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シンギュラリティ? 急激に進化するデジタル技術、増え続ける情報量、AI時代に人はどう対処する⁉

だいぶ前になるが、「情報爆発」という言葉が言われていたことがある。その時代が情報爆発だったのであれば、いまは情報ビッグバンとでも言えばいいのだろうか。
Susieというサイトに掲載された「これから10年の間に大注目される!驚くほど近未来な11の職業」という記事の中に8:ニューロインプラント技師という職業がある。
脳研究のテクノロジーは大きく進歩し、頭のなかで考えていることをコンピューターにダウンロードできる時代になると脳のバックアップエンジニアやリアルタイムMRスキャナーの技師などが活躍するのではないかという近未来的な話である。
脳を研究してAIに応用し、そのうち脳とコンピュータが一体化するような話である。
この記事のように「頭の中で考えていることをダウンロードする」のも重要だろうが、ここまで情報量が増えてくると、「膨大な情報量を頭の中に入れて処理するインプットの方法とプロセス」を革命的に変更しないと頭の中に情報を入れるのに時間がかかり過ぎてどうにもならないない。
頭の中で考えていることをダウンロードするのもよいが、それよりも頭の中で情報を処理して考えるには外界にある膨大な情報を頭の中に入れ、認識させる(ダウンロード?)上手い方法を見つけ出す必要がある。
将棋電王戦の様子を詳細に追いかけたテレビ番組を見たが、すでにモニターを見ながらコンピュータとの戦い方をシミュレーションしていたのでは、経験できる=頭の中に入ってくる情報量が少なすぎて、いくら時間があっても人間の持つ24時間365日では対応できない。

残念なことに、現在我々が目や耳からインプットできる情報の形は文字、図表、音、画像、動画などでしかない。音も動画も情報量の割にはインプットするのに時間がかかり、現在のデジタルのレベルとはあまりにも掛け離れている。デジタルファイルをダウンロードするのとは単位時間当たりの情報量が桁違いである。
そうであれば、どこかの段階で文字、図表、音、画像、動画などを超える「膨大な情報量を瞬時に人間の頭の中に入れる新たな方式・仕組み」が必要になる。
一つは、文字、図表、音、画像、動画などに代わる情報の方式・形式(記号化)であり、もう一つは頭の中に認識させる(インプット)方法・仕組みである。
これができない限り、AIがどんどん進化しても、その先を開発する人間が何処かで限界を迎えてしまう。
以前、一生のうち、脳は100%有効に使われることがなく、多くの部分が未使用のままであるというような話を聞いたことがある。その未使用部分を目覚めさせて全く異なる進化をするのか(サバン症候群やアスペルガー症候群がヒント?)、PCのメモリーとCPUのようなものを脳に補助具としてつけるのかは分からないが、いずれにせよ、そのようなことが研究され、具体的になる必要があることだけは確かだろう。

教育の仕方も知識優先ではなく、頭の使い方=思考方法に切り替えていかないと、本来持っている能力を目覚めさせないまま封じ込めてしまう。
将棋電王戦を見てわかったことは、人間はコンピュータと違って「怖がる」「迷う」「自信を無くす」「後悔する」ことで本来の能力が発揮できなくなるという点である。このような感情は、実に「人間らしい」ことなのだが、人間にとっては、それらの要素を残しながらも能力を十分発揮できるような方法を見出す必要があるのだろう。

 

 

 

 

 

 

人口が減る都市、減らない都市を見分けて対処しよう‼

◆7月13日、住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成28年1月1日現在)が公表された。それによれば東京23区内には約920万人が暮らす。東京都は社会増ばかりか自然増も加わり、この1年間で118千人も人口が増えている。先回の国勢調査では5年間で東京都35.4万人、うち23区32.7万人増えているから、このペースで2020年東京オリンピックを迎えれば、次の国勢調査までに東京都だけで60万人以上の人口が増えてもおかしくはない。 平成27年国勢調査 人口速報集計結果では、この5年間に全国で94.7万人減少しているにもかかわらず、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では、その5年間に鳥取県の人口(57.4万人)に匹敵する人口(50. 8万人)が増加している。 東京臨海副都心など超高層マンション(集計上、一つの目安として20階以上 株式会社不動産経済研究所)が建設されると平均して一棟当たり300~500戸、50階以上の超超高層マンションになると、一棟当たり800~1000戸もの規模になる。 首都圏だけで2015年~2019年までに178棟、77,824戸の完成が予定されており、うち東京オリンピックへ向けて50階以上の超超高層マンションだけでも西新宿、勝どき、晴海などに14棟、13000戸も計画されている(分譲済み含む)。 単純に世帯人員が2人とすれば、一棟につき1000~2000人の人口が増えることになり、何棟かできれば町や村と同規模の住民が新たに加わることになる。  また、都内には千葉県、埼玉県、神奈川県などから毎日300万人弱が通勤通学で通ってくる。さらに国内外からのビジネス客、観光客も多いから山手線の29駅(JR、私鉄、地下鉄など)の中には東京駅、品川駅、秋葉原駅、新宿駅、渋谷駅、池袋駅など1日の乗降客数・乗り換え客数が100万人を超える駅がいくつもある。1つの駅だけでも毎日1つの県の人口が行き来しているようなものであり、山手線29駅(JR、私鉄、地下鉄など)を合計すれば延べ2100万人と四国・九州を合わせた人口にも匹敵する。 マンションばかりでなく、超超高層オフィスビルの増加によって、周辺エリアから通勤で通う人も急激に増加し、しかも局所的に人が集中する。昼夜人口比率が極端に高まるエリアでは、新たに様々な人が集まることで多様なニーズによるマーケットの急拡大が起こる。 一方、全体で約100万人減っているのに東京圏は50万人増えているということはそれ以外の多くの道府県で150万人の人が減少していることになる。人口が増えているのは、平成27年国勢調査では8都県ということになっているが、住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成28年1月1日現在)では、滋賀県がマイナスに転じているから、人口が増加しているのは、東京圏1都3県と福岡県、愛知県、沖縄県の7都県の実である。 ただし、「日本の地域別将来推計人口 —平成22(2010)~52(2040)年— 平成25年(2013年)3月推計」の値と平成27年(2015年)国勢調査 人口速報集計結果を比較してみると、人口の減り方が推計値よりも小さくなっている道府県は多く、増加すると推計されている県の増え方も推計値より大きくなっている傾向にある。 これらを整理したのが 図表1 都道府県別 平成27年国勢調査と日本の地域別将来推計人口(2013年3月推計) 2015年人口の差 である。
グラフでは、右上(2010年~2015年までの5年間で人口が増え、なおかつ2015年実績値は「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月 推計)国立社会保障・人口問題研究所」推計値より多い)、右下(2010年~2015年までの5年間で人口が増えているが、2015年の実績値は同推計値よりも少ない)、左上(2010年~2015年までの5年間で人口が減少したが、2015年実績値は同推計値よりも多い)、左下(2010年~2015年までの5年間で人口が減少し、なおかつ2015年の実績値が同推計値よりも少ない)という4つのエリアに分けて、都道府県の状況を整理してある。
★東京都ははるか右上に位置し、値が大きいためにグラフのメモリの関係でカットしてある。(5年間の人口増加354,317人、推計値との差164,281人)
詳細はまた機会を改めて詳細に説明するが、それぞれの都道府県について市区町村のポジションを同様にグラフ化してみても、人口集中が局所的に起こっていることが分かる。

◆「日本の地域別将来推計人口 —平成22(2010)~52(2040)年— 平成25年(2013年)3月推計」から見る人口が減少する都市と増加する都市の見極め方
平成27年国勢調査 人口速報集計結果では、平成27年10月1日現在の人口は1億2711万人(平成22年比▲94.7万人)、市町村単位では、1,719のうち実に8割以上(1,416、82.4%)の市町村で人口が減少し、5%以上減少した市町村も48.2%と半数近くにのぼる。うち10%以上減少も227(13.2%)ある(いずれも平成22年比)から、日本全体としては、人口が増える市区町村は珍しい存在ということになる。
一般的に考えれば、人口規模の大きい都市が周辺の中小規模の都市から人口を吸収するから人口減少の仕方は少なく、規模が小さければ小さいほど減少の仕方が大きいと考えがちである。
しかし、「日本の地域別将来推計人口 —平成22(2010)~52(2040)年— 平成25年(2013年)3月推計」について、将来の人口増減に影響を与えると思われる要素をいろいろと分析してみたところ、人口規模が大きい市区町村でも大幅に人口が減少するところがある一方、人口1万人規模の市区町村でも人口が将来増えると推計されているところがあることが分かった。
キーを握っているのは図表2 2015年65歳以上人口率で層別した8パターンの状況図表3 2015年65歳以上人口率別 2015年総人口と2025年総人口指数 からも分かるように、現在の65歳以上人口率である。
以前にも3万人、5万人、7万人、10万人、15万人、20万人、25万人、30万人と8つの規模の都市の中から2040年の総人口指数(2010年=100)が100超(人口が増える)と60~70(人口減少幅が大きい)の都市をランダムに選んで比較してみたことがあるが、都市の規模からでは人口減少について明確な法則を見出すことはできなかった。
それに対し、65歳以上人口率が18.0%以下(12.4-18.0% 23都市)、20.0%(19.5-20.4% 31都市)、25.0%(24.5-25.4% 90都市)、30.0%(29.5-30.4% 90都市)、35.0%(34.5-35.4% 77都市)、40.0%(39.5-40.4% 40都市)、45.0%(45.4-45.4% 23都市)、50.0%(50.1-60.9% 17都市)というほぼ値が一定範囲内にある8パターン、391都市について調べてみると、
図表3のような散布図になった。
横軸に総人口指数(2010年=100)、縦軸に総人口(人)をとって、散布図を作成してみる。仮に人口規模が大きい方が人口の減り方が小さい、あるいは増加し、人口規模が小さい市区町村の方が減少の仕方が大きいとなると、各市区町村は左下から右上に向かって正比例するように並ぶはずである。
しかし、実際には総人口指数が同じであっても、縦に長くばらついてプロットされている(特に65歳以上人口率が20-25%で縦に長い)。人口規模が大きく違っても総人口率が同じということが見て取れる。また、例えば50,000~100,000人規模の市区町村というように同規模の市区町村(横に見る)を見ると総人口指数は80-120くらいというように大きくばらついているから、人口の減り方は人口規模とほとんど関係していないことが分かる。
要するに65歳以上人口率が将来の人口の減り方に大きく影響していると考えてよいということになる。
ただし、ここで見ているのは、2015年に対して2025年がどういう状況にあるかというあくまでも10年後までの予測である。その先にどんな状況が待っているかをさらに進めてシミュレーションすれば、現在65歳以上人口率が低い市区町村は、人口は減らないが将来は急激に高齢者が増え、その後一定数値に収束する。一方、現在65歳以上人口率が高い市区町村は、人口は減るが高齢者は大きく増えることはなく、ほぼ一定の年齢構成に収束して人口が減少していく。
サイクルが20年くらいずれていると見てもよいだろう。

◆人口が減少する都市と減らない都市を見極めてどうするのか?
全ての市区町村について、ほぼ人口の減り方について見極めをすることはできると考えてよいだろう。問題は、見極めたうえでどうするのかという対応の仕方である。
多くのチェーンストアがドミナントを形成しているからある地域の人口が急激に減少したり、あるいは急激に高齢化したりすれば、ドミナント全体が立ちいかなくなる。それは単一地域でも複数の県にまたがっていても同じである。
団塊の世代が約500万人おり、2020年には70歳を超え、すぐに健康寿命を超えるから、状況の大きな変化は一気にやってくる。
「茹でガエル」の話のようにならないようにするためには、すでに動き出していないと間に合わない。「経営」が試されていると考えるべきである。

 

 

 

 

デジタルばかりが進化する時代、商品の分類体系=おいてきぼりのマネジメント体系をどうする?

商品はビジネスの基本に位置するものであり、非常に重要な意味を持つが、マネジメントの仕方については未だ定説がなく、情報システムの管理単位の設定の仕方・扱い方を見ても非常に曖昧なままである。
通常、商品分類体系は、デビジョン-デパートメント-ライン-クラス-アイテム-SKU、あるいは事業部-部門-大分類-中分類-(小分類)-アイテム-SKUというような構成になっており、この単位の系列がそのまま組織、予算単位になっている。
このようなツリー構造の分類体系で常々問題となるのが、ツリー状に分類された商品を横断的に集計することができないことである。
例えば、ブレザー、ネクタイ、ベルト、バッグなどをテイストでくくりたい、シャツブラウス、スカート、スカーフ、バッグ、靴、アクセサリーなどをテイストでくくりたいといった場合である。
ちょっと気の利いた担当者であれば、誰でもチェックしているいたって当り前のことであり、このような見方ができないと売れるアイテムに連動した商品構成、売場づくりができない。
しかし、多くの企業で、このような集計ができるシステムを持ち合わせていないというのが実情である。

もう一つ、商品のマネジメント上の問題としてシステムの中に組入れられていない分類の仕方がある。
図表-1 商品の体系 は、商品をその特性によって分類し、体系づけたものである。(図表の荒利率=粗利率)
全体としては、大きくプロプァー商品(普通品)と特売商品に分けている。プロプァー商品は、さらに定番商品とスポット商品、定番商品は年間定番と季節定番というように分けられる。
特売商品は、チラシ掲載商品(プロプァー商品もチラシに掲載することがある)、常備特価商品(特価定番)、スポット特売商品とに分けられる。
通常、商品分類体系は、前述のように品種など商品の類似性で分けるが、ここではチラシ掲載の有無、価格設定(値入率設定)やリピートの可否、取扱い期間など、取り扱い方の違いによリ分類している。

このように商品特性によって商品をグルーピングし、管理することは「商品全体のバランス』を確認し、精度の高いマネジメントをする上では非常に重要である。
例えば、商品トータル(例えば部門)の粗利率が低い場合には、プロプァー商品、特売商品それぞれの粗利率を確認し、さらにプロプァー商品と特売商品の売上比率が計画通りにいっているか否かを確認する。原因は分類単位の下の階層にあるから、さらにその内訳を同様に見ていくことで粗利率が低くなった原因を見つけることができる。原因が特定できれば改善方法も特定できるから修正行動がとりやすくなる。
粗利率相乗積を用いれば簡単に計算で求められる問題でもあるが、実態としての商品の中身まで追求しないと具体的な対応はできない。特に従来の品種による商品分類体系だけではプロプァーと特売商品の比率が分かりにくい(平均売価しか出ないケースが多い)から、安売りのし過ぎがあっても具体的には特定することが難しい。
また、在庫がオーバー気味になり、商品回転率が落ちた場合には「特売商品」が不良在庫として売場やストックヤードに眠っているケースが多い。
そのようなことも従来の商品分類体系をベースに見ているだけでは分からない。

また、もし、プロプァー商品に何らかの問題があれば、その原因は、定番商品とスポット商品にあるし、定番商品であれば年間商品か季節商品に原因がある。
年間定番に問題がある場合には、基本的な定番設定の考え方・方法に問題がある場合が多く、季節定番に問題があ場合には、年間定番との棲み分け、季節定番という機能についての理解ができていないケースが多い。
スポット商品が多すぎる場合にはアソート崩れの残商品が売場の鮮度を悪化させ(半端商品が売場の多くを占める)、さらに不良在庫として商品回転率の低下につながり、処理をすれば粗利率の低下につながる。
同様に特売商品に何か問題があれば、それはチラシ掲載商品、常備特価商品、スポット特売商品に問題があるから、それぞれの中身を見ていくことで原因と改善方法を具体的に特定することができる。
売上、粗利率、在庫、商品回転率、売上比率、在庫比率など、いずれの場合も相乗積の考え方で見ることができるが、それにはここであげたような分類単位でデータが集計できる必要がある。
問題の中身は、例えば売上であったり、粗利率であったり、在庫であったり、商品回転率であったりするが、いずれの場合も、個々の商品グループを明確にし、あらかじめ数値的な目標値、あるいは計画値を設定しておかない限り問題の追及をすることはできない。
たとえ「売上が悪い」「粗利が低い」という場合があったとしても、必要に応じた分類単位でデータが把握できない限り、手の打ちようがない。すべて一律にSKU管理をしている企業も多いが、そのようなシステムの企業が、このような対応の仕方をしようとすれば、一つ一つのSKUに識別コードをふって振り分ける必要がある。

いずれにせよ、どんなにコンピュータが進化しても基本は「手でできる仕組みをつくってから機械化」である。
例え何でもできるシステムがあったとても、どのような考え方でデータを集計するのかという最も基本的なことを間違えれば、結局何もできないのと同じである。

進化するデジタル技術(投資する莫大な資金)を有効に生かす上でも、いま一度、マネジメント上の管理単位について整理する必要があるだろう。

インバウンドが変調 ❓それともインバウンドで日本が変調❓

「爆買いバブルが2017年までに崩壊する理由」「三越伊勢丹、「爆買」訪日客単価3割減で急失速」 いずれも東洋経済onlineに掲載された記事のタイトルである。
もともと神風的な要素が強く、「のど元過ぎれば…」という小売業特有の体質から、せっかくの経営変革のチャンスを逃すのではないかと危惧していたが、いよいよ分からなくなってきた。
「百貨店売上3か月連続減少」「インバウンド低調」「高額商品に陰り」など、速報値が発表されるたびに様々に報道されるが、ポイントはいくつかあるだろう。
リピーターの増加、「sightseeing」から「sight doing」というように「物販」から「体験型消費」への移行、LCCによる地方空港への移行、….など、マーケットの状況が変わりつつあることは重要な変化要因の一つである。
それ以外にも、マイナス要因、プラス要因として考えられることはいろいろと指摘されているが、あまりにも中国一辺倒で迎合しすぎていることに対して、「まるで日本ではなく、中国に来ているみたい」という観光客の声もあるというからインバウンドへの対応の仕方、活かし方をどこか間違えているのかもしれない。
確かに京都の寺院を見に行って中国語とハングルの看板ばかりでは、???…となっても不思議はない。我々が海外に行って日本語の表示や看板を見ると、どこか安心するようなこともあるだろうが、それも程度問題であり、どこへ行っても日本語の看板ばかり、どこへ行っても日本語ばかりでは、興ざめしてしまうだろう。
何事も「過ぎたるは…」ということだろうが、こういうことに慣れていないと、日本人は親切心からどんどんエスカレートしていってしまう。

観光は重要なマーケットであることは確かだが、いつまでも「物売り」から抜け出せない小売業の業界体質の問題が全く議論されていないことも大いに気がかりである。
小売業の人間は、古くからアメリカ視察に行っているから分かるはずであるが、昔はみな決まってお酒とタバコ、化粧品、ブランド品などを買ってきたものである。数十万円買い物をする人も珍しくなかったが、毎年のように行っていると、そのうち買えるものがなくなってくる。
お決まりの観光地に飽きてくると、あまり観光客がいかないようなニューヨークの裏通りを散策してみたいという気持ちにもなる。また、その頃になると、そういう穴場的な場所や店を紹介した本も出てくるから、徐々に動き方、お金の使い方が変わる。
自分たちがどのように変化していったかを考えてみれば、今後我国のインバウンド消費がどのような方向に向かっていくべきかはある程度イメージできる。
メーカーは、中国人のアドバイスを受け、中国人が好むパッケージに切り替えるなどの取り組みもしているというし、多くの免税コーナーでは専門スタッフを配置して言葉だけではなく、感覚的にも分かりやすい対応をしているという。あちこちに中国語、ハングルなどの看板もついているから、観光客はどこに行ってもあまり困ることはない。
そのうち、あらためて「日本とは何か」「日本らしさとは何か」という議論が聞かれるようになるのかもしれない。
日本政府観光局(JNTO)が6月15日に発表した2016年5月分の訪日外客数(推計値)は、前年同月比15.3%増の189万4千人、2016年1-5月の合計値は972万8千人となり、昨年の同期間を約29%上回っているという。(http://inboundnavi.jp/monthly-number-may2016)

すでにテレビでは1千万人を超えたと言っていたから、どこまで伸びるか分からないが、中国、台湾、韓国などアジア中心で欧米が伸びていないのが気がかりである。
一歩舵取りを間違えると、日本がどこの国だか分からなくなってしまい、本当の意味での観光立国から遠ざかってしまうのでないかという危惧もある。
いまは急成長でみな熱くなっているが、冷静な視点から長期的な展望を持つことが必要だろう。

進化の仕方がどこかおかしい‼ 逆戻りしている?

◆製造業の進化の仕方
生物だけでなく、様々なモノ・コトについて進化のプロセスを見ると、一定の法則に従っていることが分かる。
例えば、製造業の進化プロセスを見ると、人間の進化のプロセスを象徴するような進化の仕方をしている。
① 道具・工具の利用;手の延長としての道具・工具は、作用点・保持部の形状、構造、サイズ、素材などの進化によって、作業性、出来栄えなどを飛躍的に高めることができた。
② 治具の利用;測定、位置決め、調整などに用いる治具の開発は、道具・工具とはまた違った意味で作業精度の向上、作業工数の低減を実現した。
③ 負荷の軽減;浮力、コロ、カウンターウエイトなどを利用することで負荷を軽減し、より少ない力で目的物を取扱うことを可能にした。負荷の軽減は、実質的に能力の増加と同じ意味を持つから重要な視点である。
④ 力のコントロール;テコ、滑車、歯車など力のモーメントを利用することで、力の増幅・減衰を可能にし、さらに方向の変更をも可能にした。目的に応じて力をコントロールし、さまざまな形で使えるようにしたことで、できる仕事の範囲が大幅に広がった。
⑤ エネルギー活用、機械化;位置・運動・熱・電気・化学・光など各種エネルギー活用による機械化は、人や馬などの生物的エネルギーとは比較にならないほどの持続性と量的増大、そしてエネルギーの蓄積を可能にした。
⑥ 自動化、ロボット化;センサー、制御、アタッチメント、コンピュータ、プログラミング、人工知能などを統合することで実現した自動化、ロボット化によって、人間が直接関与せずに、マネジメント機能までを包括した製造のシステム的運用を可能にした。
今後、AIの進化、AIを搭載した人型ロボットの進化など、どこまで進んでいくのか分からないが、一定の法則の従っているようにして、進化してきていることは確かである。
また、進化のプロセスは、このようなハード面の進化ばかりでなく、知識・技術・ノウハウ、マネジメント、システム、教育、運用組織、プログラミングなどソフト面での進化も重要な役割を果たしている。
① フロントヤード(製造に直接的に関与するソフト); 運営組織、業務処理・業務管理システム、工程管理・負荷計画・スケジューリング、作業・動作方法、職場編成、作業管理システム、道具・工具・ジグ、機械・設備類、教育(OJT)、IT技術、…など、現場における業務遂行を直接的に支援・マネジメントする経験・知識・技術・ノウハウなどにより、製造のレベルは進化、向上している。
② バックヤード(製造に間接的に関与するソフト);経営組織、研究開発、コンピュータ・情報システム、マネジメント、各種システム、IT、教育・トレーニングプログラム(OJT、Off JT)、…など、間接的に品質や生産性などの維持、向上を保証することで製造のレベルは支えられ、進化することが可能になった
…..などである。
ハード面とソフト面の進化は、必ずしも連動して同時に起こっているわけではないが、長い進化の歴史の中では、試行錯誤や偶発的な発見、計画的な開発などさまざまな形が混在しながら、結果として相互に刺激し合い、補完するようにして起こっている。
◆先進国と新興国の進化の仕方
20世紀が「物の充足の時代」だとすれば、21世紀はデジタル化とネットワーク化によって「物、場所、時間から解放された情報化時代」、しかも「グローバル化した情報化時代」ということができる。
ポイントは以下の2点である。
①デジタル化によって物(媒体)と機能が分離したことで、物に関する制約から解放され、同時にネットワーク化によって時間と場所に関係なく、いつでも自由にデジタル情報のやり取りが可能になった。タイムフリー(時間)、ロケーションフリー(場所)、セクションフリー(分野)、コストフリー(費用)など、画期的とも言える数多くのメリットを得たことになる。
②物(媒体)と機能が分離したことで、物を「つくり」「在庫し」「運び」「売る」ことが必要なくなった。物をつくるための設備、配送のための物流センター、トラック、販売するための店、商品在庫、…等々である。
「物」中心の20世紀型産業構造にとって最も基本的な要素である「物」と物に関わるさまざまな設備、場所、在庫、手間、人手、コスト、それらに対するマネジメントなど、多くのものから解放され、全く次元の異なる世界に入ったことになる。

先進国と新興国では物の充足と情報化という進化の仕方がまるで逆である。
筆者は、逆というよりは、先進国が経験した商品(物)の充足・進化過程など先進国が経験した物の時代で得た成果だけを新興国に移植する形で、いきなり完成度の高いデジタルとネットワーク環境を、しかも低価格で提供したと考えている。
それは先進国が新興国に対し、生産基地としての近代化を求め、提供したものであって、歴史的に見ればいつの時代も同様のことが繰り返されている。大きな違いがあるとすれば、これまでは物という同軸上で起こっていたことが、今回は物からデジタル・ネットワーク・情報という異質なものへ移行するタイミングで起こっているという点である。
物の時代を長年経験し、その枠組み・秩序の中でしか物事を発想してこなかった場合と、いきなりゼロの状態からデジタルとネットワークの世界に入る違いは大きい。
例えば、いろいろと工夫をし、長年技術を磨いてコツコツと物づくりをしてきた人が、全く同じものを3Dスキャナーで計測し、3Dプリンターで作る様子を見たら、どのようなリアクションを取ることができるだろうか。その状況を理解し、納得するまでには多くの時間を要することだろう。しかし、この変化に適応できなければ、そのスピード、量、コストに圧倒され、一瞬にして飲みこまれてしまう。
日本の製造業にありがちな「良い商品さえつくっていれば….」という考え方は、物に帰属する基本機能の性能を高めたり、二次機能を付加したり、というように物をベースに置いた物時代の発想の延長でしかない。
デジタルカメラがスマートフォンに押されて売れなくなったから高性能な機種、ミラーレスへとシフトする…、液晶テレビの巻き返しにより4Kテレビを…という発想も同様である。
基本機能の性能アップは「使い勝手」「利便性」などの二次機能、ブランドなど物から離れて独自の意味を持ちだした三次機能とは本質的に異なる。マーケットの受け止め方次第では、性能を高めることは逆にマーケットを狭めることにもなりかねない。
マーケットのニーズが、高価格でも高性能な商品を求めてるのか、一定の性能・利便性さえ満たせば低価格の方がよいとするのか、あるいはアップルのように個々の製品だけではなく、ソフト、全体システム、ブランドなどトータルな三次機能=ライフスタイルやカルチャーの価値を高めることを求めているのか、…。
また、マーケットは先進国を狙うのか/新興国を狙うのか、ターゲットはイノベーター(革新者)か/アーリーマジョリティ(前期追随者)か/レイトマジョリティ(後期追随者)なのか、これから普及する新しい商品を使うのか/ある程度普及した商品の買い替え需要を喚起するのか、一般消費者を狙うのか、初級者・中級者・上級者のどこを狙うのか、…。
そのような意味では、先進国と新興国という全く異なる進化過程、異なるニーズを持つマーケット、その中のさまざまなセグメントに対して、どのようなポジションをとり、どのようなターゲットを、どのように攻略しようとするのか、冷静に状況を整理しないと戦略を見誤ることになる。それによって競争の意味自体が大きく変わる。
進化の方向を見れば、物の時代からデジタル化・ネットワーク化・情報化と進んだ現在は、デジタル化されたトータルシステムへと向かう過渡期にあると考えられる。
新興国のパワー、ボリューム、スピード、価格に圧倒されている現状に対し、同じ土俵で巻き返しを図ろうとするのか、それとも次のステージへ土俵を移し、次世代技術で優位な競争をしかけるのか、いずれにせよ、大きなマーケットでリードしようとすれば、物づくり以上にマーケット戦略が重要になる。
特に三次機能が重要な意味を持ちだした時代ということを考えれば、基本機能の性能アップ、二次機能の付加に活路を見出そうとする手法は、現在多く見られるミスマッチの構図を象徴するものである。
我国が得意とする技術や物づくりを活かす意味でも、現在の環境変化やマーケット、ビジネスの構造変化を考え、何処に活路を見出すのかという戦略的視点が重要になる。

「クールジャパン」というキャンペーンは、日本のモノづくりやサブカルチャーなど日本特有の文化を言っているはずであるが、世界にPRし、マーケットの掘り起こしをしても、本当の意味でビジネスとしてつくり上げることができていない。
シーズ(日本のモノづくりやサブカルチャーなど日本特有の文化)はあるが、それを広めてビジネスとして回収するためのビジネス組織、戦略が一体化して動いていないからだろう。
ある意味、家電メーカーと同じで先駆していたはずなのに、物づくりや販売という具体的なビジネスの段階になると、マーケティングや戦略がなく、大きな収穫を得ることができない。
進化のパターンや全体をリードする明確なビジネスモデルがないまま、走り出したことが原因だろう。

◆現状 何処か歪に感じる進化の仕方
小売業、飲食業、サービス業、そして数多く生まれ、物凄いスピードで進化・成長しているIT系企業、いずれもメーカーのように明確な進化のパターンを見出すことができない。
大手の小売業、飲食業、サービス業などで、システム化し、効率を高めている企業もあるが、圧倒的に数が多い中小零細規模の企業では、IE(Industrial Engineering)やQC(Quality Control)・QM(Quality Management)など管理技術とは無縁といったところも多い。
IT系企業も扱っている対象が対象だけに最先端を行っているようなイメージがあるが、企業組織として見た時にはマネジメント関連が決して強いとは言えないケースも多い。
これまでのアナログ的な現場に様々なIT機器やシステムが加わったことで、どことなく近代化したようなイメージはあるが、よく見てみると、製造業にあったようなアナログ時代の進化プロセスをとび越えて、いきなり様々なデジタル技術を受け入れた、あるいは置き換えたという新興国に似た進化の仕方をしている。
それ自体がよいか否かの判断は難しいが、何処か歪な感じがする。
現在、デジタル・マーケティングなど個々のデバイスを通した様々な測定から個別にアプローチをしていく方法、技術が盛んに開発され、普及している。
しかし、個々に見ていけば扱っているのはデジタルデバイスを媒体とした様々な技術やアプリであるが、測定データをどのように解釈し、どのような仮説を立ててマーケテイングの精度を高めていくのか、ということになると、「個人の勘」に基づく「試行錯誤」というのが実態である。
何らかの理論、法則性があって、それに基づいているわけではないから、多くの物事がブラックボックスの中で進んでいく。
結局、ビッグデータと言ってもデータサイエンティストに現場(リアル)の経験・知識があるわけではないから、あくまでも最後は個人の勘や推理、アイデアなどに頼ることになる。
そう考えれば、「進化のプロセス」を客観的に整理することは、マクロでは「サービス産業=第三次産業」の生産性を高める上で重要になるだろうし、ミクロでは個々の現場の改善効率を高める上でも重要になるはずである。
進化・変化の速度が速いから、そんなことはやっている時間がないということなのかもしれないが、普遍性のある進化プロセスが設定できれば精度が上がるから、さらに早い速度で進化することも可能になるはずである。

子供の数がまた減った‼どうする?

毎年、子供の日には、その年の子供(0~14歳)の数が総務省により発表される。子供の数は1605万人、1982年から35年連続して子供の数が減少しているという。
3年区切りで見ると、0~2歳 307万人、3~5歳 316万人、6~8歳 318万人、9~11歳 321万人、12~14歳 342万人であり、2015年の出生数が5年ぶりに前年比4000人増えて100万8000人ということだから、このまま推移すると、3年後にはさらに子供の数は40万人くらい減ることになる。

結婚しない人が増え、晩婚から子供の数も減るし、女性活用といってみても無認可保育所に入れる手間と費用を考えれば、子育てなど現実的な選択とは思えないほど負担は大きい。人口減少問題の解決には、移民か出生数の増加しか考えられないが、保育所からはじまる子育て、教育費の増大を考えると、すでに異常な状況にあるとしか思えない。教育費の負担を奨学金という形で先送りすることもできるが、奨学金の支払いができずに自己破産したなどという話もマスコミに登場しているから、難しさを二世代に分散しただけで抜本的な解決にはならない。
基本的に現状の枠組みでは対応が難しいことは分かっているから、仕組みを根本的に変えるしかないが、枠組みそのものを変えずに部分だけいじって済ませようとするから無理がある。
あらゆる分野に言えることであるが、過去の枠組み、仕組みを捨てないで現状を変えることはできない。
身につけなければいけないことがたくさんあり過ぎるのに、未だに一つずつ、しかも優先順位をつけずに昔のままの価値観で片っ端から知識を詰め込もうとする。
我々でさえ、より専門化し、増え続ける情報を追いきれない状況にある。しかも進化に伴いジャンルは増え続け、しかも新たに解明されることがあれば、それまでの情報は修正されるから、常に正しい情報に更新し続ける必要がある。
そのような環境にいる子供たちに、優先順位をつけず、選択もさせないまま情報を詰め込むのが教育というのでは、どうでもいいことだけでオーバーフローしてしまう。どうでもいいことをテストして100点をとったとしても、そのことに何の意味が見出せるのか、はなはだ疑問である。怖いのは、その100点を皆が勘違いしたまま、長い時間過ごしてしまうことである。
10年後、20年後にその100点は全く意味をなさず、本当に必要で肝心なことがたくさん積み残されていたとしても、だれも責任をとることはできない。
大切なことは、子供たちが大人になり、社会に出た時に、しかも何十年かに渡り役に立つ教育がなされることである。
10年後になくなる仕事が話題になっている状況を考えれば、不要なモノは捨て、必要なものに絞って提供するのが、本来の教育の責務だろう。
一律に評価するための知識を与えるのではなく、10年、20年経っても陳腐化せずに発展させることができる考え方と方法、知恵を実技として教えなければ子供たちがかわいそうである。
いまのままでは、これまで評価の高かった子供が社会に出て全く使いものにならないという状況が必ず起こってくるし、特定分野で非常に高い能力を持っている子が途中で潰されてしまい、本当の意味で持てる能力を活かすことができないということも起こるだろう。どちらも本来の能力を適正に生かすことができなかったということでは悲惨であるし、いろいろな意味で損失である。
いまがどうかではなく、将来から逆算して、いまをどうするのか、というように教育の仕方・内容を決めていかないと、「ゆとり教育」同様にモルモットにされる子供たちが増えるだけである。
人口が減少するから、本来ならクオリティを高める必要があるが、いまのままでは、人口が減少するだけでなく、クオリティも低下する、といった状況になりかねない。
一律に満遍なく知識を与え、みな横並びに同じ基準で評価して….などという時代はとうの昔に終わっている。
それぞれの特性に応じて、より高いレベルで能力が発揮できる得意分野で、個が生かせるようにすることでしか、人口減少に対応することは難しい。
子供の減少は、すでに何十年も続いているし、将来に対する推計結果も出ているのであるから、いまさら毎年の行事のように「子供が減った」と騒ぐのではなく、「だからどうするのか」という具体的な議論をするべきだし、議論に基づいた修正を具体化する必要もあるだろう。特に小中9年間という膨大な時間とコストの使い方は抜本的に見直す必要がある。あとになってから修正するのでは間に合わない。

 

都市部への人口集中、地方の過疎化が新しい商品販売のシステムを生み出す

2月26日に平成27年国勢調査 人口速報集計結果が発表された。平成27年10月1日現在の人口は1億2711万人(平成22年比▲94.7万人)、大正9年の調査開始以来、初めての人口減少となっている。
都道府県別には東京都が1,351. 4万人(全国の10.6%)、以下、神奈川県(912.7 万人)、大阪府(883. 9万人)、愛知県(748. 4万人)、埼玉県(726 .1万人)、千葉県(622. 4万人)、兵庫県(553 .7万人)、北海道(538 .4万人)、福岡県(510 .3万人)と続き、上位9都道府県で6847.3万人、全国の過半数(53.9%)を占める。(ただし、大阪府、兵庫県、北海道は、人口は多いが減少している。)
特に東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は3612.6万人、実に全国の約3割(28.4%)が集中し、5年前に比べると1都3県で50. 8万人(東京都が35.4万人、うち23区32.7万人)、最も人口が少ない鳥取県 の人口(57.4万人)に匹敵する規模の人口が増加している。
東京一極集中がかなりのスピードで進んでいることになる。特に港区3.8万人増、江東区3.7万人増、板橋区2.6万人増、大田区2.4万人増、世田谷区2.3万人増、台東区2.3万人増など23区で極端である。50階超の超超高層マンションが1棟できると800~1000戸が増える計算になるから限定されたエリア内に急激に人口が増えることになる。
全国を市町村単位で見ると、1,719ある市町村のうち1416、実に8割超(82.4%)で人口が減少し、そのうち5%以上減少が約半分(48.2%)の828、同10%以上減少も227(13.2%)ある(いずれも平成22年比)。増加はわずか303(17.6%)であるから、いかに東京都の一部に、しかも急激に人口が集中しているかが分かる。

このようなデータを見ると、立地ごとに将来的にも存続可能と考えられる小売業態、不足すると考えられる新規業態についてある程度の予測ができる。
例えば、超超高層マンションの建設に伴い人口が局地的に急激に増加した地域では日常生活に必要な食料品や日用品、実用衣料などを買う店舗が確実に不足する。超超高層ビルの建設に伴って急激に昼間人口が増加した地域では、ビル内でカバーすることができれば別であるが、そうでなければ昼食ニーズに対応することが難しくなる。
店をつくるにも土地がなく、仮に土地があったとしても、高くて既存業態の経費構造で対応することは難しいから出店することは難しくなる。

一方、地方の過疎化地域では、移動手段を持たない高齢者が増えることで商圏は狭まり、来店頻度も下がる。人口減少で商圏密度は下がるから地域一番転であったとしても固定費負担ができずに店舗を維持することが難しくなる。

そう考えると、過疎地の状況は、アメリカで通信販売が誕生し、発展した時代と環境的にはよく似ている。また、超超過密地域もマーケットサイズが大きいのにそれに対応可能な店舗が身近になければ、商品の調達手段は通信販売や移動販売しかないから過疎、過密どちらの地域も店舗によらない商品調達手段に頼るしかない。場合によっては、シェアリングエコノミーの形とコストこのような業態が一緒になって一つの業態(形態?)が成り立つことも考えられる。

従来の実店舗が成り立つのは、足元人口の密度が高い都市部周辺のベッドタウン、足元人口にビジネス客、観光客などが加わるオフィス街周辺、ターミナル立地、観光地など、人が集まる限られた地域ということになる。

日本という国は、このようにいくつかのパターンに分かれ、それぞれの特徴に合わせた商品供給形態に収束していくと考えられる。
ナショナルチェーンといった発想は、遠い過去の話ということになるのかもしれない。
昔は、都市ごとに陣取り合戦をして店づくり競争をしていたが、今後を考えれば物理的な都市の陣取り合戦ではなく、セグメントされたマーケットの陣取り合戦ということになるだろう。
いつまでも、昔のように実店舗での陣取り合戦をしていたのでは、いずれ既存店の固定費で立ちいかなることになるだろう。(CGP;チェーンストア・グローイング・パラドックス 参照)
時代の変化は量的変化に質的変化が加わり、物(所有)の時代から機能とサービス(非所有)の時代に変わっている。物事の本質を理解しないまま、現在の延長線上で全てが動いていくと考えるのには無理がある。
20年以上も総合スーパー(GMS)の不振が変わらないことを見ても分かるが、時代の変化を読み取り、次なるシナリオを描くことができなければ、ただいたずらに時間が過ぎていくだけである。

 

 

 

 

 

 

コア技術を再確認 もしなければ早急に確立を…

小売業にとっての資産というと、店舗の土地・建物と商品在庫など、どちらかと言えば目に見える物が中心となる。ただし、ブランド価値が言われるようになると、ブランドも重要な資産だし、月並みではあるが人も大切な資産だということになる。
それでは、コア技術は?というと、なかなか難しくなる。
例えば、出店候補地を探す・交渉する、商品や取引先を探す・交渉する、といったことも大切な技術のはずであるが、このような「人」についてまわるものは、昔から「技術」とは認識されていない。
筆者がイトーヨーカ堂を辞めた時、チーフバイヤーは「一度辞めると決めたものを止めはしないが、フォーマットをまとめたファイルだけは置いていけ」と言っていた。
販売・仕入れに使うデータをどのように収集し、整理すればよいのか、それをまとめたフォーマット、しかも使いながら修正を繰り返し、進化したフォーマットは技術とノウハウが集約した立派な財産である。
いまでは知的財産ということも当り前であるが、小売業、チェーンストアには技術、ノウハウと認識されず、保護もされず、ブラッシュアップもされず、個人の技量に任され、放置されたままになっている技術、ノウハウがたくさんある。
売場レイアウト、什器配置、陳列、商品開発方法、チェーンとして店舗を管理運営するチェーンシステム、バイヤー、ディストリビューター、スーパーバイザーなどの専門職組織と機能設定・具体的な業務の仕組み、人の育成方法、….等々。長年かけてつくり上げてきた業務の仕組みは有用な技術である。しかし、未だにそのような認識はあまり持ち合わせてないようである。
組織、業界の中に居たのでは分からないことが多いという言い方もできるが、自社の重要な資産に対する認識が甘いと価値ある宝を次から次へと無意味に捨てていることになる。
「コア技術」というモノがある。自社独自の技術・ノウハウであり、それによって独自の価値を創出し、他社との違いを際立たせて存在感を強め、競争を生き抜いて行くための武器である。
「コア技術は何か?」と聞いても答えに窮してしまうケースが小売業に多いのは、製造業と違って「技術」という意識・認識をあまり持つことがないからだろう。
急激な人口減少・高齢化によって、従来のような店舗販売というビジネスモデルだけで企業が成り立つことは難しくなる。その時に、いままで意識していなかった様々な技術・ノウハウを生かしたビジネスモデルが必ず役に立つ。特にチェーンシステム、商品開発システムなどは様々な分野に応用できる有効なコア技術である。
いままで見過ごしてきた財産を早急に見つけ出す(認識する、再認識する)必要があるだろう。店舗と現品販売いう物理的に制約される範囲の中でいま以上の生産性を確保することは難しいが、「システム」をビジネスの柱、特にプラットフォームに高めることができれば、従来の物販とは比べものにならない生産性を上げることは可能である。
おそらく、セブン-イレブン・ジャパンが所有する様々なシステムを本気になって他分野のビジネスに応用しようとすれば、世界のトップ企業として君臨することも可能だろう。そのためには、小売企業であるという意識を捨て、システム企業であるというように事業定義、事業に対する認識を改める必要がある。
特に農業、魚の養殖分野などにフランチャイズシステムは有効であり、世界的な規模で事業展開することも十分可能である。店舗と物流というリアルネットワークを持つ強みもこれらの分野への参入にプラスに働く。単に自社販売の原材料の調達に終わることなく、事業として確立すれば、楽天やヤフーのリアルネットワーク版のような農業、漁業の形態をつくり出す可能性もある。
チェーンシステムはコア技術であり、財産であるという認識をもって新たなビジネスモデルに取り組む企業が現れれば、小売企業も大きく変わることができるだろう。
そのためには、「物売り」とは全く異なる次元から事業を発想する必要がある。経済、産業の進化の仕方を見ていけば、一時は物に集中することはあったとしても徐々に物から離れ、物とのかかわり合い方は大きく変わっていく。
どの時点を見て事業を組み立てていくのかは、非常に重要なテーマである。数十年の歴史を見た上で、数十年先の状況を想定すれば、総合スーパー(GMS)云々を言っている時ではないのかもしれない。
いまを前提として使用来を考えるのではなく、10年、20年先から逆算する形でいまをデザインする必要があるだろう。

2016年度 芝浦工業大学授業資料

2016年度 芝浦工業大学授業資料

思考法

レポートの書き方について 2016

人口減少・高齢化から 読み解くマーケット変化 2016

用語の確認 2016 

論理パターン 2016

商品の意味(機能)・価値 消費者の購買行動 2016

商品の干渉2016

商品進化プロセス 先進国と新興国 

大型ショッピングセンターが林立する港北ニュータウンは高齢化にどう対応するのか?

2040年時点で65歳以上の人口増加率(2010年=100)が全国で最も高い値を示すのは東京都小笠原村である。その次に多いと位置付けられるのが、現在、30歳代、40歳代を中心に人口増加が著しく、ららぽーと横浜、IKEA港北、港北TOKYUショッピングセンター、モザイクモール港北 都筑阪急、Northport Mall、港北みなも、LuRaRa KOHOKU、…等々、数多くの大型ショッピングセンターが集中して注目される港北ニュータウンがある横浜市都筑区(2010年人口201千人)である(図表 横浜市都筑区年齢構成推移 )。 同様に都筑区に隣接する横浜市青葉区(同304千人)、緑区(同178千人)、港北区(329千人)、川崎市高津区(同217千人)、多摩区(同214千人)、東京都港区(同205千人)、中央区(同123千人)(図表 横浜市都筑区隣接5区年齢構成推移)など、東京圏にあって人口の多い都市が65歳以上の人口増加率30位以内に数多く並んでいる。 港北ニュータウンがある都筑区は2040年時点でも人口は増加しており、隣接する周辺5区も人口が横這いで推移するが、増加する人口分はみな高齢者であり、年齢構成は大きく変わる。
*高齢者数の増加率は約1800ある市区町村の中でも都筑区2位(2010年=100として274.3)、青葉区9位(240,7)、高津区10位(229.8)、宮前区14位(215.2)、緑区24位(206.6)、港北区28位(203.6)、中原区32位(202.9)である。

つまり、周辺まで含めた巨大な商圏人口全てが急激に高齢化し、マーケットの性格が短期間のうちに全く異なるものになると予測されている。  高齢化に伴いマーケットの購買力が著しく低下した場合、街としての活力低下はもちろんであるが、何よりも周辺地域に与える経済的影響は計り知れない。 商業集積は、地域外からの集客を可能にするが、周辺都市も高齢化した場合、広域にわたり社会構造が大きく変わる。 一定の年齢層を確保するためには観光客の誘致も考えられるが、それには現在の物販、しかもマーケットが縮小するアパレルを中心としたショッピングセンターばかりの街からアミューズメントやテーマパークなどサービスウエイトを高めた街へと大きく修正する必要がある。 コモディティ中心の大型店舗だけでなく、現在の30~40歳台を中心に想定したテナント構成のまま、ショッビングセンターが生き残ることは難しくなるだろう。