◆ ウェアラブルEXPO いまは、何か一つに申し込んであると、名簿が使いまわされるから関係あるか無いかに関わらずいろいろな展示会の案内が次から次へと送られてくる。 テレビでも紹介されたウェアラブルEXPOもそのようにして招待券が送られて来たから行ってみることにした。 凄い人出に注目度、力の入り具合がうかがわれるが、ハッキリ言って何の展示会かさっぱりわからなかった。 中には面白い、可能性を秘めたものもあるのだろうが、なかなかそれが見えてこないのが、いかにもごった煮常態の展示会らしい。ジャンルの分類が不明確なのと(そんなもの誰も分かっていないのかも知れないが)どこからどこまでがウェアラブルなのかが分からないために(定義がどうなっているのか分からないが、これもウェアラブル?というものも多い)、もう会場はメチャクチャといった感じである。 ただ見ていてわかったことは、「シーズ発想」のオンパレード、技術的にこれができた、こんなことができる...といったものばかり並んでいるから、「だから何なのか」といったところが全く見当たらない。 むかしロボットアームでジグゾーパズルのデモをやっていたのと全く同じになっている。もったいないの一言である。 せっかくお金をかけ、たくさんの人を出して展示会に出展するのであれば、もう少し、ここをこうすればもっと良くなる、A社のこの技術とB者のこの技術を組合せれば、もっとこんな可能性がある、...というようなところへ持っていければよいのだが、ただたくさんのブースにパラレルに多くの企業・製品が並んでいるだけだから脈絡もない。折角いろいろな企業のいろいろな技術が集まっているのであれば、そのような可能性が広がるようなマッチングがあってもよいのではないだろうか。しかも、まだこれから...という技術ばかりであるから、そのようなアイデアの広がりはとても重要になるはずである。 展示会を主菜する側もただ人をたくさん集めればよいのではなく、もう少しクオリティを高めるような工夫をするべきだろう。 ◆ シーズ発想で物をつくるだけでは20世紀のビジネスモデル 知恵を出さないともったいない 見ていて気になったブース、商品はいくつかあった。 一つは、シャープがやっていた糖尿病などの早期発見につながるという終末糖化産物(AGEs:advanced glycation endproducts)の蓄積度を数値化できるという測定器である。血管年齢の測定器など、健康関連を新たな分野として考えているようだが、残念なことに未だに「技術」で物をつくり、物だけを売ろうとしているところに限界を感じてしまう。正直、もったいないと思う。 以前にも、インダストリー4.0のセミナーの項でもふれたKii CEOの荒井真成氏は、「いまはデバイスをつくって課金するビジネスモデルが有効」と言われていたが、物をつくって売って終わりという発想にはやはり限界がある。いろいろな分野を見ても結局強いのはプラットフォームを構築した企業であるから、物をつくるというビジネスモデルのワンピースだけでは、いつまで経っても一つの歯車から抜け出せない。 健康テーマは、急激な高齢化に直面する日本だけではなく、日本以上のスピードで高齢化すると言われる中国をはじめとしたアジア、さらに世界的なテーマでもある。Global Agingが世界的テーマであれば、その中でどのようなポジションを確保できるかは、将来的にも非常に重要なテーマである。測定器を2,3つくっただけではマーケティング戦略としては非常に心もとない。 誰に売り込むのか、どこに売り込むのか、どのようにして収益を上げるのか、という明確な戦略がなければ、物をつくって価格を付けるのにもコストからの積み上げ、業界内の価格競争だけになる。 個人を対象とするには、小型化、低価格化が必要になるし、病院やドラッグストア、調剤薬局においてもらうにも、セルフサービスでその先の発展が見られないから、リースを組んだとしても料金的には限界がある。 どうせやるのであれば、企業、事業所を対象とし、もう少し幅の広いセルフメディケーションのプラットフォームとして機能させることができれば、対象も増えるし、課金もしやすくなるだろう。 糖尿病の患者数は316万6,000人、男性の15.5%、女性の9.8%が糖尿病の疑いがある(平成26年「国民健康・栄養調査」厚生労働省)ということだが、糖尿病の年間医療費は1兆2,076億円(平成25年度 国民医療費の概況厚生労働省)にものぼるという。(インドは対GDP比2.1%、米国1.3%、デンマーク0.6%、英国0.4%、中国は、糖尿病による生産性の低下はGDPの0.6%に匹敵。デンマークのノボ ノルディスク社の資金助成を受け、Economistの調査部門が調査) 世界の糖尿病人口は、糖尿病有病者数は4億1,500万人(2015年)、前年より2,830万人増え、有効な対策を施さないと2040年までに6億4,200万人になると予測される。(国際糖尿病連合IDF) ビジネスモデル、プラットフォームを構築すれば、グローバル化もしやすくなるから、物を開発すると同時にビジネスモデルとシステムアップのプロセスまでを含めて計画をつくっておくべきだろう。 単なる物づくりだけでは、「技術があるからそれを使って何ができるか」からスタートし、「物ができたから、さぁ、どうやって売ろうか」といったところでマーケットの実情をやっと認識し始める。 時代の流れを見れば、「物」の時代から「デジタルとネットワークの時代」に変わっている。つくっているのがデジタル技術の応用でも、やっているビジネスモデルが物から抜け出せていなければ、いつまで経っても進化することはできない。 良い技術を持ち、いろいろと面白製品を開発していた企業だけに時代の流れを見失うことは非常にもったいないと言わざるを得ない。 (各種数値は糖尿病ネットワークから引用http://www.dm-net.co.jp/calendar/2007/005890.php) ◆ 進化できる展示会が欲しい いろいろな展示会があるが、どこへ行っても物を、無秩序に並べているだけである。 たとえ良いものが出展されていたとしても、意外と創っている方は近視眼的にしか見ていないから、その良さに全く気付いていないというケースも多い。 限定した機能として出店しているか、あるいは出展し、誰かの目に留まるのを待っているという非常に他力本願的なスタンスで展示しているようにも思える。 そうであれば、もっと色々な可能性が議論できるような展示会があった方がよいだろう。少なくとも認知されることは重要であるが、認知されても生かされなければ全く意味がない。特にいろいろな分野、いろいろな用途機能とのマッチングは限定された思考の範囲を大幅に超えるから可能性を大きく広げる。 展示する側も自分の「コア技術」が明確なら、探している方も分かりやすいが、コア技術が曖昧なままであるから、どうしても発展しづらくなる。 今回も「ウェアラブル」というテーマからか「導電繊維」が目についたが、機能が通電だから、LEDを点灯させたり、センサーを動かしたりと似たようなものしか出てこない。 現在は合成繊維の衣料が増えていることもあり、静電気が発生しやすくなっている。そのような環境的与件を考えれば、静電気(違う原理でもよいが)を蓄電し、非接触型でスマートフォンなどが充電できるようなもの(繊維+α)を開発した方がよほど価値があるだろう。 技術が技術で終わる限り、価値は生まれない。どう応用するかまで、発展できるような展示会の形式を考える必要があるだろう。
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