「商品が売れる」というメカニズム

◆商品について知りたいこと
 商品を売る側にとって「どんな商品が」「どのような理由で」「どのようにすれば」「どのくらい売れるのか」ということは非常に重要なテーマである。
 「いつ」「どこで」「何が(商品・価格)」「どのように(売れ方=頻度、タイミング・お客の集中度合い)」「どのくらい」という情報が分かれば、商品・売場・人員を準備をするのに苦労はない。
 ある意味、売れる商品と売れる時期、数量、売れ方(買う人・売れるタイミングなどの集中度合い)が分かれば、誰が買っているかはあまり関係ない。
 誰が、どのような理由で買っているかは、売れる商品、時期、数量、売れ方などが分からないため、それを推測するために必要なだけであるから、要は何がいつ、いくつ売れるかさえ分かればよい。
◆商品がなぜ売れるのか、どのように売れるのか
 商品が売れる、言い方を換えると「商品を買う」ということは物理的な問題と心理的な問題が関係する。
 物理的理由か心理的理由かによって、明確に納得がいく「商品を買う理由」があるか、ないかが決まる。
 マーケティングでは「ニーズ」「ウォンツ」などという言い方をするが、商品を必要だから、欲しいから買うというのは、ある意味正しい側面もあるが、それは過去の物がない時代の話であって、いまのように物が溢れ余っている時代には全くの錯覚ではないかと思えることも多い。
 実際に我々の身の回りを見れば、必要のない物、なぜ買ってしまったのか分からない物で溢れている。
 よくあるパターンが「とりあえず買っておこう」というものや、何でもいいから買うことで「欲求不満を満足させる、ストレス解消する」というものである。
 買物依存症という言葉もあるが、このような場合には「買うこと」自体が目的になるから、買った物がその時点で必要だったか、欲しかったかということはあまり関係ない。

 セミナーや授業で「買物実験(商品の干渉)」というものをよくやる。
 実験の対象はスーツ、弁当、ポロシャツの3つである。いずれの場合も条件を変えながら、受講生・学生にどれを買うのか、あるいは買わないのかを聞いていく。
①スーツ
 1万円から10万円まで1万円刻みでスーツが品揃えされている。いくらのスーツを買うかを聞いていく。多くは4~6万円を中心にし、その両側に行くにしたがって人数は減る。
 次に購入希望がゼロ、あるいは極端に少なかった高額の方から商品をカットして1~7万円くらいの品揃えにする。そうすると中心価格は3~4万円に下がる。さらに売れなくなった上の価格をカットし、1~5万円くらいの品揃えにすると中心価格は2~3万円に下がる。
 さらに購入しないという選択肢を与えると品揃えの幅が狭まるにしたがって購入しないと答える人数を増える。
 売れない価格帯を上から削っていくにしたがって、確実に平均単価は下がり、選択の幅が狭まるにしたがって買わないという人数も増える。これまでPOSを使って死筋をカットするといういたって当り前のことをした結果である。
②弁当
 コロッケ弁当、メンチカツ弁当、チキンカツ弁当、トンカツ弁当、ビーフカツ弁当の5つを用意する。白飯と煮物、おしんこがついている。
全てを500円としてどれを買うか聞く。ほとんどの人がトンカツ弁当とビーフカツ弁に集中する。
 次にビーフカツ弁当を500円とし、トンカツ弁当480円、チキンカツ弁当460円、メンチカツ弁当440円、コロッケ弁当420円と20円ずつ差をつけてみる。この場合は500円均一の時とほぼ同じになるから、この価格差はあまり意味がない。
 次に50円ずつ差をつけ、ビーフカツ弁当500円、トンカツ弁当450円、チキンカツ弁当398円、メンチカツ弁当350円、コロッケ弁当298円としてみる。この段階で選ぶ弁当が大きくばらけていく。それぞれの弁当の値頃、おかずと価格の関係が上手くバランスする価格差と考えられ、最も自然な形でみんなが選択する。ただし、選んだ理由を聞いてみると、好きだから、安いからなど、選択にはいろいろな理由があることが分かる。
 さらに、50円の価格差を付けたまま、ビーフカツ弁当だけを日替わりと称してコロッケ弁当と同じ298円にしてみる。結果は、一気にビーフカツ弁当に集中する。好き・嫌いとは関係なく、損得勘定だけで選択する弁当は大きく変わる。
 *ほとんどの人はビーフカツを見たことも食べたこともない。
③ポロシャツ
 はじめは白と赤2色の品揃えに買わないという3択で聞いてみる。白が多いが買わない人も多い。次にピンク、クリーム、パープルを加えて5色+買わないの6択とする。前と大きく変わらない。
 ここからモスグリーン、ネイビー、グレー、ブラックと1色ずつ加えていく。加えるたびに新たに加えた色に移行する人が増え(そのように色の順序を設定している)、買わないという人も減る。
 最後に誰も買わないと言っていた色をカットする。多くの場合、ネイビー、グレー、ブラックしか残らない。この時点では誰も買わないという色だけをカットしているにもかかわらず、「買わない」を選択する人数が増える。
 自分が買う色、買わない色という単純な条件だけで「買うか」「買わないか」は決まらないようである。

 3つの実験から分かるのは、「商品さえ良ければ...」「売れる商品」「売れない商品」「高い」「安い」...など、いろいろなことを言ってみても、売場の状況、周囲にある商品などが商品購入に大きく影響していることが分かる。
 在庫や周囲にある商品の影響(商品の干渉)が分からい状態では、POSデータは参考にはなるが、それ以上でも以下でもないことが分かる。

◉実験のおまけ
 PB商品とNB商品の価格差を変えながら、それぞれがいくらの時、どちらを選ぶかを聞いてみる。
 水・お茶などのペットボトルの場合、少しでも安ければPB商品を選ぶ人が増えるが、コーラでは売価が2倍違ってもNB商品を選ぶ人が多い。
 PB商品の普及・定着度合が大きく影響している。何でもいいわけではない。

◆商品が売れるキーワード=クラシフィケーション
 「商品がなぜ売れるのか」ということに関しては、その裏にある人の心理まで測定することは難しい。結局は売れた商品と売れ方(タイミングや集中度合い)など測定可能なデータを見ながら判断するしかない。
 ただし、商品と価格だけを見ているのでは、よほど商品知識がないと解釈を間違える。
 ずいぶん前になるが、子供のサッカーボール980円、1280円を売っている店と980円、1280円と2980円、4800円を扱っている店を比較して、こっちは高い、こっちは安いと分析していた例を見たことがある。
 知らない人がただ価格だけを見れば高い、安いということになるが、安いのは子供のおもちゃ、高い方はサッカークラブで使う4号の練習球だから高いのではなく、商品そのものが全く別物である。おもちゃを売っている店はそれだけだが、クラブで使う練習球を扱う店はトレーニングシューズ、スパイク、ストッキング、スネあてなども扱っているはずである。
 要するに商品を見る上で価格も重要だが、もう一つ価格やお客が選択するための商品が持つ特性(クラシフィケーション)を抑えておく必要がある。
 例えば風邪薬を選ぶなら症状や剤形、容量(日数)だし、衣料品ならデザイン、素材、色・柄、サイズなどである。
 商品にはいろいろな特性があるが、商品選択に全てが関与しているというわけではないから、お客が購入する際にキーワードとしている特性(クラシフィケーション)を特定することは重要である。
 例えば、カジュアルシャツを選ぶ際、デザインなのか、色・柄なのか、素材なのか、ブランドなのか、...。
 それを知るために、これらを表頭、表側に置くマトリックスをつくってみる。デザイン×色・柄、デザイン×素材、デザイン×サイズ、...などである。
 ほとんどの場合、一定の比率で売れているから、それがその特性を支持する人の比率と考えられる(理由までは分からない)。
 この売れる比率を基に商品構成を考えるが、ここで商品の購入実験(商品の干渉)で得られた法則が重要になる。
 どの商品を選ぶかは、周囲にある商品や価格に影響を受けるから、それらを考慮して商品の売れ方を誘導、あるいはコントロールするような商品配置、売場陳列をする。
 多くの企業でビーフカツ弁当を298円にしたような価格設定をするから、無意味に利益の無い商品に販売が集中し、多くのスペース、在庫金額を割いている定番商品が死んでしまう。定番商品と特売商品は別物ではなく、合わせてワンセットであるから、定番商品の設定の仕方と特売商品の設定の仕方は関連させて考える必要がある。
 なぜ、売れるのかが分からなくても、何に影響されるか、どんな影響のされ方をするのかが分かれば、売れる商品や量をコントロールすることはある程度可能になる。
 売場づくり、商品構成の醍醐味であるが、今ではそのようなプロフェッショナルな発想をする人も減っている。その代わりとしてビッグデータやAI(人工知能)が期待されているが、実用化はまだまだ先であるし、ゼロから有を生み出すことは機械には難しい。
 問題意識があって、はじめて仮説が生まれ、実験ができる。その蓄積からでしかノウハウは生まれないから、商品構成を遊べる人が大切になる。

 


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