災害時に被害を大きくする要因として正常性バイアスが注目されている。些細なことに一々反応しないようにする心の安全装置の一つとも説明されるが、「まだ大丈夫」「まさかそんなことは起こらないだろう」という気持ちが被害を大きくする。
また、多数派(集団)同調バイアス(majority synching bias=迷った時に周囲と同じ行動をとる)も正常性バイアスと同時に起こると一層被害を大きくすると指摘されている。
確かに、韓国の地下鉄火災では煙の中でも多くの人が座席に座り、スマホをいじっている人の表情はどこか笑ってさえいるように見えた。セウォール号でも沈没直前、逃げるのではなく、船内での動画がたくさん残されていた。
商業施設内で非常ベルが鳴り響いても誰も騒ぎ立てたり、駆け出したりしない。多くの人が「万が一」を考えるのではなく、「またか」「どうせ…」と思うから、全員がそのように対応する。
東日本大震災の時、女子中学生が「高台に逃げろ」と大声で叫んだことで多くの人が助かったという話がある。正常性バイアスを破り、皆を逆方向に同調させたことで多くの命が救われたことになる。多数派(集団)同調バイアスがよい方に向かったケースである。
また、エキスパート・エラーなるものもある。既存の経験・知識の範囲内で発想するからプロであればあるほど間違えるし、プロを信頼して言うことを聞けば被害も大きくなる。セウォール号における「船室で待機せよ」という船内放送もその一つと言われている。
以前から人口減少・高齢化については多くの原稿を書き、セミナーでも話してきたが、まだ多くの企業は動こうとしない。正常性バイアスが強く働いてるらしい。
「日本の人口は地方で減少しているが、東京など大都市には人口が集中している」というのが、一般的な認識である。しかし、政府が16日に閣議決定した2015年版首都圏白書では、「首都圏の人口は2015年をピークに減少に転じ、高齢者人口は他地域に比べて急激なペースで増える」というものであった。首都圏の人口減少・高齢化でも、いまは介護問題だけがクローズアップされているが、今後様々な分野で影響が顕在化してくるだろう。
インフラや箱モノなど形あるモノの維持管理・更新問題が大きいが、人口が減少し、高齢化して収入が減ればコスト負担が難しくなるのは明らかである。特に2020年東京オリンピック以降、宴の後をどうするのか、今から準備する必要があるだろう。
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