POSの進化を50年遅らせたJANコード

◆事務効率化、SKU識別が目的のシステム設計
 JANコード13桁を見てわかることは、SKUの識別=事務の効率化を目的としたシステムであるということである。
 情報システムには大きく分けて、オペレーション用のシステムとマネジメント用のシステムがある。
 オペレーション用のシステムは、一度入力すれば、再入力する必要がないという情報システムの特徴を生かして、大量に処理する事務手続きの効率化を目的としたシステムである。
 現在のJANコードによって運用されるEOS、EOB、POSなどのシステムがまさにこれである。
 JANコードによって、発注、納品、運搬などに関わる伝票発行、検収、レジ登録などにおける手作業が自動化され、事務効率は著しく向上した。
 一方、マネジメント用のシステムは、様々なデータを加工することによって、管理する上で有効な情報、意思決定をサポートする情報を提供する。
 例えば、商品構成改善、レイアウト改善、人員配置改善、生鮮食品などの生産スケジュール改善などのサポートである。
 ただし、情報システムでは、予めどのような単位でどのような集計をするのかを決めてフラッグを立てておかなければ、集計することはできない。
 JANコードの13桁が集計に用いることができるフラッグということになる。ただし、JANコードでは、マネジメント用に集計して有効と思われる桁は皆無と言ってよい。
 POSが一般にまだ普及する前、タグシステムを使っていた時代にバイヤーをやっていたが、自由に使える5桁(色・サイズ・取引先コード以外)を使って、商品のグルーピングを行い、売れた商品を管理していた。
 5桁あれば、素材、デザイン、商品シリーズ、….、プラス通しNo.など、自分で管理しやすいようにコードを設定することができ、少なくともバイヤーが知りたい要素の中から、特にその商品で重要となる要素を抜き出してコーディングすることができた。また、そのような工夫をしていた人間が現場には数多くいたし、そのようなノウハウが現場にはたくさんあった。
 POSが普及し、コードは13ケタに増えたが、ほとんど意味をなさないコードが並んでいるから、商品をSKUとしては機械的に識別できるが、目的に応じてフレキシブルに集計するということがができなくなった。
 5桁の時に分かっていたことが、13桁になった途端、何もわからなくなってしまった。 
 一時期、SA(stoa automation)という言葉が盛んに使われ、POSが普及すれば、売れる商品、良い商品構成が自動判別、あるいは自動作成され、売場はSA化によって見違えるように変わるという淡い期待と錯覚があった。しかし、機械化が進むにつれて、進化したのは機械的なオペレーションだけであり、売れる商品を見つけ出す現場の工夫、ノウハウは、機械化=JANコードの普及と共に失われて行ってしまった。
 
 基本的に情報システムには、「手でできる仕組みをつくってから機械化」と言われるように、手作業で出来るもの以外、形作ることは難しい。
 POS=JANコードではマネジメント用の情報システムはできないという問題点は指摘されることなく数十年が経とうとしている。 
 ここまでくれば、あとはビッグデータとAIの世界ということになるが、ここでもデータサイエンティストの不足が指摘されているように、「手でできる仕組み」を創れる人間は大きく不足しているから、本質に迫ることはなかなかできないだろう。
 もし、タグシステムが5桁でできていたことの一部でも、POS、JANコードを設定する際に考慮されていれば、現在、日本の小売業とPOSシステム、そしてビッグデータとAIの進化の仕方は全く違ったものになっていただろう。
 一つの選択が時代を大きく変えてしまったことは残念なことである。

 
マネジメントに不可欠な商品属性を排除、

47都道府県を含む全国1858の自治体の人口減少と高齢化の状況②

 2010年人口が3万人、5万人、7万人、10万人、15万人、20万人、25万人、30万人規模の自治体の中から2040年の総人口指数(2010年=100)が100超(人口が増える)と60~70の自治体をランダムに選んで比較してみた結果、人口減少、高齢者の増減については、自治体の人口規模よりは65歳以上人口率(年齢構成)の方が影響が強いようである。
 小売業が店舗配置をする際、人口規模を基準として行ってきたように、多くの人達が都市の評価を人口規模によって行ってきたというのが一般的だろう。
 しかし、どうやら重要になるのは、年少、生産年齢、老年の年齢3区分の人口構成であって、現在の人口規模だけで将来の自治体の姿をイメージすることは間違いのようである。
 今回、試しに2015年65歳以上人口率(総人口に占める割合)をベースにして2025年時点の人口増減(2010年=100)を調べてみた。
 2015年65歳以上人口率ごとに見ていくと、◆65歳以上人口率18.0%以下、2025年人口指数91.0-118.1、2015年人口191-237,451人・平均79,333人(22都市)、◆同19.5-20.4%、同94.2-114.1、同6,518-1,468,329人・221,133人(32都市)、◆同24.5-25.4%、同84.4-105.7、同6,284-2,288,845人・194,208人(90都市)、◆同29.5-30.4%、同80.1-97.7、同1,195-961,748人・69,492人(90都市)、◆同34.5-35.4%、同73.6-89.7、同1,442-115,972人・26,216人(77都市)、◆同39.5-40.4%、同69.5-86.4、同1,751-57,909人・13,016人(40都市)、◆同44.5-45.4%、同62.6-78.6、同325-37,052人・8161人(23都市)、◆同50.0%以上、同50.1-60.9、同441-16,838人・3,252人(17都市)

これから分かることは、以下の点である。
①2015年時点で65歳以上人口率が集中している都市(上記の都市数が多い)は、25%、30%、35%であるが、平均人口が多いのは20%、25%であり、30%を超えるにしたがって平均人口は少なくなる。また18.0%以下も平均人口は30.0%と同程度であり、決して大都市というわけではない。
②65歳以上人口率が高まるにつれて、2025年人口指数が低下する(人口の減り方が大きい)。また、平均人口も小さくなる(小規模都市)傾向が明確である。
③2025年という10年後を見る限り、人口の減り方は、ほぼ現在の65歳以上人口率に比例する。もともと都市の規模は小さい方が多いので、それに比例した形で現れる傾向にあるが、今回、特に都市数が多かった25.0では5万人以下、30.0%では2万人以下、35.0%では6万人以下が多くなっており、2025年総人口指数の平均値に近いところに集中する傾向が見られた。
言い換えると、2015年65歳以上人口率の似た都市を集めてみると、人口規模に関係なく、2025年には同じような人口の減り方をするということになる。

 個別には、いろいろと都市の状況があると考えられるが、基本的に自分が住むエリア、ビジネスを展開しているエリアを評価する際には、現在の人口規模よりは、むしろ現在の65歳以上人口率をベースに見た方がよいということになる。

その時々で変わる「良い」商品構成

◆客層、お客の目的・オケージョン(時、場合)で変わる「良い商品構成」
 商品構成の良し悪しは、客層(性別、年齢、職業、所得、家族構成、ライフスタイルなど)やお客の目的・オケージョン(時、場合)などによって変わる。
 例えば、日常的な生活必需品の買い物とただ目的もなくお店を見て回るウインドウ・ショッピングでは、明らかに買物の目的が違うから「良い」という意味・基準が違うのは当然である。 
 日常的な買い物では、自分が当事者であり、自分にとって必要な商品、買いたい商品が品揃えされていることが第一になる。
 一方、ウインドウ・ショッピングでは第三者的な立場から見ているため、自分が買う、買わないということとは関係なく、見て「良い商品」「楽しい商品」があることが重要になる。したがって、第3者的な立場から見て良い商品があると評価することと自分が買うということは一致しない。
 日常的な買い物の中でも客層、お客の目的・オケージョン(時、場合)違いによっての「良い商品構成」の基準は変わる。
 例えば、靴下でも、中学生と高齢者では欲しいと思う商品は違うし、同じ中学生でも通学時に履く靴下とオシャレをして出かける時に履きたい靴下では明らかに違う。
 対象となるお客が変わることでニーズが変わり、同じお客でも目的・用途が変われば、またニーズが変わる。
 したがって、総てのお客、総てのニーズに対して必ず応えられる「商品構成」を実現することはほぼ不可能と言ってもよい。
 特に限られた売場面積、限られた在庫予算枠の中で総てのことに対応しようとすれば、結局どれも中途半端になるから、予め目的を明確にし、商品構成で対応する範囲を明確にすることが「良い商品構成」を実現するポイントになる。
◆物発想か、マーケット発想か
 従来の商品構成に対する考え方、やり方は、どちらかと言えば仕入れる側、商品側から見ており、物発想と言うことができる。そのため、POSデータだけを拠り所として販売点数の多い商品中心に品揃えを強化したり、低価格で数多く売れる商品中心に品揃えしたりという偏った品揃えをする傾向が強くなっている。
 見方を変え、買う側のお客がどのような人(性別、年齢、職業、所得、家族構成、ライフスタイルなど)で、どのようなオケージョン=ニーズを持っているのか、というマーケット発想の視点から見ると、また違った「良い商品構成」が見えてくる。
 例えば、客層に高齢者が多い場合、予めゴムを緩目に設定し、脱ぎ履きしやすいだけでなく、履いている時にも足首を締め付けないような工夫がしてある靴下、あるいは保温性が高く、かつ吸湿性、速乾性に優れた素材の靴下、..など、機能品中心に商品構成をするということも重要になる。
 しかし、もしこれらの商品が扱われていなければ、どんなに精度の高いPOSデータを駆使しても、そこから良い商品構成を見出すことはできない。
 言い換えれば、お客側の視点から見た「良い商品構成」をPOSデータだけでつくり出すことは実質的に不可能ということになる。

◆時間とともに変わる「良い商品構成」
 商品構成の良し悪しは、時間によっても変わる。多くの時間をかけ、データもたくさん分析し、綿密に商品構成の計画をつくったとしても、一番重要なタイミングを逸してしまえば、せっかくの努力も意味がなくなってしまう。
 例えば、一般に良く知られるのが惣菜売場である。昼の米飯、夜の惣菜と言われるように昼は弁当の比率が高く、夜は夕飯のおかずとなる揚げ物などの惣菜のニーズが高くなる。
 時間帯によってニーズが変わるから、ニーズの変化を的確にとらえた品ぞろえをする必要がある。
 *以前、「開店時100%品揃え」ということが食品スーパーではやったことがあった。あるスーパーは、朝10時から刺身の盛り合わせを冷ケースに目いっぱい並べていたが、別のスーパーでは「売れる時に売れる量が100%だから」という理由で朝から刺身の盛り合わせを目いっぱい並べることはしなかった。
①季節商品 ; 暖房用品、冷房用品、入園入学用品、異動・引越し用品などは、様々な理由により、特徴的な動きをする。例えば、入園入学用品の場合、年内にギフト用のセット物や高額品がクリスマスプレゼントやお年玉のタイミングでよく売れ、ピークに入ると自家用の一般的な商品が売れる。また、ノートのように学校が始まってから先生が指定するものもについては、先生の指定を待って、指定されたものだけが売れる。
 引越し関連では、引っ越し前と引っ越し後に入居先で買うものは異なる。例えば引っ越し前に必要なのは、掃除用品や梱包用品、入居先で家具を入れる前に敷くカーペット類、照明器具などである。一方、入居後に買う、あるいは買い換えるのは家具、収納用品、照明器具、カーテン、その他小物類などである。
 大学の近くでは、入学後少し落ち着いた4月の第2週が自転車のピークになるとお店の担当者に聞いたことがある。
 商品の動き方を細かく見ていくと、どの商品にも必ずそのような動き方をする理由がある。理由の多くはお客の状況であり、お客の状況と商品の売れ方の関係が分かれば、同じ季節商品でもタイミングごとにどのような商品構成、売場づくり、売り方をしたらよいかが分かってくる。お客の状況に合わせた商品構成がよい商品構成と言うことができる。

③習熟する商品 ; ペット用品、園芸・ガーデニング用品、レジャー用品などは、消費者が習熟することによって市場が変化していった典型的な商品である。
 例えば、1990年ごろからアクアリウム(熱帯魚や水草)のブームが起こり、数多くの人が水槽を買い求め、熱帯魚を飼い始めた。初心者にとって、必要なものはインテリア水槽をはじめとする用具一式であるので、ブームのはじめは水槽や用品類がたくさん売れた。
 徐々に慣れてくると、はじめに買った水槽(多くは60cm)では物足りなくなる人も現れ、大型の水槽が売れるようになる。魚も初心者用のグッピー、ネオンテトラからもっとマニアが好むような魚種を求めるようになる。
 習熟するにしたがって志向はより専門的になり、誰もが求める一般的な商品から一部の人しか必要としない特殊な商品へとニーズが細分化していく。いつしか、初心者向けの商品構成では、お客を満足させることができなくなる。
 つまり、当初はホームセンターなどの量販店が得意とする量販商品中心にマーケットは拡大するが、ある程度専門的になれば量販店だけでは難しくなり、コンセッションやテナントで専門店を入れて商品構成を補うように変わって行く。しかも一通り用品類が普及してしまうと金額がかさむ商品は売れなくなり、単価の低い消耗品中心にマーケットニーズは変化していく。
 消費者が習熟していく場合、状況に応じて商品構成を変えていかないと、お客のレベル、ニーズに対応することができなくなる。
 そして何よりも難しいことは、一般に普及する時には皆一様で良いためにマーケットは同じ商品が大量に売れて拡大していくが、習熟して細分化し始めると、個々のマーケットも細分化して小さくなってしまうことである。
 当然、マーケットが拡大する時に貢献し、潤ったホームセンターなど、一般商品の大量販売を得意とする業態は、消費者の習熟とともに対応できなくなり、ブームの終焉を加速させる要因の一つになってしまう。
 ただ単に物を売るだけでは終わらない分野で繰り返されてきた小売業とマーケットの矛盾である。