クラシフィケーション(商品特性)と商品構成

◆商品構成の定義
 商品構成は「目的に応じて、いろいろな要素(役割)の商品をバランスよく組み上げ、一つのまとまりあるものにすること、またはそのようにして出来上がったもの」ということができる。
 目的としては、安さを強調する、高級感を演出する、専門性や特殊性を目立たせる、オシャレであることを強調する、業者にも対応できることを印象付ける、幅広い品揃えであることを強調する、ここへ来れば何で揃うと主張する、限定した目的だけに対応していることを強調する、とりあえずの商品は揃う、….等々、様々なものが考えられる。
 また、いろいろな要素(役割)には、売上の中心になる、利益を稼ぐ、商品回転率を高める、少ない在庫を多く見せる、集客する、価格が安いことを強調する、良い商品があることを印象付ける、専門的な商品があることを印象付ける、品揃えの幅が広いことを強調する、…等々がある。
 このように、いろいろな要素(役割)の商品をバランスよく組み合わせ手商品構成を設計する、あるいは組合せのバランスを確認して商品構成を分析・改善するには、クラシフィケーション・マトリックスが有効である。
 クラシフィケーションマトリックスをベースに商品構成を定義すると「商品構成とは、クラシフィケーション・マトリックスの中にバランスよく商品を配置すること」と言うことができる。

◆クラシフィケーション・マトリックスによる商品構成
 クラシフィケーション(Classification;商品特性)には、デザイン、素材、形状、サイズ、色、構造などの物理的特性、成分などの化学的特性、呼吸、熟成などの生理的特性、状態を維持する上で必要となる温湿度のような管理上の特性、年間商品、季節商品などの販売上の特性、目的買い、衝動買いなど購買上の特性、消費者の使い方による使用上の特性、….等々、様々な特性がある。
 これら商品特性を基にすると数多くある商品でも管理しやすくなる。もとにあるのは、製造分野で多品種少量生産に対応し、高効率、高生産性を実現したグループ・テクノロジーであり、製造分野では当り前のように定着した考え方、手法である。
 数多くある商品特性のうち、商品構成を見ていく上で有効となるものはいくつかに限られるが、有効な商品特性を特定し、それによって商品をグルーピングして固定くと非常にわかりやすくなる。 
 お客が商品を選定する場合、例えば風邪薬であれば、症状(咳、喉、鼻、熱、複合など)、剤形(錠剤、顆粒、粉末、カプセル、液体など)、容量(日数)など、商品特性を拠り所として商品を選択するから、選択する上で用いる商品特性の順序、商品特性ごとの売上比率などをとらえることは、お客が商品選択する手順と割合を知ることになる。
 当然、その手順に従って、売場が分類され、一定の比率でフェイシングされていることが「買いやすさ」につながるから、「見やすい」「分かりやすい」「選びやすい」「買いやすい」売場を実現することにもつながる。
①ある総合スーパーのアクセサリー売場では、ピアスとイヤリングの売上比率が9対1、同様にある百貨店では6対4であった。ピアスは耳に穴を開ける必要があるため、一定以上の年代層にはあまり受け入れられない。9対1と6対4という数値を比べると総合スーパーよりも百貨店の方が全体的にお客の年齢層が高いと推測できる。さらにデザインや素材などまで落とし込んで売上比率をとらえれば、客層、売上比率に応じた商品構成のアウトライン(骨格)を知ることができる。
◆事例
②ある総合スーパーでは、ビジネス・スラックスの中心サイズが82~88cm、デザイン別に調べるとツータック88cm、ノータック82cmが中心になっていた。色別にはツータックは紺とグレーが多く、ノータックでは茶系が多い。ツータックとノータックでは、買う客層が違うため、中心サイズや色が異なると考えられる。それを前提とすると、売場の分類の仕方、商品のサイズ別在庫の持ち方は明らかに現状とは違う形になる。
③ある総合スーパーのブラックフォーマル対カラーフォーマル売上比率は3対2。ブラックフォーマルの中ではスーツ対アンサンブルの売上比率は5対2だが、カラーフォーマルでは16対1と圧倒的にスーツのウェイトが高くなる。取扱いアイテム数を調べてみると、ブラックフォーマル対カラーフォーマルが5対4、ブラックフォーマルのスーツ対アンサンブルが10対9、カラーフォーマルのスーツ対アンサンブルは8対1となっていた。
 明らかに売上比率と取扱いアイテム数の比率が違っている。必ずしも機械的に売上比率に応じたアイテム数を配置する必要はないが、何らかの意図があって比率を変えているのと、何も知らずに結果として比率が違っているのでは意味が違ってしまう。サイズまで踏み込めば、さらに品揃えと売上のミスマッチが明確になる。
④ある総合スーパーの文具売場では、カッター付セロテープのSサイズ対Mサイズの売上比率は6対1だが、スペアテープでは1対2と逆転する。また、フラットファイルのA4サイズ対B5サイズの売上比率は10対8.5だが、レバーファイルになると10対4.5、パンチレスファイルでは7対10と逆転する。お客の使い方によって、同じファイルでもサイズの売上比率は変わるが、品揃えは全て一定になっている。
⑤ある食品スーパーの加工食品売場では、カレールーの甘口対中辛対辛口の売上比率が4.2対10対3.8。200g未満では4.6対10対4.2、200g以上では3.7対10対3.1となり、大容量の方が中辛の比率が高くなっている。また、レトルトカレーの甘口対中辛対辛口の売上比率は2.5対10対5でであり、中辛が多いのはカレールーと同じだが、甘口よりも辛口の比率が高くなっている。
カレールーとレトルトカレーでは客層や用途が違うため、このような売上比率の違いとなっていると考えられる。
⑥ある食品スーパーの日配売場では、木綿豆腐と絹ごし豆腐の売上比率は10対8.4。豆腐の大きさ別に見ると、木綿豆腐では450g未満対450g以上の売上比率が5対1であるのに対し、絹ごし豆腐では1対3と逆転する。取扱いアイテム数を見ると、販売数量の少ない絹ごし豆腐の方が多い。また、大きさ別では何故か木綿豆腐、絹ごし豆腐とも販売数量が少ない方のアイテム数が多くなっていた。
 このように商品特性ごとに売上比率を調べてみると、いろいろなことが分かってくる。
 店の客層、商品の使い方による買い方(売れ方)の違い、お客が店をどのように使っているかなども推測できる。もちろん、品揃えするアイテム数の比率やフェイス数の比率なども売上比率を参考にして行う必要がある。ただし、現在の売上比率が必ずしも正しいとは限らないので、他社情報や業界情報を参考にする必要がある。
*ある総合スーパーでは過去5年間、婦人のブラウスとシャツブラウスの売上比率が年間を通して8対2であった。しかし、メーカーや問屋の出荷実績を調べてみると春夏は3対7、秋冬は7対3という比率であり、この数値を参考にして商品構成をやり直した結果、徐々にこの数値に近づいている。あくまでも売上比率は目安であるが、商品特性別に売上比率を知ることが商品構成の基本になる。

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