情報系の総合大学が必要だ!
- 現在、芝浦工業大学情報工学科で非常勤として学生を教えているが、日本という国の教育体系、大学における専門性などを考えると、いまの仕組み、体制では10年後、20年後には世界から大きく遅れるのではないか(既に遅れている)という危機感を持っている。特に情報系は、企業の進化が速く、資金も人材も集中するから、従来の感覚、仕組み、体制で対応していたのでは、浦島太郎状態に陥いることは目に見えている。
特定分野の進化は、細分化と各分野の広がりを意味しているから、昔のようにハードウエアとソフトウエアなどを前提として出来上がったカリキュラムではとても対応できない。特にネットワークからIoT、クラウド、セキュリティーなど、どこまで、どんな拡大の仕方をするのか分からないモノが目の前に広がってきた状況を考えると、現在のカリキュラムでどうこうしようと考えることには無理がある。社会に出てこのような環境に対応することを考えると、学生への教育もアウトプットから逆算して高校では何をやる必要があるのか、そのためには中学では何をやるべきなのか、更にそのためには小学校では何をやるべきなのか、….と遡っていかないと、教育はしたけど社会に出ても全く通用しないということになりかねない(既にその兆候はずいぶん前から指摘されている)。
社会に出てから順応するために全く違った教育を、企業がまた一からやり直さなければならないのでは、何のための教育なのか分からない。現実とかけ離れたことばかり教えるのに十数年の歳月と何千万円の費用をかけるのでは、あまりにも現実離れしている。まして人口が減り、若い人がますます減っていくことを考えれば、国としても自殺行為になりかねない。
すでに大学でも専門科目を受講する前に補講が必要というおかしな状況がずいぶん前から指摘されていた。企業では、新卒を採用してもかなりの時間と費用をかけて教育している状況がある。別に企業のための学校教育にしろというつもりはないが、社会の変化を考えれば、卒業後に社会に対応できないような教育をしているのもおかしな話だろう。
「教育」を密閉された無菌室、タイムカプセルにしてしまわないためにも、思い切った変革が必要である。
一方、大学も一芸入試があるにもかかわらず、一芸卒業はないから、特異分野に特化した人材を育てることができなくなっている。先に述べたように情報、デジタル分野だけでも信じられないほど多くの分野に分かれており、チョッとかじったくらいでは全ての分野を網羅することは難しい。
そうであれば、狭く浅くやって、全てが曖昧で終わるよりは、狭く深くを前提として、そこから周辺分野へ関連付けながら広げていった方がより現実的だし、限られた時間を効率よく有効に使うことができる。
すでに条項、デジタル関連は一つの学科、一つの学部というレベルでは考えられない状況になっている。早急にIoT、ICT、ロボットなどのデジタル、情報系の総合大学をつくるべきである。
さらにベンチャー企業の経営者、起業家などを講師に迎えて様々な形で産学協同が実現できないと進化は止まってしまう。
筆者が38歳で非常勤講師として大学に戻った時、工学部でありながら教授陣は筆者が卒業してから16年経っても(入学時からでは20年)全く変わっていなかった。このような状況を避けるためにも実業界、特にトラディッショナルなIT系企業ではなく、次から次へと新しい分野を開拓していくベンチャー系企業との交流は不可欠だろう。大学組織内部にベンチャーを抱え、インキュベーターとしての機能を持ちあわせれば、そのような問題も解決する。
いずれにせよ、個々の分野が分散していては意味がない。早期にデジタル、情報系総合大学をつくるべきである。
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