急激な高齢化と人口減少によって、消費がタイトになることは誰が考えてもすぐ分かる。しかし、そのことばかりに目が行き過ぎると、人口減少、少子化に伴って生産年齢人口=働き手も毎年100万人ずつ減少していくという事実を見落としてしまう。 日本の地域別将来推計人口 平成25年3月推計(国立社会保障・人口問題研究所)のデータを基にして、いろいろな角度から調べてみた結果、次のようなことが分かった。 ①人口の減り方は、現在の人口規模とは関係なく起こる。大都市も小都市も、現在の人口規模に関係なく、人口が増える都市も減る都市もある。中小都市を中心に「消滅可能性都市」と考えると間違える。減少率が一定であれば、人口規模の大きい都市の方が減少する人数は多く、様々な点で影響は大きくなる。 ②人口減少に大きく影響するのは「2015年時点の総人口に占める65歳以上人口の割合」である。この値が20%代前半まで(20%以下では人口が増加する都市が多い)とそれ以降、30%以上では、その後の人口減少の仕方は大きく変わる。 ③2015年から2025年までの10年間が最も高齢者が増加する速度が速い。 ④2015年の生産年齢人口指数(2010年=100)が小さい都市(生産年齢人口の減少速度が速い)は都市の人口規模と関係なく、2025年時点の同指数も大きく減少する。*たとえ人口1万人の都市でも増える都市はあるが、50万人以上の都市でも減る都市は減る。 ⑤2025年時点の生産年齢人口指数(2010年=100)に大きく影響を与えるのは、「2015年時点の総人口に占める65歳以上人口の割合≒人口減少の大小」である。 すでに一部では人の確保ができずに企業存続すら危ぶまれるような状況も生まれているが、前述のことから今後5年~10年後の状況を考えると、業種・業態・職種などによっては極端に人件費が高騰し、それでも人手が確保できないという状況が考えられる。 仮に労働力が80%になった場合、現在の生産性を維持するには、生産性を125%以上にする必要があり、さらに人件費が10%上がると、125%×1.1=137.5%以上にまで引き上げる必要がある。現在のビジネスモデルのままで実現するには現実離れした数値というしかない。 セブン&アイ ネットスーパー西日暮里店は約600mのベルトコンベアを持つというが、すでに店舗というよりは自動物流倉庫といった方がよいつくりだろう。かつて西友が能見台につくったメカトロ店舗、あるいはメトロのフューチャーストアといった形態が、いよいよ現実のものとなる時代になったと考えてよいだろう。 商品を一つ一つ人手でハンドリングしている限り生産性は上がらないから、庫内物流(店舗内での物の動かし方)を含めた物流を如何に自動化するかが重要になる。 課題は倉庫のような無機質な空間を感じさせず、如何に消費者に小売するかであり、今後人型ロボットの活用など様々な工夫がなされるだろう。 課題は資本力だろう。莫大な設備投資をして自動化できる企業とできない企業が出てくることは確実である。 ただし、その違いだけで存続できる企業が決まってしまうのもつまらない。 資本力がない企業は「知恵」を出し、ブランドの確立、新規ビジネスモデルの開発などによって投資を呼び込むしかない。 人口動態から見ると、状況が大きく変化するのは2015年~2025年までの10年間、様々な影響が出てくるのは、そこから少し遅れて2035年くらいまでと考えている。 その間、人口減少が極端な都市は消滅、あるいは吸収され、人口が大きく減らない都市は急激に高齢化が進んだ後人口が大きく減少する。 おそらく2040年以降には年齢構成も落ち着いてくると考えられるが、人口推計では2018年頃には年間の人口減少が50万人を超え、2024年に70万人、そして2041年から30年以上に渡り毎年100万人以上が減少するとされている。 各企業が、どんな準備をするのか・できるのか定かではないが、少なくとも今年の新入社員が無事定年を迎えられるよう、その時点から逆算して準備をする必要があるだろう。
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