商品を科学する-③ 商品の企画、開発

◆商品の企画、開発 
 商品を企画、開発する上で重要なことは、マーケットのニーズを上手くとらえることである。ニーズというと分かりにくければ、「不便なこと」「困っていること」と考えるとわかりやすい。
 例えば、洗濯物を干す時に使う四角ハンガーやピンチ類は色や形が限られている。いろいろやっているうちに一定の形に収束したのかもしれないが、それは一定価格の範囲内に縛っているためとも考えられる。多少、価格が高くても色が変わったものが出ると一時的にでもよく売れるから、消費者は変化を求めていると考えてもよいだろう。
 ただし、「ニーズ」という点から考えると、多少色が変わっても「実用的」で「安価」な「使い捨て」商品であることに変わりはない。
 問題はいろいろとある。例えば、紫外線の影響で、使っているうちにピンチが割れてボロボロと壊れてしまう。洗濯物を干す際に大きさ、形の似たものをまとめないと綺麗に干せない。干す時も取り入れるときも一々ピンチをつまんで開かなければならないから手間がかかる。…..等々である。
 しかし、多くの人が、四角ハンガーやピンチは「こんなもの…」と思っているのだろう。作る側、販売する側も「こんなもの…」と思って同じものを作り、売り続けているから、何十年経ってもそれを超えるようなものは現れない。洗濯機が乾燥まで一貫して行うことで洗濯物を干すことも減ると思えば、改めて開発するほどの価値がある商品ではないのかもしれない。
 だいぶ前になるが、テレビ通販で雨の時などにサッと一度で洗濯物を取り入れることができる数千円のハンガーが売られていたことがある。ピンチを回転式にしたことで干す時も外す時もワンタッチでできるというのがポイントである。価格から言えば通常の四角ハンガーの20倍くらいだったと思うが、よく売れていた。(高額品であっても素材は同じだから、紫外線でボロボロになった時には辛いだろう)
 日頃の不便を解消する商品は価格に関係なく売れるということが実証されてたことになる。
 新しい商品を企画し、開発する際には大きく分けて2つのパターンが考えられる。
 一つは、既存商品の改善、改良である。現物があるから、実際に使った結果として悪い点を改良していけばよい。
 改善、改良を加える場合、ただ漠然と商品を見ているだけでは良いアイデアは生まれてこない。使い勝手(操作性、重量、形状、大きさ)、耐久性、保全性、収納性、手入れのしやすさ、機能の複合(合わせ技)、…など、具体的な物としての扱いやすさの他、デザイン、色なども重要な要素になる。
 例えば、掃除機は吸引力や音の大きさ、排気などが盛んにCMでは比較されるが、使う側の女性からは、置いていても倒れない、部屋において許せる色、デザイン、…などの声もある。立場が変われば視点も変わる。商品開発の最前線で最新技術ばかりを追いかけていては見えないことも多い。
 二つ目は、既存にない商品の企画、開発である。物としてこの世に存在していないものを新たに創りだすことは難しいが、ここでも大きく二つのはパターンが存在する。
 一つは、日本国内にはないが、海外に存在する、あるいはヒントになるような類似商品があるというケースである。国内で認知されていないだけで便利なモノであれば、大いにチャンスがある。
 一方、国内にも海外にも全く何もないゼロの状態から企画し、開発するというケースがある。ある意味、発明品のようなものであるから、珍しいケースともいえるが、蚊を感電させてとる小さなラケットのような器具は上手い具合にニーズに応えた逸品と言えるだろう。
◆商品の企画・開発手順
 はじめから「ヒラメキ、思い付きなどアイデア」があって、商品を形作ることはよくあることである。たまたま、偶然など切っ掛けは様々だが、だれでも、いつでもヒラメクわけではないから継続的にやろうとすると難しい。
 ある程度仕組みとして、誰がやっても似たようなレベルでできるようにしようとすれば、やる手順、検討する項目などをキチンと決めておく必要がある。
 通常、商品を開発するには「機能(はたらき)」を決めることからスタートする。掃除機であれば「ゴミをまとめる」、四角ハンガーならば「洗濯物を干す」というような商品が果たす役割である。目標達成レベルなどの要件、売価などの制約条件も目安としてあった方がよい。次に重要になるのが機能を達成するために「どのような原理」を用いるのか、その原理によって機能を具現化するのに「どのような構造にするのか」が重要になる。
 ゴミをまとめるのに空気と一緒に吸い取るのか、静電気によってくっつけてしまうのか、…等々が原理であり、それをどのような構造で達成しようとするのかによって、従来のゴミ袋式やサイクロンなど掃除機としての具体的な構造が決まる。
 商品として形作るには、使い勝手(操作性、重量、形状、大きさ)、耐久性、保全性、収納性、手入れのしやすさ、機能の複合(合わせ技)、…など、様々な項目に分ける必要があり、商品としての表かも、またこれらの項目によって行われる。
 掃除機のように機械的なものもあれば、アパレルのように機能、性能よりはファッションという感覚的な要素が重要なケースもある。また、ケーキや進物用の和菓子、惣菜などの食品もあるから、プロセスの細かさや要求される精度はマチマチである。ただし、基本的な手順、そこで検討される項目は基本的に同じである。
 ただ漠然と個人の技能(普遍化されると技術)として行っている商品の企画、開発も「科学する」ことで普遍化することができ、レベルも安定するし、技術として多くの人に移転することもできる。
 技術として100点近いレベルを維持できれば、その上に技能を積み重ねて120点、150点を取る人も現れてくる。安定した強さを持つ組織に共通することである。

 

 

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