放っておくと、勝手に発注するからどんどん在庫が増える。在庫が多すぎるから発注を減らせというと、一気に発注を減らすから欠品ばかり増えて売上が落ち、在庫は全然減らない。 何十年も前から繰り返してきたことであるが、いまだに同じことが起きているから、小売業はほとんど進歩はしていないことになる。 バイヤーが自分が仕入れる商品、自分が組み上げた商品構成に自信がないとアイテム数が増える。発注担当者が自分の発注に自信がないと、発注数量を必要以上に増やすから、やたらと在庫が増える。 何十年経っても変わらないのは、人間の本質がそこにあるからだろう。 発注して商品を取り、売れて残ったのが在庫、というのは時間の流れから言えば正しいが、仕事として売場で商品を販売するのであれば、はじめに商品の販売計画が必要になる。 販売計画通りに売上を上げるのに必要となる在庫数量、それだけの在庫を持つために必要となる発注数量という手順で発注が行われる必要がある。 「はじめに販売(売上)計画ありき」である。どれだけ売るのかという目標、計画もないのに在庫数量を設定できるわけがないし、いつ、在庫を切り上げるのかという目標、計画もないのに発注ができるわけはない。 OTB(Open to Buy)の理屈はいたって単純である。これだけ売りたい、だから在庫はこれだけ必要になる。不足する在庫は、これだけだから、その分を発注する。これだけの話である。 ただし、販売(売上)は必ずしも計画通りにはいかない。予定より増えることもあれば減ることもある。売上が増えれば、在庫が予定よりも減るから、その分発注を増やす。逆に売上が予定よりも少なければ、在庫がオーバーするから、その分発注を減らして在庫と売上のバランスを調整する。 OTBは、仕入枠管理のための在庫管理手法と紹介されている本も多いが、実際に使ってみれば、売上と在庫のバランスを維持するための手法であることはすぐにわかる。
具体的には図表「OTBとは何か」に詳細に示したので、実際に試してみると理解しやすいだろう。また、Excelフォーマットについても「OTBフォーマット例」に示したので、参考にするとよい。
Zチャートなどもそうだが、実際に使ったことのない人が、知識だけで本を書くとZを1つか2つ書いて説明する。実際にやってみれば分かるが、それではZチャートの意味をなさない(トレンドを見る移動総和のデータが少なすぎる)。 OTBも全く同じで、売上、在庫、仕入の関係を理解した上で、売上と在庫のバランスを調整する手段として仕入=発注を用いる。 したがって、OTBによって管理するのは売場の健康管理=売上と在庫のバランスであり、仕入枠管理でも在庫管理でもない。 バランスは、売上が増える際には先行して在庫を増やし(当然仕入れ、発注も増える)、売上が減る時には先行して在庫を減らす(当然仕入れ、発注も減る)ことによって維持する。 売上が増えたら発注を増やし、売上が減ったら発注を減らすというやり方では、在庫は増えたまま減ることはない。多くの人が一度や二度はこのような失敗を経験する。 気持ちとしては、分かるが数値化してみると、それでは在庫がコントロールできないことが分かる。エクセルを使ってシミュレーションしてみればすぐにわかるが、売上と発注を同じように増減させると在庫はほぼ一定で推移する。このようなことをしてもよいのは、在庫を持たない生鮮食品だけである。 OTBは売場経営の一番の基本であり、もし基本を知らずに運用されている売場があればすぐに修正すべきである。 いまは、数量で説明をしたが、実際の商品仕入れと支払いの関係(金額)を考えれば、在庫が過度にオーバーすれば、支払う金額が不足するし、逆に少なくなり過ぎれば、売上が減りすぎて、固定費の負担に支障をきたす。 数値を見て「難しい」という人もいるが、難しいがどうかという話ではなく、これが小売業そのものであるから避けては通れないだけの話である。
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