マスコミで新しいライフスタイル業態、新業態と紹介された店舗をいくつか見たが、残念ながら多少内装が変わり、レイアウトが変わって、什器、陳列、品揃えが変わっただけであった。 本質的に物売りであることに何ら変わることはないから、いずれ珍しさがなくなれば、飽きられるか、現実的に日常生活で使われることが増えてくれば、数値を重視したやり方に収束していくことだろう。 表面的なつくりだけ変えて本質的に変われない理由は、売上と利益を上げる手法=ビジネスモデルが従来のまま何ら変わることがないからだろう。 客数を確保し、客単価を上げて売上を伸ばす手法が変わらない限り、どんなに内装を変え、多少商品を入替えてみても、やっていることは同じにならざるを得ない。 はじめて見た時に新鮮に思えた売場や商品も、毎日見ていれば、すぐに飽きてしまう。 日常的に使う店と、観光などで滅多にくることのないウィンドウショッピングをするような店では意味が違うから、もし、そのように性格の違う店に同じような手法を当てはめれば、いずれミスマッチが表面化してくる。 基本的に店舗はお客が慣れることで感動がなくなるということも含めて、オープン時から時間と共に陳腐化していく。時間の経過と共に進化・成長し、よりよくなっていくことはなかなか難しい。 日本の人口は2015年から2020年の5年間に約250万人、5年後の2025年までに約350万人、さらに5年ごとに400万人、450万人と減少する。 とりあえず、10年後の2025年までを見ると、600万人、約5%が減少する。その間、65歳以上人口が260万人増え、単独世帯も100万世帯増えるから、1人当たり支出、世帯支出が現在と同じとしても消費全体は現在よりも6%前後は減少すると考えてよいだろう。 年間商品販売額を140兆円、自動車と燃料を除いて約100兆円として見ると、6兆円(百貨店の売上と同じくらいの規模)くらいは減少すると考えられる。 高齢者だけが増えるというよりは、日本全体の年齢が上がる=年齢構成が変わるから、ライフステージの変化に伴うライフスタイル変化から、志向や必要なものが変わり、購入する商品、チャネルも変わると考えてよいだろう。 単純に現在ある店舗がそのままあったとすれば、全店平均して6%売上が下がるということになるが、そんなことはあり得ないので、売上を伸ばすところがある一方で売上を大きく落とす店が出てくるから、単純に考えても10~15%くらいの店舗が存続できなくなると考えてもおかしくはない。 新たに外資が参入してくることも十分考えられるし、異業種から小売に参入することも十分あり得るだろう。新たな業態が生まれて、特定のマーケットを抑えてしまうかもしれない。 その時、看板だけ架け替えて本質的に何も変われていない店舗は果たしてどうなっているだろうか。 10年は、まだまだ先の話なのか、それとも、もうすぐ目の前でアッという間に来てしまうのか、とらえ方は様々であるが、ある人がこんな話をしてくれた。 ●うちの周りには、80歳台、90歳台の人ばかりたくさんいるから、いつどこで葬儀があってもおかしくない。 ●空家が820万戸あると聞くと、何か凄いことが起きているように思うけど、気が付けば、うちの近所でも何軒かあった。 はじめはなかなか気が付くこともないが、そのうちだんだんと身の回りでもニュースでしか見なかったようなことが起こりだす。実際には起こっていても気が付かない程度だったものが、誰もが気がつくくらいの件数になるのだろう。 ただし、このような変化はボディブローのように小売店舗を疲弊させる。「茹でガエルの話」ではないが、じわりじわりで気が付いた時には遅かったということは企業には許されない。 残された時間を考えると、具体的な修正行動をとらなければならないタイミングにはなっているだろう。
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