オーナーはいるけど経営者がいない 経営崩壊

 2008年に「スモールカンパニーのメリットを活かせ!」の第3部として「現場崩壊」を連載した(HPに原稿を掲載)が、現場だけではなく、その元にある「経営崩壊」とも言うべき状況が目立ち始めている。
 原因はいくつか考えられる。
 一つは、創業オーナーからの代替わりという難しい状況と急激な高齢化・人口減少、チャネル競合の激化など、環境の劇的変化が同時期に起こっていること。もう一つは、失われた20年、長期に渡るローコスト、生き残りをかけた疲弊戦を続けてきた結果、その状況に慣れてしまった経営者の認識・価値観が、経営幹部を含めたあらゆる階層に対する、本当の意味での教育、人材育成を疎かにしてしまったこと。さらに環境変化は従来の事業の変質=マーケットに対する機能的変化(=具体的にはサービス機能との複合化・IT化・ネットワーク化など)を要求しているにもかかわらず、いつまでも小売業=物売りという形態、既存業態、既存の店舗という概念の中で、従来通り、たくさん物を売ることに固執していること、…などが大きく影響している。
 多くの個人・中小零細企業で、店舗(立地・業態)、商品、組織、人、経費構造…など、現状能力では生き延びることが難しくなっている。長年かけて出来上がった問題構造は、すでに近い将来直面するであろう人口減少・高齢化という状況に対処することは難しい。
 オーナーの甘さ、優しさ、人のよさというところもあるが、現状がよくないことは認識できても、どう修正すればよいのか、どこへ舵を切ればよいのか、皆目見当もつかないというのでは、「オーナーはいるが経営者は不在」といった状況になってしまう。
 小売業は、損益分岐点が高く、経費が固定費的に発生する。売上が伸びている間は多くの利益が出るが、ひとたび売上が低迷すれば、すぐに赤字に転落する。
 破綻する企業の多くが、チョッとしたキャッシュフローの不足から崩れ出していることを考えれば、小売業特有の構造に対するリスクヘッジはとても重要である。
 固定費、あるいは固定費的に発生する経費を極力小さく抑える必要がある。
 経常利益を2倍にするのに、もう1店舗出店していたのは、マーケットが成長し続ける成長期の話である。現在は、すぐ目の前に急激な人口減少と高齢化というリスクを抱えている。
 もし1店舗の売上を3~5割上げることができれば、固定費を2倍にしなくても経常利益を2倍にすることは可能である。冷静に状況を判断し、物事の道理に従った経営が必要である。
 

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