GMS衣料品の構造的問題点 同じ構造のショッピングセンター

 GMS衣料品の苦戦が続いている。数値を示し、ユニクロやしまむらの成長と入れ替わるようにして停滞が始まったという指摘もあるが、それほど単純とも思えない。
 歴史的に見ると、GMSでは紳士、婦人を問わず、ヤングカジュアル系の商品が伸び始めた際、それらの商品を平場から抜いてインショップ化し、後に事業部、別会社へと切り替えていった。
 その結果、衣料品売場にはシニア商品、ミセス商品などファッション、流行とは縁遠い実用衣料だけが残された。この点では百貨店の平場に単品商品が残ったのと経緯が似ている。
バブル時代になるとGMSは大型化、高級化、プチ百貨店化したのに伴って衣料品売場を大きく広げている。売場が百貨店や専門店に見られるようなショップ形式に変わると、品揃えの思想とオペレーションは、かつての単品量販型から多品種少量型に変わる。デザイン商品、スポット的な扱いの商品の比率が高まり、ベーシック商品を中心とした定番商品の取り扱いは減る。
 「ファッション」という言葉の意味するものが、ブランド商品や高額品、あるいはデザイン性の高い商品、デコラティブ(装飾性の高い)な商品というとらえ方が定着したのが、この時期と考えてよいだろう。売場に映えないシンプルでベーシックな商品は低価格帯、特売などに位置づけられ、軽視される。
 ただし、多くの消費者に訊いて分かることは、数多く持っている衣料は圧倒的にシンプルでベーシックなアイテムが中心であるから、GMSが消費者の志向と違う方向に進みだしたのは、この時期からと考えてよいだろう。
◆品種売場とアイテム売場
専門店、ブティックなどに多く見られるコーディネイトを指向した商業型の売場を「アイテム売場」と呼ぶことにする。
商品構成は全体のバランス、商品回転率、在庫リスクなどを考慮したアソート(色・サイズをチョイスした品揃え)であり、在庫をフルカラー、フルサイズで持つことはない。商品の豊富感は色・サイズではなく、アイテム(デザイン)数によって表現されるからアイテム数の割にSKU数は少ない。
 いろいろな商品があるように見えても、このデザインのこの色、このサイズという要望に応えることはできない。品揃えされていない在庫を接客でカバーしながら販売できる専門店に向いており、広いセルフ販売の売場には向かない。GMSのフロア構成の中でアクセントとなるようなインショップ向きである。
 一方、「品種売場」は品種を構成するアイテム(デザイン)数は多くないが、1アイテム当りの色数×サイズ数、品種を構成する総SKU数の多さで豊富感を演出する。1アイテム当りのSKU数、1SKU当りの売場在庫数が多く、典型的な単品量販型の売場づくり(ユニクロに象徴される売場)に向く。
量感を演出するには、高い陳列線と色の面によって構成される売場が有効である。細々として複雑に入り組んだ色・形の陳列がインショップのアイテム売場向きであるのに対し、売場規模、陳列規模とも大きく、遠くからも視認しやすい。VMD、カラーコントロールと呼ぶのに相応しい演出が可能になる。
基本的にセルフ販売で単品量販をするための工業型の売場であり、欠品を避けるためにフェイス管理を強化し、在庫数もSKUごとに算出して持つようにする。
アイテム数が少ないために基本的なデザインを重視し、シンプルでベーシックな商品が中心になる。それだけに色数×サイズ数の持つ意味が重要になる。売場づくり、売場管理ばかりでなく、商品の原材料調達、製造工程、生産計画にとっても重要な意味を持つ。SPA企業にとっては、生命線とも言える最も基本的部分の設計である。
原型は昭和50年代に新宿伊勢丹が入口につくった36色のニットコーナーとも考えられるが、売場面積、客数、販売点数、販売金額とも、かつての専門店とは比べ物にならないほど大きくなった現在に適した形態と考えられる。合理的に理詰めで考えた結果、行き着いた形とも考えられる。
◆GMSの品揃え、売場づくりと経営スタイル、オペレーションの矛盾
GMSは経営スタイル、オペレーションが向かう方向とは全く逆の品揃え、売場づくりをしたことで自ら難しい状況に陥っていると言ってもよいだろう。売場から人を排除し、ローコストでオペレーションをするのであれば、セルフに向いた工業型の単品量販型売場=ユニクロのような品種売場が向く。
一方、専門店やブティックのように、多くの商品を持たず、適度にSKUを配置して接客販売しようとするのであればアイテム売場の方がよい。このような売場特性から考えると、アイテム売場で規模を拡大するにはアイテム数を増やす必要があり、管理はかなり複雑になる。人を減らし、セルフでするには明らかに向かない形態である。
以上のような理解をした上で、両方の良いところを上手くミックスし、ビジネスモデルとして創り上げたのがH&Mなどに代表されるファストファッションということなのかもしれない。
GMSはバブル時代の名残で、住関連売場や食品売場では代わりに埋めることができないほどの非常に広い衣料品売場とその実績数値が残ってしまった。ベーシックアイテムの単品量販型売場ですべてを埋めることができないために、専門店やブティックがやるような商業型のアイテム売場を多用してスペースを埋めているところに無理がある。
多くのスペースを埋めるには、多くのアイテムが必要になるからバイイングや維持管理の手間がかかり、商品回転率や粗利(特に値下)のコントロールも難しくなる。一方、運営はローコストの工業型、セルフ販売型で対応するから品揃え、売場づくりとオペレーション、管理形態の間にミスマッチが生じる。
歯抜け状態の売場(アソートだから品揃えしたはじめの時点ですでに欠品状態)で接客人員がいなければ、チャンスロスは増え、欲しくても買えなければお客のストレスも増す。
アソートでの商品販売には発注と在庫処理の技術が必要になる。少ない人員ではチャンスロスと値下ロスが増え、効率はなかなか上がらない。それでも坪売上、坪粗利を上げようとすればアイテム数を多く投入せざるを得ないから、さらに難しい状況に陥ることになる。
ネライが効率なのか、売上なのか、利益なのか、残ってしまった広い売場への対処なのか、..。どこかで決断する必要がある。
 ◆GMS衣料品の構造的問題と同じ構造にあるショッピングセンター
GMSの問題構造は、衣料品偏重の広げ過ぎた売場に対処できないことがすべてと言ってもよいだろう。売場を一気に縮めることも、品揃えをベーシックアイテムに絞り込むこともできないために20年以上もこの状況から抜け出すことができずにいる。
日本チェーンストア協会の長期統計を見ても、衣料品は1994年3,646,088百万円、2004年1,878,282百万円、2014年1,221,409百万円とほぼ3分の一まで減少しているが、店舗面積は拡大しているから、スペース効率は確実に低下している。
GMSの中には、フロアごとテナントに入れ替えるような大手術をしている店も見られるが、まだほんの一部である。いろいろな修正案も試されているが、商圏が限られるコモディティ型立地では、人口減少・高齢化の影響もあり、限界がある。
このGMSと同じ問題構造にあるのが、アパレル専門店中心に構成されるショッピングセンターである。
広げ過ぎた売場、類似するテナント構成、人口減少・高齢化による衣料品支出の減少、テナントを入れ替えるにもその広い面積を埋めるだけの代わりが見つからないという状況は、バブル崩壊後のGMSが歩んできた道とどこか似ている。
ホームセンター、家電量販店、インバウンドを意識した大型免税店、アミューズメント、テーマパーク、各種サービスなど、いずれも立地との兼ね合いから現在の集客力、販売効率を実現することは難しい。
このままいけば、GMSと同じ結果がショッピングセンターを待ち受けていると考えてよいだろう。
大型ショッピングセンターが数多く展開する横浜市都筑区の港北ニュータウンと周辺5区(横浜市港北区・青葉区・緑区、川崎市中原区・高津区)の推計人口を分析してみると、人口が減らないが、高齢化は全国でもトップクラスの増え方で急速に進む。ターミナルは少子高齢化によって定期乗車券による通勤・通学客減少の影響を受けるようになるだろう。
いずれにせよ、広い売場面積とそれを維持するために必要となる固定費がいずれネックになる時が必ず来ると考えるべきである。
リアル店舗がすぐになくなるとは思わないが、従来の発想、方法論の延長線上に答えがあるとも思えない。
 いま、本当に必要なのは、クリエイター、プロデューサー、ディレクター、エンジニアなど従来の小売、物販の発想を超えられる人達である。バブル期のアクロスのような文化論、消費者論が、今風に進化して蘇ることが望まれる。
IoT、ICT、AI、ロボットなど、さまざまなデジタル技術と実店舗を結び付けることができるクリエイティブなエンジニア、全体をデザインすることができるクリエイター、現実のものとして組み上げるプロデューサーやディレクター達が旧態依然とした物売り型小売業を根底から否定して全く新しい思想、ライフスタイル、カルチャーを創造するしか再生の道はないのかも知れない。


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