総合スーパー(GMS)再生は 業態?店?商品?それとも建物?損益?マーケットの変化を読み解く必要がある

◆ 総合スーパー(GMS)の何が問題なのか  総合スーパー(GMS)の再生が、いろいろな意味で重要なテーマとしてとり上げられるようになってから、ずいぶんと時間が経つ。しかし、「問題だ」と言っている割には、いま一つ何が問題なのか明確に定義できていないのではないだろうか。  業績が芳しくないことはよく分かるが、問題は総合スーパー(GMS)という業態(立地、部門構成、規模、商品構成、価格攻勢、売場表現、販売方法など全体のバランス)なのか、それとも個別の店舗のフロア(部門)構成なのか、あるいはそこで取り扱う商品や売り方なのか、古くなった建物なのか、単純に数値が悪いだけなのか、….。  全部だというかもしれないが、問題構造が分からなければ、明確な改善の方向を見出すことは難しい。  いろいろな問題に取り組んでみれば分かるが、何が問題なのか、という問題の定義ができれば、ほぼ8割は解決したも同じである。  難しいのは「何が問題か分からないのが問題」という状況である。  問題が明確になっていない状態では、いろいろと試行錯誤する中で正しい方向を見出せたとしても方法論で間違えることもある。人はひとたび失敗すると、たとえそれが正しい方向であったとしても「この選択肢は間違っている」という判断(先入観)を下してしまう。一度の失敗で正しい答えを半永久的に選択肢から除外してしまうと、結果的にいつまで経っても違うところを探し回って答えにたどり着けない。

◆問題はどこにある?  これまでにもいくつかの視点から総合スーパー(GMS)の問題点は指摘されているが、ザックリとした視点からとらえているだけで、実際にはよく分かっていない。細かく見ていけば、まだまだ様々な要因が入り組んでいるだろうから、一つ、二つ大きな視点からメスを入れても、それ以外のモレがたくさんあるかもしれない。特に複合的に生じる問題は難しい。  単純に考えれば、中小型の総合スーパー(GMS)は競争力がない。商圏は狭まり、売れるのは1階の食品だけで上のフロア(衣料・住関連)へ集客できない(この構造は何十年も前から変わっていないから条件が変わったわけではない)から建物全体の売上は大きく減少し、粗利率も下がる。  大型・超大型の総合スーパー(GMS)は大きい割に商圏が狭まって売上が伸びない。それでも固定費は大きいままだから損益分岐点が高く、赤字幅も大きくなる。当然、企業全体に対する影響度合いは大きい。  構造的には大きく2つだろう。  一つは商圏が狭まり、客数が伸びない。食品中心に強化したために来店頻度が上がったとしても、客単価、粗利は伸びないし、何よりも商圏が拡大しないどころか狭まってしまう。食品でかつての衣料品の役割をカバーできない重要なポイントである。  二つ目は絶対客数(来店客数=精算件数ではなく、店を利用する実際の人数)、客単価、粗利率を伸ばす手段(商品・ビジネス)が見つからないことである。  食品強化はとりあえずの策ではあるが、抜本的な対策にはならず、急場しのぎは長期的に見れば返って状況を悪化させてしまう。  状況はひっ迫しているのになかなか良いアイデアが出ない。原因は、この状況を変えるために、どこまで変えるつもりがあるのか、という修正可能な範囲=制約条件にあるのではないだろうか。かつてのGMSを前提としては、衣料品の復活を目指す以外に方法はない。  おそらく、はじめのうちは、商品構成さえ変えれば…と考えて、いろいろといじっていたのだろう。マーケット環境の変化を読み違えたことが理由だろうが、次にザ・プライスのようにディスカウントストアへの業態転換、食品だけ残して上のフロアを100円均一や衣料専門店など他の専門業態へ切り替える….など、とりあえず考えられることはやってきた。  現在、検討している撤退は、ある意味ギブアップであるが、何十年もの間いろいろと取り組んできて、さらなる追加投資をする意味が見いだせなかったということだろう。  業態転換、改装など、いろいろな手法で建物を活かす工夫もあるが、難しいのは商圏(マーケット特性)と建物の規模(コスト)との関係をどうクリアするかという点である。  多くの場合、GMSの立地では足元商圏しか取れない、そこへ商圏がより限定される食品を強化することは①商圏と消費支出の費目を限定して、②シェアをとりに行くということになる。  どちらかといえば、GMS=総合スーパーの戦略ではなく、専門店、あるいはメーカーが得意とする戦略である。ある意味、他を捨てて食品にかけているということになるが、例えば食品で100億円まで売る、周辺の市場まで押さえてしまうというところまでいけないところが全てを中途半端にさせている。  バブル崩壊後の低迷期(20年前)にGMS(general merchandise store)ではなく、SMS(specialty merchandise store)という提案をしたことがあるが、結局はマーケット環境の変化から戦略的に選択肢を求めれば、残された道はそこしかない。消去法からすでに分かっていたことだが、あまりにもそこに行きつくまでに時間がかかってしまったということだろう。  ただし、その間にも人口減少、急激な高齢化、一人世帯の増加、ネット通販の台頭など大きな環境変化があったから、リアル店舗がただの物売りのまま成り立つような状況でもなくなっている。  一つの方向は「食」を中心にしてその周辺全てのオケージョンを押さえることだろう。すでに単身世帯や高齢者夫婦世帯がかなりの比率にまでなっており、これらの世帯では、調理をすることがなくなる傾向にある。当然、総菜や給食などへシフトすれば食品でも材料となる生鮮の比率は下がる。高齢者世帯では家にいる時間が長いために水道光熱費が高くなる傾向にあるから、ウォームシェア、クールシェア、〇〇シェア、△△シェア、…など、日常生活の場として人が集えるスペースとして変身することは有効な集客手段になる。また、広く消費支出の費目をカバへ―するには、「食」を「ただ空腹を満たす」手段にとどめることなく、「健康維持」「交歓」の手段とすることも重要な意味を持つ。商圏を広くとり、かつシェアも上げるには、「食」の持つ意味を広げる必要がある。
重要なことは、売れている商品、行列ができている店は「なくても困らない商品を扱うところが多い」という事実である。  足元商圏+観光・ビジネス客で成り立つのは大型ショッピングセンターも同様である。コモディティだけで大きな商圏は維持できない。様々な商品を売るのではなく、様々なオケージョンに対応する「場」を提供することで、結果として関連する商品・サービスを提供する、というように変える必要がある。  マーケティング戦略の基本に戻れば、これまでとは違う行き方・生き方が必要になることは自ずと見えてくるはずである。


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