定番コーナー、持ち出し、エンド、平台、多ヶ所陳列、…商品特性に応じた陳列を‼

業界の中には古くからの勘違いが定着し、間違った考え方・方法のまま、21世紀の今でも行われていることがある。
例えば、ドラッグストアでは花粉症関連商品、水虫薬など、季節商品を持ち出して展開することが行われているが、商品によっては定番コーナーから持ち出して特設コーナーを作っても定番コーナーの売上の方が大きいというケースもある。実際に実験を行ってデータをとり、検証している企業の話を聞くと、定番コーナーの印象が強いために、買う時には知らず知らずのうちに定番コーナーへ行ってしまうということである。
このようなケースでは、特設コーナーへ持ち出すよりは定番コーナーでフェイスを広げた方が有効である。
多ヶ所展開が向くといわれる商品も、少しずつ分散して置くよりも、1ヶ所にまとめた方がよく目立ち、補充も楽で欠品しにくい。さらに場所が印象的に刷り込まれることもあって、こちらの方がはるかに販売数量が伸びるというケースも多い。確かに5~10個ずつ、5ヶ所、10ヶ所といろいろな場所に商品展開すれば、補充の手間もかかるし、1ヶ所ずつ見れば目立たない。それを考えれば1ヶ所に50~100個を目立つように大量陳列した方がはるかに印象に残るし、補充も楽で欠品しにくい。
特に他社が多ヶ所展開して目立っていない商品でやる場合には、より印象に残るから効果も高い場合が多い。過去に乾電池、自治体指定のゴミ袋などで試したことがあるが、確実に大量陳列の方が売上が伸びている。
レジ前や後ろエンドなど、エンドと平台などの山積みの使い分けも重要である。単品大量販売をするから同じようにとらえているケースもあるが、明らかに商品のタイプによってエンドと平台では販売量が変わる。
いろいろな商品を用いて、どのような陳列形態が向いているかという向き不向きの実証実験をやったことがあるが、山積みに向いている商品はエンドでは売上が伸びない。特にパッケージの大きい商品の場合、エンドでは陳列できる数量が限られるため、すぐにボリューム感がなくなってしまう。もちろん商品特性による違いはあるが、多くの商品が大量陳列によってほぼ確実に売上が伸びることが分かっているから、大量に販売したい場合には思い切った陳列をすることも必要である。
エンドが本来のプロモーション的な使い方ではなく、多くのアイテムによって定番的に細かくフェイスが分かれていることもあるが、エンドでアクセントをうまくつけている売場があまり見られなくなっている。
エンドについては諸説あり、考え方によって50アイテム以上置かないとだめだと言い切るコンサルタントもいるようだが、商品特性と売場全体の構成から単品大量で面を構成し、定番コーナーの細かなフェイシングとは見ためを変えて売場のアクセントとするのか、定番の本数が足りない分をエンドでカバーするのか、季節定番のコーナーとするのか、…等、売場の状況に応じて使い分けるべきだろう。
また、レジ前の第1エンドが非常に目立つから良い場所という認識もあるようだが、食品スーパーやドラッグストアのように壁面に主通路がある場合には、入口から主通路に沿って店内を回り、最後にレジ前に来るため、直接レジに向かえば全く目立たないのが第1、第2エンドということになる。
中島什器の並びが8列以上ある場合には、エンドをフラットにせずに多少前後にずらして3列に一つくらいの割で大きなエンドをつくるとアクセントになる。全部を同じように作ると目立たないし、全部が同じように売れるわけではないから、変化をつけることは有効である。
いずれにせよ、商品はお客の買い方、商品のイメージや販売数量、価格、購買頻度などにより、定番コーナーで展開した方がよい商品、持ち出しで展開した方がよい商品、エンドで展開した方がよい商品、平台で展開した方がよい商品などがある。
多ヶ所陳列した方がよい商品もあるのかもしれないが、実験結果からは必ずしも従来から言われているような効果はないような気がしている。特に分散することのデメリット=全体としては多くの在庫を持っていても1ヶ所当たりの在庫が少なく、ボリューム感がなくて目立たない、補充の手間がかかる、場合によっては手が回らずに商品が薄く、売場の鮮度が落ちる・欠品を起こす、…等を考えると、現在のスタッフが少ない売場には合った方法ではないのだろう。
小売業に携わって40年以上経つが、けっこう昔から言われていることには嘘も多いし、時代とともに昔の常識では全く通用しないことも増えている。
経験的(実証実験)には、お客の買い方、商品の特性を考慮して適した陳列方法、売り方をすれば、販売実績が上がることは確認できている。
昔から言われている古い考え、言い伝え(もちろん全てが間違っているわけではないが...)よりも、実際に売場で試し、自分の目で確認してみることが重要だろう。

 

 

2025年 急激な人口減少にリアル店舗をたくさん抱えるチェーンストアはどう対応する?

平成27年国勢調査 人口速報集計結果を見ると、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に3,612.6万人、全国の28.4%(東京都10.6%)が集中し、この5年間で鳥取県(57.4万人)に匹敵する50. 8万人(東京都だけで+35.4万人、うち特別区+32.7万人)が増加している。 東京(特に特別区)一極集中はさらに進むと考えられる。  市町村単位では、1,719のうち1,416(82.4%)で人口が減少し、5%以上減少が828(48.2%)、うち10%以上減少も227(13.2%)ある。全国的に人口減少が深刻である。    このような人口減少を前提に、あるリージョナルチェーン(100店舗弱)について調べてみた。  詳細は省くが、経常利益を大きさ順に並べ、その累計を折れ線グラフ(経常利益構成比%)てみると、3分の1の店舗の赤字を埋めるために3分の1の店舗の経常利益を使い、企業としての経常利益は残る3分の1の店舗分でしかなかった。 固定費は店舗数に比例して増加するが、利益は必ずしもそうならない。  これだけでも問題だが、経常利益の大きい約10店舗で全社合計の約3分の2に相当する経常利益を稼ぎ出しているから、これらの店舗が企業業績を左右するとも考えられる。  さらにこの企業の経常赤字店、経常黒字店、それぞれについて立地する市町村の将来総推計人口をみると、2025年には経常黒字店のうち、実に半分強の店で総人口が2010年比で90を割り込む。しかも経常赤字店よりも経常黒字店が立地する市町村で人口の減り方が大きい。 その時にどうするのかではなく、その時までにどうするのかが重要になる。  また、全国に約300店を展開するナショナルチェーンについても同様に店舗配置の状況を分析してみた。  問題は単純であり、40都道府県に分散しているために半分の県で5店舗未満しかなく、ドミナント形成ができていないからチェーンとしてはぜい弱な構成になっている。  しかも、南関東にある程度店舗を集中しているが、人口の多い都市部(東京都を除く)の店舗の1店舗当たり売上が全店平均を下回り、さらに数値も悪化している。  あとは、全国に占めるこのような効率上問題がある店舗の比率と売上比率を見れば、チェーンストアとしての店舗構成の状況が評価できるが、この企業では、東京都を中心に約3割の店舗数で4割弱の売り上げを稼ぎ出しているが、残りの7割の店舗、しかも地方の人口減少に直面する店舗はかなり難しい状況にある。  重要なことは、固定費はほぼ店舗数に比例するから多少都市部のコストが高いといっても7割の店舗数の固定費を残りの3割の店舗だけでカバーすることはどう考えても難しい。  すでに今の時点で、店舗戦略的(配置、ドミナント形成)には難しい状況にあるのに、さらに地方に分散する圧倒的多数の店舗が一様に人口減少に直面した時には、企業全体に与えるインパクトは非常に大きくなる。  小売業は、損益分岐点が高く、経費も固定費的に発生するから、既存店が低迷した時には、CGP(チェーンストア・グローイング・パラドックス)で説明しているように身動きが取れなくなる。  できるだけ早いうちに対処する必要がある。  繰り返すが、人口減少、高齢化は凄まじいスピードで進行し、周囲の風景を様変わりさせる。  その時にどうするかではなく、その時までにどう対処するかが重要である。

地方創生 すべては生産性を高めるのが一番 ‼

◆地方の企業はどうビジネスをつくり直すか
 「地方創生」の動きが盛んであるが、「独自性」にこだわるあまり、どうも取り組み方が基本から外れているような気がしてならない。
 地方の企業の課題=強くなることを考えれば、生産性を高め、規模を拡大する必要がある。
 中小零細規模が、限られた原材料、限られた設備、限られた人材(発想・アイデア)で商品開発するから、類似する素材を用いて、似たような加工をした、似たような商品がアチコチの地方に溢れてしまう。
 現在の規模であれば損益分岐点が低いため、小さな売上規模でも十分事業が成り立つかもしれないが、このような状況を長く続けていては将来的な展望が描けない。
◆いかに生産性を高めるか
 生産性を高めるには、ある程度の規模拡大が必要である。資本も大きい方が投資もしやすく、安定する。
 それには水平、垂直統合が必要だが、「地域」にこだわれば、よほどの大きなシェアを持つ産地でない限り、水平統合は難しく、どうしても選択肢は垂直統合に限られる。ところが垂直統合は原材料供給、生産能力、販売能力などいずれかの規模に制約されてしまうから、多少大きな企業が加わってもボトルネック(最も規模が小さい)となる企業に制約されてしまう。
 ここをクリアしない限り、垂直統合は上手く機能しないから、規模を拡大して生産性を高めることは難しくなる。多くの地方が行き詰まる構造的問題である。
◆地方を超えて水平統合する 業種を超えて機能統合する
 ある意味、グローバル化を前提として考えた場合、規模を拡大することができれば、素材の生産、商品開発、製造、販売などを強化することが可能になる。
 そのためには、①地域を超えた水平展開が有効である。類似する素材を持つ産地が競合するのではなく、共同することで、より強力な素材の生産、商品開発、製造、販売をするように変われば、対外的な競争力は明らかに増す。知識、技術、経験、ノウハウ、人材など、様々な点で、国内で競合し合うよりも協力・分担し合う方が有効である。
 また、②多品種少量生産で機能別工程が有効であることを考えれば、地域内で素材別に細かく分かれている企業を機能別に集約することも一つの方法として考える必要がある。
 機能別工程は、素材の生産、製造、商品企画・開発、販売促進、販売、物流など、従来の業種別に細かく分かれていたものを機能別にまとめ直すことで、部分的に大量を実現し、生産性を高める。
 どんな業種でも全てを機能別にまとめればよいというわけではないが、少なくとも小規模のままバラバラに運営するよりは、部分的にでもまとめていく方が、メリットがあると考えられる。
これまでがどうであったか、ということにこだわるのではなく、どのようにしたらより生産性を高め、競争力を高めて発展できるかを考えるべきである。
 「地方」には様々な可能性のある「シーズ(種)」が埋もれている。重要なことは、その活かし方が理解されていない、あるいは活かす方向、方法が違っていることである。
 もう一度、基本的なところから見直してみる必要がある。

									

竹下通りを輸出しよう‼

 詳細は省くが、テレビ東京のホームページ(http://www.tv-tokyo.co.jp/travel/entry/bwImF/31877/)によると「全振連が47都道府県の商店街振興組合を対象に行った調査で
は、名称に“銀座”が入る商店街の数は345件ありました。ただし、平成16年6月に行った調査結果なので、今は数が前後しているかもしれません」(広報担当者)とある。
 345が多いか少ないかは別にして、日本国内にこれだけの数の〇〇銀座があるのであれば、〇〇竹下通りがあっても不思議ではないだろう。
 商標の権利関係がどうなるのかは分からないが、SCの形に仕立てあげることができれば、一つのビジネスの形としてフランチャイズ展開をすることも可能である。
 できればパリやニューヨークに輸出してみたいビジネスモデルの一つであるがどうだろうか。
 そう考えると、日本のシーズはまだまだたくさんあるし、料理の仕方次第で化ける可能性のあるテーマもたくさんあるのだろう。
 技術があっても戦略とアイデアがなかったために家電事業は海外企業に買収されているが、地方の町や文化まで買われてしまわないように、事業化するアイデア、スキル、ノウハウなどを高めていく必要がある。

平成27年国勢調査の速報値が発表された‼

 2月26日に平成27年国勢調査 人口速報集計結果が発表されたこともあり、これまで「推計」とされていた状況がよりリアルなものとして認識されるようになっている。
 平成27年10月1日現在の人口は1億2711万人、前回(平成 22 年)より94.7万人減少、大正9年の調査開始以来、初めての人口減少となっている。
 都道府県別にみると、東京都が 1351.4万人と最も多く、全国の 10.6%を占める。以下、神奈川県(912.7万人)、大阪府(883.9万人)、愛知県(748.4万人)、埼玉県(726.1万人)、千葉県(622.4万人)、 兵庫県(553.7万人)、北海道(538.4万人)、福岡県(510.3万人)であり、人口上位9都道府県で6847.3万人、全国の53.9%を占める。また、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口は3612.6万人で、全国の28.4%を占めており、5年前に比べ 50.8万人増加している。最も少ない鳥取県の人口57.4万人に近い人口が5年間で増えたことになり、人口集中はさらに進んでいることになる。 
 人口増加は8都県、39道府県で人口減少している。また、全人口が増加した市町村は1、719市町村のうち303(17.6%)、減少した市町村は1、416(82.4%)と8割を超える。5%以上減少した市町村も約半数(48.2%)まで拡大している。  
 数値を見る限りでは、東京一極集中はますます進んでいる。過去に推計された状況がよりリアルなものとなっているから対応を急ぐ必要があるが、まだ形式的な動きが中心であり、なかなか結果につなげることができないでいる。
 思い切ったというよりは、これまでの常識を超えて当たり前のことを当たり前に実行する必要があるだろう。
 重要なことは、財政的なゆとりがないと思い切った策が打てないことであるから、常識を超えた生産性を実現するしかない。
 マーケティング戦略、IoT、ICT、ロボット、AIなどデジタル技術の応用とバイオ技術などを活用した農業や水産業の革命的な変革を実現する必要がある。
 資源も技術も眠っているものが多いから、いかに事業化するかが重要になる。

第50回スーパーマーケットトレードショー2016に行ってきた

 第50回スーパーマーケットトレードショー2016に行ってきたが相変わらずの盛況であった。
 特に地方創生で力が入っていることもあり、各地方から出店しているブースを意識して見てまわった。残念だが、同様な素材、同様な加工方法を用いた類似商品が多いのが気になる。しかも、規模が小さい企業では、せっかく展示会に出展しても、まとまった注文が入ると対応できないという。
 常々思っていることであるが、さまざまな地域で、数多くの企業が、同じような素材を使い、それぞれで企画をし、試行錯誤しながら、それぞれで商品開発して、それぞれで販売を行っている。皆が知恵を絞って一生懸命にやっているのだろうが、それでも出来上がる商品は類似しており、ずば抜けて競争力がある商品が出てくる確率はそれほど高いとも思えない。
 たとえ同じような工程で作る商品であったとしても、それぞれで工程設計を行い、それぞれで生産しているから、どこかで失敗した経験があったとしても共有することなく、同じような間違いをまたどこかの企業が繰り返すのだろう。量もまとまらないから小規模な工場がたくさん存在し、生産効率ばかりでなく、商品開発に関連するすべての業務効率が上がらないという状況にあることは想像に難くない。
 地方創生では、それぞれの地方でアイデアを出して競争することを奨励していたようだが、人口減少・高齢化が急速に進む日本全体の状況を考えれば、かなりロスが多いと考えるべきではないだろうか。
 地域が違っても、類似する素材(例えば柑橘類)を作っているところがあれば、できる商品も、加工方法も似てくるから、「地域ごと」にこだわるのではなく、「類似する素材を使う地域・企業が連携して取組む」ように切り替えたほうが、重複する工程・作業が一本化でき、集約できるから生産効率、販売効率が高まり、多くのメリットがあるはずである。
 全てをそうしろというのではなく、そういう取り組みをした方がよいものに関しては、集約して効果を確認し、徐々に拡大していくような方法がとられてもよいだろうということである。
 このような取り組みが上手くいけば、ボランタリーチェーンやフランチャイズチェーンのような形態をとることも可能であり、さまざまな知識・技術・ノウハウ、人材などの交流が図られれば質的量的に充実するから、パワーも増す。いろいろな面でメリットがあるだろう。
 重要なことは「生産性を高める」ことであるから、量をまとめることは有効な手段になる。知識・経験・技術・ノウハウなどを集約し、共有することも有効である。何よりも地域以外から収益を上げない限り、地域が潤うことはないから、グローバル化を図れるだけの規模にまとめるという意味からも地域が協力して集約していくことは有効と考えられる。
 R&D(研究開発)などの手法を応用することができれば、異業種が持つ技術を相互に活用するような方法も考えられるから、それぞれの企業の持つ強いところをうまい具合に組み合わせることも可能になるだろう。
 国勢調査の速報値が発表されているが、高齢化と人口減少の速度が増していることは明らかである。時間的な余裕がないことを含め、知恵を有効に使い、スピード感を持って対処していくことが重要になるだろう。
 
 

「節約志向」という勘違い?

 テレビで経済番組を見ていたら、安さを訴求している店を事例として紹介し、盛んに「節約志向」「節約志向」とアナウンサーが言っていた。解説の専門家も盛んに「節約志向」「節約志向」と解説していたから、そういう番組なのかと思ってみていたが、「???...」「本当???」「なぜ、表面しか見ない⁉」と不思議に思った。
 ずいぶん前になるが、ディスカウントストアの駐車場を見るとベンツ、アウディ、BMWなど外車が数多く止まっていた。
 日本は、階級社会ではないから、収入と住んでいる地域、乗っているクルマ、買物する店などが必ずしも一致しない。
 アメリカのように、この道路から向こうの住宅は〇〇万ドル以上で、年収いくら以上の人達が住んでいる。こちらはアジア系が多く、向こうはヒスパニックが多い地域、....などということもない。
 年収1000万円以上の人でも当たり前に100円均一ショップで買い物するし、ディスカウントストアで買い物することも、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、総合スーパー、百貨店で買い物することもある。
 それでは100円均一で買い物をするのは、節約志向なのか? ディスカウントストアで買い物をするのも節約志向なのか? あるいはドン・キホーテで買い物をするのも節約志向なのか? というと大いに疑問が残る。
 「買物をする」という行為は、必ずしも経済原則と一致しない。特に日本の場合には、いわゆる昔から言われているような収入と買物の間にきれいな相関関係が成り立たない。外資の企業が日本に進出して戸惑うのは、彼らが知る経済原則、マーケティング理論だけでは日本の消費者(購買行動、価値観)を理解することがなかなか難しいからだろう。
 同じ商品を高く売っている店と安く売っている店があれば、わざわざ高く売っている店に行く必要はないだろうし、どこでも価格競争をやっている時代だから、単に商品が安いというだけでお客を引き付けることも難しくなっている。
 むかし、ジョイフル本田の店長が、自店の魅力を「発見の喜び=何があるか分からないから、何かを見つけて買えた時の喜びが大きい、それが魅力」と言っていたことがあるが、ドン・キホーテについても、全く同様に「どこに何があるか分からないから、それを探すのが楽しい」と魅力を語ってくれた人がいた。
 ダイソーの大型店、ピンクダイソーなどを見れば、他の店には売っていない商品が数多く並んでいるから、別に100円均一(いまは価格帯が広がっているが...)でなくても十分にお客にとっては「行く価値」のある、魅力ある店ということになる。
 ピルケース(薬のケース)やネイル関連商品など見ればドラッグストアの品揃えをはるかにしのぐし、プラスチック成型品などでもホームセンターをしのぐ品揃えがある。
 低価格を訴求することは、どんな業態、企業でも当り前に行われているから、消費者を引き付けているのは、単に価格だけではないはずである。そこを追求するような番組があれば、大いに参考になるのだと思うが、表面をなめただけで分かったような解説をしていたのでは、いつまで経っても高いか安いだけの話から抜け出せない。
 本質からどんどんかけ離れた方向へ進んでいってしまうのでは、困ったものである。
 

									

リテイル・エンジニアリング-2 いま、もう一度オールドIEと小集団の改善活動

 いまはもうIEやQCサークル、小集団活動などと言って通じる人はほとんどいなくなっている。盛んに行われていたのが、30年以上も前だから、当時中心になって活動していた人もリタイアし、いま現役で企業の中心にいる人は未だ物心ついていないか、あるいは生まれてないといったところだろう。
 なぜ、こんなものをいまさら引っ張り出すのかといえば、中小零細規模を中心としたさまざまな業種、あるいは地方創生で町興しに躍起になっている地方自治体や企業、団体の活動にとって非常に有効と考えられるからである。
 当時と違って、ICT、デジタル化が著しく進んではいるがIEやQCサークル、小集団活動などは、基本的な活動、物を対象とした様々な活動にとって非常に有効な手法であるにもかかわらず、現在では全く忘れ去られてるからである。
 たとえば、おばあちゃん達が葉っぱを売って何百万円もの収入を上げていることで有名な「株式会社いろどり」がどのようにして出来上がってきたかという発表資料を見たことがあるが、かつてのQCサークルそのものと言ってもよい内容であった。
 関係する人達が個人個人、みなバラバラな状態では、統一して高いレベルの活動は実現しない。重要なことは、全体を指導するリーダー、全体の活動を統一的に説明する理論、個々の活動の確実に結果へと結びつける手法、そして全員に対する動機づけとメンバーの参画意識などが非常に重要になる。
 30年前には筆者もホームセンターを中心にそのような改善活動を指導していたが、さまざまな企業のチームでいろいろなテーマに取り組み、多くの成果を上げている。
 中には、1年間の活動で10倍以上売上を伸ばした商品などもあり、部門売上が2倍を超えたところもあったから、やり遂げたメンバー達は自信を深め、大きく成長している。
 製造業で実績のあるIE、QC、VEなどの改善手法、現場で改善を行うQCサークルや小集団活動という活動形態は、現場スタッフの能力を引き出し、モチベーションを高めて、組織として大きく成長するという点で中小零細規模の企業や団体に向いている。
 実際にこのような活動に参加して成果を上げたことで、それまで組織にもあまり馴染めず、いつも辞表を胸にしのばせていたという人が、S、A、B、C、Dの5段階評価のD評価から一気にS評価まで変わったというケースもある。
 基本的に人はある程度の能力を持っているが、実際に仕事の場面でその能力を十分に発揮している人は少ない。しかし、何かのきっかけがあって、上手いやり方を自ら工夫して試し、成果を上げることができると、それを楽しめるようになり、能力をどんどん発揮するように変わる。
 同じ時間、その職場で過ごすのであれば、つまらないと思って過ごすよりは、楽しみながら良い結果を出した方が自分も組織も進化できるし、成果が上がれば報酬という形でも反映されるから、良いことばかりである。
 今後は急激に人口が減り、高齢化するから限られた人達で効率よく成果を出していく必要がある。現在、人工知能やロボットによって将来取って代わられると考えられる職種が盛んにニュースとしてとり上げられているが、新しいことを工夫して創りだすことは人間にとって重要なことであるし、そのような能力を高めていくことは今後とも重要なことである。
 難しい状況に直面しているからこそ、もう一度IEやQCサークル、小集団活動などに取り組んでみることも大切だろう。むかし流行ったから古いというのではなく、いつの時代も工夫をして進化することが重要だから、やってみる価値はある思うが、どうだろうか。
 

時代の変化は意味・価値の変化 それが理解できなければ次のステージには進めない

 時代の変化を感じるのは、モノ・コトの意味がそれまでとは変わり、価値が変わった時である。
 例えば、園芸の世界を見ると、昔の人は身近にある草木を楽しんでいた。盆栽やサツキなどは一部のマニアが楽しむ特別な趣味であり、品種改良や品評会に出すことが主な目的であった。
 園芸が大きく意味を変えたのは、観葉植物が「インテリアグリーン」としてインテリア=装飾というポジションに変わった時である。
 マンションの普及から洋室が増え、畳からカーペット、フローリングと室内のつくりが変わったことで、インテリアグリーン、インテリアミラー、絵画などヘアを装飾する商品のニーズが高まった。
 品種改良や品評会は特殊な一部のマニアのモノでしかないが、インテリアであれば、広く一般の人が日常生活の一部として取り込むことができる。
 ホームセンターが急激に成長し、店数を増やしたのとタイミング的にも一致している。テレビ、雑誌などで盛んに特集されたこともあって広く一般に普及していった。
 一部の人の特殊で専門的なモノから、誰でも取り入れることのできる一般的なモノに意味を変えたことが、園芸マーケットの拡大、主なチャネルであるホームセンターの拡大に大きく影響している。
 その後、いったんブームは収束するが、新たに「ガーデニング」「イングリッシュガーデン」となって、クラフト(手工芸)のポジションでブームを巻き起こす。インテリアはイミテーションでも成り立つ静止物という性格が強いが、ガーデニングは植物の特性を理解した上で、さらにさまざまな花苗、カラーリーフ、器や装飾小物を組合せて一つの形を創り上げるという点でクラフト的な要素が強い。ハンギングバスケット、コンテナガーデン、アレンジメントなど花苗やカラーリーフを使って創り上げることに大きな意味があり、中高年女性中心に支持されてブーム化した。
 現在は、そのブームも収束し、東日本大震災以降の省エネからはじまった家庭菜園が広く定着しているという状況にある。
 一時期ブームになった年末のイルミネーションと同じで、ある程度盛り上がっても行きつくところまで行くと、多くの人は疲れてしまい、高齢化と共に徐々に離れていってしまう。
 アクアリウムも同じである。金魚や錦鯉と違って、アクアリウムという名前、オシャレな曲面ガラスの水槽などが「インテリア」というポジションでとり上げられ、テレビドラマでも盛んに放映されたことから、これもまたホームセンターチャネルをベースにして広く普及していった。
 一部のマニアのものであったものが、広く一般に受け入れられる時は、特別な趣味の世界から、誰もが日常生活の中で当たり前に取り扱えるモノへと意味を変えるからマーケットは大きく拡大する。
 品種改良、品評会からインテリア、クラフトと意味を変えた園芸、品種改良、品評会からインテリアへと意味を変えたアクアリウム、...、これらは意味を変えたことで広く普及し、それに伴いチャネルも変わっている。
 時代の変化は、商品を含めたモノの意味、価値が変わることによって広く一般に普及したり、逆にブームが収束したりすることと一致する。
 sightseeingがsight doingに変われば、ただ見て歩く観光は衰退し、食べ歩き、買物ツアー、体験ツアーといったdoing要素が入らないと見向きもされなくなる。
 なぜマーケット情報が重要なのか、マーケティングが重要なのか、と考えた時、この意味の変化=時代の変化を読み取り、ビジネスのフィールドを修正したり、ビジネスモデルを修正したりすることで、次の時代へのシフトをスムースに行えるようにする必要があるからである。
 それができなければ、いつまでも もう無くなってしまった意味、過ぎ去ってしまった価値観に引きずられて縮小するマーケットを追いかけることになる。それを売れなくなったと嘆いても意味がない。マーケットが常に変化するのは当たり前のことである。
 いまの時代も、またいろいろなモノ・コトの意味が大きく変わろうとしている時代である。爆買いでさえ、物からコトへ移りはじめていると言われ、温泉に入ったり、治療や美容整形を受けに来たりというように、さまざまなサービスへと消費の方向がシフトし始めている。
 国内でも、既にカーシェア、バイクシェア、アパレルのレンタルは当たり前であり、購入し、所有するよりも必要な時に必要なものを借りて使うという消費スタイルが広く定着し始めている。
 物を所有すること(ストック)から使うこと(フロー)へと消費の意味が変わり始めていることは、大きな流通構造の変化(物の供給の仕方)=チャネルシフトが起こることを意味している。
 小売がレンタルに変われば、人口に対して同じ商品をたくさん必要としなくなる。一方、飽きないように多くの種類が必要になるから、現在よりもさらに多品種少量生産が必要になる。購入するわけではないから、商品そのものの価格は販売用よりも高額にシフトする。
 物づくりそのものに対するニーズが大きく変わることになる。
 さらにUberに象徴されるようなシェアリング・エコノミーが当り前になれば、大量の物にこだわることは、過去の遺物と言われても仕方ない状況になるだろう。
 時代の変化は、物の意味を大きく変える。それに伴いビジネスのフィールド、ビジネスモデルも変わっていかなければ、企業はいずれ自然淘汰される。
 人口が減少し、高齢化することによって消費量も減少する。さらに物消費からコト消費へと消費者の志向、ライフスタイルが変わり、シェアリング・エコノミーによって、これまでであれば何もせずにムダにしてきた能力の空き、隙間を使って新たなビジネスが生まれる。
 機械・設備など新たな物への投資がなくても稼働率を高め、生産性を高めることで新たなビジネスが生まれる。
 たくさんの物をつくり、たくさんの物を売ることでしか成り立たない構造が変わろうとしている。大量生産、大量販売に依存するビジネスモデルにこだわっていては、生き残ることは難しくなる。
 変化の方向、変化の仕方はある程度見えているから、問題はこれまで構築してきた物ベースのインフラにどのように対処するかだろう。
 いつまでも捨てられなければ、次のステップは踏み出せない。意思決定することが重要になる。そう考えると頭の切り替えが最も重要になる。


「人間観察バラエティ モニタリング」で見えた消費者の志向の変化 総合スーパー(GMS)再生の救世主になる?

 YBS系の「人間観察バラエティ モニタリング」という番組で、食堂に家族で夕食を食べに来たお客に対し、自分でテーブルセットをすると100円引き、食材を準備すると〇〇円引き、調理まですると〇〇円引き、洗い物をすると〇〇円引きという仕掛けをやっていた。
 企画の狙いとしては、普通の食堂に食事をしに来たお客が「割引き」に対してどう反応するのかを見たかったのだろうが、意に反してお客が喜んで取り組んでしまったことで、いささか拍子抜けしているようであった。
 以前から言っている観光業界では、sightseeingではなく、sight doing出ないと売れなくなっている、という状況が、飲食、小売りなどいろいろな場面で起こっているだけなのだが、古い感覚だけで見ていると、何か異常な状態が目の前で起こっているようにも見えるのだろう。
 特に面白かったのが、祖父母、母親、子供という家族の例だった。子供たちは何でもやりたがるし、お母さんもそのうち夢中になる。おじいちゃんは孫たちが一生懸命に調理する姿に目を細める。出来上がった料理も特別美味しく感じたようである。
 以前、テレビのインタビュで若い男の子が「物にお金を使うのなら、思い出に使いたい」と言っていた。
 物が溢れ、物を入手するチャネルも実店舗以外にスマホ、PC、一般小売にオークションとさまざまであるから、買物(物を入手する)という行為に対する価値観、消費に対する価値観も大きく変わっていると考えるべきである。
 そう考えれば、総合スーパー(GMS)も、ただ広い売場を持て余しているのではなく、建物全体を体験型消費だけにしてしまうくらいのことをやれば、多くの人達が遊びに来て、楽しみながら買い物するように変わるかもしれない。
 そもそもイトーヨーカドーではバーベキュースペースを提供して利用客数も肉の売上も伸ばしたという実績を持っているから、それを発展させて、さまざまな商品分野に応用するところまで持っていけば面白いのに...と思うが、どうだろうか。これまでの常識から外れない限り、これまでとは大きく異なる結果は得られない。
 いつまでも商品をたくさん売ろうとするから、コモディティ商品ばかりになり、競争も価格競争中心に激しくなって、商圏も狭まるから、状況はどんどん悪化する。望むのとは反対の方向へ向かっていく。何十年も繰り返してきたことである。
 広い面積を持つ総合スーパー(GMS)が体験型消費だけの売場に変わることができれば、商圏は確実に拡大するし、客単価も確実に上がるだろう。
 日常生活に必要な商品を買う店でなく、家族、学生のグループ、会社の同僚などが「集う」ことができるスペースになれば、足元商圏以外からでも集客は可能になる。人が集まれば、イベント的な消費に変わるから、確実に客単価は上がる。企画まで提案すれば、バリエーション、商品もある程度コントロールでき、予約の比率を高めればロスも減るから粗利率は確実に上がる。
 物売りにこだわらなければ、まだまだできることはたくさんあるはずである。
 変化の方向は決まっている。体験型、参加型、自己実現型である。
 食も衣も住も「できるようになれば本人は変わる・成長する・進化する」、皆が集えば「楽しい時間が共有でき、グループ内の状況は変わる」。
 これ以上の「物の充足」は必要ではなく、いま必要なことは「状況の充足=進化・改善」である。