前後を含めた期間トータルをならしてみると、売上は何もやらないのと変わらず、むしろ粗利率が下がった分がマイナスであったということも珍しくはなかった。
瞬間的な売上という甘美な魅力にとりつかれると、止めることができずにどんどん事態は悪化する。重要なことは原理原則を理解し、確実に成果を上げることができる王道(間違いが少ない、精度が高い、軌道修正しやすい)によって成果を得ることである。
そのためには商品特性、購買心理・購買行動のバリエーションなどについての科学的な知識が必要になる。

2. 商品特性、購買心理・購買行動などに関する原理原則
  いろいろな実験や経験から商品のタイプや商品の売れ方(消費者はどう反応し、どう行動するか)については、ある程度分かっている。
重要なことは、このような法則を日常の商品の品揃え、売場づくり、販促などにどう生かすかである。
行動経済学などでも指摘されている法則と同様に、身近にある商品選択の法則性などチョットした実験で調べることができるものは多い。

2-1. 商品が売れるメカニズム 購買心理と購買行動 ~~我々の身近にある消費者の商品選択態度~~    
■ 商品の購買実験(商品の干渉) 図表1 商品の購買実験(商品の干渉)
NB商品とPB商品について、NB商品の価格を固定し、PB商品の価格を変えながら、どちらを選択するかを調べてみる。実際に自分たちでやってみると、改めて人間の商品選択の仕方を再認識することができる。
水やお茶は価格が同じであればNB商品だが、10円、20円とPB商品の価格を下げていくと、すぐにNB商品からPB商品を選択する人数が増加する。一方、コーラは30円、40円、50円とPB商品の価格を下げていってもPB商品を選ぶという人はあまり増えない。
経験的にNB商品とPB商品の違いがあまりないと分かっている(リスクが小さい)水・お茶に対し、あまり馴染みがなく、万が一失敗した時のダメージ(最悪の場合、飲まずに捨てる?リスク)が大きいと思われるコーラは価格よりもNB商品の信頼性を選択する。

①スーツ
 1万円から10万円まで1万円刻みでスーツがあったと仮定し、いくらのスーツを買うか選択してもらう。
多くの場合Aでは7万円以上を買うという人は少なく5~4万円前後に集中する。平均単価は4.4万円である。
次にBではAで少なかった7万円以上をカットし、1万円から6万円とする。中心は4~3万円に移り、5万円、6万円を買うという人は減る。平均単価は3.4万円に下がる。
Cでは同様にして、買う人が少ない6万円をカットし、1万円から5万円とする。中心は4~3万円であるが、Bより全体的に低い価格が増える。平均単価は3.2万円と最も低くなる。
全体を見ると、売れないからと言って高価格帯の商品をカットしていくと、平均単価は下がる。「買わない」という選択肢を加えた実験では「買わない」という人数が増える。
これまでPOS分析による品揃えの改善とされてきた「売れない商品をカットする」ということをそのまま忠実に実行すると、平均単価は下がり、買上点数も減る。客離れも起こるから簡単ではない。

②弁当
コロッケ、メンチカツ、チキンカツ、とんかつ、ビーフカツという5種類の弁当の価格を色々と変えて、どれを選択するかという実験である。
Aでは、全て500円の均一価格、Bではビーフカツから20円ずつ価格を下げていく。同様にCではビーフカツから50円ずつ価格を下げ、Dでは全てをCのままとし、ビーフカツだけ日替わりで298円とする。
 Aでは、とんかつ、ビーフカツに集中する。素材の序列を考えてとんかつ、ビーフカツは割安、コロッケ、メンチカツは割高という意識が働いたと考えられる。
Bでは、まだ価格差が小さいのか、Aと大きな違いは見られない。
Cは、商品格差と価格差とが上手い具合にバランスし、払ってもよいと思う価格とおかずの好みが一致した結果、それぞれにバラけた結果になっている。商品それぞれの値頃感、価格のバランスがうまく取れた商品構成ということができるだろう。
Dでは、ほぼすべての人がビーフカツに集中する。おかずの好き嫌いというよりは損得だけで選択していると考えられる。
このように商品は周辺にある他の商品に影響されながら売れ方が変わる。このように相互に影響しあうことを「商品の干渉」と呼ぶことにする。
重要なことは、同じ品揃えでありながらA、B、Cで売れ筋だったとんかつがDでは死筋、同様にA、Bで売れ筋、Cでは死筋のビーフカツがDでは断トツの1位になってしまうことである。
** POSデータでは、このような周辺にある他の商品の影響を知ることはできず、ただSKU(Stock Keeping Unit;絶対単品)ごとの販売数量だけで判断せざるを得ない。POSという情報システムの限界である。

③ポロシャツ
ポロシャツの購入実験は、A赤と白2色から徐々に色を足していき、Fでアクセントカラーの赤、ピンク、クリーム、パープル、ベーシックカラーの白、グリーン、紺、グレー、黒の全9色まで増やしていき、それぞれの条件でどの色を選択するかという実験である。選択肢には購入しないという選択肢も加えてある。
アクセントカラーは別にして、ベーシックカラーは色を追加するたびにその中で色の移動=競合が起こる。
G、HはFのフルカラーから誰も選択をしない0人、あるいは選択数が少なかった色をカットして再度どの色を選択するかを聞いていったものである。
ここでのポイントは、色の増減に伴って変化する「購入しない」人数である。色数が増えるにしたがって「購入しない」人数は減少し、フルカラーのFでは0人になる。
しかし、誰も購入するという意思表示がないアクセントカラーの赤、ピンク、クリーム、パープルをカットしたGでは購入しないという人が3人に増えている。
「購入しない」と答えた3人に確認すると、自分が買うことがなくても、より多くの品揃えがある中から選びたい、そうでなければその店では買わないという。
**消費者にとっては販売データには表れない、売れない商品の効用も重要である。POSデータで売れないからと言って商品カットすることで品揃えが悪化すれば、お客は買うのをやめて他の品揃えの良い店へと移ってしまう場合もある。
品揃え、商品構成の本質を理解せず、機械的にPOSデータだけで判断すると間違えることになる。

2-2.購買動機による商品のタイプ
購入動機別に商品のタイプを整理すると、大きく次の3つに分けることができる。
①価格が重要な意味を持つ商品
洗剤や紙類など、ある程度品質が安定し、メーカー間、ブランド間の差があまり感じられないような場合、商品の購入決定に重要な意味を持つのは「価格」である。
②機能・性能が重要な意味を持つ商品
使う際の機能、性能、使い勝手などが重要な意味を持つような商品で、明らかに商品間に機能、性能の差が認められる場合には、購入に際してデザインや価格よりも機能、性能が重要な意味を持つ。
③CMのタレントや憧れのスポーツ選手などイメージが重要な意味を持つ商品
著名人が身に着けているのと同じブランドの服、バッグ、アクセサリー類、憧れの有名スポーツ選手が使っているのと同じタイプのスパイク・用具類、…のように憧れや共感など情緒的要素が購入決定に重要な意味を持つ商品は、価格や機能・性能とは異なる情緒的要素が重要になる。
①、②が価格や機能、性能といった比較的分かりやすい尺度であるのに対し、情緒的商品は感じ方という分かりにくい尺度が基準になる。
一見同じに見える同一品種の商品であっても、消費者にとっての意味が異なれば、購買動機、購入を意思決定する際重視する要素は変わる。
例えば、子供がサッカーのスパイクを買う際、憧れの有名選手が履いているのと同じモデル=その選手とイメージを重ねて履くことが重要であれば、多少価格が高くても「憧れの有名選手と同じモデル」であることが重要な意味を持つ。
履きやすさ、走りやすさ、蹴りやすさなどを重視する場合なら、自分の足型に合い、機能的、性能的にも走る、蹴るなど使用場面を考慮した合理的な設計になっていることが重要である。
一方、育ち盛りでどうせすぐ小さくなり、履き方も荒いからすぐに買い替えなければならないというのであれば、そんなに高価なものはいらないということになり「価格」が重要な要素になるだろう。
このように同じ子供用のサッカースパイクであっても消費者にとっての意味が異なれば、それぞれの価値観に応じて異なるマーケットが形成される。
商品特性による購買動機、買い方(売れ方)などについてキチンと理解をしないと、ファッション性など良いイメージが購買動機となる商品を大量に陳列し、大きなPOPで価格訴求するようなミスマッチを引き起こすことになる。
購買動機の違いに応じて、商品そのもの、価格設定、商品構成、陳列・演出方法、販促、…など、取り扱い方も変えた方がお客にも分かりやすく、購買につながる確率は確実に高まる。
★機能という考え方については、別項でも触れているが、同じ品種として分類される商品であっても、消費者にとっての商品の意味が変われば様々なモノ・コトが変わる。
◆図表 商品の機能(意味)=購入を決定するキーワード

2-3.商品の使い方、買い方による分類
(1) 購入者の状態 知識・経験  ◆図表 商品に関する知識と使用経験
 昔から、消費者の8割が店に来てから買うものを決めると言われている(出所、根拠とも不明)。主婦がする夕食の買物では、実際に購入した商品が当初思い描いていたものと大きく違うなど決して珍しくない。売場の品揃え、価格設定、陳列・演出、試食などの売り方が商品購入に大きく影響するということだが、残念ながらその法則は未だ解明され、一般化されるには至っていない。
購入商品に関する消費者の知識、経験(購入・使用・消費)の有無が買物行動には大きく影響する。
それらは        のように整理することができる。
①知識、経験(購入・使用・消費)ともある場合、商品の特徴、使い方のコツなどいろいろなことが分かっており、値頃や買い方についても一定の基準をもっている。②知識はあるが、経験がない場合、興味を持てばトライユースへと向かう可能性は高い。そこまででない場合は単に知っているというだけで終わる。③知識がないのに経験があるというのは、もともと商品に関心がないと考えられ、その都度態度が変わる。④知識も経験もないのは、その商品との接点がなく、関心もないということになる。
これらは同じ人間でもある分野は①だが別の分野は④というように、商品ジャンルによって異なり、またレビューや口コミなどの影響を受けることによって変わる可能性があるので常に変化する。
重要なことは販売する側が消費者を①~④のどのポジションにあるとして商品の提供方法を設定しているかである。ポジションによってアプローチの仕方は変わり、ミスマッチであれば本来得られるはずの成果は得られない。

(2) 任せたい・面倒な買物、自分で選びたい買物  
  博報堂の調査レポート「『選ばない買物』へと向かう生活者(2018年1月31日)」では、消費者の購買行動と商品カテゴリーの関係を次のような切り口から整理している。
『過去における買物は、高度経済成長期における「揃える買物」、安定成長期における「憧れる買物」、失われた15年における「賢い買物」など状況も性格も異なるが、それぞれの時代において買物には「楽しさ」があった。それに対し、現在は情報、商品、買い方とも大量、複雑で我々の処理能力をはるかに超えており、買物そのものが楽しみではなく「ストレス」になっている。もはやすべての分野で「賢い買物」は不可能と割り切り、そこでストレスを回避するために「手間を掛けたい買物」と「効率を重視する買物」を意図的に分けている人が7割を超える』という。
消費者が「選べない」「選ばない」という状況は、すでにジャムの試食販売(試食の種類が多すぎると返って買上率が下がる)、ベビーカー(多すぎると選べずに買うのを止める)など、選択の科学、決定回避の法則などとして知られている。
どの商品が・どのように優れているのか・お買い得なのか・自分にとってよい選択なのか、…など、情報量・選択肢が多すぎて処理能力を超えた場合、消費者は思考を停止し、一連の買物行動を放棄してしまう。
「任せたい・面倒な買物」に分類されたのは、生活家電、娯楽家電、情報機器、有料スマホアプリ、金融商品、教育・学習教材、旅行・交通、有料定期配信サービス、ファッション系定額サービス、外食、医薬品・サプリ、洗剤、ボディ・ヘアケア品、化粧品、加工食品の15カテゴリー、一方、「自分で選びたい買物」は、生鮮食品、菓子・デザート、アルコール飲料、調味料、清涼飲料、オーラルケア品、家具・雑貨、ファッション、書籍・音楽・動画、映画・ライブ・スポーツ観戦、自動車、住宅の12カテゴリーである。
  前者は商品の種類が多く、複雑で、しかも入れ替わりが激しい。商品を理解するには専門知識・経験が必要であり、素人が独自に取り組むにはハードルが高い。
一方、後者は、身近にあって比較的安価、かつ消費して無くなり、失敗してもリスクが小さいなど気軽にトライユースできるものが多い。嗜好性の高い商品が多く、自分の感覚で判断したい商品である。自動車、住宅など異質と思えるものもあるが、これこそ他人に任せられない重要な買物ということだろう。
「任せたい・面倒な買物」については、プロやAIに託すことで手間をかけずに一定のクオリティ、コストパフォーマンスを担保する。その分の時間・エネルギーを直感的、感覚的に楽しめる分野にまわすことで、全体のバランスをとり、消費生活を楽しむというのが情報過多時代を生きる消費者の知恵・工夫ということになる。
これらのことから何となく見えてくるのは、情報量・鮮度と消費者にとっての商品・買物の意味・価値である。
専用アプリから常に興味・好奇心を掻き立てるような多くの情報が提供されるカテゴリーか、日常的、定型的で情報源・情報量とも限られる地味なカテゴリーか、自分にとって重要な意味を持つ商品・買物か、それとも単なる補充作業的な商品・買物かによって消費者は大きく態度を変える。
例えば、同じワインでも家族とふだん飲む場合であれば、あまり気にすることなく買う店(サイト)、価格などから商品を決めるが、大切な人に贈るのであれば、クオリティを考えて買う店(サイト)を選び、専門知識・経験のある人に選択を任せる、アドバイスを受けるなどしてクオリティを担保する。
 一定のクオリティで消費を実現したい、ギフト(商品)を通して自分のアイデンティティを表現したいなどの意図が働く場合、買物(購入商品)のクオリティが担保できる方法を選択する。また、そのような場合の選択肢も増えつつある。
改めて認識する必要があるのは、このような分野が確実に増えていることである。当然、買い方・基準も変わるから、品揃え・売場づくり・売り方なども変える必要がある。
商品流通における一つのポイントは、商品という「物」をベースにした品種分類とは別に、商品の意味、消費者にとっての価値による分類という概念を加えることができるか否かということになる。

(3) 商品購入時の状況 理由、制約条件  ◆図表 商品購入のシチュエーション 状況、理由、制約条件など
 我々が商品を買う時の状況は様々である。例えば、①何か今晩のおかずを買わなくては、…、②そろそろ醤油がなくなるから買わなければ…、③何か良い器があったら買いたい、④バレンタインデー用のチョコレートを買わなければ…、 ⑤お歳暮に何か送らなければ…、⑥日替わりで安いから買っておきたい…、⑦ポイントの期限までに使わなければ…、など、大きくは「必要」な場合と「欲しい」という場合である。
①は、商品、価格、数量とも決まっていないが、購入する店(サイト)、購入期限は決まっている。②醤油という品種(銘柄までは分からない)、どこで買うかという店、価格、数量、購入日のそれぞれ目安がある程度決まっている。③は、漠然と器が欲しいという願望であり、具体的な店(サイト)、商品、価格、数量、購入日のいずれも曖昧である。④はチョコレートという品種(具体的アイテムは決まっていない)、大枠の価格、数量、購入日は決まっているが、店(サイト)は定かではない。⑤は、店(サイト)、商品は決まっていないが、大枠の価格と数量、購入日は決まっている。⑥は、店(サイト)、商品、価格、数量、購入日のいずれも明確だが買うかどうかという最も重要な点が決まっていない。⑦は、ポイントの使い方が定型化していれば別だが、そうでなければ期限と金額(ポイント数)以外は決まっていない。
このように買物で重要になるのは、購入する店(サイト)、商品、価格、数量、購入日(期限)の5要素であり、それぞれが●明確に決まっている、●大枠で決まっている、●決まっていない、という3つのパターンがある。
あらかじめ店(サイト)、商品・価格と数量、購入日が明確な場合、買物が大きくブレることはないが、各要素が流動的な場合には買物そのものが大きく変動する可能性が高い。
特に重要と考えられるのは、購入商品があらかじめ決まっているか、それともその場で決まるかという購入商品の決定、いつまでに必要かという期限、商品によって購入する店(サイト)が決まるのか、店(サイト)によって商品が決まるのかという要素間の順位、主菜を買うついでに調味料も買うというように買物の主目的となる商品とついで買い商品という商品間の主従関係、コメのように単独で成り立つ商品かカレーや鍋のように関連する複数の商品で成り立つ商品かという商品特性、そしてこれら項目間の順位などである。
商品を販売する立場から見て、商品の売れ方は実に単純と思える場合と、まったく理解できない場合があるが、一つ一つ要素に分解して整理していくと、ある程度は何らかの法則に従っていることが多い。この法則を見つけるために、いずれビッグデータ、AIが活躍して精度を高めるのかもしれないが、現状でも仮説と検証によってある程度のことは整理できるはずである。

(4) 商品タイプと買い方のバリエーション ◆ 図表 買い方の違いによる様々なバリエーション 
商品のタイプは色々な切り口から分けることができる。前述の主目的となる商品/付随的な商品の他に、常備する商品(用途が広い、頻繁に使う)/一定間隔で買う商品/必要に応じて買う商品、繰り返し継続して買い商品/その都度代わる商品(一度買うと2度と同じ商品を買わない)、頻繁に買う商品/一定間隔で買う商品/一度買うとしばらく買わない商品、安くすると売れる商品/高くないと売れない商品・安くしても売れない商品、その他日常的な商品/誕生日やクリスマスなどイベント用商品、..など、様々である。
その他にも、来店するお客の多くが購入する商品と特殊な客層・特殊なオケージョンで必要になる販売数量・購入頻度の低い商品というとらえ方もあるし、汎用性の高い商品/限定目的にしか使われない商品、常備する商品/必要に応じて買う商品、小さな子供がいる家庭で必要な商品/成人家庭で使う商品/高齢者が使う商品/単身者が使う商品など客層による違いなどもあるから、「商品のタイプ」といっても切り口は様々である。
このように、商品は様々な要因によって買い方、購入先の選び方はなどが変わる。これらの関係をある程度整理することができれば、店舗における品揃えの仕方、売場づくり、売り方などを消費者にとってよりストレスのない自然なものにすることができ、自然と売上も上がる。

★問題は、これらの商品が客層、用途・機能、頻度、汎用性/特殊性、その他前述のような様々な商品特性・購買動機などとは全く関係なく、売場で扱われていることである。
商品と購買動機の関係をよく理解し、的確に対応することができれば、消費者にとってストレスのない買い物が実現でき、客数も売上も自然と伸びることが考えられる。
★参考 ◆図表 さまざまな調査からみる女性の特性

テーマパーク型SM、アミューズメント型SMをつくろう!-2

■Stew Leonard`sに見るテーマパーク型SM、アミューズメント型SMのイメージ
すでに店内でレタスの水耕栽培を行い、販売するということはずいぶん前から行われていたが、販売する商品をつくるというだけで、店舗そのものは従来通りの食品スーパーと何ら変わることはなかった。
実際に食品スーパーが持つ加工・製造機能は多いが、それらはお客からは見えないバックヤードに追いやられ、商品を売る売場とは一線を画している。保健所の指導もあり、バックヤードは厳密に分けられているから現在のままでは難しいかもしれないが、発想を変えてテーマパークと割り切れば、動物園がやっているようなバックヤードを見せ、日ごろ表から見えない世界を体験できる全く別形態の商業施設として成立することも可能だろう。
すでに、いろいろなところにアイデアはあるから、新しい形態はそう難しいこととは思わない。
例えば、マスコミなどにもよく取り上げられるハローディ(本社福岡県北九州市)の売場コンセプトは「アミューズメント フードホール」、売場には様々な人形や工夫を凝らしたディスプレーが溢れている。さながら食品スーパーのおとぎの国とでもいったところであり、これらのディスプレーを維持発展させるため、通常の食品スーパーとは異なる仕組みを確立している。
 しかし、何といっても「テーマパーク型ストア」の本家本元はスーパーマーケットのディズニーランドといわれたStew Leonard`sだろう。見るだけでも十分楽ししいが、売っている商品の多くが目の前で作られていることで、より一層新鮮さを感じることができる。
 Stew Leonard`s in Farmingdale, Long Island, NY Tour (https://www.youtube.com/watch?v=OlEODkk1FfI)、Stew Leonard’s Norwalk Store Tour with Will(https://www.youtube.com/watch?v=OlEODkk1FfI)では店内の様子、取り扱う商品などがよく分かる。
 消費者が動画や写真を撮ってYouTubeなどSNSにアップするにはそれなりの理由がある。自分がいつも買い物をしている店を誇りに思い、自慢したい、多くの人に知ってもらいたいという意識であり、消費者が自分の目を通してその店の魅力をPRする。お客目線の究極の販売促進である。
 
 動画を見ればある程度のイメージは伝わると思うが、売場のアチコチに置かれた人形たちが、ディズニーランドのイッツ・ア・スモールワールドのように音楽を演奏し、歌い、踊っている。
 「WORLD LARGEST DAILY STORE」「FARM FRESH FOODS」と看板に大書しているように、店の内装は木を多用し、昔ながらの農場やマーケットのイメージを演出している。レイアウトは日本の一般的な食品スーパーのように無機質な直線レイアウトとは違い、IKEAのような商品のコーナーを強調したつくりになっている。インショップのようにコーナー化された売場のバックヤードでは多くの専門職スタッフが商品を作る様子も見られるようになっており、お客は商品ができる様子を見ながら売場を回り、「出来たて」「新鮮」を肌で感じながら買い物をする。牛乳も同様であり、牛の人形が愛想を振りまくバックには牛乳プラントがあり、牛乳がパックされる様子をガラス越しに見ることができる。
 様々な商品が作られ、つくりたての状態で提供されていることで、店全体が理屈抜きに新鮮さを主張している。お客は商品それぞれに応じたストーリーによって演出された売場をワンウェイで歩きまわりレジへと向かう。はじめて訪れた人は、次は何が出てくるのか、ワクワクしながら歩き回ることだろう。
 筆者が提案するテーマパーク型ストア、アミューズメント型ストアの一つの典型的なモデルと考えている。
 HPやSNSからも読み取れるが、テーマパーク型ストアは、ただ店内で商品をつくり、売っているだけではなく、お客を虜にするような様々な企画が必要である。
 Stew Leonard`sもバレンタインデー、ハロウィン、サンクスギビングデー、クリスマスなど大きなイベントはもちろん、日常的に子供を対象とした様々な料理教室やダンスパーティなど地域のコミュニティともいえる様々なイベントが行われる。
 日本でこのような店舗を志向する際に不可欠になるのは、企画・プロデュースを行う組織、人だろう。形をつくっただけではすぐに飽きられる。テーマパーク型ストアは、すでにただの物売りとは違い、テーマパークであるということを認識する必要がある。

■変化の時
多くのSMが人件費をコスト削減の中心に置いたことで、結果として管理レベル・売場レベルは著しく低下している。量販と安売りにこだわるあまり、取扱商品を限定し、さらにレジ精算までを消費者に依存するセルフレジになれば、そこはすでに「物」を入手することだけを目的とした無人倉庫のような存在になる。
全体がそのような方向に向かえば、テーマパーク型ストア、アミューズメントパーク型ストアの相対的価値(楽しめるという店としての価値ばかりでなく、希少価値も)は確実に高まるだろう。消費者の変化を理解し、すべての要素が上手く噛み合えば、マーケットにおける価値の向上とともに、経営効率も高まり、戦略的には一石何鳥もの相乗効果が得られる。
例えば、Stew Leonard`s では、多くの商品を店内で加工・製造することで、店全体がSPA(製造小売)型ディビジョンの集合体のような構造になっている。原価率は抑えられ、お客の目の前で製造することでリードタイムは短縮して需給調整もしやすい(もちろん製造ロットという制約はついて回る)。その結果、チャンスロス、値下げ・廃棄ロスへの対応が柔軟にできるというメリットがある。
さらに多くの製造工場を店内に持つ構造は、物流工程(工場から店に運ぶ横持)を省くことができ、物流コスト削減という大きなメリットもある。しかも、加工・製造スペースが工場見学のような役割も果たしているから、常に「出来立て=鮮度」をアピールしながら、テーマパークやアミューズメントパークのようにパフォーマンスを見せる演出も可能になる。
多くのSMがコストダウンのために(もちろん、衛生管理など安全上の要素も大きいが...)プロセスセンターや協力工場、バックヤードなどで加工・製造を行い、商品ができる様子をお客から見えなくしているのに対し、一方では工場見学、あるいはパフォーマンスとしてモノができる様子を見せ、試食を提供すること(出来立てでなければ本当の意味でのおいしさを味わえない商品も数多くある)で様々なメリットを実現している。
あらためて国内の「食」関連店舗を見直してみると、作る場面を見せることで、付加価値を高めている店舗は実に多い。
例えば、大丸東京店のねんりん家は、わざわざバームクーヘンを作る様子を見せるためにガラス張りにしているし、パパブブレ東京大丸店は、周囲3方から飴づくりのパフォーマンスが見えるようガラス張りのブースが作られている。様々な色の飴を組み合わせ、伸ばし、リズムに合わせて素早くカットするパフォーマンスは、企業のアイデンティティであり、商品価値そのものである。
また、カフェコムサはその日提供するフルーツケーキのデコレーション作業を客席に面したブース内で行うことでお客に作り立てであることを印象付けているし、シュークリームにカスタードクリームを注入する様子をお客から見えるようにしたシュークリーム専門店、焼き立てのパン、クロワッサンなどをお客から見えるように提供する焼き立てパンの店、麺の湯切りをパフォーマンスとして見せるラーメン店など、「つくる」シーンをパフォーマンス、企業のアイデンティティ、付加価値として見せる企業は多い。
それに対し、我国のSMでは、店舗設計段階で作業場の中が見えるように計画していても、実際に運用がはじまると、ほとんどの店舗で前面のガラスを商品で覆い隠し、中を見えなくしてしまう。
効率を優先するというよりは、ところせましとどこへでも商品を並べてしまう、整理整頓できない作業場を外から見えないようにするというのが主な理由であるから残念である。
Stew Leonard`s と日本のSMを見比べて、そこに感じる大きな違いは、Stew Leonard`s では、ディズニーキャストのようにスタッフが楽しそうに商品を作り、それを買うお客も買い物を楽しんでいるように思える。それに対し、日本のSMは、あくまでも作る所はお客に見せない、従業員も黒子だから顔が見えない、店頭に並ぶ商品も仕様通りに作られた既成品だから作る人の顔が見えず、人が感じられない。当然、お客も機械的に買い物をこなすだけになるから、一言も会話をせずに買い物が終わることも珍しくない。楽しさとは程遠い機械的な補充作業のようになる。
テレビで商品づくりの裏側を紹介する企画があると、その翌日にはとり上げられた商品の売上が大きく伸びる。ふだん知ることのない業界の裏話は消費者の興味、購買意欲を掻き立て、トライユースへと向かわせる。
このような消費者心理を理解すれば、SMの裏側も有効な販促手段となるはずだが、なぜかそうする企業は見当たらない。

「つくる」ことに「見せる意味・価値を付加する」のと、あくまでも「お客に見せてはいけない裏の作業として隠す」のでは大きな違いがある。
例えば、スポーツビジネスとして大きく変貌を遂げる大リーグ(MLB)をみると、ヤンキース球場のグランド整備はYMCAの音楽に合わせてグランドキーパーが踊り、グランド整備をパフォーマンスとして見せる(別にグランド整備だけを専門に行うもスタッフもいる)。
グランドキーパーはあくまでも黒子、目立ってはいけないという考え方から、どうせお客の目につくなら、いっそのこと観客も楽しませながら、本来のグランド整備もこなせばよいというように変わると、いつしかお客も一緒にYMCAを口ずさむようになり、やがて一つのイベントとして定着する。
いまでは、様々なデジタル技術によって、お客は手元のスマホを通していろいろなモノ・コトを楽しむことができるようになっている。今後、ますます興味の範囲を広げていくことだろう。
純粋スポーツとしてストイックに野球を追い求めるだけではなく、スポーツの持つ様々な側面をエンターテイメントとして掘り起こし、ボールパークと呼ばれるように家族連れで一日中楽しめる、あるいはビジネスの商談場所としても使えるというように、その対象・オケージョンを大きく広げることでマーケットの意味を根底から変え、ビジネスとしての可能性を大きく広げている。
同じベースボール、野球でも、観客の目を楽しませる、興味を引く切り口をたくさん持つのと、ただ黙々と勝敗を競うのでは、ビジネスとしての質、レベル、可能性が大きく違う。人がたくさん集まり、ビジネスの規模が大きくなることでプレーヤー、ゲームの質も高まるから相乗効果によってビジネスは大きく成長する。
筆者は、いま、まさにこれと同様な変化への対応が、小売業には求められていると考えている。

テーマパーク型SM、アミューズメント型SMをつくろう!

■新しいニーズを創造する新しい形態の店を創ろう
足元商圏に住む固定的な客層の、日常の食事という固定的なニーズだけを対象としたままでは、人口減少・高齢化する、固定された商圏内で店舗を維持することは難しい。
お客にとっての店舗の意味・評価・来店理由は、自宅から近い・アクセスが良い、商品が安い、品質・鮮度が良い・美味しい、店がきれい・清潔・感じが良い、サービスが良い・接客が良い・スタッフが親切・感じが良い、品揃えが良い・何でも揃う、他店にはない商品・変わった商品がある、見ているだけでも面白い・楽しめる、…等々、色々と考えられる。
全ての商品が安ければよいというわけではないし、メーカーのショールームと見まがうばかりにたくさんの種類があればよいということでもない。
我々が直面する状況を冷静に判断すれば、従来の発想から転換し、「商圏を広げる」「対象とする客層・ニーズを広げる」というように戦略、ビジネスモデルの転換が必要になることは言うまでもない。
ここではテーマパーク型SM、あるいはアミューズメント型SMを提案したい。

■テーマパーク型SM、アミューズメント型SM
経済産業省の定義では、テーマパークとは、入場料をとり、特定の非日常的なテーマのもとに施設全体の環境づくりを行い、テーマに関連する常設かつ有料のアトラクション施設を有し、パレードやイベントなどを組み込んで、空間全体を演出する事業所 とある。
SMの常識からすれば、入場料や会費など何らかの形で料金徴収することには抵抗があるだろう。しかし、それに見合うだけの価値、クオリティが実現できれば別に問題があるとは思わないし、むしろその方が競合他社との大きな違い、優位性になるとさえ考えられる。
ユザワヤは会員価格という形で会費の意味を明確に示したし、かつての赤ちゃん本舗も卸と会員という名目で会費を徴収していた。コストコは4400円という高額な年会費にもかかわらず多くの消費者に支持されているし、それよりも高額なアマゾンは様々なサービスを提供することで、全世界1億人ともいわれるようにプライム会員を増やし続けている。
これらの例を見ても、入場料や年会費、施設・イベントへのチャージも、その価値、メリットさえ消費者が納得できるものであれば、返って有効な仕組みとなる。
問題はそれに見合った価値・クオリティを提供できるか=本当の意味での真剣勝負ができるかという一点につきるだろう。
これまで「食」に関する様々なテーマパークやメーカーのアンテナショップが作られているが、取り扱う商品、表現形態は違っても、それらの施設はほぼ同様な構成になっている。
大きくは、①白い恋人パーク、埼玉種畜牧場 サイボクガーデン緑のひろば、犬山市のお菓子の城のような複数の施設から構成される総合的なテーマパーク(小売で考えるとショッピングセンター)、②カップヌードルミュージアム、新潟せんべい王国、群馬県のこんにゃくパークのような単独テーマのテーマパーク(小売で考えると大型専門店)、③広島お好み村、ラーメン博物館、ナムコ・ナンジャタウン(ビルインで餃子・アイスクリームなど複合)、大阪たこ焼きミュージアムなどのような同一業種店舗を集めた形態(小売で考えると専門店ビルやカテゴリーキラー)、④地域の特産面・名産品の販売、…などであり、基本的にそこで行われている内容は次のようである。
 入場料やチャージは施設の性格によって有料・無料のどちらもあるが、ほぼ共通しているのが、同一業種の有名店舗の集約、工場見学・体験教室・オリジナル商品製作、商品に関する知識・歴史などの資料展示・解説、一般商品・限定商品販売、試食試飲・飲食、その他ゲーム・アトラクション・実演などである。

これらの施設は中・広域商圏を前提としているから、小商圏で成り立つ普通のSMからの転換は難しいようにも思えるが、重要なことは「商圏を広げる」「店のポジションを変える」という本来的目的と「現在の商圏を前提にすると成り立たない」というジレンマをどう克服するかである。
 多くの場合、「現状」が勝ってしまい一歩を踏み出せないから、いつまで経ってもほとんどの店が変われずに終わる。その分、変われる店は少なく、ブルーオーシャンへと進むことができる。
いずれにせよ、何のためにやるのかという目的からスタートしない限り、現状から抜け出すことはできない。
 最も簡単に現在のSMから転換できる形態を考えると、直営・コンセ・テナントなどによって畜産品だけを集めた店、海産物だけを集めた店、生花を含む農産品だけを集めた店、...というように、特定分野に特化したカテゴリーキラーを確立することだろう。
 例えば、畜産品のカテゴリーキラーであれば、豚肉専門店、牛肉専門店、鶏肉専門店、焼き肉用肉専門店、ステーキ用肉専門店、焼き鳥用肉専門店、ラム肉専門店などの他、ジビエ専門店(シカ・猪・クマなど)、ダチョウ・ワニ・ラクダ・ヤギ・カンガルー肉などの専門店、加工肉専門店、乳製品専門店、玉子専門店、昆虫食専門店、それに半調理品・調理済み品(惣菜)、調味料など周辺商品とイートインを加えて一つの建物の中にまとめ上げれば、日本に一軒しかないカテゴリーキラーが誕生する。
 もちろん、単に商品を集めただけの専門店の集合体では集客が限られるし、いずれ飽きられる。イベント・体験などSNSを用いたプロモーション・顧客の組織化、マスコミ対応など継続的に進化し続けることと発信し続けることが必要になる。従来のように、小ぢんまりとした世界で地味に商売をしているのと違い、お客にその良さ、楽しさ、珍しさなどを訴求し続けるプロデュース機能が必要になる。単なるカテゴリーキラーではなく、テーマパーク型SM、アミューズメント型SMである必要がある。
 商圏が広くとれ、しかも各店が畜産品、海産品、農産品、...というように専門特化し、棲み分けができれば、自社競合は起こらず、物流網を共有しながらECにも取り組める。しかも従来と比べてはるかに専門性が増すから、他社との差別化はもちろん、B2Bにも取り組みやすい。競争力のないSMを継続するよりは、いろいろな技術・ノウハウの蓄積も見込まれるから、将来を考えてもはるかにメリットは大きい。
 方向性が分かっていながら、なかなか一歩を踏み出そうとしないことは業界全体としての大きなリスクである。パイオニアの出現が望まれる。

ワクワクする店 食品ブティックを創ろう!

■ ワクワクする店「食品ブティック」を創ろう!
筆者が初めて「食品ブティック」を提案してから30年近く経つ。拙著「業務革新とクラシフィケーション」(株式会社商業界平成9年7月)追補「21世紀への提案」の中でも触れているが、バブルが崩壊した90年頃、ノンフーズの実験的な店舗を創り上げ、その後、食品スーパーでも新しいフォーマットをつくろうとアイデアを温めていた。
結果的にはバブルが崩壊したこともあり、アイデアは実現できずにお蔵入りになったが、現在のような状況を考えると、改めて提案するにはちょうど良い環境、タイミングと思っている。
消費を経済活動ととらえれば、売場は激しい競争の場であるが、「消費は文化」ととらえれば、そこは新たな文化を産み出す創造の場に変わる。
バブル崩壊後、売場はローコストと価格競争ですっかり荒廃してしまった。その結果、皆が疲弊し、日本中からワクワクする面白い売場が消えていった。どんなに表面を取り繕っても、本質は無機質な倉庫のような売場、お決まりの商品・値付け・価格訴求の販促、補充作業のような買物、…では、「店」「売場」「買物」の本来的意味は失せている。
ただ物理的に「物」を入手するだけなら、わざわざ手間暇かけて店まで行く必要はない。お客がネット通販・テレビ通販にシフトする一つの大きな理由と言ってよいだろう。
物が溢れる時代の買物は、物が充足していく時代のそれとは明らかに違う。そろそろローコストと価格競争で荒廃した無機質な売場ではなく、買物の楽しさ、面白さ、ワクワク感が得られる売場ができてもよい頃だろう。

◆「食」を改めて見直すことができる空間を創ろう!
日本では、壁面に生鮮食品、中島にグロサリーという古典的な食品スーパーの売場が昔から頑なに守られている。しかし、20~30年ほど前、本家本元のアメリカでは「食品スーパーは業種(業種の中に業態がある)」と言われ、食品スーパーはさらに様々なタイプの業態に別れていた。
入口付近の青果は本格的なシェフが作るテイクアウトデリやイートインに変わり、敷き詰めた氷の上に並べられた魚や彩鮮やかな青果売場はマグネットとして店の一番奥に配置された。
赤い絨毯にシャンデリアという高級スーパー、マーケットのようなつくりの自然食品スーパー、重量ラックに高く商品を積み上げ、パレットに山積みにした商品で安さを演出したウエアハウス型食品スーパー、そしてブティッキングという手法で商品をインショップ(ブティック)にまとめた食品スーパー、...等々、店の主張を表現する手法は様々であり、個性的な店舗が数多く出現した。
日本でも高級スーパーを標榜する店が現われたが、実態は内装や什器の色、スタッフの制服、商品の価格帯など表面的な装いを変えただけで、本質は何一つ変わっていなかった。結局、高い商品を売っているだけでは長続きせず、売上が落ちれば売場も商品もただの食品スーパーに戻っていった。
もし、高い商品を集めたのが高級スーパーというのであれば、筆者が提案する「食品ブティック」は高級スーパーではない。かつての東急ハンズやジョイフル本田のような店を現代風にアレンジし、発展させた「食品ブティック」という全く異なる専門業態である。
単に「物」を売るのではなく、ホームセンターのBIY(Buy it Yourself ; 材料は自分で買うが加工は専門業者に有料で委託する)のように、様々な機能的サービスを提供する。
お客が見たこともない食材は調理方法、食べ方を提示し、メニューのアイデアを提案するだけではなく、産地・生産者と情報交換できるネットワークの設定、お客が買った生鮮食品の下ごしらえ、要望に応じた調理、店内のイートインで食べられる料理提供(消費増税次第でイートインもどうなるか分からないが…)なども行う。
シェアキッチンや地方の郷土料理(おふくろの味)を教え・提供するスタジオ(インターネットライブ配信)などを備え、「食に関するソリューション、エンターテイメント、エデュケーション」といったサービスを幅広く提供する。
テレビで話題の「伝説の家政婦志麻さん」のように、誰からも支持される革新的な食の新業態である。
子供の誕生パーティー、還暦・喜寿・米寿のお祝いなどに対しては、単に料理を提供するだけでなく、楽しく時間が過ごせるように企画提案・コーディネイトも行う。会場の他、様々なサービスの手配も行い多様なニーズに対応する。
会員に対しては、カルテに基づき管理栄養士が食事指導をし、調理サービス時にはカロリー、塩分、糖質、脂質などをコントロールする。さらに管理栄養士、理学療法士、作業療法士などによるアドバイス・レシピ提案、カルテ(データベース)・IoTデバイスで収集したデータに基づく生活管理まで行えば、医食同源を実践する地域の健康デポとしての機能も果たす。
「食品ブティック」に必要な商品はこだわって品揃えするが、取り扱う意味のない商品は扱わない。立地、売場面積、お客のニーズに合わせて物販を絞り込み、専門的な商品構成、サービスと売場創りに特化する。
価格競争から解き放たれた自由な空間は、お客の興味を掻き立て、好奇心、探求心、知識欲を満たすことで知らず知らずのうちにQOL(Quality of Life)を高める働きをする。売場を創るスタッフも、そこで過ごすお客も、心から楽しむことができる密度の高い空間である。
当たり前の日常(ケ)に意味を持たせ、ハレ(祭り)に変える空間を提供することが「食品ブティック」の重要テーマである。売場の意味も、消費する意味も、そこで過ごす時間の意味も、従来の小売店・飲食店とは全く違うから、競合する店は存在しない。最強の業態である。
そこに行けば、見たこともないような商品やサービスがあるから、遠くからでもお客は来店する。日本では単店で100億円を売り上げる「食」の店は見当たらないが、食品ブティックならそれが可能になる。アパレル比率が低下するショッピングセンターの次世代の核としても期待できる業態と言えるだろう。
現在は、「既存業態ではマーケット環境の変化・進化に対応できない」という点でバブル当時とどことなく似た状況にある。しかも、店が進化する方向性は大きく変わっていないのに、デジタル技術の進展によって使える道具は飛躍的に増えている。
まさに、「食品ブティック」を誕生させるには絶好のタイミングである。

◆食品ブティックの売場イメージ
主通路の外周壁面にはIKEAのようなシーン別コーナー、あるいは品種中心に構成したショップ(ブティック)を配置する。主通路の内側、売場中央には、生鮮食品を中心にマーケットのような売場をつくる。場所がまとまることで人との距離感が縮まり、賑わいを演出しやすくなる。
外周は物販、飲食、教室、キッチン、カウンターなど物販、サービスをミックスした様々な要素のショップで構成する。消費者と生産者・メーカーをつなぐ、来店する消費者同士をつなぐ、リアルプラットホームとしての機能を併せ持つ空間は、見るだけでも十分楽しめる複合機能の空間である。
かつてカーマ21岐南店が個人事業主など地元事業者を取り込み、様々な教室・サービス業を施設内で営業させる代わりにカーマにはない専門商品(取引先チャネル)を紹介してもらい販売するというコラボレーションに取り組んだことがある。食品ブティックにも取り入れたいアイデア、手法である。
現在であれば、AI(人工知能)、AR(Augumented Reality拡張現実)、VR(virtual reality仮想現実)、MR(Mixed Reality複合現実)など、様々なデジタル技術も活用できるから、限られた空間であってもテーマパークやアミューズメントパークのような要素を加えて機能拡張することが可能である。
すでに、野菜・果物の生育状況・収穫作業、あるいは魚の養殖場・漁の場面などをWebカメラで見るだけの時代から、(デジタル技術によって)その場面に自分が入り込み、疑似体験ができる時代に変わっている。
近い将来、リアル店舗もデジタル装備が充実し、様々に機能拡張するようになれば、店は単なる「物売りの場」から、消費に関するあらゆるシーンを「疑似体験する場」に変わる。

◆食品ブティックのアイデア  「食」をテーマに様々なシーンを再発見する、疑似体験する空間
消費者に直接商品を提供する「食」ビジネスは、「食材」「加工食品」「調理食品」を売る小売業と「料理」を提供する飲食業が中心である。小売業のメインである食品スーパーは、生鮮食品や調理食品に注力し、一通りのものが揃うワンストップショッピングにこだわるから、どこも同じ特徴のないフルライン構成になる。その結果、NB商品を扱わない成城石井が特別視されるように、一般から外れて専門特化した方が店の存在感が強調されることになる。ただし、取扱商品が違っても小売店であることに変わりはない。
一方、飲食店はその経営形態からも種々雑多な形態があり、個性的ではあるが、やはりどこも一様に料理を提供しているにすぎないから限界がある。最近では、料理アプリを提供する企業が、使う食材をネットで販売するというビジネスモデルも現れているが、別段物珍しさは感じられない。
そうであれば、商品を絞り、「未開のマーケット」である知識・技術・ノウハウ中心のビジネス、機能支援・機能代行ビジネス、情報・ビジネスのマッチング・プラットホーム、情報交換・参加・体験・交流・交換の「場」を提供するビジネスなど取り入れた店=人が集える物販とサービスの複合機能を持つ食品ブティックの方が人が動く分、商品も動かしやすいだろう。
食品ブティックを形づくるアイデア、ヒントは様々である。
例えば、バブル当時、生きた魚を扱い、丸のまま、三枚おろし、下ごしらえ、半調理、刺身、煮魚、焼き魚、…等々、客の求めに応じて加工・調理し、持ち帰りも、店内での飲食もできるという店があった。
食品スーパーと飲食店とでは仕入れルートが違うから当然取り扱う商品も違う。魚に限らず、肉や野菜も同様である。季節に関係なく、どんな状況下でも定番商品をかき集めて販売する食品スーパーと、その日仕入れられる良い商品だけを取り扱い、可能な限り良い状態で提供する店とでは根本的な違いがある。
また、日本は世界的に見ても多様な食文化=郷土料理を持つ数少ない国だという。東京をはじめとした都市部には数多くの地方出身者が集まっており、郷土料理、おふくろの味は「食」の重要なテーマでもある。外国人観光客にとっても日本の文化に触れることができる有用な空間になる。仮に全国47都道府県にある郷土料理を週替わりで扱ったら52週ではとても足りない。同様に考えると、増え続ける外国人観光客・ビジネス客・国内居住者の郷土料理も一つのテーマになる。
スペース、商品・サービス、スタッフ、…等々、全てを固定的に考えなければ、いつ行っても飽きが来ない魅力的な空間、「食」を通じて人が集う交歓・交流の「場」が出来上がる。

現在、重要なのはアイデア、企画力、情報力、技術力、マーケティング力を前提としたプロデュース力である。
人口が減少し、マーケットがシュリンクしていくことを考えると、店・売場を「食」に関するテーマパーク、アミューズメントパークのような空間に進化させるのか、それとも頑なに従来通りの物販にこだわり続けるのか、判断が分かれるところだろう。
筆者は、人口動態などマーケットの環境与件を考えると、かなりの確率で前者だと考えているが、どうだろうか。

二次機能型SM(ストア)をつくろう!

機能(働き、役割)という考え方がある。
基本機能はモノがモノとして成り立つ必要最低限の条件、食に関して言えば、安全に食べられて空腹を満たし、生体を維持するうえで必要となるエネルギー・栄養素が摂取できるということになる。
それに対し、二次機能は、①食品が持つ特定成分の働きにより健康や美容に役立つような働き、②友達とくつろぐ際のお茶やスイーツ、パーティ・懇親会での料理やお酒が果たす交流・交歓・親睦を促進する触媒としての働き、③インスタ映えという言葉に象徴されるようなSNS投稿の演出道具としての働き、④知識や技術を高めるといった自分を成長させるための題材、…など、食本来の機能=基本機能とは異なる様々な役割、働きである。
三次機能は三ツ星レストラン、有名シェフ・パティシエの店というように「提供される商品・料理」とは分離し、食とは直接的に関係のない独自の意味を持ちだしたものである。
消費者は基本機能が満たされると次には欲求が二次機能、三次機能へと向かう傾向にあることが経験的に分かっている。メーカーも差別化のために二次機能、三次機能を意識したマーケティング戦略、商品開発を強化するため、マーケットは自ずとそのような方向へと向かう。
マズローの欲求階層とも似ているが、機能間における順位はさほど明確ではなく、その時々のはやりなど状況によって様々に変化する。
すでに、食が「単に空腹を満たすだけの時代」は終わり、たとえデカ盛り、メガ盛りであっても、大辛メニューなどと同様、珍しさ(希少性)やゲーム性(早食い競争、我慢比べ、罰ゲーム、チャレンジなど)によって、「場」の雰囲気を盛り上げるための演出道具として用いられるケースが増えている。
最近の傾向として、身近にある「食」の意味、役割は他の商品分野と比べ物にならないくらい大きく広がっている。
人口減少・高齢化が進む現状では、すでに従来のように食品をただ「物」として売っているだけで店舗を維持することは難しい。
まして、同質化するチェーン店が縮小するマーケットの中でお客を取り合うのでは勝ち組なしの疲弊戦に突入することは明らかである。
根本的に変化する必要がある。

食品を対象に、基本機能、二次機能、三次機能について整理すると次のようになる。
例えば、ニンジンを例にとると、基本機能は煮物やカレーに用いる食材であり、安全に食べられて空腹が満たせ、一定のエネルギー・栄養成分が摂取できる。
また、ニンジンの三次機能はあまり思い浮かばないが、地域ブランドの雪下ニンジンなどがそれに近い。分かりやすいのは青森県田子町のニンニクなど、明らかに地域ブランドとして確立されたものであり、田子町というだけで独自の意味を持ち出している。
*いずれの場合も機能という考え方、意味を理解するうえでは比較的わかりやすいが、三次機能の場合、ブランドとしての認知度が高まり、そのポジションが確立できるまで(モノと分離してブランドが独自の意味を持ち出すまで)は、二次機能的要素が重要になる。

それに対し、二次機能では、①有機JAS(日本農林規格等に関する法律)に認定されており、「環境にやさしい」「安全・安心」といえるニンジン、②インスタ映えする赤、紫、黄色など様々な色の人参を用いたパーニャカウダ(いろいろな種類・色の生、あるいは温野菜をパーニャカウダソースで食べる見た目にもきれいな料理)といった「雰囲気を演出するための道具」としてのニンジン、あるいは③ニンジンの色によってβカロテン、リコピン、アントシアニンなどを多く含むことから「健康にやさしい食材」としてのニンジン、...などというようにフォーカスの仕方によってその意味、働きは様々に変わる。
二次機能は、モノをベースにして基本機能とは異なる副次的機能で、なおかつ三次機能のようにモノと分離して独自の意味を持つようになったものではないものすべてが対象となる。その範囲は広く、様々である。
また、前述のように、場合によっては三次機能との境目が曖昧な場合もあり、明確に線引きすることが難しいケースもある。
二次機能について、大きくいくつかのパターンに分けてとらえると次のようになる。
一つ目は、食としての本来的機能を超え、特定成分の持つ特性をコントロール(強化、減少、バランス化)することで健康、美容、ダイエットなどへの効用を期待する分野である。
例えば、リコピンを通常より多く含む加熱用トマト、トマトジュースなどである。リコピンの持つ抗酸化作用はβカロテンの約2倍以上、ビタミンEの100倍以上といわれている。脂溶性があり、加熱すると吸収率が高まるため、油と一緒に加熱調理して摂るとよいとされる。
同様に、低カロリーで食物繊維、特に水溶性食物繊維を多く含む食材であれば、腸内環境にもやさしく、ダイエットをはじめとした様々な効果が期待できる。寒天、キノコ類などがよく知られているが、茶葉や焼き海苔なども食物繊維、ビタミンCなどを多く含む。
地域の食性と寿命・特定の病気の罹患率の関係などから、健康に良いと考えられる食品と食べ方などが提言されることがある。医食同源といわれるように、日々の食事によって健康をコントロールするという役割である。
2つ目は、ティータイムのスイーツや酒席の酒・つまみ・肴、パーティ・宴会の酒・料理といった催し物、あるいは交流・交歓に際しての演出道具的役割、あるいはインスタ映えという言葉に象徴されるように、一つのシーンを演出する道具といった役割である。
インスタ映えでは、色やデザイン、意外性、話題性など、Web上で特定シーン、ストーリーを演出する道具としての役割であり、いわゆる「盛る(様々に加工して強調するなどし、演出する)」ことによって、現実とは異なる世界をつくり出す役割を果たす。
一方、ティータイムのスイーツや酒席・パーティ・宴会の酒・肴・料理などは、リアルの世界で、しかも一定時間、複数の人間が、同じ空間で時間を共有するため、同じ演出道具であっても、果たす役割ははるかに多く、複雑である。参加する人数やメンバーの距離感にもよるが、場合によっては、そこで提供される酒や肴、料理の産地、作り方、味、食べ方など様々なうんちくが会話の導入として重要な役割を果たすことも必要になる。美味しさや食べることでの満足感ばかりでなく、「場」を和ませ、また交流・交換を促進させるなど、多様で幅の広い役割が求められる。
 3つ目は、共通の体験を通して交流・交歓・親睦を図るといった場合の題材としての役割である。キャンプでの料理、バーベキュー、タコパーティなどが典型的な例であり、一緒に準備し、調理するなど共同作業を行うことで、ふだん見ることのできないお互いの異なった側面を知ることができ、親近感が増すなどの効果が得られる。
 4つ目は、知識・技術を高め、成長するための題材としての役割である。「食」「料理」は身近にあって馴染みやすく、自分の成長、自己実現のための題材としても取り組みやすい。
 キャラ弁をはじめ、魚の三枚おろしや珍しい外国料理など、あまり馴染みがない、あるいは技術的に難しいと思えるものであれば、できた時の達成感、充実感も大きく、周囲からの評価も高い。
 
★イートイン、グロサラントなど飲食業と小売業の境目がなくなりつつある状況を考えると、まだまだ多くの機能が分化して専門特化し、それらをミックスした業態が生まれても不思議はない。
 これまで、食品ブティック、テーマパーク型ストア(SM)、アミューズメントパーク型ストア(SM)を提案してきたが、一つの可能性として二次機能をベースに専門特化した食品スーパー、Sp.SM(Specialty Supermarket)を提案したい。
 物を物としてしか売っていない現状は、商品の本来的価値を引き出しているとはいえず、生産者、流通業者、消費者のすべてが損をしているとしか思えない。
マーケット環境を考えてもWIN- WIN- WINの関係ができる業態を創り上げることが必要だろう。

データ分析に使えないデータ設定、システム???

データ分析をしようとしても、データが使えないという情報システムを使っている企業は多い。
昔、ベテランのシステムエンジニアに基本的に、どの業態も商品を仕入れて、在庫し、販売するだけであるし、もとになる情報も売価、原価、数量だから、まったく同じ標準的なシステムさえあれば、すべての業態、すべての企業が同じシステムを使うことができるのでは?と疑問を投げかけたことがある。
その時の彼の答えは、そんなことをしたら各企業からのカスタマイズがなくなるから、この業界の規模、システムエンジニアなどの人材を維持することができなくなるというものだった。
業界を支えるためのカスタマイズという彼の説明がどこまで本当かは分からないが、長年小売とかかわっていると必要と思われるデータはある程度限られていることが分かる。
したがって、情報システムもあれこれ変えずに基本的なものをスタンダードとして設定すれば、最低限必要なことはできるし、その方が安くてメンテナンスも楽なはずだが、なぜかどの企業もカスタマイズしたがる。
ところが、現状を見ると、使えない情報システムを使っている企業が実に多い。必要なデータ、欲しいデータが取れないというのはもちろんだが、それ以前にそもそも何が必要なデータなのかが分かっていないといった感じである。

基本的に数値は項目、単位、期間という3項目からなる。
項目は、売上、在庫、仕入の数量、金額が基本である。それに売価、原価、売価変更(値上・値下)・値入・粗利などの金額と率。客数(精算件数)・客単価・買上単価・買上点数、商品回転率や交叉比率、粗利率相乗積など、数値はいろいろあるがそれらは、売上、在庫、仕入、客数(精算件数)、買上点数など基本的な数値から算出することができるから、基となる数値は限られている。
知りたい情報も時系列変化、部門・ライン・クラスなど単位の系列で分解、統合して内訳や構成を見ることが中心だから、そんなに複雑で難しい処理も必要はない。
むしろ重要なのは商品構成であるが、残念なことにPOSのコード設計が元々事務処理であるため、単品の識別にしか使えない。
商品名、商品コード、JANコード、どれをとっても類似する商品を識別することは難しいから、商品が持つ特性のうち、どの特性が支持されて商品がよく売れているのか分からない。
例えば、チョコレートをタイプ別や成分別に売上(金額・数量・構成比)/在庫/仕入/値入/粗利/商品回転率などを見ようと思っても商品マスターを一つ一つチェックして集計しないと分からないから、そんなことに手間をかけて分析をすることはほとんど不可能といってもよい。
ビッグデータの時代でも、単品の識別は可能でも集計するためのフラッグがなければ肝心な集計ができない。ABC分析はできても様々な切り口での集計ができないデータでは、1つ1つ見るか、数百アイテムをまとめて合計として見ることしかできない。
例えば、週別に時系列でサイズ比率、色比率が変化することは分かるかもしれないが、色×サイズ別比率がどう変わるかはわからない、素材×デザイン、素材×デザイン×色×サイズなど、商品によって知りたい内容は異なるが、商品構成における最も重要な要素間の比率が分からない。

情報時代、データが重要と言いながら技術ばかり進歩しても肝心のデータ分析とは何か、データ分析のためにデータをどのように持てばよいかという最も基本的なことの理解がなければ、技術もシステムも生かせない。
そのことすら気づいていないとなると手のつけようがない。
本当の意味でデジタル化時代と言えるようになるには、実態を本質的に見直して変えていかなければならない。
データ分析からプログラミングまで一人でこなせるデータサイエンティストが必要とされるのも分かるような気がする。専門的なスーパーマンを養成するしかないが、まずは体制を整えることから始めるしかないのだろう。
対応が急がれる。

データ分析は地図を見るのと同じ。

データ分析は複雑で難しいというイメージが強く、数字アレルギーというように数字を見ただけで拒絶反応を示す人は多い。
一方、なんでも細かければ細かい方が良い、高度だと錯覚を起こしている人もいるから、データ分析に時間ばかりをとられてしまうことも多い。
重要なことは、デー分析の目的である。
「分析は目的にならない」「分析からは何も生まれない」というのは古くから言われてきたことであるが、流通関係の有名なコンサルタントから「POSデータは細かく見ているのだが、なかなか成果が上がらない」と相談を受けたことがある。
人はたくさんのデータを長い時間かけていじくりまわすと多くの場合、達成感、満足感を得ることができるが、それで成果が得られることはない。
分析の目的は、問題点・問題構造を見出し、修正の精度を高めることであるから、いくらたくさんの細かなデータに時間をかけて目を通しても、あるいはたくさんの表やグラフに表すなどしても、実態が変わらない限り、成果が得られることはない。
目的までのプロセスを考えれば、データ収集、分析はほんの前準備の一部に過ぎず、そこから得られた問題点・問題構造など認識できた問題に対して仮説を立て、適切な修正行動をとることが必要になる。
さらに修正行動は仮説にすぎないから、修正後の実績データを確認し、必要に応じて修正するというところまでが本来の分析のサイクルと考えるべきだろう。

そこでデータと分析の問題である。
データ分析は地図づくりと地図を使う行為とよく似ている。
地図は精度を要求するから、データは正確である必要はあるが、地図を見るときは大枠でしか見ることはない。それと同じでデータ分析も、もとになるデータは正確である必要はあるが、それと同じレベルで細かくデータなどを見ていたら、データ全体から見えるはずの問題点も見えなくなってしまう。
データ分析には一定のパターンがあるから、目的に応じて見方も変える必要がある。
全く状況がわからない時には、目的に関係する部分を絞り込みたいから、ウエイトの高い重点分野を確認する、あるいはとりあえず仮説によってデータを整理し関係ない部分を外していく。
関係のある部分がわかれば、データの変化に影響する要因や変化の仕方のクセを見出す。
地図でいえば、例えば主要道路、幹線など行くのに関係する大枠を絞り込み、その道路の状況や万が一の時の代替案などをあらかじめ用意することになる。

目的によって地図も見方は変わるが、目的地へ行く道を見るだけであれば細かく見ることはしない。同様にデータ分析も仮説を立て修正案の精度を高めるのが目的であれば、問題のポイントと修正点を絞り込むのに必要なところだけがわかればよい。
データそのものの精度は必要だが、データが細かい、多い、分析時間が長いことが必ずしも成果に結びつくわけではない。
重要なことは、いかに簡潔に問題点を絞り込み、迅速、かつ精度の高い修正が行えるかである。
地図を使いこなすのには実際の道路事情が分かっていることが大切であるように、商品・売場のデータ分析も商品・売場の実態を知っていると見え方が変わってくる。
データ分析も机上だけでは見えないことが多い。
もともとのデータが現場にあることを考えれば、帰納法的な視点が重要である。

データを使えば科学的か?

データを使えば科学的という錯覚がある。デジタルかが進み、様々なモノ・コトがデータ化されるビッグデータの時代にデータの意味を理解せず、鵜呑みにすることは危険である。
古くからブルーバックス(講談社)の「統計でウソをつく法」(ダレル・ハフ著 高木秀玄訳)のように統計によるウソを指摘する著書は多い。
データ、データ加工の前提を知っているか、知らないかが問題なのだが、正しく知れば便利なデータも分からないからとすべてを信用してしまえば騙される、勘違いして間違える危険性は高い。
学生に「カラスの話」をすることがある。カラスが飛ぶ高さ地上30mが高いか低いかと訊けばほとんどの学生が高い、あるいは低いと答える。
この時点ですべて間違えなのだが、数値で表示されるとなぜか正しいことのような錯覚を起こす。まして、これがGDPなど自分の知識を超えた経済の話や複雑な話になると「自分が分からいこと=すごいこと、それを話す人はすごい人」というような錯覚を起こす。
数値を使って人々を煙に巻き、自分の思うように扱うこともできてしまうから怖い。
前述のカラスの話の結論は、地上30mは事実であっても基準がないから高い、低いという判断が成り立たないというのが正解だが、誰もそのような訓練をされていないと事実データがあったとしても自分の感覚だけで判断してしまう。測定は科学的でも判断は実に旧態依然としており感覚に頼から、これでは高い精度の測定などいくらしても意味がない。

また、よくある間違いが平均に対する誤解である。
様々なデータを見るとき、そのデータがどのようにして求められたものなのかを省略してあるケースがある。
たとえば平均年齢50歳というと皆、あるいは多くの人が50歳(前後)であるような錯覚を起こす。しかし、100歳と0歳の平均は50歳だから実際には50歳の人が一人もいなくても平均年齢50歳がそのグループを代表する値となってしまう。
特定グループの年齢を代表して表す数値には、その他にも各人を年齢順に並べて真ん中の人の年齢を代表とする、あるいは最も人数の多い年齢をそのグループの年齢の代表とするなどがある。
また、どのような人たちのグループの平均をとっているのか、何人の平均をとっているのかなども重要になる。特定地域で住民の平均年齢を調べるのと、企業の社員、あるいは大学の学生寮で調べるのでは違って当たり前だし、人数によっても変わってくる。

平均だけでも、これだけあるわけだから、様々なデータが数値化されてくると、よほど数値の前提がわかっていないと判断を間違える。
POSデータなども、これしかないから仕方なく使っているが、単純に販売数量合計だけで見ていると取扱店舗数や取扱期間が違っていたり、初めから投入数量(売場在庫)が違っていたりなど、販売データに直接関係するような条件が全く違っていたなどということもある。

データが科学的かどうかというよりは、データをとる人、加工する人、見る人が科学的かどうかが問題になるということだろう。

小売業 データ活用のキモ、商品分類表は何のためにある⁉️

■使えない商品分類表
小売業に限らず、商品を取り扱う企業であれば、必ず商品分類表なるものをもっているはずである。
筆者もバイヤー時代に商品分類表の修正をやったことがあるが、商品分類という言葉から、どうしても商品を細かく分けていってしまう。
素材、デザイン、色、ブランド、….等々。素材も綿、ウール、ポリエステル、ナイロンなど素材成分もあれば、糸の種類、生地の織り方、表面加工、染め方・プリントの仕方など細かく見ていけばきりがない。
デザイン、色に関しても同様であり、正確に分類しようとすればするほど細かくなっていく。
一方、商品分類には情報システム上、必ず単位とコードがある。
部門、ライン、クラス、あるいは大分類、中分類、小分類などであるが、単位の数の桁数に合わせて、それぞれ0~9の数値が割り当てられるために、通常、最大で1つの単位は10まで、2桁使える場合には100までの分類が可能になる。

すべての間違いは、細かく分ける、10、あるいは100まで分けられるというこの2つの条件を前提に商品分類表を作ることによって引き起こされる。

商品分類表は、仕入から販売までのデータをまとめる入れ物の役割を果たす。
売上、仕入、在庫、値入、値下、粗利、…..等々、様々な項目について数量、金額、率などを集計する際の単位となるから、現実問題として、データを分析する際の単位、言い換えると計画する際の単位がどのようなものであることが最も実態をよく表し、また作業しやすいか、データを扱いやすいかという「使い方=目的」を重要視する必要がある。
かつて、ある企業は2,3年ごとに商品分類を変えていたため、長い間、昨年比を正確にとらえることができなかった。
また、別のケースでは、あまりにも細かく分けすぎたために、それぞれの分類単位の占める比率が細かすぎ、また作業も煩雑なために、まともにデータを分析することができなかった。
商品分類表を見れば、ある程度その企業のデータ活用のレベル、さらには情報システム(活用)に関する理解度のレベル、情報システムの完成度(業務とのマッチング)を知ることができる。
重要なことは、どれだけ多額の投資をしたかという情報システムの金額ではなく、実際に業務の精度を高めるためにどれだけ使いやすいか、有効活用できるかという効率や貢献度合いである。
データばかりたくさん取れてしまう時代になったが、その割にはデータとは何か、どう使うのがよいのかという最も基本的なことに関する理解は今一つ進んでいないように思える。
デジタル分野は急激に進化したが、現実とデジタルが持つ能力をつなぐ人間の頭、思考技術はまだ周回遅れにある。20世紀の遺物である情報システムや思考回路が残って幅を利かせていることを考えれば、進化は当分の間、遅々として進まないのだろう。
上野陽一先生ではないが「こうしちゃおられん」という気分である。

勉強って何?

テレビで中学受験を追いかけた番組企画を見る機会があった。また、勉強ができる子はどのような勉強の仕方をしているかなどの記事を目にすることも増えたような気がする。
勉強は教えるが、勉強の仕方は教えていないなどという記述を見ると、それでは、そもそも「勉強とは、いったい何だと解釈しているのだかろか?」と疑問に思ってしまう。
「勉強しろ」といっても「勉強の仕方」は教えない。「勉強の仕方を教えてないじゃないか」と疑問を呈している人が、実は「勉強とは何か」については触れずに、算数はこうして、英語はこうしてという標準作業の提案をしている。
これでは、いつまでたってもクリエイティブな子供など育つはずがない。
もし、テストの点を取りたければ、AIを用いている塾の方が合理的だろう。
テストの点は問題の範囲、傾向、解き方のテクニックなど、いくつかの要素に分けて分析し、取り組めば確実に上がることは分かっている。それを合理的に行うAIのプログラムも開発されて効果を上げている。
問題は、テストの点数が悪いとダメという決めつけ、勘違い、それ以前に「勉強とは何か」という最も基本的なことを明確にしない教育の構造とそれに気づかずにテストの点数、標準偏差値ばかりを追いかけている大人たちといったところだろうか。
どう考えても、もっとも重要な幼児期から小学校、中学校で「勉強とは何か?」ということが理解できていないから、教え方も教えている内容も違っているのだろう。
「勉強」は「いろいろなことに興味が持てるよう好奇心や観察力を養うこと」であるし、「モノ・コトを分かりやすくするための工夫」であるはずだが、どうも知識やテストの点を取ることと勘違いされる。
別に知識を否定しているのではなく、知識ならWeb上にたくさんあるから、それをコンピュータと競争しても始まらないことに早く気付くべきだと考えているだけである。
いわゆる賢い子は、知識の得方、記憶の仕方、論理の組み立て方などを工夫して、自分なりのパターン、法則を見出して使っている。
テストの点数の取り方=あるパターンの問題の解き方を覚えても使わなければすぐに忘れる。そんなことに大切な成長期の時間を費やすことなどもったいなくてしょうがない。
以前も別項に書いたが、義務教育、今の間違った教育体制を拒否する権利が必要である。
重要なことは、いろいろなモノ・コトに興味を持ち、観察して情報を得、それを工夫して理解しやすく整理する(法則性を見出す)能力=実技を身につけることである。
この能力は、状況が変わっても、表面的な知識が陳腐化しても活用できる。一定の範囲に限定されるが、よほどのことがない限り高い普遍性を持つ。
そのような能力を身につけるために、決して答えを与えず(質問によってヒントは与える)、自ら工夫して能力を開花する手伝いをすることが本来の「教育」のはずだが、今はそれを大きく外れて考える、工夫するというチャンスを奪ってしまっている。
少なくとも文盲率が高く、「読み・書き・そろばん」が重要だった時代のままが現在の教育というのでは、子供の可能性をはじめから否定しているのと同じである。

強い商品部組織をつくるための業務デザイン

◆強い商品部組織をつくるための業務デザイン
商品部組識のあり方、果たすべき機能について定説はなく、各企業の生い立ち、考え方、業態、企業規模、企業の成熟度合、仕入形態など、様々な条件により異なっている。
歴史的に見ても、人の移動に伴って様々な企業・業態のやり方が、人に付随する形で他の企業・業態に移植され、そこでまた独自の進化をするというように様々な考え方、手法、形態が交雑する形で出来上がっている。時として、MR(市場調査)、差益など、使う用語で出身企業が分かったように、それぞれの企業が独自の歴史、企業文化を持っており、それらが交雑すれば組織として一つのまとまったものが出来上がることは難しい。
したがって、多くの場合、業務/組識は、業務設計などの理論に基づいてアルベキ業務/組識が設計されたのではなく、 実践の中で交雑と修正を繰り返しながら現在の形に収束してきた。
組織を作ってきた人、組織の歴史、風土など様々な要因によって、様々な組識形態をとりながら流動的な運用が行われて来たというのが小売業の歴史である。
それらの状況が特に集約されて、顕著に表れているのが、商品部、販売部、店舗運営部などの営業部隊であり、部門構成や商品分類体系などの管理体系である。
しかし、様々なレベルにおける交雑の結果は、一つの思想、理論に基づく理路整然とした体系にはならない。いつの時代も課題としてあげられるのは、商品部と販売部の機能(役割)/責任分担、特に重要な役割を果たすと考えられる商品部の機能、業務の仕組み、手法、人材育成などである。
多くのチェーンストアにおいて商品部組識は、業界( メーカー、卸など )出身者によって形成されてきたという歴史がある。既にほとんどのチェーンストアでプロパー社員に入れ替わっているが、商品部組識にはこのような人達によって職人的、ブラックボックス的に運用されてきた名残がある。組織的、科学的なシステム(仕組)、技術・ノウハウではなく、個人の経験・ノウハウに依存している点である。したがって、いつになっても人材育成ができず、個人の人脈、センス・能力、モチベーションなどに頼る状況から抜け出せないでいる。
「販売技術」「商品構成技術」など、現場で行われてきたことを製造業のように「技術」として認識し、体系的にまとめてこなかった結果である。

一方、POSの導入によって商品登録・マスターメンテナンス、データ分析という煩雑な作業が加わり、さらに輸入商品などアイテム数の増加に伴い間接作業的業務は著しく増加している。さらにデータ分析が標準化されていないこともあって、個々人のスキルによってデータ活用のレベル、データ加工に要する時間も大きくばらついている。
既に、個人の能力だけで全てを処理できる状況にはなく、組織として、どのような機能を果たすべきか、そのためにデジタル技術をどのように活用し、どのような業務(仕組)/組織/システムによって対応すべきかが非常に重要になっている。
当然、これだけデータが増えた状況を考えれば、商品部/販売部組織内(あるいは外)にデータを一元管理し、意思決定を含む様々なレベルのマネジメントの精度を高めるためのサポート機能/専門部署が必要なことは言うまでもない。
ここでは、商品部組織に重点を絞っているが、MD(merchandising)全体を統括することを考えれば、商品部、販売部など組織を問わず、営業面を一元管理する全社の共通言語ともいうべき情報システムの構築は不可欠である。
*単にデータをストック、排出するだけの情報システムではなく、個別に2次加工、3次加工を施さなくても、意思決定にそのまま使えるように加工された帳票、グラフをアウトプットできる情報システムが必要である。
しかし、多くの企業でデータ量の多さ、情報量の多さこそが業務の精度を高めるという錯覚、勘違いがある。業務プロセスのそれぞれの段階で意思決定に必要な情報は限られるが、その区別なく、ソースデータに近い状態で全てをプールし、干し草の山から針を探すような作業を強いれば、時間などいくらあっても足りなくなる。しかも、データ活用については組織として明確な標準も定義も無く、業務は個々人のやり方に任せていれば、データのとり方、加工方法、活用方法もマチマチになるから組織としてのレベルは維持できない。
現実問題として、辞令が出ればその日からバイヤーとして業務に当たらなければならないが、標準化されない業務実態が商品部、バイヤーを混乱させているのは多くの企業に共通する事実である。
以前であれば、「仕事は自分で作るもの」「技術は盗むもの」などと言って済ませることもできたが、今はそのような時代ではない。
ディストリビューターもまた同様である。バイヤーとの棲み分け、補完関係など、役割分担は実に曖昧であり、ディストリビューターしての業務機能が明確に定義されているケースは少ない。
スーパーバイザーにいたっては、バイヤーやディストリビューターのような商品に関する権限もなく、店舖に関する権限も持たないケースがほとんどである。組織的にどう位置付けるかという問題がクリアできない限り、権限が曖昧な状態で各部署を回って頼みごとをするしかない。業務設計がなされていないと形骸化した非常に中途半端なポジションになってしまう。
いずれも、共通するのは組識・役職としてどのような機能を果たすのか・業務を行うのか、ということが曖昧なまま組織を作ってしまった結果である。
このような場合、結果として「任に当たる人」に仕事の組立てを依存するため,人によって業務内容、果たす機能、手法、ネゴシエーションなどが異なり組織的にも安定しないし、人が変われば継続できない。
◆業務設計
業務/組識設計の手法に業務機能分析、T(Task:課業、仕事)/R( Responsibility:責任部署 )マトリックスという手法がある。T/Rマトリックスは、業務機能分析により明らかになった業務機能をモレ、重複、偏りが無いように組識に割り付けるための手法である。
業務機能分析では、業務を目的的にとらえ、業務機能という観点から全体を体系化していく。必要となる業務機能を設計的にとらえるため、モレや重複がないように設定することができる。この業務機能の体系を基に機能的なモレ、弱体、重複などの問題点を発見し、改善していく。
このような考え方、手法を参考にして商品部組識の問題点とアルベキ姿を検討してみる。
規模にもよるが、組識的に未成熟・未分化な状況では必要と考えられる機能が曖昧であり、明確に業務/組識の中で位置づけられることは少ない。
図表-1 業務機能と役割分担では業務機能を大きく取引先関連、商品関連、新店・改装関連、販促・チラシ・POP関連、コンピュータ関連、データ分析関連、他部署関連、店舗指導関連というように8つのブロックに分け、さらに主要な業務機能60をリストアップしている。
責任部署・役職としては、商品部=マネージャー・バイヤー・業務担当、ディストリビューター部=マネージャー・ディストリビューター、スーパーバイザー部=マネージャー・スーパーバイザー、販売部=マネージャー・スタッフ、店舗=店長・マネージャーを設定している。
①このマトリックスを用いて業務機能を各部署・役職に割り付け、また実際の運用状況を確認する。
自社の考える業務、あるいは実態として行われている業務の中にモレや弱体(機能の達成レベルが低い)、重複(複数の部署が同じように行っている)、偏りなどがあるかどうかを確認する。
図表-1をヒナ型にして自社版を作成し、確認すると良いだろう。
②次に、自社の現状組識を考慮してどのような役割分担になっているのかを確認する。
もしも明確な業務の記述ができない(明確な業務機能を持っていない)部署があれば検討し、修正する。また、業務機能との対応が極端に少ない(漠然とした業務しかやっていない)、あるいは極端に多い(業務機能が一ヶ所に集まり過ぎているため実際には達成レベルが低いことが多い)部署があれば組織的な役割分担に問題があると考えられる。

◆組織のパターンとポイント
図表-2 組織的な組合せのパターンは商品部に関する基本的な組み合わせのパターンを示したものである。通常は、バイヤー(以下BY)、ディストリビューター(以下DB)、スーパーバイザー(以下SV)が一般的であるが商品部の事務的な業務の処理を考えて業務担当を加えている。
BYの担当範囲に定説はなく、ホームセンターなどでは一人で10,000SKU近くも持っているBYもいる。実際には取引先に依存せざるを得ないので、BYが独自の戦略に基づいてどこまで商品構成を行っているのかは定かではない。ただし、多ければ多いなりに商品を層別してグルーピングするクラシフィケーション(classification;商品特性の類似性によってまとめられた群管理)のような手法が有効であり、状況に応じた手法を使い分ける知恵が必要になる。
また、あまり細かく担当を分け過ぎても商品群間でスペース、在庫枠、仕入枠などを調整する自由度が小さくなり、バイイングがしづらくなる。
また、一人のバイヤーが複数の業態にまたがるバイイングを行うことも避けた方が望ましい。業態の違いを表現するための簡単なやり方として取引先をかえるという手法もあるが、同一バイヤーが同じ商品群について業態の違いによって複数の取引先を使い分けることは物理的に言っても難しい。
また、SVについてもコンビニエンスストアが一人のSVが担当する店舗が8から10店であることを考えると、ある程度商品の範囲を絞ったとしても同じぐらいの店舗数が望ましいだろう。1週間に5日、1日に2店舗ずつまわると必ず1週間に一回は全店をまわれることになる。
(1)パターン1;BYのみ
一番シンプルなパターンである。小規模な企業で機能的にも未分化な企業に向く。店舗数が少なく、本部コストをあまりかけられない場合、このような形態を取る。BYの人数も少なく、一人のBYが担当する商品の範囲は広い。
BYが果たす役割は大きく、全てを一部の人が動かしている。商品的には取引先に依存する部分が大きい。
(2)パターン2; BY+ 業務担当
パターン1のBY業務が煩雑になり、対応が難しくなってきた時に向く。業務担当がBYの秘書的な立場で商品登録などの事務処理を担当することでBYの負荷を軽減し、本来業務のウェイトを高めることが可能となる。ただし、パターン1とは本質的には変わらない。
(3)パターン3; BY+ DB
パターン2とは明らかに思想が異なる。パターン2が事務処理のために業務を置いたのに対し、DBを置く場合は、明確な機能を持たせることを前提としている。DBはあらゆる段階( 取引先から店舗 )での商品コントロール機能を前提とする。
従来、BYだけではできなかったような数値による客観的商品コントロールや投入パターンの設定などをDBが行うことで業務の精度が高まる。
(4)パターン4;BY + 業務担当 + DB
かなり組織的には機能分担が進んだ状況である。業務担当が事務的な処理を集中して行い、DBが店舗との対応を含めた商品コントロールに当たる。そうすることでBYは、取引先との対応、商品企画・開発など、より戦略的に動くことが可能になる。
(5)パターン5;BY + SV
パターン2,3と同じようであるが思想としては全く異なる。BYが商品の仕入、投入を担当し、SVが店舗の指導に当たる。ただし、対BY、対店舗という点で SV の権限の設定が難しい。SVの権限が無い状況ではパターン1のBYのみの状況と本質的に変わらない。
(6)パターン6;BY + 業務担当 + SV
この場合、店舗指導としてSVがいるためその分BYは業務担当に対してDB的な機能を要求しやすくなる。パターン4がどちらかと言えばBY,DBによる本部主導型であるのに対し、パターン6はより店舗に近い形であると考えられる。
(7)パターン7;BY + DB + SV
現在ある一番オーソドックスなパターンである。しかし、組識だけ分かれていて実際の運用では業務機能が曖昧であることが多く、BY,DB,SV間の機能分担は難しい。BYについては、商品の仕入を行うということで比較的業務機能としても明確であるが、DB,SVの果たす役割となると設定次第で変わってしまう。特にDB,SVに関しては業務機能が明確になっていないために失敗するケースが多い。やはり、組織図から入るのではなく、業務機能を明確にした上で組識に割り当てる必要がある。
(8)パターン8;BY + 業務担当 + DB + SV
通常はパターン7までであり、ここまで分化するケースは珍しい。ただし、BYの業務分析を行うと、POSの商品マスター登録・メンテナンス、チラシ原稿の作成、新店・改装に伴う陳列・販売応援など本来業務とは関係ない「作業」に費やされている時間が50%を超える場合すらある。このような場合、その分の人時を人数に換算して別の役職を作り、機能分担
をすることでより本来業務に集中できるので効率は上がる。ただし、組織的には細かく分かれれば分かれるほど調整が必要になり効率は落ちる。したがって、本来業務に集中できるメリットと機能分化したために発生する調整というデメリットのバランスをどこで見極めるかが重要になる。

◆まとめ
商品部組識は、個々のバイヤーやマネージャーが果たさなければならない業務機能が曖昧であることが多く、実際には個々の能力の範囲、自分流の考え方、やり方で業務が行われることが多い。チームMDも言われるようになっているが、それはプロジェクトを組むような大型の案件に限定される。
重要なことは、組識の形ではなく、そこで設定された業務機能が明確であり、モレや弱体、重複、偏りが無いことである。
また、意思決定プロセスにおけるデータ、情報活用など、共通言語としての手法の標準化も重要である。
現在のようにデータが溢れ、しかも変化の速い時代には、本来業務を的確に行える組織の方が強い。単なる思い付きのバイイングや機械的な作業の繰り返しではパフォーマンスのクオリティが低く、業務機能を確実に果たすことは難しい。
業務機能とそれを達成するための具体的な業務(仕組)/組識のバランスが取れた組織を実現することが必要である。

売場の数値分析-2 分析した後どうするのか⁉

◆なぜ、分析をするのか?、分析した後に、何を、どうするのか?

1.何故、分析をするのか、分析の目的によって使用するデータ、分析の仕方は変わる

分析の目的によって用いるデータ、加工の仕方=検討の仕方が変わるから、分析を行う際には、目的を明らかにしてスタートする必要がある

たとえば、来週以降の売上を予測することが目的であれば、過去数週間、および昨年、あるいは過去3年の同時期前後数週間の売上・客数・客単価、仕入、在庫など数値の推移、売上に影響を与えたと考えられる天候、自社・競合他社の販促などの周辺情報、売場のつくりや売場体制、在庫・仕入・粗利率など様々な情報を検討することで、売上変化の仕方(法則性)、売上に影響を与える要因と影響の仕方などを把握することができる。多くの情報は「モレがない」という意味では有効であるが、その中から特に重要と考えられる要因を特定することで予測の精度を高めることができるから、イタズラに多ければよいということにはならない。

もう少し、的を絞り、たとえば来週の発注をどうするのかについてアウトラインを整理するのであれば、過去数週間の商品構成・在庫構成、主要商品群の売上・在庫・仕入の状況(特に数量)、および過去の同時期における同様の情報、あるいは主要アイテムに関する同様の情報について整理する。
この場合、いずれも知りたいことは、対象となる商品やトータル売上の時系列推移であるから、商品の数量、および、部門、ライン、クラス、主要商品群などの売上金額を対象として、過去にはどのような時系列変化をしているのか、そのデータに影響を与えた要因、影響の仕方について確認できるような情報が必要になる。
一般的には折れ線グラフに結果のデータを整理した時間軸をベースにして、結果に影響を与えると考えられる要因を時間軸に関連付けて整理する。結果と要因との間に一定の因果関係が確認できれば、それを利用し、要因をコントロールすることで結果をコントロールすることが可能になる。
時間軸には、時点、期間、時系列があるが、この場合は時系列を用いる。

2.データがあるから分析をするという本末転倒なアプローチは難しい

たとえば、POSシステムのような元々システムの目的が様々な業務の効率化であり、商品構成の分析・改善を前提としていないシステムの場合には、データが取れるから、何かうまい具合に分析に活用できないかという発想で取り組むことになる。
しかし、POSシステムのベースにあるJANコードのコード構成を見ればわかるように、本来の目的は商品のSKU識別が目的であるから、一般的な商品構成の分析・改善に活用しようとしてもかなり無理がある。
JANコード標準タイプ(13桁)は、①GS1事業者コード(JAN企業コード 9桁または7桁)、②商品アイテムコード(3桁または5桁)、③チェックデジット(1桁)で構成されている。
何と言ってもJANコードを用いることで得られる最大のメリットは、納品伝票、送り状などの手書き、レジ精算における手入力が不要になったことである。
当初、アメリカではレジの不正防止が重要な目的とも言われていたが、人の手を介することなく自動入力する事務作業などの効率化が目的であるから、MD(マーチャンダイジング)は当初から重要な目的として考慮されていない。(日本ではOA:Office AutomationやFA;Factory Automationと語呂合わせでSA;Store Automationなどという言葉が使われたことで、POSによって自動で商品改善ができるような大きな勘違いが生じている。)

POSでは販売するたびにたくさんのデータが取れてしまうので、何か途轍もなく精度の高く高度な商品分析ができるような錯覚を起こしているが、データが多くてもデータが目的に合致となければ何の役にも立たない。たくさん取れるデータ活用として苦肉の策が、売れ筋把握や死に筋把握というものであるが、販売情報だけで在庫数やフェイス数、販促などについては分からないから、単純に各商品がパラレルな状態(相互に影響しあうことなど考慮できない)で売上の大小を比較してもあまり意味があるとは言えない。
実際にある食品スーパーで昼前後に鮮魚の売上点数が極端に減少し、その後夕方になって回復したことから買物が昼に途絶え、夕方に集中すると解釈していたが、客数や在庫がなくならない冷凍魚などのデータでは昼もそれほど売り上げは減少しておらず、よく調べてみたら、昼は売り上げが少ないからと補充されず、単に売場在庫がなかっただけといったこともあった。
欠品で売上ゼロなのか、在庫をたくさん抱えて売上がゼロなのかの違いは在庫を確認しない限り分からない。POSデータを鵜呑みにしたことによる勘違いは改善効果ではなく、間違った行動をつくり出してしまう。

また、商品アイテムに振られた3-5桁の通し番号では商品の識別はできるが、コードに意味を持たせることができなければただの数値の羅列であり、コーディングによるデータ活用を全て放棄してしまうことになる。大昔にあった3連タグでさえ、コードに意味を持たせることでどのような商品特性のグループが売れているのかという売れ方の特性を知ることができた。そのことを考えれば機械化し、データがたくさん取れるというだけで、マネジメントツールとしての機能は大きく後退している
3-5桁あれば、アパレルであればデザインやモチーフ、素材、ブランド、シリーズなど様々な分類情報を設定することができる。つまり、単品情報だけでは分からない様々な商品特性の情報を商品に持たせることができ、それによって売上のデザイン比率、素材比率などが曜日・時間帯など時系列でどのように変化しているかも知ることができる。しかし、POSのような単品識別コードによって何らかの商品特性による分類をしようとすれば、商品マスターに新たなコードを付加するなり、何らかの形でフラッグをつける必要がある。残念ながら、現在のJANコードの構成ではそれができないから、別枠で分類コードを持たせる必要がある。

結局、目的から入れば、データの持たせ方や集計の仕方、分析の仕方など全てが一貫して設計された状態にあり、分析後の対応もスムースに行くが、ただ単に商品に機械的に通しNO.でコードを振り、何らかのデータが取れたから、何かできないかというのでは、せっかくのデジタル技術の進歩も活かすことはできない。
とりあえず、データを取っておけばどうにかなる、データがあるから分析するという現在の情報システムの在り方では使えないものに多額の費用と労力を投入しているだけで終わる。
長年に渡るPOS、JANコードの歴史からはMDのマネジメントに有効な仕組みが何も生まれなかったことを考えれば、システムの設計思想(事務手続きなどオペレーション改善目的か商品構成・売り場づくりなどマネジメント目的か)とその活用に対する期待のミスマッチがどれほどのものかがよく分かる。
目的を明確にし、そのために必要な情報を整理することがなければ、ただいたずらに意味のないデータ、情報をたくさん垂れ流しているだけである。

3.分析後に状況をどう修正するのか
図表1は、ある企業の売場マネジャー用マニュアルに掲載されていたものをベースに筆者が修正を加えたものである。
売上、在庫、粗利に関して数値ではなく、単純化して〇、✖の8パターンに要約してある。これら8パータンについて想定される状況と検討内容、対応策さえ整理すれば、細かな数値にこだわることなく、基本的に売場で起こり数る状況の把握と対処がスムースに行われるようになる。

特に売場における数値分析では、その特性からポイントとなる注意点がある。
売場は常に変化しており、精度を求めて分析に時間をかけすぎると、その間に状況が変化してしまうことがあるから、迅速であることが求められる。
方向性さえ正しければ、精度よりもスピードが重要ということになる。

データが溢れるようになると、分析の精度をとやかく言う人もいるが、重要なことは、もともとあるデータが果たして目的に対応した適正なものであるか否かであり、そのような意味では前述のように売場にたくさんあるデータが必ずしも有効なデータとは言い切れない点を考慮する必要がある。
分析のための分析よりは、現状改善のための分析が適切に行えるようになるまでにはまだまだ時間がかかるのだろうが、デジタル化が進めば進むほど、本当の意味を理解しないままデータを振りかざす人、データに振り回される人が増えるのかもしれない。

攻めの発注、攻めの在庫管理

◆攻めの発注,攻めの在庫管理
技術が進歩し,さまざまなシステムが開発されることによって,売場の業務は便利になっている。これらの便利な道具を使いこなすことができれば,従来と比べてはるかに少ない投資で精度の高い業務が行えるはずである。しかし,一方では売場の人員が減り,パート・アルバイト化が進んだことで,売場における常識,基本項目の徹底が難しくなっているのも事実である。
ここでは,店舗における最も基本となる発注・在庫管理について,基本項目,および重点ポイントを改めて確認していく。(*すでに自動発注によって売場では発注しない、あるいはPOSデータや気象データなどのビッグデータ、AIを用いて発注を自動化することも技術的には難しくない時代になっている。しかし、発注をブラックボックスとしてその構造、メカニズムを現場の人間が全く知らないというのも困ったものである。)

1. 発注と在庫管理の基本の確認
1-1.在庫の意味・目的と在庫管理
(1)在庫の意味・目的
メーカーと違い,昔から小売業では『なぜ在庫が必要か?』ということを余り真剣に考えることはない。店を開くには店舗と商品が必要であり,『商品経営』という言葉があるように,どんな時でも商品在庫があることは当たり前であったからだろう。
しかし,EC(電子商取引)が普及し、個別店舗に在庫を持つことなく、商品販売を行う業態が一般化する今,改めて『なぜ在庫が必要か?』ということを見直すことで、発注や在庫管理を再考することも必要である。
在庫ゼロの生産システムとしては,トヨタのカンバン方式がジャスト・イン・タイムとしてよく知られている。
カンバン方式は,原材料・部品から完成品に至る総ての製造(社内外)を完全に同期化(タイミングを合わせる)することで中間にある仕掛かり在庫をなくす。しかし,製造途中で機械故障や不良品が発生し,計画通りに運営できなければ,複数の企業にまたがる製造ラインは止まり,多大な損害が生じる。少しでも,そのような可能性がある限り,損害を最小限に止めるために『トラブルが解消するまでの時間を凌げるだけの在庫』を各工程の中間に持つ必要がある(複数企業のまたがる場合は前工程にあたる企業が負担)。
通常,在庫の持つ機能(役割)は『欠品というトラブル=衝撃』に対する『クッションの役割=緩衝機能』というように説明される。
(2)小売業にとっての在庫・在庫管理
一方,小売業では『欠品』によって生じる衝撃はメーカーと違って目に見えにくい。多くの商品を扱い,しかも商品は時間と共に変化していく。例え商品の一部が一時的に欠品したとしても,そのうちに商品が入れ替わってしまったり,補充されたりするので,改めてお客に訊かれるまで誰も気が付かないということも珍しくない。

小売業における在庫と欠品の意味を整理すると,次のようになる。
メーカーが商品をつくるのには時間がかかるし,それを店舗に運ぶのにも時間がかかる。お客が『必要な商品』を『必要な時』に『必要な量』『適正な価格』で入手できるようにするためには,トヨタのカンバン方式のように,予めお客の要求を正確に予測して商品を手配するか,そうでなければ製造や輸送に要する時間,お客を待たせないだけの『在庫』を持つ必要がある。『お客が必要な商品を,必要な時,必要な量だけ,適正な価格で入手できるようにする』ことは,お店に買物に来るお客の要求を満足するために最低限必要となる条件である。
お客に対して満足感を与える度合いをお客に対するサービス・レベルという。サービス・レベルの中には,店舗がキレイであるとか,駐車場が何時でも待たずに入れる・停めやすい,あるいは,販売員が丁寧に応対する、…などということも含まれる。
もしも,お客が要求する商品がいつも欠品していれば,お客の得る満足度は低く,サービス・レベルは著しく低いということになる。このようなことが続けば,お客は他の店に行ってしまい,チャンス・ロス=売り逃しが発生するから,競合他社との差別化を図る上で重要な要件となる。
一方,いつ,どのような商品を,どのくらいの量,買いにくるか分からないお客に満足してもらうためには,たくさんの商品を仕入れ、在庫しておく必要がある。そのためには,たくさんの商品を置く広いスペースが必要であるし,商品を購入し,在庫するための莫大な資金も必要になる。しかし,広い売場にどんなにたくさんの商品を並べてみても,お客が必ずくるとは限らないし,商品も変化していくからお客の要求に100%応えることは不可能である。
したがって,お客に対するサービス・レベルを一定以上に保ちながら,なおかつ売場スペースや資金の効率(在庫という投資とそれによって得られる売上や利益のバランス)を考えた在庫の設定=在庫管理を的確に行っていく必要がある。

在庫管理では,一見相反するサービス・レベルと効率を上手くバランスさせる(トレード・オフ 取捨選択)ことが重要であり,そのためには,お客にとっての『必要な商品』『必要な時』『必要な量』『適正な価格』という『商品の売れ方(裏を返せばお客の買い方)』についてよく理解しておく必要がある。

1-2.発注の目的と発注手順
(1)発注の目的
発注は,商品の売れ行きに応じて,在庫する商品の入荷を決めるものであり,在庫管理を行う上でひじょうに重要な意味をもつ。
また、在庫と密接に関係する『発注』の意味・目的を考えると『発注とは,売場に必要な商品を,必要な時,必要な量,適正な価格で陳列・補充するための手続き』であり,『発注することによって,売上と在庫のバランスを一定に保つ』ことが目的である。したがって,発注商品,発注数量を決め,入力,送信することはあくまでも『発注』業務の手続きでしかなく,発注された商品が納品されたことを確認し,売場へ陳列・補充することで,はじめて発注の目的が達成される。
発注は,商品の売れ行きに応じて行う必要があり,発注の精度が悪いと売上と在庫のバランスが崩れて『欠品』や『過剰在庫』を引き起こす。
『欠品』や『過剰在庫』は,現象的には個々の商品の売上と在庫のバランスが崩れた状況を意味するが,それらが積み重なることで売場全体にさまざまな悪影響を及ぼす。

①欠品
欠品は,商品が『ない』状態を意味するが,『ない』状態にもさまざまなケースがある。
例えば,ⓐ商品は売場にないが,バックヤードにあり,品出しされていないケース,ⓑ商品が売場にもバックヤードにも全くないケース,ⓒ売場に商品はあるが,一定の基準量(最低在庫数量,あるいは最低陳列数量)を割り込んでいるケースなどである。
ⓐは,作業指示,作業スケジュールなどの問題が大きく,ⓑは売上予測や在庫設定,結果としての発注数量設定の問題によって発生する。いずれの場合も売場に商品がないということでは同じであり,チャンス・ロス(商品がないことで売上を上げる機会を逃す)が発生している。個々の商品で見れば,本来得られるはずの売上を逃しただけであるが,このような状況が繰返されることで,お客に対するサービス・レベルが低下し,店全体の客離れにつながる。
ⓒの場合は,次のような理由から欠品と見なす。
基本的に,たくさん商品があった方が売場で目立ち,購買意欲を刺激してよく売れる。売場に多少商品が残っていても最低陳列(在庫)数量を割り込んでしまうとボリューム感がなく,在庫がたくさんある状況よりも販売数量が減少する。販売数量が減少した分(実際には,実験などでデータを採り,そこから推測するしかない)をチャンス・ロスとみなせば,このような状況も欠品の一つのパターンということになる。
たとえば、刺身を買おうとした時、売場に2~3パックしか残っていないと、いかにも売れ残りのようであり、買うのを止めてしまう場合がある。このようなケースである
②過剰在庫
過剰在庫は,欠品とは逆に売上と在庫のバランスが崩れ,在庫が多すぎる状況である。
過剰在庫は,構造的に深刻な問題を数多く引き起こすことがよく知られている。
在庫が増えることで,売場に出ない商品がバックヤードに置かれ,商品鮮度が低下する。これらの商品が値下げにつながれば,荒利率の低下を招く。さらに,在庫が増えることで仕入が抑えられると,持っている在庫の内,よく売れる商品から在庫が減り,売れない商品ばかりがいつまでも残る。その結果、相対的に売れる商品の在庫比率が下がり,売れない商品の在庫比率が高まる。結局,全体的な在庫内容はさらに悪化し,売上、粗利まで低下する。
また,バックヤードに不良在庫が増えることで,ムダなハンドリング(物の取扱い)が増える。作業効率が低下するばかりでなく,商品在庫を確認する手間も増え,在庫を数え違えて余分に発注したり,逆に発注をもらすなど,発注の精度まで悪化する。
発注精度の悪さから生じた過剰在庫が,売上,荒利,作業効率の低下を招き,さらにめぐりめぐって,また発注精度を悪化させるという悪循環になると,抜け出すことが難しくなる。

(2)商品のタイプによる発注方法の違い
図表-1に示すように,商品にはさまざまなタイプがあり,タイプによって発注方法も異なる。ここでは,大きく定番商品(フェイス管理されている,フェイス管理しづらい),特売商品,チラシ商品,季節商品,日配商品,生鮮食品というように7つに分けて説明しているが,全体としては上の表のように,日配商品・生鮮食品のように日持ちせず,基本的にその日の内に売り切っていくような商品(在庫はゼロから2日分くらい)/在庫を持って販売していく商品というような在庫の持ち方,フェイス管理をして販売していく商品/大量陳列をして大量販売していく商品という販売方法,販売数量の変動が少ない商品/大きい商品という商品の売れ方の3つの切り口でパターンを分けることができる。
在庫の持ち方は,販売数量の変動の仕方,定番商品(フェイス管理)としての継続性,日持ち(D+α)≒在庫日数などの要素によって決まるので,その点に注意してパターン分けすると,それぞれの商品のもつ特徴が明確になり,発注,在庫管理上のポイントも分かりやすい。

(3)発注手順
上記の商品パターンの内,一般的な発注の流れを知る上で最も基本となるフェイス管理されている定番商品について,発注手順を整理すると図表-2のようになる。

① 販売数量の予測

発注する商品は,将来販売する商品であり,発注時点では,どの商品がいくつ売れるかということは分かっていない。したがって,発注数量を決めるためには,将来の販売数量を予測する必要がある。
発注の精度が欠品や過剰在庫を引き起こすので,販売数量を予測する際には,地域のイベント,過去の売上,発注実績,関連商品の販売動向などを参考にし,予測の精度を高めるように工夫する。
② 在庫数量の確認
発注数量を決めるためには,販売数量の予測と共に発注時点での在庫数量を確認する必要がある。特に,在庫が売場とバックヤードなど2ヶ所以上に分散している場合,在庫数量を数え違う場合が考えられるので,あらかじめ商品整理をし,売場に出る商品についてはなるべく品出しすることで商品をまとめ,在庫数量を確認しやすくする。

③ 発注数量の決定
基本的に発注数量は,販売数量予測と現在ある在庫数量,リードタイム(発注から納品までに要する時間)期間中の販売数量予測から算出する。
ただし,商品のタイプにより,発注の仕方が異なるため,詳細は,別項で説明する。
④ 納品確認と品出し
発注は,売場に商品が陳列されてはじめて目的が達成される。したがって,発注業務は,発注後の納品確認,売場への品出しまでの一連のサイクルとしてとらえる必要がある。

1-3.補充発注とOTB( Open To Buy )
前項に示したように,発注には大きく分けて2つのタイプある。
フェイス管理されている定番商品を対象とした補充発注,販売数量の変動が大きく,フェイス管理しづらい定番商品や季節商品などを対象としたOTB( Open To Buy )である。

(1)補充発注
補充発注の対象となる商品は,比較的販売数量の変動が小さな商品が多く,図表-3に示すように欠品を予防するための安全在庫数量(これが最低在庫数量)と最大在庫数量を設定した上で運営する。
この範囲内で在庫をコントロールすることで欠品と過剰在庫を予防する。
基本的に,発注数量の算出は,発注時点の在庫数量からリードタイム期間中に売れると予測される販売数量を引き,納品時点の在庫数量を算出する。この在庫数量と最大在庫数量との差が発注数量となる。
したがって,発注時点での販売予測と販売実績の差が生じれば,そのまま納品時点での在庫数量と最大在庫数量の差となって現れる。
在庫水準を下げ,発注時点における販売予測の精度を高めるために,リードタイムを短縮する仕組みづくりが盛んに行われている。しかし,一方では,年間で見ると,どんなに販売数量の変動が少ない商品でも週販数量で上下2倍以上の差があり,厳密に見た場合,現在用いている安全在庫数量,最大在庫数量という在庫基準自体が適正なものであるか否かという問題が残る。長年放置されている難しい問題であり,できる限り単純化して対応しているのが現状である。

(2) OTB( Open To Buy )
①OTB
OTBは,一般に仕入枠(発注)を管理することで,在庫をコントロールするための手法と説明されている。しかし,実際に使ってみると,仕入(発注)を増減する目的は『売上と在庫の関係をバランスよく維持する』ためであり,必ずしも在庫だけをコントロールしているわけではない。売上と在庫の関係が調和して変化していくように,売上の増減を在庫がうまくリードする。そのような状況を陰で演出すのが,仕入ということになる。
OTBは,金額をベースにして行う場合と数量をベースにして行う場合がある。
店,部門,大分類など単位が大きな場合には金額ベースで行い,中分類,小分類,アイテム・SKUというように対象とする単位が小さい場合には数量ベースを用いるなど単位の大きさによって使い分けるとよい。
ここでは,発注を前提としているので数量をベースにして説明をする。
②OTBのやり方
OTBは,季節商品など販売数量の変動が大きい商品で,在庫をある程度持つ商品を対象として用いる。売上ピーク時の欠品防止やピーク後の在庫の切り上げを上手く行うために用いると有効である。
OTBでは,商品を仕入れて販売し,残ったのが在庫というように,在庫を結果として捉えることはしない。
まず,はじめに売上計画ありきであり,在庫は商品を売るためにどれだけ商品を持つ必要があるか,という観点から設定する。仕入計画は,あくまでも売上計画と在庫計画から算出される結果でしかない。
OTB計画の作成手順は,図表-4(a)に示すように,売上計画の立案,売上を達成するために必要となる在庫計画の立案,仕入計画(仕入枠)の算出,という手順で行なう。
実際には,図表-4(b)に示すように売上実績が計画とずれてくるので,それに伴って仕入計画や在庫計画も修正しないと在庫は売上計画/実績の差異に応じて増減する。
この差異は,計画を修正しない限り,事例のように累積して膨らみ,最後には取り返しがつかなくなる。
事例では,売上実績が計画を大きく超えているにもかかわらず,仕入は計画通りに行っている。結果として在庫実績は減り続け,最後には売上の低下を招くことが予測される。逆に,売上実績が計画を割り続けている場合には,仕入を計画通りに行えば,在庫は増え続けていくことになる。
このように売上実績が当初の計画と大きくずれ込んだ場合,単に仕入計画を増減させることで在庫実績だけを当初の計画と合わせてみても,売上と在庫のバランス=商品回転率は当初の設定とは変わってしまう。したがって,単に仕入を修正するだけではなく,必要に応じて在庫計画も売上とバランスがとれるように修正する必要がある。
修正は,売上が変化したのと同じ比率で在庫計画を増減するようにすれば,商品回転率が当初計画と同じになる。あとは,このようにして計算上求めた在庫計画が売場スペースや売場作業から考えて実際的であるか否かを判断し,必要に応じて修正していく。売上が計画以上に好調であれば,商品回転率をより高めるように手を加えたり,逆の場合には,多少効率は落ちるが在庫の減らし方を押さえたりする。
これらの関係を整理したのが図表-4(c)である。
OTBを行う上で重要なことは, OTBの計画を立て,計画表に実績を埋め込んでいくことではなく,売上と在庫のバランスが時間と共に変化していく様子を計画という基準と照らし合わせて確認し,実際の売場運営の中で売上と在庫のバランスを維持し続けるように絶えず調整していくことである。
③売上/在庫/仕入の関係とOTBによるバランスの調整
図表-4(d)は,時系列で変化する売上/在庫/仕入の関係を整理したものである。
当月(週)と翌月(週)の売上を比べた場合,当月(週)よりも翌月(週)の方が,売上が高い(↗),同じ(→),低い(↘)の3つのケースが考えられる。
それぞれの場合について在庫の持ち方を考えると,もしも売上が伸びるのであれば当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を増やし,売上が変わらないのであれば当月(週)初在庫と当月(週)末在庫を同じに,売上が減るのであれば当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を減らせばよい。
その時の売上と仕入の関係は,当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を増やすのであれば,売上よりも仕入を増やし,当月(週)初在庫と当月(週)末在庫が同じであれば,売上と仕入を同じにし,当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を減らすのであれば,売上より仕入を減らせばよい。
このように,売上の変化に応じて在庫を設定していけば自ずと仕入は決まってくる。
重要なことは,売上の変化をどのように想定するかであり,その時の在庫の持ち方をどのように設定するかである。

1-4.在庫数量の決め方と発注数量の決め方
在庫数量の決め方には,いろいろなやり方があり,絶対的な方法はない。先に述べたようにどんなに厳密な計算式を用いて算出したとしても,時間と共に変化する多種多様な商品総てについて検証することは不可能である。したがって,通常は,平均販売数量とリードタイム期間中の販売予測数量に単純な係数をかけて安全在庫数量と最大在庫数量を算出する場合が多い。
ここでは,比較的販売数量の変動が少ない,フェイス管理された定番商品を中心に説明する。
(1) 平均販売数量の算出
① 平均値とバラツキ
安全在庫数量と最大在庫数量を算出するためには,平均日販数量,あるいは平均週販数量を算出する。ただし,場合によっては単純に平均値を求めただけでは難しいケースもある。
例えば,図表-5(a)に示すように商品A,B,C,Dの販売数量が推移した場合,総ての商品の平均値は同じ15である。しかし,図表-5(b)のグラフのように整理してみると,平均値は同じでも,販売数量のバラツキ方に大きな違いがあることがよく分かる。
商品Aは一番バラツキが小さく,13から19と総ての値が平均値15の近くに集中している。バラツキの大きい商品Cは2から50,商品Dは0から42と販売数量の分布する幅(差=最大値-最小値)が広く,しかも計算上の平均値が15であるにもかかわらず,実際に15近辺の販売数量を示すことはほとんどない。
このように,平均値だけでは商品が売れている様子を正確に捉えることは難しい。
したがって,在庫基準を設定する際には,図表-5(a)に示すように販売数量の平均値だけではなく,最大値,最小値,幅(差)を捉えておくとよい。さらに正確に状況を捉えようとすれば,図表-5(b)のようなグラフを作成する(実際に総ての商品についてやることは不可能であるので,代表的な商品だけでも,そのような形で捉えておくとよい)。
バラツキの大きい商品の場合,単純に販売数量の平均値を算出し,それに係数を掛けて安全在庫数量や最大在庫数量を算出しても欠品を起こす可能性がある。
曜日による特性などを捉え,より実態にあった在庫の設定をする必要がある。

② 平均日販数量/平均週販数量
平均日販数量を求めるのは,発注,納品が毎日,あるいは隔日(月水金,火木土)の場合である。平均値を算出するには,算出した数値が図表-5の事例のように無意味な数値にならないよう,土日やチラシの立ち上がりの曜日などは別に集計する必要がある。
平均週販数量を算出して用いるのは,発注が週1から2回の場合である。この場合には曜日による変動を見る必要がないが,月の上旬/中旬/下旬,あるいは第1週,第2週,…という変化を見ておく必要がある。また,祭日が入る場合,地域の行事が入る場合など通常とは異なる場合には,その分を考慮して取り扱う必要がある。

(2) 安全在庫数量と最大在庫数量の算出
隔日発注(例えば月水金),隔日納品(例えば火木土)の場合で考えると,リードタイムは1日,週3回発注のため1回の発注は2日分の売上をカバーする。
金曜発注は,土日月(+火;納品時間が開店前なら不要,夕方の場合は火曜分まで)分の発注が必要になる。
図表-5に示した商品Aは,土日やチラシの初日でもバラツキが少なく,平均値15に対して13から19の間でしか変化していない。このようにバラツキが少ない場合,販売数量の平均値をそのまま用いても問題はなく,安全在庫数量と最大在庫数量はもっとも単純な形で算出することができる。
販売数量が安定している事を前提とすると,2日に1回の発注,リードタイムが1日であるから,通常であれば平均日販数量の1日分15を安全在庫数量,最大在庫数量は3日分(安全在庫数量1日分+1回の発注2日分),45と設定することができる。
ただし,土曜納品時点では,前述のように土日月(+火;納品時間が開店前なら不要,夕方の場合は火曜分まで)までの分が加わり,瞬間的に80から90まで増加する。
難しいのは,商品Cや商品Dである。平日は全く売れていないが,チラシの初日や土日に集中して販売数量が増えており,平均日販数量15は全く意味を持たない。
厳密には,月火水金と木土日を分けて考え,別々に安全在庫数量と最大在庫数量を設定することが必要であるが,作業の手間を考えれば大きい方の値を基準にする方が実際的である。商品Cでは,安全在庫数量を木土の販売数量の25,最大在庫数量は多少多めに感じるかもしれないが,土日の最大販売数量(25+50)+月火の販売数量(土日は発注がなく,月曜発注,火曜納品)10+安全在庫数量25の110という値になる。
ただし,週の内,土曜納品時点の値であり,土日月火の販売数量25+50+5+5=85を引くと火曜納品時点では25と(安全在庫数量)という数値になる。

(3) 発注数量の算出
発注数量は,最大在庫数量-発注時点在庫数量+リードタイム期間中販売予測数量で求めることができる。
図表-5の商品Aの場合であれば,45-15(ここでは安全在庫数量と設定した数値)+15=30(ほぼ2日分の販売数量)が発注数量となる。販売数量が安定しているため,安全在庫数量をベースとして売れた数量だけ発注するという形になる。
商品Cでは,110-25(ここでは安全在庫数量と設定した数値)+5(平日の販売数量)
=90(月曜発注,火曜納品)となるが,実際には週の前半は木曜の売上に備えて30ぐらい在庫を持てば十分である。在庫を積み込むのは水曜発注,木曜納品からであり,金曜発注,土曜納品と合わせて土日分の在庫を積み増していけばよい。

2. 発注と在庫管理の実際 年末年始の状況とモレなく販売するためのポイント
年末年始に向け,発注・在庫管理のポイントを整理していくと次のようになる。
(1)売れ方による商品のタイプと特徴
商品の売れ方を見ていくと,いろいろなタイプがある。
季節的に売れる商品,地域行事や生活歳時によって売れる商品,気候に敏感に反応する商品,年間を通して安定して売れる商品,平日に売れる商品,土日祭日によく売れる商品,チラシに掲載するとよく売れる商品,エンドや平台で大量陳列するとよく売れる商品,客数に比例して売上が増減する商品,….などである。
また,フェイスが固定されず,売場づくりや売り方を工夫することで売上を伸ばせる『売り込み型の商品』,定番的に扱い,売場づくりや売り方を変えられない『待ち型の商品』というような分け方もできる。(図表-6 売れ方による商品のパターン ) *PDF表示

通常,年末年始になると重点商品の設定を行い,特定の商品について集中的に販売する。ギフト関連商品,大掃除関連商品,クリスマス関連商品,正月関連商品などである。難しいのは,特定の商品を大量に山積みすることはできても,それ以外の商品については逆に対応がおろそかになる点である。
年末年始に設定する重点商品は,季節や生活歳時によって売れる商品ばかりであり,『売り込み型の商品』が中心である。以前と比べれば集中して売れることが少なくなってはいるが,売場づくりの中では,いまだに圧倒的なウエイトを占めている。
モレやすいのは,客数に比例して売上が増減する商品の内,フェイス管理されている定番商品=待ち型の商品である。住居関連商品では日用品・家庭用品,食品では,生鮮食品,日配商品,菓子,調味料などにそのような商品がある。
フェイス管理されている定番商品=待ち型の商品は,客数が増えることで確実に売上が増すが,フェイスを拡大し,在庫数量を増やすことは難しい。通常時と同じ最大在庫数量であるケースがほとんどである。
年末年始という時期にどうしても避けたいのは,『売り込み型の商品』と『待ち型の商品』の特徴をよく理解せずに『売り込み型の商品』であるにもかかわらず,『待ち型の商品』のような対応をしてしまうことである。ただ商品を売場に積み上げてPOPを付けるだけで,お客に対して何も働きかけをしないのでは,大きな販売チャンスを逃してしまう。
『売り込み型の商品』は,商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方などを工夫することで売上数量は変化し,状況次第では前年実績など全く参考にならないほど大きな変化を示すこともある。自分たちの工夫次第で如何様にも攻めることができる商品である。一方,『待ち型の商品』は,欠品を予防し,売上のモレを防ぐ守り型の対応になる。
それぞれの特徴をよく知り,的確な対応を採ることが重要である。
(2)OTBによる販売計画の立案と商品在庫の積み込み
①『売り込み型の商品』
生鮮食品,惣菜,日配商品,グロサリー,日用品・家庭用品,家電消耗品など大量陳列をし,集中販売をする商品は,商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方などによって売上が大きく変わる『売り込み型の商品』である。
これらの商品は,発注も在庫管理も総てが販売計画次第で変わってしまう。
OTBで説明した売上計画とその計画を実現するためにどのような商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制を採るかという具体化案である。
例え,昨年の実績が100しかない商品があったとしても,それは昨年の商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制などの結果であり,今年500という目標を設定し,そのための商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制が設定できれば実現する可能性がゼロというわけではない。
過去の経験からいっても,商品に対する対応を変えることで前年実績の数倍の売上を実現しているケースは珍しくはない。問題があるとすれば,選定する商品の適否(適しているのはマーケットサイズが大きい商品で,それまで自店では本格的に取り組んだことがないような商品,難しいのはマーケットサイズが小さい商品・買う人が限定されている商品)と商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制,売上の内容に応じた売場づくりや売り方,在庫内容の修正など技術的・管理的な問題,そしてどこまで本気になって取り組めるかという意欲の問題である。
もちろん,前年実績を大きく上回る目標を設定するのであれば,予め悲観値(売れなかった場合)・普通値(計画通り)・楽観値(売れすぎた場合)という3点見積もりをしておくことは必要である。目標を達成するための具体策を厳密に検討することはもちろんであるが,売れなかった場合の在庫の処理方法,売れ過ぎた場合の商品手配方法についても綿密にシミュレーションをし,あらかじめ対応策の検討と関連部署・取引先などの了解を取りつけておくことは欠かせない。
年が開ければ,持ち越した在庫は大きな負担となる。しかし,リスクを恐れて何もしなければ前年実績などクリアーできるはずはない。以前,『去年と同じことをしていれば前年比90%』と言われていた時期があるが,現状は,その時よりも確実に悪化している。
したがって,在庫設定や発注をするにも,まずは『売上計画ありき』であり,『売り込み型の商品』について言えば,総ては『売上計画』とそれを実現するための具体化案次第と言うことができる。
②『待ち型の商品』
待ち型の商品については,客数の増加に伴う販売数量の変化をOTBによってシミュレーションすることで,通常に比べてどのくらい多くの在庫を持つ必要があるかを知ることができる。
難しいのは,補充発注に慣れているために,売場のフェイスが満杯である商品を,さらに追加して発注するということが感覚的になじめないことである。誰でも計算してみればすぐに分かることであるが,売場で商品だけを見て発注することに慣れてしまっているとなかなか難しい。
以前と比べれば物流もだいぶ改善されているが,それでも年末年始を考えると,商品によっては通常の2倍から3倍,中には5倍もの発注をしなければならないケースが出てくる。
以前,あるホームセンターで年末年始の発注とそれに伴う作業量の増加をOTBによってシミュレーションしたことがある。それまでの売上推移で12月も売上が推移すると設定して計算すると,12月の最終発注には,通常発注の5から6倍の発注が必要になるという計算結果が出た。発注,荷受,検品,倉庫への格納,品だしなど,どれを採ってもそのような対応は物理的にも不可能という結論になり,11月中旬から定番商品を中心に在庫の積み増しを行っていった。
その時にも問題になったのが,フェイスが満杯である商品の追加発注である。心理的な問題だけではなく,物理的にも置く場所がないという問題が出てくる。
現状で,最も簡単と考えられる対応策は,販売数量が極端に少ない商品,他の商品で代替が利く商品,もともと類似商品が多く定番として不要な商品などを定番からカットし,その分を重点商品のフェイス拡大に当てることである。フェイスを拡大することで最大在庫量を増やすことができ,発注や補充の手間も少なくなるので忙しい年末年始には適した方法である。しかも,よく売れる商品ばかりであるから多少残ったとしても在庫に関するリスクは少なく,年が明けても十分対応が利く。
ここで問題があるとすれば,カット商品の処理,および手間と時間をかけてまでフェイス変更をするというように踏み切れるかどうかという点である。
いずれにせよ,小売業は人と同じことをしていたのでは,それ以上の結果を出すことは難しい。ある有名企業の取締役が,『うちも水鳥と一緒で見えないところでは一生懸命に足で水かいているのですよ』としみじみ語っていたことを思い出す。
何事も楽をしてよい結果を得ることは難しい。このような時期であるからこそ,本来やるべきことでできていないことがあれば真剣に取り組むべきであろう。

販売計画&商品計画の立て方と在庫管理

◆営業計画&商品計画の立て方と在庫管理技術
1. 基本的な理解
1-1. 売上とは何か?粗利とは何か?
多くの場合,結果としての売上・粗利を重要視するが,それらをコントロールするまでにはなかなか行きつけない。売上・粗利はあくまでも結果であり,結果を確実なものにするためには,技術やノウハウと同時にそれを使いこなす知恵と地道な努力が必要である。
現在は,昨年実績を維持することが一つの目標になっている。中には,はじめから昨年実績割れの目標を設定するケースも珍しくなくない。しかし,はじめから低い目標を設定したのでは,それ以上の実績を挙げることは難しい。
そもそも『売上とは何か?』という明確な認識がなければ,売上をコントロールするという発想は持てないだろう。
売上は一つ一つの商品が売れた結果であるから,欠品すれば下がるし,売れない商品ばかりでも下がる。買上単価が下がっても下がるし,買上数量が減っても下がる。
売上が下がる理由は分かっても,さまざまな状況に応じて売上を上げる方法を探すことは意外と難しい。我々の仕事は,発注作業や補充作業ではなく,売上,利益を上げることである。売上低下を予防し,売上を上げる仕組みや方策を持つためには,まず売上がどのようにしてつくられるのか,という構造を理解する必要がある。
図表-1は,売上,粗利を目的として,どのような数値が関連しているのかを3つの側面から整理したものである。

(1)単位の分解と合成   店-部門-大分類―中分類-…
売上,粗利,在庫,…,何にでも使える方法である。もともと売上,粗利,在庫などの数値は一つ一つの商品が集まったものであるから,状況を詳しく知るには,逆に単位を細かく分けていけばよい。ある程度細かな単位まで販売計画をつくっておけば,計画とのズレが生じたとしても問題の発生個所を特定することは容易である。
ただし,何の工夫も戦略的発想もない,単純な昨年実績発想には問題がある。

図表-2は,筆者が開発したMPM(Merchandising Portfolio Management)と呼ぶ手法である。縦軸に売上伸び率,横軸に粗利率をとり,円は個々の部門の売上規模を表している。中央の太い線は,縦が店計の粗利率,横が店計の売上伸び率であり,全体を4つのエリアに区切っている。右上第Ⅰ象限は,売上伸び率,粗利率ともに店計よりも高い部門である。左上第Ⅱ象限は,店計よりも売上伸び率が高く,粗利率の低い部門。左下第Ⅲ象限は,売上伸び率,粗利率ともに店計よりも低い部門。右下第Ⅳ象限は,店計よりも売上伸び率が低く,粗利率の高い部門である。
MPMを見ると,売上規模,売上伸び率,粗利率のバラバラな部門が集まって店計の売上,粗利率ができ上がっていることがよくわかる。単位を一つ下げ,部門と中分類で作成してもまったく同様である。これが店計の売上や粗利率の構造である。
これだけ数値的にバラバラで,しかもそれぞれの状況や特性が異なる部門が一律に売上,粗利率を伸ばすことなどありえないということは容易に理解できるだろう。
もし,図表-2の店舗がこのまま推移すれば,粗利率の低い部門の(伸び率が高いために)売上構成比が上昇し,店計の粗利率を引き下げることは容易に想像できる。
個々の部門の状況を踏まえ,売上構成比を意図的に変える以外に店計の売上,粗利率を改善することはできない。売上,粗利率を変えることは売上構成比を変えること,と言い換えてもよいだろう。

(2)客数×客単価  客単価=買上単価×買上数量
客数はレジの清算件数,客単価は清算件数1件当りの平均買上金額である。客単価はさらに買上単価と一人当たりの買上点数に分けてとらえることができる。
図表-3は,買上単価や買上点数を上げるための具体的な方策を展開したものである。
この下のレベルまで落とし込むと具体的な業務が見えてくる。例えば,『バンドル販売を強化する』ためには,対象とする商品,価格,バンドル販売を始める時期などを決めることが必要になる。もしも,現在の業務がこれらの数値と関連なく行われていたとすれば,どんなに忙しい思いをしても数値に反映されることはない。
『買上単価』に影響するのは『商品構成』,『買上点数』に影響するのは『売り方』であるから,客単価は『商品構成』と『売り方』に関する工夫と努力の結果と見ることができる。
一方,客数は『絶対客数を増やす』ことと『リピート率を上げる』ことによって増やすことができる。『絶対客数』とは,店に買い物に来てレジを通過する人である。1万人の商圏人口のうち,自店で買い物をする人が2000人いれば,『絶対客数』は2000人である。
同じ人が繰り返し自店に来るのがリピート率である。例えば,2000人が1週間に1回自店で買い物をし,その内の1000人は週2回自店で買い物をする。さらに500人は週3回自店で買い物をし,100人は週4回自店で買い物をしたとする。1週間の客数は2000人+1000人+500人+100人=3600人となり,2000人の絶対客数が1週間に平均して1.8回買い物をしたことになる。これが『リピート率』である。
『絶対客数』は,立地条件,商圏人口,競合状況,店舗施設,駐車台数など企業・店舗ではコントロールしづらい要素とチラシ・販売促進など企業・店舗である程度コントロール可能な要素の組合せで決まる。
『リピート率』は,『また来たい』と思えるかどうかで決まるから,交通のアクセス,併設する施設,駐車場のとめやすさなど店舗施設としての利便性と店の雰囲気,商品構成・価格,買いやすさ,サービスなど『買い物する場』としての店の快適性,有用性などによって決まる。絶対客数よりもリピート率の方が店の工夫と努力で決まる要素が多いと考えてよいだろう。いずれにせよ,自店でコントロールできる項目とできない項目を明確にした上で,優先順位をつけて取り組む必要がある。

(3)売上,在庫,仕入れの関係
最も重要な項目であるが,残念なことにあまり馴染みがないのが『売上』『在庫』『仕入』の関係である。ここでは,売上とは何か,在庫とは何か,仕入とは何か,という最も基本的なことを中心に確認する。
『売上』『在庫』『仕入』に関する考え方には,大きく分けて2つある。
一つは,仕入れて売った結果,残ったのが在庫という考え方であり,もう一つは,売上をつくるために必要となる在庫を設定し,不足する商品を仕入れるという考え方である。
ここでは後者の考え方を採る。したがって,在庫は売上を上げるための手段であり,仕入は売上と在庫のバランスをとる調整機能を果たす。
例えば,100万円の売上を粗利率30%でつくるのと300万円の売上を粗利率15%でつくるのでは在庫の持ち方が変わる。目的である売上,粗利率が変われば手段である在庫が変わることになる。100万円の売上をつくるために300万円の在庫を持つ必要があったと仮定して,売上が計画よりも30万円低かった場合,計画通りに仕入を起こせば在庫は30万円オーバーする。逆に売上が30万円計画をオーバーした場合,計画通りに仕入を起こせば在庫は30万円不足する。このような売上の変化を『仕入を増減する』ことで吸収し,売上と在庫のバランスをとるのが仕入の役割である。

1-2. OTB(Open To Buy)  仕入による売上/在庫のバランス調整
(1) OTB(Open To Buy)
OTBは,通常仕入れ枠管理によって在庫管理をする手法として説明されることが多い。
しかし,実際に使ってみると仕入枠によって在庫管理をすると言うよりは,前項で説明したように『売上』『在庫』のバランスを『仕入』によって調整すると言った方が適している。OTBは,状況に応じて数量ベース,金額ベース,あるいはその両方で行う場合がある。
季節商品など販売数量の変動が大きく,販売数量に合わせて在庫数量をコントロールする必要があるような場合には数量ベースでとらえるとよい。売上ピーク時の欠品防止やピーク後の在庫の切り上げを上手く行うことができる。合わせて金額ベースでも押さえることができれば,さらに状況変化をとらえやすくなるだろう。
一方,店や部門など大きな単位を対象とする場合には,種々雑多な商品が混在するために数量ベースでとらえる意味はあまりない。予算管理と連動して数値を把握しやすいこともあり,金額ベースで行う。予算達成のため,売場運営がスムーズに行くように売上,在庫のバランスを仕入によってコントロールする。
図表-4(a)は, OTBの手順を示したものである。
『まず,はじめに売上計画ありき』である。在庫計画は売上計画を達成するためにどれだけの商品を持つ必要があるか,という観点から設定する。仕入計画は,あくまでも売上計画と在庫計画から算出される結果でしかない。
OTB計画の作成手順は,売上計画の立案,売上を達成するために必要となる在庫計画の立案,仕入計画(仕入枠)の算出,という手順で行なう。
実際には,図表-4(b)のように売上計画と実績がずれるので,それに合わせて仕入計画,在庫計画を修正する必要がある。仕入を計画通りに進めてしまうと在庫実績は売上計画と実績の差異に応じて増減する。
この差異は,計画を修正しない限り,事例のように累積して膨らみ,最後には取り返しがつかなくなる。事例では,売上実績が計画を大きく上回っているにもかかわらず,計画通りに仕入を行っている。結果として在庫実績は減り続け,最後には売上の低下を招くまでに減ってしまう。逆に,売上実績が計画を割り続けている場合には,仕入を計画通りに行えば,在庫は増え続けていくことになる。
売上実績が当初の計画と大きくずれ込んだ場合,単に仕入を増減させて在庫実績だけを計画と合わせてみても,売上と在庫のバランス=商品回転率を維持することはできない。仕入計画を修正するだけではなく,必要に応じて売上計画,在庫計画も売上実績を基にして修正する必要がある。
売上の計画/実績と同じ比率で在庫計画を増減すれば,商品回転率は当初計画と同じになる。算出した数値が売場スペースや売場作業などから考えて実際的であるか否かを判断し,実情に合うように修正して新たな在庫計画とする。
売上が計画以上に好調であれば在庫を増やすのは当然であるが,その場合商品回転率を当初より高めるように手を加えたり,逆の場合には,多少商品回転率は落ちるが在庫の減らし方を押さえたりする。これらの関係を整理したのが図表-4(c)である。
OTBを行う上で最も重要なことは, OTBの計画表をつくり,計画表に実績を記録していくことではない。売上と在庫のバランスが時間と共に変化していく様子を計画という基準と照らし合わせて確認し,実際の売場運営の中で売上と在庫のバランスを維持し続けるように絶えず調整していくことである。

 

 

(2)売上/在庫/仕入の関係とOTBによるバランスの調整
図表-4(d)は,時系列で変化する売上/在庫/仕入の関係を整理したものである。
当月(週)と翌月(週)の売上を比べた場合,当月(週)よりも翌月(週)の売上が➀高い(↗),➁同じ(→),➂低い(↘)の3つケースが考えられる。
それぞれのケースについて在庫の持ち方を考えると,➀売上が伸びるのであれば当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を増やし,➁売上が変わらないのであれば当月(週)初在庫と当月(週)末在庫を同じに,➂売上が減るのであれば当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を減らせばよい。
その時の売上と仕入の関係は,➀当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を増やすのであれば,売上よりも仕入を増やし,➁当月(週)初在庫と当月(週)末在庫が同じであれば,売上と仕入を同じにし,➂当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を減らすのであれば,売上よりも仕入を減らせばよい。
このように,売上の変化に応じて在庫を設定していけば自ずと仕入は決まってくる。
重要なことは,売上の変化をどのように想定するかであり,売上の変化に応じた在庫の持ち方をどのように設定するかである。

2. 営業計画/商品計画/売上管理・在庫管理・発注管理
図表-5は,営業計画(数値目標の設定)から商品計画,売場展開計画,作業計画という一連の計画手順を整理したものである。

2-1.営業計画(数値目標の設定)/商品計画
(1)営業計画(数値目標の設定)
基本的には,売上,粗利率をどのように設定するか,ということが最も重要な問題である。
図表-5では,一般的な方法として販売予算と直近の販売実績推移を参考にして決めていくように表示してあるが,必ずしも現状では適した方法とは言えないかも知れない。 昨年実績をベースにするのが,比較的オーソドックスな方法とも考えられるが,この方法も右肩上りの時代には有効であるが,現状のように昨年実績の維持が難しい時代には必ずしも適した方法とは言えないだろう。
昨年実績は,あくまでも昨年の商品構成,売場づくり,販促,売り方,競合状況などの結果であり,どれか一つでも条件が変わっていれば,その数値は違うものになっていたかも知れない。つまり,昨年実績は絶対的なものではなく,あくまでも一つの目安にしか過ぎない。売上目標の設定は,ある意味では決意表明であり,50%アップ,100%アップというように高い目標を設定することで従来とは全く違った発想で取り組むように切り替える必要があるだろう。実際に50%アップと言ってもそれによって在庫ばかりが増えてしまったのでは意味がない。きちんと企画・計画をつくることによって結果的に10~20%売上が伸びれば十分である。従来の目標設定であれば,決してそんな伸びを示すことは考えられないのだから,最終的な着地点を想定した上で目標を設定し,運営すればよい。

(2)営業計画(数値目標の設定)の細分化   商品計画へ
営業計画を細分化していくと具体的にいろいろなことが見えてくる。例えば,月次から週次へと落とし込むことで,どのくらいの金額をそれぞれの週につくらなければならないのか,という週ごとのウェイトが具体的に見えてくる。商品に落とし込むことで,どの商品をいつ,いくつ売らなければならないかということも見えてくる。商品と売らなければならない数量が見えてくれば,その為に必要となる展開場所や売場スペース,什器・備品,売場づくりや補充に要する作業量なども見えてくる。場合によっては,現在の企画で目標とするだけの販売数量を売ることができるかどうかという実現の可能性も具体的にイメージできるようになる。また,週単位で9~13週(2~3ヶ月)販売目標を並べてみると,週ごとに何をすればよいか,どのように仕掛けていったらよいか,という週ごとの役割,流れを掴むこともできるようになる。

(3)商品計画
商品計画については,具体的な定義もなく,企業や人によってとらえ方はマチマチである。ここでは①商品の売上構成が時系列でどのように変化するか,を計画したもの(売上だけではなく,在庫,仕入も加えOTBとする),②期間中の商品構成を計画したもの,の2つをもって商品計画と定義する。
① OTBを用いた時系列の商品販売計画
OTBの詳細については,1-2で説明しているのでここでは省くが,基本的な内容は,自店・自部門の売上構成を時系列で計画し,売上計画に応じて在庫計画,仕入計画を作成することである。商品計画の場合, OTBを行うベースは数量,あるいは数量,金額の両方である。少なくとも金額ベースでの商品計画は難しい。
重要なことは,売上の柱とする商品の取り扱いである。近年,柱とする商品のウェイトが徐々に低下しており,全体に与える影響が大きくなってきている。状況によっても異なるが,再度柱とすべき商品を組み立て直すか,第2,第3の商品を育成するしかない。
計画の中に次のステップにつながる実験的な要素を組み込んでいく必要があるだろう。

② C-Cマトリックス,C-Pマトリックスによる商品構成計画
C-Cマトリックス,C-PマトリックスのCはClassification(クラシフィケーション;商品特性),PはPrice-line(プライスライン;価格) の意味である。したがって,C-Cマトリックスは,素材×デザイン,デザイン×色のような商品特性同士のマトリックスであり,C-Pマトリックスは,価格と商品特性のマトリックスのことである。C-Cマトリックスは,主に価格要素の影響が少ない商品やC-Pマトリックスで検討する前に商品特性間のバランスを検討する場合に用いる。C-Pマトリックスは,商品特性の違いによるグレードと価格のバランスや同じ商品特性を持つ商品間の価格のバランスを見るのに用いる。
商品構成の『構成』という言葉には,もともと『いくつかの要素を組立てて全体を一つのまとまりあるものにつくり上げる』という意味があり, C-C, C-Pの2つのマトリックスを用いることで商品をバランスよくマトリックスの中に配置し,一つのまとまりあるものにつくり上げていく。その際に用いるのも売上比率である。
図表-6は,収納用品について作成したC-Cマトリックスである。表頭(横軸),表側(縦軸)のみ記入してあるので,商品構成の分析用,計画用,チェックリストとして使うことができる。チェックするポイントは,素材別の比率,機能別の比率,用いる場所別の比率などである。実際の売上データと配置するアイテム数,フェイス数などを比較してみることで,収納用品という商品群全体として適切な商品配置になっているかどうかを確認することができる。C-Cマトリックス,C-Pマトリックスの2つのマトリックスにより,商品構成計画を作成する。

2-2. 売上管理・在庫管理・発注管理
売上管理と在庫管理はこれまで説明してきたようにOTBを用いることで行うことが可能である。広い意味での発注管理=仕入管理もOTBで同時に行うことができる。
ここでは,まず発注全体について整理し,その中から固定フェイスで管理される定番商品の補充発注について簡単に説明する。
図表-7は,商品のさまざまなタイプと発注方法について整理したものである。
基本的には,売上の変動が少なく定番商品としてフェイス管理される商品と,売上の変動が比較的大きい商品とに分けて考えることができる。
前者がここで説明する補充発注型の商品であり,後者はOTBに向く商品である。
図表-8は,補充発注(ここで紹介するのは,一定間隔で必要な数量を発注する定期発注方式である。その他に在庫が一定数量まで減ったら発注するという発注点を決め,不定期に一定数量を発注する定量発注方式,常に一定間隔で一定数量を発注する定期定量発注などがある。)の基本的なパターンを整理したものである。
発注日から納品日までの期間をリードタイムと呼び,発注時点の在庫数量からリードタイム期間中の販売数量を予測し,納品時点に予測される在庫数量を算出する。
最大在庫数量と納品日時点の予測在庫数量の差が発注数量である。実際には,リードタイム期間中の販売数量は予測に対して上下にぶれることがある。予測よりも販売数量が少ない場合には,納品時点の在庫数量が最大在庫数量を超えるので次回の発注で調整する。一方,予測よりも多く売れた場合には,欠品を起こす可能性があるので,そのために安全在庫数量を設定する。安全在庫数量は余り多すぎると恒常的な在庫過剰となるため,商品売上のバラツキと商品の重要度合いを考慮して設定する。
商品売上のバラツキは,安全在庫数量を設定する上で重要な意味を持つ。例えば,過去20回のリードタイム期間中の販売数量が9~11個の間でバラつき,平均が10個の商品と1~20個までバラつき平均が10個の商品では平均が同じ10個であってもバラつき方が大きく異なるため,安全在庫数量の設定も全く異なる。厳密には別の計算式によって算出するが,単純にバラツキだけから考えると,前者は販売数量が安定しているため,発注時点で12個以上の在庫を持っていれば欠品することはほとんど考えられないが,後者では少なくとも21個以上の在庫が必要と考えられる。ただし,後者の場合のバラツキは1~20個であり,20個はいつ現れるか分からない。1個かも知れないし,20個かも知れないものを常に20個に合わせて準備するのでは在庫の持ち方にムダが出る。したがって,図表-9に示すような度数分布(いくつ売れたのが何回というように整理する)をとらえた上で,商品の重要度合いによって欠品させてもよい確率を設定し,安全在庫数量を算出する。20個が20回に1回の割合であれば,20個売れた時に欠品したとしても確率は5%である。

3.まとめ
消費者の加齢に伴うライフステージ(年齢による人生における位置づけ,社会的な地位,世帯構成など)の変化は消費構造(支出する費目の優先順位や金額)を大きく変えている。
一方,小売業は近代化,ローコストオペレーションの名のもとに『プロの商売人』であることを切り捨ててきた。売場は発注作業,補充作業,接客作業,レジ作業の場ではなく,お客と販売員が創り出す生きた商売の場=交感の場であることが本来の姿であろう。
『原点回帰』の重要性を再認識するとともに,商売をより確実なものにするためには,今回紹介したような基礎的な知識をはじめ,現状では必須となったIT(Information Technology情報技術)などさまざまな知識・技術・ノウハウを身につける必要がある。
さまざまな知識・技術・ノウハウを身につけ,計算もできるが計算以上のこともできる21世紀型の商売人がこれからの時代には必要である。

 

 

売場の数値分析

◆数値は代用特性( alternative characteristic )

データばかりが級数的に増えているが、データが増えたからと言って全てをうまく使いこなせているわけではない。場合によってはデータの多さが煩雑さと混乱を招き、生産性と精度を著しく低下させることも考えられる。
どのような目的に対して、どのようなデータが必要なのか、どのようにデータを組み合わせ、あるいは加工して使いこなせば有効なのか、….等々、最も基本的なこと=目的と手段の関係が分からなければ試行錯誤するしかない。
データ加工は元データよりもはるかに多くのデータを生み出すから、むやみに取り組むだけでは手間ばかりかかり何も得られないという可能性もある。
データと目的との間にある関係性を理解しない限り、どんなにデジタル化が進んでもその対応は典型的なアナログ的作業ということになる。
結局、技術ばかりが先行しても、人の頭=思考回路やユーズウエアがついてこられなければ意味がない。

我々が日常的に目にし、また使っている「数値は状況を表わす代用特性」である。したがって、数値の持つ意味に関する定義が重要になる。
QC用語で代用特性( alternative characteristic )は「要求される品質特性を直接測定することが困難なため、その代用として用いる品質特性」と説明される。
例えば「男の人」について知ろうとしても直接「男の人」というものを測定することはできない。そこで男の人を知る上で測定可能な項目を設定し、その項目について数値でとらえていく。
例えば外観であれば年齢、身長、体重、BMI、..など、、運動能力であれば50m走、1500m走などのタイム、反復横跳びや垂直ジャンプ、遠投の距離、...など、また、健康状態であれば血圧やコレステロール値、中性脂肪、血糖値、尿酸値、..など、測定可能な意味ある項目である
「男の人」という漠然としたとらえ方では分からなかったことが、このような項目に整理することで要素ごとに把握できるようになる。これが代用特性という意味である。

このように「知りたい内容=目的」に応じて、関連する意味ある数値を抽出し、組合わせていくことで知りたい内容をより具体的にとらえていくことができる。

◆売場の代用特性
そこでこのようなことを前提にして「売場」について考えてみる。
売場の健康状態を判定するには、どのような数値を、どのように組合わせていけば良いのだろうか。これが分からなければ、どんなに高価なコンピュータを導入し、どんなに多くのデータを蓄積しても、使えない。
いろいろな企業で日常的に管理に使う帳票を見る機会があるが、ほぼすべての企業がシーズ発想で作られた帳票しかアウトプットできないでいる。
理由は簡単である。コンピュータメーカー、ソフトウエアハウスのの「これだけ多くの帳票が出せます」「こんなに細かなデータが出せます」という売り文句に乗っているだけだからである。
いくら高額な費用を払ってメーカーの「シーズ」を買っても、業務上どのようなデータをどう使えばよいのかという「ノウハウ」がなければ、ただの数字の羅列、意味のない数字の組合せがたくさん並んでいるだけでしかない。
ほとんどのケースでノウハウがないから、何でもできる、たくさん出せるという形を取らざるを得ない。
これだけ見ていれば大丈夫ということにはならないから、使う方もどうしてよいか分からない。しかし、売場が健康であるかどうかを判定するために必要な数値はある程度限られる。
基本は、売上/荒利/在庫の3つである。我々が目標としているのは基本的に売上と荒利である。
売上は量を、荒利は質を表わしていると考えてよいだろう。売上と在庫の関係は販売や売場運営のバランスや効率を見る上で重要になる。この3つの数字が基本である。
他にもいくつかの数値があるが、これらは、売上/荒利/在庫のバランスを見る上でその過程、内訳など原因分析のために必要となる。
例えば、売上に対して在庫が多めだとする。その原因を探すには、仕入を見れば良い。売上を超えた仕入が行われれば在庫は増え、その逆であれば在庫は減る。
仕入は売上と在庫のバランスをコントロールするための手段であり、そのコントロールがうまくいっていないと売上と在庫のバランスが崩れる。
また、予定の荒利率よりも実績が低く出た場合は、一定期間内の値入率(仕入の内容)と値下金額を見れば良い。更に2,3ヶ月前の仕入やその後の在庫推移を見れば値下の原因を知ることができる。
つまり、あらゆる「結果」は売上/荒利/在庫という数値へ集約されており、他の数値はこれら3つの数値が「なぜ」そのようになったのかというプロセスや内訳、原因などということができる。
したがって、売場が健康であるかどうかを見るためには売上/荒利/在庫の3つの数値をキチンと押さえた上で、そこから遡っていけば良いことになる。

◆関連する数値
(1)売上に関連する数値
売上が予定通りにいっているかどうかを見るためには2つの系列で見る必要がある。
一つは、単位をそのまま細分化するという方法である。全社、店、事業部、部門、ライン、クラス、..アイテム、SKUという具合である。全体はあくまでも合計でしかないから、単位を細分化し、その内訳を見ていくことで原因、重点を探すというやり方である。
もう一つは、売上を客単価×客数、客単価を買上単価×一人当たり買上げ点数というように分解する方法である。このように分解することで、お客の購買状況をとらえることができるし、客数や一人当たり買上げ点数によってお客が支持している状況を知ることができる。
通常、客数は店に対するお客の支持を表わし、客単価=買上単価×一人当たり買上げ点数は店の工夫(商品構成や売り方)を表わしている。商品構成が買上単価を決定し、売り方の工夫が一人当たり買上げ点数として現われてくる。
(2)荒利に関連する数値
荒利率についても売上と同様に2つの系列で見ることができる。一つは、売上と同様に単位を細分化していくものであり、もう一つは値入率と値下率である。
一般的に値入率は特売商品やチラシ商品などの仕入が増えれば低くなるので、定番比率、特売比率( チラシの回数、チラシ商品の設定の仕方 )という見方も同時に必要となる。
値下は在庫の内訳( 商品別の売上比率/在庫比率から在庫過多、不良在庫の有無などを見る )や2,3ヶ月前の仕入( 仕入過ぎなど )を見ていくことで原因を特定することが可能である。
ただし、値下がぜんぜん計上されていないという場合、不良在庫が売場の中に放置されている可能性もあるので注意する必要がある。
(3)在庫に関連する数値
在庫についても売上と同様に単位をそのまま細分化してみていく方法と、売上と仕入のバランスを見ていく方法がある。(Cf.OTB)
基本は、売上と在庫のバランスであり、そのバランスを維持するための手段として仕入がうまく機能しているか否かが重要になる。

このように、様々な数値、あるいは数値間の関係にはそれぞれ意味があり、それを理解することが重要になる。したがって、目的が明確であれば、そのために必要となる数値も限定される。
いたずらに多くの数値を並べるのではなく、目的に応じて必要な数値を関連付けてみられる帳票に整理することがノウハウである。

◆3つの分析
小売業では、通常、3つの分析方法があれば十分である。
①時系列での変化を見る ( 目的は、将来を予測するため )
売上推移、在庫推移などなど時間と共にどのように変化しているかをとらえ、今後どのように変化していくかを予測する。
②内訳を見る ( 目的は、重点を知ったり、他との比較から問題を発見するため )
売上構成、在庫構成など内訳を知ることで管理する重点を知ったり、売上構成と在庫構成の比較からバランスの良否を調べ問題発見に用いたりする。
③ ①×② 内訳の時系列変化を見る ( 目的は①と②の組合せである )
売上構成の時系列変化を見ることで今後重点がどのように推移していくのかを知る。さらに在庫構成の時系列変化を組合わせて見ることで売場の拡縮や在庫の持ち方の設定をし、発注に活かしていく。
このように分析は3つのパターンがあるが③がキチンとできていれば他の2つは包括していることになる。したがって、代用特性として設定した数値についてこれらの分析ができれば、基本的に売場の状況は把握できることになる。

「アイテム数を増やせば、あるいは減らせば売上は上がる」という不毛な議論

「商品を増やせば売上は上がる」あるいは「アイテムを絞り込めば効率が上がる」、誰もがもっともと思える話だが、そこにある法則を理解しなければ意味のない不毛な議論と言わざるを得ない。
先日も、Webでそのような記事を見かけたが、もっともらしく聞こえてもあまり意味があるとは思えない。
そもそも、多い、少ない、売れる、売れないといっても、別項「カラスの話」に書いているように、それを判定する基準がなければ、主観的にそう思うと主張しているだけにすぎない。一見もっとらしく思えるかもしれないが、よく考えてみれば全く科学的ではないし、論理的でもない。
アイテム数を増やす、商品量を増やす、フェイス数、あるいは目に見える商品の陳列面を増やす、類似商品を集める、比較購買しやすい商品を集める、何ヶ所にも多ヶ所展開する、什器の見やすい・取りやすい位置に陳列する、レイアウト的に買いやすい位置に配置する、…等々、単にトータルとしての商品アイテム数や商品量、フェイス数などの問題だけでなく、商品構成を含めた様々な要素に関係する問題を整理しないとこのような結論は導けない。ある意味、表面的で全く意味のない不毛な議論ということになる。
同様にPOSデータを用いて売れ筋、死に筋などと安易に決めているケースは多いが、POSデータには、レイアウト、什器の陳列位置、フェイス数、在庫数量、類似商品・競合商品との位置関係、自店や競合店の販促などの要素は入っていない。救世主のように思われているID-POSも基本的には何も変わらない。
例えば、20フェイス、在庫数量200の商品の売上数量が20の場合と2フェイス、在庫数量20個で売上数量10個の商品があったとすると、どちらが「よく売れている」と判断するべきなのか、売上以外の要素を加えてみればみるほど=情報の精度が高まるほど判定することは難しくなる。もし、同じ条件で販売数量を比較したらどうなるかを考えれば、まずは販売効率のよい商品を広げ、逆に悪い商品を狭めて測定し、トータルとしてどうなるかを確認する必要がある。
また、同様にA、B 二つの商品があり、同じ品種の最も売れている商品Cが週販50に対し、両方とも週販1個だとして、AはCで代替えが利く類似品、Bは全く異なる規格・機能の商品でCでは代替えが利かない商品とすると、A、Bを週販1個だから両方とも死に筋と同じレベルで評価してカットの対象にするだろうか?
代替えが利く類似商品Aはなくても商品構成上問題はないが、代替えが利かないB商品がなくなれば商品構成としては明らかに選択肢が狭まる。売れるか否かという問題とは別に商品構成という店としてのポジションに影響する問題である。

商品構成は関係する要素が多く、奥が深い。単にグロスのアイテム数や商品量、売場面積、什器本数などだけでは評価できない。
そう考えると、本質を無視した議論をしてもあまり意味があるとは思えない。不毛な議論よりも精度の高い状況を如何に実現するかに時間とエネルギーを費やした方が有効である。

設計思想をどう評価する?

3月になって、東日本大震災を特集するような大地震を扱う番組が増えている。大きく分けると、地震にフォーカスするもの、津波にフォーカスするもの、原発事故にフォーカスするものである。
地震、津波は自然要素とそれに対応する人間の問題であるが、原発事故は100%人間サイドの問題である。
1番の問題は、人間の手に負えないものをたくさん作ってしまったことだろう。
核のゴミを処理する仕組みを確立しないままスタートしたことは、大元にある「設計思想」そのものが全く問われなかったことになる。

「設計思想」は、何かモノを作る上でその根幹をなす基本的な考え方であり、この設計思想を間違えれば、どんなに素晴らしい技術を用いても出来上がったモノは似て非なるモノ、意味も結果も異なる。
原発について調べると、すぐに「トイレのないマンション」という言葉に出会う。核のゴミを処理する満足な仕組みが確立されていないにもかかわらず原発をたくさん稼働させてしまったことは多くの政治家、研究者、関係者・関係組織が認識していたはずである。しかし、その実態、リスクを公表し、国民に問うこともせずに実行に移し、しかもその状態は長年放置されたままである。福島以前にも事故は多かったし、福島では動かないロボットなど高額の投資をしながら実際の事故では使えない、全く役に立たない周辺設備が明らかになっていた。

また、福島の原発事故によって、電源がダウンした際の予備の仕組みを電源に頼る設計になっていたことがはじめて分かった。普通に考えれば、電気の予備は電気以外の原理に求めるはずだが、なぜかそうはなっていなかった。過信なのか、単に無知なのか、分からないが、そこまでのチェックがなされていなかったことは残念としか言いようがない。
電車の予備を電車、自動車の予備を自動車では、線路、道路が使えなくなった時には全てが使えなくなる=実質予備がない状態になる。子供でも分かることである。
「想定外」という言葉も流行ったが、絶対、エラーを起こしてはいけないという完璧なリスク管理をしようとすれば、ありえないことだろう。放射能を撒き散らしたベントも同様である。
「想定外」というのであれば「想定とは何か」ということが研究されなければならないが、そのような話は聞こえてこない。
残念ながら、いま国内にある原発のほぼ全てが同じような設計思想、想定範囲内のリスク管理で出来上がっていると考えてよいだろう。そうである限り、同じことが繰り返される可能性は高いと言わざるを得ない。

IT、AIについても同様である。人間を排除するために設計されたものと、人間を生かす、補完するために設計されたものでは、もとに使われる技術が同じでも、そこから得られる結果は全くの別物になる。

残念ながら、どうでもよいような細々とした現象に対して、重箱の隅をつつくように細かく指摘する人はたくさんいるが、全体を俯瞰して本質をピンポイントで指摘する人はあまり見かけない。具体的で議論しやすいのかもしれないが、それで重要なことが隠れてしまうようでは返って邪魔だし、時間の無駄である。

現在の義務教育のように下から積み上げていくやり方と、ゴールを設定し、そこから逆算して各年代でやるべきことを決めていくやり方では、同じ6年・3年・3年・4年という年数を使っても結果は明らかに変わる。
筆者は、将来を考えれば、とうの昔に下から積み上げていく時代は終わった(省くもの、捨てるものを作らないと次から次へと生まれる新しい分野の知識が入らない、下からだと後で必ず積み残す)と考えているが、どうも長年続けてしまうと、将来のことが見通せず、頭の切り替えができないのだろう。
シンギュラリティSingularityが言われるいま、このような状況にあることは大いに問題とされるべきだが、「教育」を神聖なものとして村社会が形成されると、外からは見えにくく、触れにくく、干渉できない体制、状況が出来上がってしまう。

対象が大きいか小さいか、昔からあったかどうかなどとは全く関係なく、客観的に見て設計思想が正しく評価されるような仕組みを確立する必要があるだろう。そうしないと、一部の人達が思い込みでやっていることによって、全体がとんでもない方向に導かれ、取り返しのつかない状況に陥ってしまう。

大きな課題である。

MEGA ドン・キホーテ UNY 大口店 に行ってきた。

3月11日(日)、ダブルネームの業態転換 1 号店とうたったMEGA ドン・キホーテ UNY 大口店へ行ってきた。いろいろな意味で業界は注目していたのかもしれないが、残念ながらどこから見てもMEGA ドン・キホーテでしかなかったというのが、正直な感想である。
仕事柄いろいろな店を見る機会は多いが、もしここを見て原稿を書けと言われたら、かなり困るだろう。
強いて言えば、粗利ミックスを含めたB1食品がいまひとつといったところだろうか。特に天候の関係から野菜が高騰しており、どの食品スーパーも商品確保に四苦八苦しているが、それにしても鳴り物入りの店が....といった感じである。すでに筆者の家の近くでは、野菜は商品、価格ともかなり回復している。それと比べるとレベルが気になる。近くにちょっと気の利いた店があれば、お客はそっちに行くだろう。そう思って向かいにあるライフも覗いてみたが、同じライフでも東京の良い店と比べると残念なレベルだった。

店のコンセプト、商圏設定を考えると生鮮の位置づけはどうなのだろうか。ドンキのノンフードが商圏を広げ、食品は小商圏・高密度なのか、それとも生鮮も広域商圏が取れるレベルにするのか、設定の仕方によって品揃えも価格も根底から変わる。

大口駅が横浜駅から2駅と近く、周辺にはイケア、ららぽーとなど多くのSC、店舗があることを考えれば、いずれも小商圏、高密度という設定なのかもしれないが、場合によってはノンフードよりも生鮮食品の方が商圏を広く取れることは意識する必要があるだろう。

生鮮がよくなり、ノンフードと同等以上に商圏が取れるようになればダブルネームの業態転換は成功するだろうが、いまのままでは、いずれただのMEGA ドン・キホーテに収束して終わってしまうだろう。
食品補強でユニーが加わったはずなのに...というのが正直な感想である。
ユニー頑張れ‼なのか、ドンキもっと洗脳しろ‼なのか、分からないが、思想、手法を変えない限り、このプロジェクトのゴールはなかなか見えてこない。
やっぱりGMSはダメなのか、と思わせないような結果を期待しているのは筆者だけではないだろう。

商品と商品構成の科学

◆「商品とは何か?」を整理する
商品が持つ要素・意味を整理すると次のようになる。
➀物理的な形 ⓶機能(具体的な働き) ⓷所有・使用することで得られる付加価値(効用・満足度) 
➀物理的な形は⓶機能を達成するための原理を具現化するための構造をベースとして作られるから、大きさや形状、素材、構造、作り方など、この2つの間には明確な関係がある。
⓷付加価値は商品の所有、あるいは使用によって得られる効用、満足度であるから、客観的な尺度と主観的な尺度があり、人によって評価が変わる。
これと関連してコスト価値、使用価値という考え方がある。
コスト価値は、モノがつくられる過程で投入されたコストの分だけ価値があるという考え方であり、使用価値は、使うことによって得られる効用、満足度の分だけ価値があるという考え方である。
作る側と消費する側、それぞれの立場から見た時の価値ということができ、この二つがバランスすることで、モノと貨幣の交換が成り立つ。それが交換価値ということになる。
つまり、いろいろな商品がつくられ、流通して消費されるが、個々の商品は、これらの意味を前提として流通していることになる。

◆商品構成
商品構成は、前述の商品を「構成する」ことによって成り立つ状況である。
構成には、目的に従って、様々な要素を集め、一つの統一的な全体に総合するという意味がある。したがって、商品構成には、「目的」「構成要素」「構成要素の選択基準」「総合する上での比率や位置づけなどの規則・法則」が必要になる。
そう考えると、多くの店舗、売場で、商品構成ではない、昔、ホームセンターでよく言われた「品集め」状態にあることが分かる。
商品構成には思想や理屈、技術があるから、厳密にとらえようとすると非常に難しいが、それだけにキチンと理解し、使いこなせば、こんなに面白いこともない。
科学的な法則によって、売上や粗利率、商品回転率などが変わるから、簡単には無視できない重要な要素である。
しかし、残念ながら、この技術、法則性は普遍化されておらず、一つの法則として伝承されることもない。
チェーンストアが生まれてから半世紀を優に超える時間が経っているが、科学的研究がなされてこなかったために、個人の経験・ノウハウとして時間の経過と共に消えていってしまう。
多くの店舗、売場で先人が経験した失敗を何度も繰り返すというムダが発生し、大きなロスが生まれている。

デジタル技術が発展し、様々な消費者の行動がダイレクトに測定できるようになったことで、あたかも科学的なマーケティングがなされているような錯覚に陥っているが、残念ながら仮説のない所で結果だけを計測していたのでは、モノ・コトの因果関係及びその結果が生まれた環境条件等までは知ることができない。
POSがID-POSになっても使えないのと同様に、個々の結果をいくら集めてみても因果関係は分からない。
商品構成は、商品が売れる理由=因果関係であるから、そこを科学的に解明しない限り、「何故、その商品が売れたのか、売れなかったのか」までは理解できない。
科学的「論」「方法」を間違うと、大掛かりな設備と膨大な費用、時間を使っても、結果、結論はは科学的ではない。
たくさんのデータを集め、高度な数学、デジタル技術を使って処理したからといって科学的であるということにはならないから難しい。

商品がたくさんあると、似たような商品で価格が違うケースが出てくる。単純に考えれば安い商品の方がよく売れるように思えるが、必ずしもそうはならない。高い方が売れる場合もあるし、高い商品、安い商品の両方とも売れずに中間に位置する価格の商品の方が売れる場合もある。
商品が売れるかどうかを決定づける要素は単に価格だけではなく、ブランドやCMなど商品によって様々に変わるし、売場のつくり方(陳列場所、フェイス数、在庫量、演出方法)、売り方(試食、試供品配布、タッチアップなど)、POPのつけ方ひとつでも変わることがある。
いろいろなケースがあるから、それらを全て網羅して法則を見出すことは難しいと考えるのかもしれないが、そのくらいの知恵がなければ、商品構成という高度な技術を使いこなすことはできない。
筆者はクラシフィケーション(classification)という概念を用いて説明しているが、古くには製造業が多品種少量生産に対応するためにGT;Group Technologyというシステム的手法を開発している。たくさんある異なる性質のものを、類似する要素によってまとめ、処理することで効率化を図るというものであり、この手法を用いれば、多くの異なるものを整理することも容易になる。

デジタルの時代であれば、それを使いこなす知恵が一層必要になると考えるべきだろう。

論理が違うと議論が噛み合わない-2

相撲界の「日馬富士暴力事件」は、いつの間にか「貴乃花問題」に変わってしまった。
一連のプロセスを見ていると、実に日本人らしいと思えてくる。
特にテレビで繰り広げられる様々な解説者、ゲスト、MCの仕切り方を見ていると、どこかコミュニケーションゲームを見ているようで、人間社会の本質を見ているようである。
あるテレビ番組で、子供たち数人にスマホを渡して自由にLineをやらせ、どのように進捗するかを観察するという企画を見たことがある。
テーマがないから、はじめはモジモジしているが、そのうち次第に会話が進むようになる。しかし、ある時、つまらない一言から、場の雰囲気は一変し、言葉も荒れてくる。顔が見えない言葉の世界ということもあるだろうが、チョッとしたニュアンスの違いから、言葉が新たな言葉を生み、感情の世界を突き動かしていく。

全く同様なことが、今回の暴力事件を扱うテレビなどのマスコミ報道、ゲスト、解説者、さらにはそれを見た視聴者のSNSへの投稿などでも起こっている。
まるで状況は子供たちのLineの企画と一緒といってもよいだろう。
ほとんど情報を持たないに等しい人達が、限られた情報、しかも確実に検証されてもいない限られた情報を頼りに自分の意見、感想を口々に言い合い、そのうち、感情的な好き嫌い、自分の判断基準、一般論としてのアルベキ姿によって、いつの間にか「日馬富士暴力事件」が「貴乃花問題」へと変わっていく。
唯一、論理的に状況を整理していたのは、弁護士の八代英輝氏くらいだろう。
加害者と被害者、現場にいた当事者・同寮と現場におらず間接的に事態を知った貴乃花、加害者側、被害者側という前提を置いた上での辞任と降格の意味の違い、…など、判断する上で状況が客観的に見えるように一つ一つ要素に分けて整理していた。
面白いのは、「場」全体が日馬富士の件はどこかに行ってしまい、とにかく貴乃花が悪いといった雰囲気になっているのに、八代英輝氏が状況を一つ一つ整理していくと、なぜ貴乃花が悪いという結論になるのか、皆が分からなくなってしまうことである。おそらく、詭弁、騙されているような気分になるのだろうが、論理と感覚の違いし大きい。
感情的な指摘とは別に、事実はどうかという全体的な構図を整理することの重要性を示していたと言ってもよいだろう。ただし、どれだけの人がそれを感じることができたのかは分からない。
情報量が偏っているからこそ、客観的に全体を整理することが重要だが、何故かそうならないのが一般社会なのかもしれない。

そこで「論理」が重要になる。
客観的事実を道筋に添って積み上げていくことで一つの結論へと導いく。
そういえば、野党が森友問題に夢中になっていた国会で、もう一つ自衛隊や米軍基地周辺の土地が外国資本に買い占められても、それを規制する法律がないということが取り上げられていた。安全保障上、非常に重要であるし、他国では考えられないことだろうが、マスコミもほとんど取り上げていないし、大臣の答弁も検討中という曖昧なものだったように記憶している。
北海道の土地(山だと水源も含まれる?)がどんどん外国資本に買われていることや、何代にも渡る相続によって、所有者が分からない土地が九州の面積ほどもあるという話など国土に関する問題は驚くほどある。将来を考えると重要なテーマはたくさんあるが、なぜか国会もマスコミも優先順位が違うようである。
森友問題が10億円とすれば、国会のコストは1日3億円だというから、森友問題のためにはるかに多くのコストが使われ、しかも喫緊の重要案件がストップしていることになる。国民の税金が、、、といいながら、はるかに大きな税金がムダに使われていることは誰も指摘しない。「世論」「正義」を振りかざされては、それを指摘することも難しいのかもしれないが、一番質が悪い状況に陥っていると言ってよいだろう。

日本が抱える問題は急激な高齢化と人口減少、過疎化を含めた前述のような国土問題、廃炉にしても核のゴミを処理できない原発問題、農業従事者の高齢化や法整備のミスマッチで身動きできない食料問題など、数え上げたらキリがない。
テレビである解説者が言っていたが、北朝鮮=拉致問題、日銀副総裁問題など目の前の課題を無視するのではなく、優先順位を明確にして別のところでやらないと、国際、経済問題など、多くのモノ・コトがガタガタになる。
少なくとも後ろ向きな足の引っ張り合いばかりでなく、現在、分かっている課題への対応をしないと日本の将来は危うい。野党、マスコミも政権を引きずり下すことに血眼になるのなら、最低限、その後のビジョン、その後現状より良くなるということを担保しないと、あまりにも無責任である。
もし、それ無しでやっているのであれば、ただ壊しただけで終わり、また失われた20年が始まるだろう。
東日本大震災の時と同様、大変な思いをするのは国民だから、マスコミも冷静な報道が必要である。東電の責任を追及し、賠償を突き付けた当時の政権は、その賠償が国民の税金から出ることには一切触れていなかった。詭弁ととらえられても不思議はないが、何故かそのことを明確に指摘する声はない。
尖閣の時にも、日本には名前もついていない無人島がたくさんあるということが発覚したが、その後談は全く聞こえてこない。
その場だけ騒いで後は忘れてしまうから、いつまで経っても日本の課題は解決しない。
「正義」を振りかざし、現状を否定するのであれば、その後どのように修正するのかという具体案を明確にする責任がある。一見、正論に見えることが必ずしも現状をよくすることにはならないことは、民主党政権の原発事故後の処理を見ればよく分かる。
スーパーコンビュー開発に対する「二番じゃダメなのですか⁈」という認識のレベルがある意味全てを表しているのかもしれないが、ITの進化=経済的支配が実質的に戦争に変わる意味を持ちだしている現状は一つの判断ミスが将来の日本の姿を大きく変えてしまう。

長年、人口問題を調べているが、人口問題だけではなく、分かれば分かるほど、この国の将来が心配にである。
マスコミのリーク合戦とそれに乗る政治家、さらにそれを垂れ流すマスコミ。フェイクニュースとは思わないが、世論を誘導していることはよく分かる。
少なくとも、週刊誌的な情報をこれでもか、これでもかと垂れ流すのであれば、未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (河合 雅司著 講談社現代新書)ではないが、日本の置かれている状況、課題をきちんと整理し、それに関連するニュースをわかりやすく報道するような前向きな姿勢が必要だろう。

情報過多の時代であるから、情報発信者の責任はそれなりに大きい。受け手としても冷静に論理を組み立てれば、優先順位、選択肢なども客観的に見えてくる。
国民には知恵が求められる。