総合スーパー(GMS)再生の構造的障害、同じ構造的障害を抱えるショッピングセンター

 総合スーパー(GMS)再生の障害はいくつか考えられる。
 最も大きな問題は、いろいろな意味で広い衣料品売場に変わる商品が見つからないことである。
 いくら衣料品の売上が減少し、食品売場がお客で溢れたとしても、マーケットサイズとシェア、粗利率、運用コストの違いを考えると安定的に売上が取れる食品をいくら広げても衣料品の穴を埋めることは難しい。
 飲食やサービスにスペースを割くことも考えられないわけではないが、設備投資、坪売上/坪粗利を考えると食品よりもさらに難しい。
 一店舗だけの問題でなく、総合スーパー(GMS)という業態の構造的な問題であるから、いつかは決断する必要があるのだろうが、衣料品と同じだけの粗利高(坪粗利、粗利総額)を稼ぎ出せるモノが見つからない限り、いつまで経っても、このジレンマから抜け出すことはできない。
 立地の影響も大きい。人口動態や立地環境の変化(類似する商業施設の増加、鉄道の乗り入れなどによる都心部への時間的距離短縮など)など、いろいろな与件を考えると、足元商圏だけに頼るコモディティ型の大型総合スーパー(GMS)は、将来的なことを含めてより難しい状況にある。
 いっそのこと、新しい方向へ踏み出すためにも、粗利高(坪粗利、粗利総額)を諦めてしまうというのも一つの方法だと思うが、お金に関わる問題だけにそう簡単にもいかないから悩ましい。
 どこに基準を置くかという問題もあるが、少なくとも衣料品売場を広げた時代の数値をイメージしているのであれば身動きが取れない。
 どこまで基準(収益)を下げることができるかによって選択肢も広がるのだが、それもなかなか難しいから八方塞がりである。
 業績は悪化し、改善しない。しかし、代わりになるモノが見つからない。そんな状況がかれこれ20年も続いていれば(修正に取り組んでいるとそんなに時間が経っていたことにも気が付かず、いつの間にか常態化する)、閉店、撤退という結論になるのだろうが、契約、雇用を含めた周辺への影響、コスト、売上の大幅な減少などを考えれば、それもなかなか難しい。
 現状で考えられる策は、衣料品を中心にして適正規模に圧縮し、損益を改善することしかないが、いつまでも結論を先延ばしにしてもしょうがない。
 ずいぶん以前になるが、総合スーパー(GMS)がダメならば、食品はマックスバリュ、住関連はメガマート、衣料品は衣料マックスバリュ(衣料品のマックスバリュバージョン)で構成し直す方がよいのではと提案したことがある。
 一般的な商品の総合によるワンストップショッピングが難しければ、専門性やディスカントなど、何らかの特徴ある品揃えと損益分岐点の低い運用システムの組合せにした方がまだ可能性は高い。
 いずれにせよ、バブル期に創り上げた総合スーパー像、売上・利益のイメージが次のステップを踏み出す上で大きな障害となっていることだけは確かだろう。
 同じジレンマに陥る可能性の高いショッピングセンターの方がテナントを入れ替えることができるという点では総合スーパー(GMS)よりまだ少しは選択肢が広いのかも知れないが、基本的な構造は全く同じである。
 ビジネスモデルの修正は損益構造の修正でもあるから、損益構造から発想した方がいいのかも知れない。
 単純に考えれば、「小売」にこだわり続けるのか、それとも経営として成り立つようなテナントミックス(小売にこだわらない)を考えるのか、ということになるだろう。
 大家としては、家賃が確保できれば小売業の面積を圧縮することには何の問題もない。
ケアハウスや保育園がダメなのは、収益構造の問題であるから、新たなビジネスモデル(例えばインバウンドを意識した観光型ホテル+免税品販売+観光サービス)を開発して6次化するなど収益が確保できる方法を確立するしかない。
 いずれにせよ、「小売」という範疇に限定せず、広く答えを探さない限り、答えを得ることは難しい。

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