その時々で変わる「良い」商品構成

◆客層、お客の目的・オケージョン(時、場合)で変わる「良い商品構成」
 商品構成の良し悪しは、客層(性別、年齢、職業、所得、家族構成、ライフスタイルなど)やお客の目的・オケージョン(時、場合)などによって変わる。
 例えば、日常的な生活必需品の買い物とただ目的もなくお店を見て回るウインドウ・ショッピングでは、明らかに買物の目的が違うから「良い」という意味・基準が違うのは当然である。 
 日常的な買い物では、自分が当事者であり、自分にとって必要な商品、買いたい商品が品揃えされていることが第一になる。
 一方、ウインドウ・ショッピングでは第三者的な立場から見ているため、自分が買う、買わないということとは関係なく、見て「良い商品」「楽しい商品」があることが重要になる。したがって、第3者的な立場から見て良い商品があると評価することと自分が買うということは一致しない。
 日常的な買い物の中でも客層、お客の目的・オケージョン(時、場合)違いによっての「良い商品構成」の基準は変わる。
 例えば、靴下でも、中学生と高齢者では欲しいと思う商品は違うし、同じ中学生でも通学時に履く靴下とオシャレをして出かける時に履きたい靴下では明らかに違う。
 対象となるお客が変わることでニーズが変わり、同じお客でも目的・用途が変われば、またニーズが変わる。
 したがって、総てのお客、総てのニーズに対して必ず応えられる「商品構成」を実現することはほぼ不可能と言ってもよい。
 特に限られた売場面積、限られた在庫予算枠の中で総てのことに対応しようとすれば、結局どれも中途半端になるから、予め目的を明確にし、商品構成で対応する範囲を明確にすることが「良い商品構成」を実現するポイントになる。
◆物発想か、マーケット発想か
 従来の商品構成に対する考え方、やり方は、どちらかと言えば仕入れる側、商品側から見ており、物発想と言うことができる。そのため、POSデータだけを拠り所として販売点数の多い商品中心に品揃えを強化したり、低価格で数多く売れる商品中心に品揃えしたりという偏った品揃えをする傾向が強くなっている。
 見方を変え、買う側のお客がどのような人(性別、年齢、職業、所得、家族構成、ライフスタイルなど)で、どのようなオケージョン=ニーズを持っているのか、というマーケット発想の視点から見ると、また違った「良い商品構成」が見えてくる。
 例えば、客層に高齢者が多い場合、予めゴムを緩目に設定し、脱ぎ履きしやすいだけでなく、履いている時にも足首を締め付けないような工夫がしてある靴下、あるいは保温性が高く、かつ吸湿性、速乾性に優れた素材の靴下、..など、機能品中心に商品構成をするということも重要になる。
 しかし、もしこれらの商品が扱われていなければ、どんなに精度の高いPOSデータを駆使しても、そこから良い商品構成を見出すことはできない。
 言い換えれば、お客側の視点から見た「良い商品構成」をPOSデータだけでつくり出すことは実質的に不可能ということになる。

◆時間とともに変わる「良い商品構成」
 商品構成の良し悪しは、時間によっても変わる。多くの時間をかけ、データもたくさん分析し、綿密に商品構成の計画をつくったとしても、一番重要なタイミングを逸してしまえば、せっかくの努力も意味がなくなってしまう。
 例えば、一般に良く知られるのが惣菜売場である。昼の米飯、夜の惣菜と言われるように昼は弁当の比率が高く、夜は夕飯のおかずとなる揚げ物などの惣菜のニーズが高くなる。
 時間帯によってニーズが変わるから、ニーズの変化を的確にとらえた品ぞろえをする必要がある。
 *以前、「開店時100%品揃え」ということが食品スーパーではやったことがあった。あるスーパーは、朝10時から刺身の盛り合わせを冷ケースに目いっぱい並べていたが、別のスーパーでは「売れる時に売れる量が100%だから」という理由で朝から刺身の盛り合わせを目いっぱい並べることはしなかった。
①季節商品 ; 暖房用品、冷房用品、入園入学用品、異動・引越し用品などは、様々な理由により、特徴的な動きをする。例えば、入園入学用品の場合、年内にギフト用のセット物や高額品がクリスマスプレゼントやお年玉のタイミングでよく売れ、ピークに入ると自家用の一般的な商品が売れる。また、ノートのように学校が始まってから先生が指定するものもについては、先生の指定を待って、指定されたものだけが売れる。
 引越し関連では、引っ越し前と引っ越し後に入居先で買うものは異なる。例えば引っ越し前に必要なのは、掃除用品や梱包用品、入居先で家具を入れる前に敷くカーペット類、照明器具などである。一方、入居後に買う、あるいは買い換えるのは家具、収納用品、照明器具、カーテン、その他小物類などである。
 大学の近くでは、入学後少し落ち着いた4月の第2週が自転車のピークになるとお店の担当者に聞いたことがある。
 商品の動き方を細かく見ていくと、どの商品にも必ずそのような動き方をする理由がある。理由の多くはお客の状況であり、お客の状況と商品の売れ方の関係が分かれば、同じ季節商品でもタイミングごとにどのような商品構成、売場づくり、売り方をしたらよいかが分かってくる。お客の状況に合わせた商品構成がよい商品構成と言うことができる。

③習熟する商品 ; ペット用品、園芸・ガーデニング用品、レジャー用品などは、消費者が習熟することによって市場が変化していった典型的な商品である。
 例えば、1990年ごろからアクアリウム(熱帯魚や水草)のブームが起こり、数多くの人が水槽を買い求め、熱帯魚を飼い始めた。初心者にとって、必要なものはインテリア水槽をはじめとする用具一式であるので、ブームのはじめは水槽や用品類がたくさん売れた。
 徐々に慣れてくると、はじめに買った水槽(多くは60cm)では物足りなくなる人も現れ、大型の水槽が売れるようになる。魚も初心者用のグッピー、ネオンテトラからもっとマニアが好むような魚種を求めるようになる。
 習熟するにしたがって志向はより専門的になり、誰もが求める一般的な商品から一部の人しか必要としない特殊な商品へとニーズが細分化していく。いつしか、初心者向けの商品構成では、お客を満足させることができなくなる。
 つまり、当初はホームセンターなどの量販店が得意とする量販商品中心にマーケットは拡大するが、ある程度専門的になれば量販店だけでは難しくなり、コンセッションやテナントで専門店を入れて商品構成を補うように変わって行く。しかも一通り用品類が普及してしまうと金額がかさむ商品は売れなくなり、単価の低い消耗品中心にマーケットニーズは変化していく。
 消費者が習熟していく場合、状況に応じて商品構成を変えていかないと、お客のレベル、ニーズに対応することができなくなる。
 そして何よりも難しいことは、一般に普及する時には皆一様で良いためにマーケットは同じ商品が大量に売れて拡大していくが、習熟して細分化し始めると、個々のマーケットも細分化して小さくなってしまうことである。
 当然、マーケットが拡大する時に貢献し、潤ったホームセンターなど、一般商品の大量販売を得意とする業態は、消費者の習熟とともに対応できなくなり、ブームの終焉を加速させる要因の一つになってしまう。
 ただ単に物を売るだけでは終わらない分野で繰り返されてきた小売業とマーケットの矛盾である。

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