分かるか、分からないか

 ある企業で不振対策のためにバイヤーから話を聞いた。「現在、最も意識してやっていることは?」という問いにバイヤーから返ってきた答えは「店への十分な対応をするために本部にいて直ぐに電話に出られるようにすること」だという。  業績不振企業のバイヤーの最優先業務が「売れる商品の開発や粗利率アップ」でないのでは、いつまで経ってもこの状況から抜け出すことは難しい。
 
 ある企業で52週の販売実績データを過去2年分+今年のデータの3年分をまとめてグラフ化してもらっていた。
 グラフを見ていると、一昨年、昨年と今年のグラフがほぼ同じでいつまで経っても変化がない。
 時系列データ(52週のグラフ)に期待することは、本来売上が取れるタイミングで仕掛けていない、売れるタイミングに欠品を起こして売りそこなっている、仕掛けのタイミングが速すぎる・遅すぎるなど、おかしな点を見つけて修正し、運用に活かすことである。同じグラフが3年も続くということは、毎年同じことしかしていないということになる。
 「データは重要だ」と誰もが言うが、本当の意味を理解しないとそのデータを活かして結果を変えることができない。
 データは記録すること(ストック)が目的ではなく、使うこと(フロー)が目的である。しかし、勘違いすると記録すること(データ蓄積のための機械的作業)ばかり一生懸命になって使うことをしなくなる。グループワークなどで賢い人が真っ先に書記を申し出るのと同じで、何も考えなくても、ディスカッションに参加しなくても、他人が言っていることを書いてさえいればよいから楽である。
 去年のデータを見て、去年と同じことを繰り返せば、いつまで経ってもグラフの山谷の位置、形は変わらない。欠品を起こす所まで同じだともう笑うしかない。
 
 ある優秀な店長と一緒に店舗の売上アップに取り組んだことがある。地道な努力のかいあって、売上、客数とも確実に伸び、店のモチベーションも非常に高まっていった。
 当然、幹部社員、全店長の前で発表することになるが、どんなに聞いてもやったことの無い人にはなかなか本質が理解ができない。
 熱心な店長の中には詳細な資料ファイルを欲しがる人もいるが、もらっただけで終わるケースがほとんどである。
 改善活動の後に残った資料やデータは、いろいろな障害を一つ一つクリアしていく際に頭(思考)を整理するために使った道具である。仮説を立てて実験し、そこから見つかった問題をさらに解決するために様々な工夫する。まさにもがき苦しんだ記録である。
 基本的な考え方や手順についてアドバイスした私が見ても、実際の活動記録を理解することは不可能だから、資料やデータをもらってもまず見ることはない。
 データの意味、本質を理解していないと、たくさんの資料、データを欲しがることがある。しかし、それらは人からもらってたくさん持つことに意味があるのではない。
 実際に改善活動に取り組んでいれば、問題意識を具体化し、様々な工夫をするたびに黙っていてもどんどん溜まっていくから、改善の進捗(状況がどんどん変わる)とともにほとんど意味を持たなくなる。

 物事の「本質」、「意味」が分かるか分からないかの違いは大きい。それは個人であっても組織であっても同じことである。
 

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