テレビで経済番組を見ていたら、安さを訴求している店を事例として紹介し、盛んに「節約志向」「節約志向」とアナウンサーが言っていた。解説の専門家も盛んに「節約志向」「節約志向」と解説していたから、そういう番組なのかと思ってみていたが、「???...」「本当???」「なぜ、表面しか見ない⁉」と不思議に思った。 ずいぶん前になるが、ディスカウントストアの駐車場を見るとベンツ、アウディ、BMWなど外車が数多く止まっていた。 日本は、階級社会ではないから、収入と住んでいる地域、乗っているクルマ、買物する店などが必ずしも一致しない。 アメリカのように、この道路から向こうの住宅は〇〇万ドル以上で、年収いくら以上の人達が住んでいる。こちらはアジア系が多く、向こうはヒスパニックが多い地域、....などということもない。 年収1000万円以上の人でも当たり前に100円均一ショップで買い物するし、ディスカウントストアで買い物することも、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、総合スーパー、百貨店で買い物することもある。 それでは100円均一で買い物をするのは、節約志向なのか? ディスカウントストアで買い物をするのも節約志向なのか? あるいはドン・キホーテで買い物をするのも節約志向なのか? というと大いに疑問が残る。 「買物をする」という行為は、必ずしも経済原則と一致しない。特に日本の場合には、いわゆる昔から言われているような収入と買物の間にきれいな相関関係が成り立たない。外資の企業が日本に進出して戸惑うのは、彼らが知る経済原則、マーケティング理論だけでは日本の消費者(購買行動、価値観)を理解することがなかなか難しいからだろう。 同じ商品を高く売っている店と安く売っている店があれば、わざわざ高く売っている店に行く必要はないだろうし、どこでも価格競争をやっている時代だから、単に商品が安いというだけでお客を引き付けることも難しくなっている。 むかし、ジョイフル本田の店長が、自店の魅力を「発見の喜び=何があるか分からないから、何かを見つけて買えた時の喜びが大きい、それが魅力」と言っていたことがあるが、ドン・キホーテについても、全く同様に「どこに何があるか分からないから、それを探すのが楽しい」と魅力を語ってくれた人がいた。 ダイソーの大型店、ピンクダイソーなどを見れば、他の店には売っていない商品が数多く並んでいるから、別に100円均一(いまは価格帯が広がっているが...)でなくても十分にお客にとっては「行く価値」のある、魅力ある店ということになる。 ピルケース(薬のケース)やネイル関連商品など見ればドラッグストアの品揃えをはるかにしのぐし、プラスチック成型品などでもホームセンターをしのぐ品揃えがある。 低価格を訴求することは、どんな業態、企業でも当り前に行われているから、消費者を引き付けているのは、単に価格だけではないはずである。そこを追求するような番組があれば、大いに参考になるのだと思うが、表面をなめただけで分かったような解説をしていたのでは、いつまで経っても高いか安いだけの話から抜け出せない。 本質からどんどんかけ離れた方向へ進んでいってしまうのでは、困ったものである。
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