デジタルばかりが進化する時代、商品の分類体系=おいてきぼりのマネジメント体系をどうする?

商品はビジネスの基本に位置するものであり、非常に重要な意味を持つが、マネジメントの仕方については未だ定説がなく、情報システムの管理単位の設定の仕方・扱い方を見ても非常に曖昧なままである。
通常、商品分類体系は、デビジョン-デパートメント-ライン-クラス-アイテム-SKU、あるいは事業部-部門-大分類-中分類-(小分類)-アイテム-SKUというような構成になっており、この単位の系列がそのまま組織、予算単位になっている。
このようなツリー構造の分類体系で常々問題となるのが、ツリー状に分類された商品を横断的に集計することができないことである。
例えば、ブレザー、ネクタイ、ベルト、バッグなどをテイストでくくりたい、シャツブラウス、スカート、スカーフ、バッグ、靴、アクセサリーなどをテイストでくくりたいといった場合である。
ちょっと気の利いた担当者であれば、誰でもチェックしているいたって当り前のことであり、このような見方ができないと売れるアイテムに連動した商品構成、売場づくりができない。
しかし、多くの企業で、このような集計ができるシステムを持ち合わせていないというのが実情である。

もう一つ、商品のマネジメント上の問題としてシステムの中に組入れられていない分類の仕方がある。
図表-1 商品の体系 は、商品をその特性によって分類し、体系づけたものである。(図表の荒利率=粗利率)
全体としては、大きくプロプァー商品(普通品)と特売商品に分けている。プロプァー商品は、さらに定番商品とスポット商品、定番商品は年間定番と季節定番というように分けられる。
特売商品は、チラシ掲載商品(プロプァー商品もチラシに掲載することがある)、常備特価商品(特価定番)、スポット特売商品とに分けられる。
通常、商品分類体系は、前述のように品種など商品の類似性で分けるが、ここではチラシ掲載の有無、価格設定(値入率設定)やリピートの可否、取扱い期間など、取り扱い方の違いによリ分類している。

このように商品特性によって商品をグルーピングし、管理することは「商品全体のバランス』を確認し、精度の高いマネジメントをする上では非常に重要である。
例えば、商品トータル(例えば部門)の粗利率が低い場合には、プロプァー商品、特売商品それぞれの粗利率を確認し、さらにプロプァー商品と特売商品の売上比率が計画通りにいっているか否かを確認する。原因は分類単位の下の階層にあるから、さらにその内訳を同様に見ていくことで粗利率が低くなった原因を見つけることができる。原因が特定できれば改善方法も特定できるから修正行動がとりやすくなる。
粗利率相乗積を用いれば簡単に計算で求められる問題でもあるが、実態としての商品の中身まで追求しないと具体的な対応はできない。特に従来の品種による商品分類体系だけではプロプァーと特売商品の比率が分かりにくい(平均売価しか出ないケースが多い)から、安売りのし過ぎがあっても具体的には特定することが難しい。
また、在庫がオーバー気味になり、商品回転率が落ちた場合には「特売商品」が不良在庫として売場やストックヤードに眠っているケースが多い。
そのようなことも従来の商品分類体系をベースに見ているだけでは分からない。

また、もし、プロプァー商品に何らかの問題があれば、その原因は、定番商品とスポット商品にあるし、定番商品であれば年間商品か季節商品に原因がある。
年間定番に問題がある場合には、基本的な定番設定の考え方・方法に問題がある場合が多く、季節定番に問題があ場合には、年間定番との棲み分け、季節定番という機能についての理解ができていないケースが多い。
スポット商品が多すぎる場合にはアソート崩れの残商品が売場の鮮度を悪化させ(半端商品が売場の多くを占める)、さらに不良在庫として商品回転率の低下につながり、処理をすれば粗利率の低下につながる。
同様に特売商品に何か問題があれば、それはチラシ掲載商品、常備特価商品、スポット特売商品に問題があるから、それぞれの中身を見ていくことで原因と改善方法を具体的に特定することができる。
売上、粗利率、在庫、商品回転率、売上比率、在庫比率など、いずれの場合も相乗積の考え方で見ることができるが、それにはここであげたような分類単位でデータが集計できる必要がある。
問題の中身は、例えば売上であったり、粗利率であったり、在庫であったり、商品回転率であったりするが、いずれの場合も、個々の商品グループを明確にし、あらかじめ数値的な目標値、あるいは計画値を設定しておかない限り問題の追及をすることはできない。
たとえ「売上が悪い」「粗利が低い」という場合があったとしても、必要に応じた分類単位でデータが把握できない限り、手の打ちようがない。すべて一律にSKU管理をしている企業も多いが、そのようなシステムの企業が、このような対応の仕方をしようとすれば、一つ一つのSKUに識別コードをふって振り分ける必要がある。

いずれにせよ、どんなにコンピュータが進化しても基本は「手でできる仕組みをつくってから機械化」である。
例え何でもできるシステムがあったとても、どのような考え方でデータを集計するのかという最も基本的なことを間違えれば、結局何もできないのと同じである。

進化するデジタル技術(投資する莫大な資金)を有効に生かす上でも、いま一度、マネジメント上の管理単位について整理する必要があるだろう。

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