ICT、IoT、AIでリアルの構造が変わった時、小売業はどう対処するのか?

 小売業の場合、情報関連の新しいシステムが実際の現場に入ってくる時にはハードが主体となることが多い。ハードメリットは目に見えて分かるから誰が見ても分かりやすい。特にローコストを重視する小売企業は目に見える形の具体的なメリットを優先する傾向が強いので、どうしてもソフト面、特にインターフェイス、ユーズウエアなどは後回しになりがちである。
 例えば、様々な業態を見まわしてみると、いつの間にかアチコチにセルフレジがたくさんあり、お客も当り前のようにセルフレジを使いこなしている。
 ただし、このような状況変化はあっても、その先にあるものはなかなか見えてこない。
 普通に考えれば、鉄道やバスも同様だが、現金を電子マネーやクレジットカードに全て置き換えてしまえば金銭を扱わなくてもデジタルで全て完結させることができる。日々の釣銭準備や現金の最終的な精算は必要がなくなるし、金銭事故の可能性もなくなる。
 さらにキャッシュ&キャリーのキャリー部分も廃止してしまい、精算後に物流センターから買上商品を発送するようにすれば、個店で持つ在庫(資金)、個店での発注-商品ピッキング-商品配送-検品-荷受け-ストック-品出し(商品補充)、鮮度管理などあらゆる手間が集約でき、効率は飛躍的に上がる。経費が減り、その分利益が上がるから、様々な形でお客に還元することもできる。
 複数の仕組みを同時に持たなければならない「どっちつかず」「中途半端」は最も効率が悪い。
 あまり意識して見ることはないかもしれないが、リアルの構造は確実にデジタル化・ネットワーク化、あるいはICT、IoTの方向に向けて変化していく。
 理由はコスト、効率、生産性、...等々である。経済原則に従えば効率のよい方へと収束していくのは至って当然のことである。
 人口減少・高齢化によって働き手が減れば、生産性を上げるしか方法はない。小商圏化して売上確保が難しくなれば、損益分岐点を下げなければ経営は成り立たない。あとはICT、IoTなど、敷かれたレールに従って動くしかない。
 いまは、誰もが「小売業は、店があって、お客が店に行って、商品を選び、お金を払って商品を買い、自宅まで持ってくるもの」だと思っているかもしれないが、その比率も随分と減りつつある。
 そもそもセルフサービスという形態が生まれ(60年前)、それが当り前になったことも、それ以前と比べれば信じられないことだろうし、Web上で商品を探し、ワンクリックすれば翌日(当日もある)には自宅に商品が届いているなども、ちょっと前には考えられないことだったはずである。
 「これまで」とか、「いまは」という視点で物事を発想しても見えてくるものは限られる。
 「これから」を見た時に、小売、店舗はとどうなっていくのかという視点で物事を見ていかないと判断を間違える。
 現在のままでは、商品を売るのに商圏ごとに「店」「商品在庫」「人」を持たなければならない。そうであっても、それぞれの商圏で得られる売上・利益は限られるから、非常に不合理な構造の中でビジネスが行なわれていることになる。
 商圏ごとに「店」「商品在庫」を持つという発想さえ変えることができれば、その維持運営に当たる人も不要になり、コストは著しく減少する。あとはそこで減少するコストと個別に配送するコストの比較、消費者の買物習慣とのギャップをどう昇華(消化)するかという問題をクリアすればよい。
 いまはいろいろなことができるから、例えばヘッドマウントを装着し、バーチャルの世界で家の中に売場を再現してしまうということも可能だろうし、場合によっては実際の商品の香りをかぎ、手に取って感触を確かめることも可能になるだろう。
 どんなに状況が変わっても「店がなくなることはない」というのは多くの人が言うことであるが、言い方を換えれば、だからと言って「全ての店舗が残れるわけではない」。
 その時、小売業はどうするのだろうか。
 次を考える必要があるだろう。

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