もしAIBOが生きていたら

 ソニーが1999年に発売したAIBOという犬型ロボットがある。すでに話題になることもなくなったが、このようなかつてのヒット商品も企業にとっては重要な経営資源の一つである(はずである)。
 物発想であれば、AIBOも過去の商品ということになるが、サービス発想に変わるとスマートフォンやタブレットPCと同じ情報端末、しかも自分で動き、ペットにもなる、場合によっては話し相手にもなる情報端末として蘇るかもしれない。
 各種センサー、カメラなどを搭載すれば、独り暮らしの高齢者や赤ちゃん、ペットなどの状況を四六時中監視することもできるし、留守宅のセキュリティ用にもなる。iPhoneのSiriのような対話型音声認識機能を搭載すれば話し相手にもなるし、プロジェクターを搭載して音楽や映像の他、さまざまな情報を投影すれば情報端末としてほとんどの機能を果たすことができる。
 掃除機でさえ自分で勝手に充電する時代であり、基本的なハード、ソフトについても自己診断することは可能である。環境さえ整えば、話し、かつ動く総合的な情報端末として化ける可能性がある。
 問題は「物」で終わらせずに「システム」としてさまざまなサービスを提供するビジネスモデルに仕立てることができるか否かである。
 セキュリティ企業とコラボレーションすれば安否確認や防犯という形で使えるし、各種小売業、飲食業、給食センターなどとコラボレーションすれば、日常的な物品、食事などの発注端末として使うこともできる。医療機関とコラボレーションすれば、健康状態の確認も、テレビ電話で問診することも可能になるだろう。
 企画とアイデア次第では、双方向の情報端末としてさまざまな分野の総合窓口になり得るから、一大ビジネスに発展する可能性もある。何よりもスマホのように全てを小さく凝縮することにこだわる必要がない。大きな身体を十分活かしてホームコントローラーをつくることができるし、1台(匹)で全て完結させる必要もなく、複数に分散してグループとして機能を果たすシステムとして構築することもできる。
 いずれにせよ、重要なことは「物」の呪縛から解き放たれることであり、「サービス」という新たなビジネスの扉を開くことである。
 いつまでもAIBOという物にこだわり、物を売ろうとするのか、AIBOを一つの要素として活用し、新たなシステムを構築するのか、この違いはあまりにも大きいだろう。
(AIBOの飼い主たちは、AIBOが復活するのも待ち望んでいるはずである。それがソニーという文化の復活でもあるように思うのだが…。)
 
 

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