もし、近大、岡山理大とセブンイレブンがコラボして養殖ビジネスを始めたら…

テレビなどでも取り上げられることが多いのが、近畿大学におけるクロマグロの完全養殖である。最近、ウナギ味のナマズが注目されているが、幅広い研究がなされている。
一方、「魚の養殖は海」という常識を覆し、「好適環境水」という特許技術を用いて陸上で魚の養殖を実現したのが岡山理科大学である。淡水魚と海水魚の同一水槽での飼育を可能にし、陸上で多くの魚種の養殖も実現したことで、今度はクロマグロの養殖も手掛けるという。どちらも長年の研究から数多くの実績を持つ大学である。
この2校の持つ技術・ノウハウをコア技術として「海でとる漁業から陸で育てる漁業」を膨大な数の廃校施設を活用し、それに現在あるさまざまなシステム、ITなどを組み合わせることができれば、壮大なビジネスを生み出すことが可能になると考えている。
養殖だけでも十分地域産業として新たな雇用を生み出すことができるし、さらに水族館や釣り堀などレジャー・観光、輸出産業としての可能性もある。
問題は事業としての構成、運用方法である。従来のように単独組織を中心とした運用ではどうしても限界がある。ポテンシャルから考えても、全国をネットワークで結んだフランチャイズシステムのような経営形態を想定するべきだろう。
筆者は以前からコンビニエンスストア企業(セブン-イレブン・ジャパンしかない)を母体とした農業や漁業(養殖、加工など)のフランチャイズチェーン化を提唱しているが、マーケティング力、商品開発力、情報システム、数多くの店舗をマネジメントする業務システムなど、その技術・ノウハウ、システムは多くの可能性を秘めている。
ビジネスとして、より付加価値を高めるには、稚魚や成魚の販売という素材・原材料の販売だけではなく、料理の提供、水族館・釣堀など養殖の周辺にある観光・リゾートとしての可能性までを取り込み、6次産業的なトータルな事業に仕立てることが重要だろう。
必要なのは、事業企画、事業の推進母体、マーケティング、販売、資金、情報システム、IT、エネルギー、サプライチェーンなどを兼ね備えたインキュベーターのような組織である。
必ずしも大きな規模である必要はないが、技術、ノウハウ、経験などを持つプロフェッショナルな個人・組織が集まる必要がある。
現状であれば、まだ団塊の世代という多くの技術、経験を持つ人達を確保することも可能である。彼らを高齢化の象徴とするのではなく、高度成長期を支えたプロフェッショナルとしてもう一度活かすことができれば、実現性は大いに高まる。

すでに近畿大学、岡山理科大学の事業は、歴史、研究開発、事業化のレベルが高く、現状でも十分事業として成果を上げ、成長、発展もしている。ここで、あえて、この2校を廃校施設の有効活用と絡めて取り上げたのは、コア技術としてのポテンシャルが非常に高いからであり、現在、日本が持つさまざまな分野の技術やシステムを加えればさらに大きく社会貢献が可能と考えたからである。
◆前提条件として設定すべきポイント
①まず、コストという点に関して、陸上で魚を養殖する場所は、廃校施設を中心に地方にある遊休施設を活用する。もう一つ重要なことは水がよいこと、水温を一定に保つために太陽光発電など自家発電がしやすいこと、もしくは温泉、工場、ゴミ処理場などが近くにあり、熱利用が可能なこと、そして何といってもコストの多くを占める飼料問題を解決できる技術を持つ企業・組織・団体などが参加すること、最後に物流面を考えて消費地、高速インター、港など物流基地に近いこと、…などがあげられる。
②運用組織は、全体を戦略的な視点から統括する事業企画部門、コア技術を提供する研究開発部門(養殖、品種改良技術など)、周辺技術の研究開発部門(水質維持管理、省エネなど)、養殖を担当する生産部門、水・エネルギーなどを担当する環境部門、飼料を確保する前段階のサプライチェーン部門、ルート営業・販売(輸出を含む)を担当する後段階のサプライチェーン部門、小売・レストラン部門、水族館・釣堀・体験学習などを含めた観光部門、フランチャイズチェーンシステム(スーパーバイザーなど運用。マネジメント)部門、IT部門、業務・情報システム部門、….など、現在それぞれの業種業界で用いられている有効な技術、システムなどを集結させ、技術、ノウハウ、経験等の融合を図る。
◆具体的な事業イメージ
コア技術のポテンシャルを十分活かすために必要な要素が二つある。一つは事業資金を確保する収益力、もう一つが分散する拠点を統括してマネジメントするチェーンシステムの精度である。
①収益力; 輸出を含め、戦略的にどのような魚種にウエイトを置いて生産し、どのようなチャネルにどのくらいの量を流通させるのかをコントロールすることで収益力を高める。周辺の事業開発も必要である。
②チェーンシステム;事業規模が大きくなることで養魚施設は分散し、店舗も多店舗化すれば、従来の延長線上で一元管理することは難しくなる。チェーンストアがそうであるように、設計段階から多ヶ所を想定し、チェーンシステムとして運用、マネジメントする仕組を持つことが有効である。
具体的には、●本部を中心として技術、ノウハウを提供するフランチャイズシステム(スタート当初は直営中心)として、各地に魚種を振り分けて養殖させる ●本部は、研究開発、ルート営業・販売、小売・食事提供、観光などの企画開発・事業化を行い、地域ごとのフランチャイジー(事業会社)がその運営に当たる といったイメージである。

陸上での海水魚養殖というポテンシャルの高いコア技術、地方で増え続け、有効活用が難しい廃校….、現状ではなかなか結びつくことはない2つの要素であるが、上手く結びつけることができれば、大きな可能性を感じさせるビジネスとなり得るだろう。
このような組合せによるビッグチャンスはまだ他にも数多く眠っている。

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