テーマパーク型SM、アミューズメント型SMをつくろう!-2

■Stew Leonard`sに見るテーマパーク型SM、アミューズメント型SMのイメージ
すでに店内でレタスの水耕栽培を行い、販売するということはずいぶん前から行われていたが、販売する商品をつくるというだけで、店舗そのものは従来通りの食品スーパーと何ら変わることはなかった。
実際に食品スーパーが持つ加工・製造機能は多いが、それらはお客からは見えないバックヤードに追いやられ、商品を売る売場とは一線を画している。保健所の指導もあり、バックヤードは厳密に分けられているから現在のままでは難しいかもしれないが、発想を変えてテーマパークと割り切れば、動物園がやっているようなバックヤードを見せ、日ごろ表から見えない世界を体験できる全く別形態の商業施設として成立することも可能だろう。
すでに、いろいろなところにアイデアはあるから、新しい形態はそう難しいこととは思わない。
例えば、マスコミなどにもよく取り上げられるハローディ(本社福岡県北九州市)の売場コンセプトは「アミューズメント フードホール」、売場には様々な人形や工夫を凝らしたディスプレーが溢れている。さながら食品スーパーのおとぎの国とでもいったところであり、これらのディスプレーを維持発展させるため、通常の食品スーパーとは異なる仕組みを確立している。
 しかし、何といっても「テーマパーク型ストア」の本家本元はスーパーマーケットのディズニーランドといわれたStew Leonard`sだろう。見るだけでも十分楽ししいが、売っている商品の多くが目の前で作られていることで、より一層新鮮さを感じることができる。
 Stew Leonard`s in Farmingdale, Long Island, NY Tour (https://www.youtube.com/watch?v=OlEODkk1FfI)、Stew Leonard’s Norwalk Store Tour with Will(https://www.youtube.com/watch?v=OlEODkk1FfI)では店内の様子、取り扱う商品などがよく分かる。
 消費者が動画や写真を撮ってYouTubeなどSNSにアップするにはそれなりの理由がある。自分がいつも買い物をしている店を誇りに思い、自慢したい、多くの人に知ってもらいたいという意識であり、消費者が自分の目を通してその店の魅力をPRする。お客目線の究極の販売促進である。
 
 動画を見ればある程度のイメージは伝わると思うが、売場のアチコチに置かれた人形たちが、ディズニーランドのイッツ・ア・スモールワールドのように音楽を演奏し、歌い、踊っている。
 「WORLD LARGEST DAILY STORE」「FARM FRESH FOODS」と看板に大書しているように、店の内装は木を多用し、昔ながらの農場やマーケットのイメージを演出している。レイアウトは日本の一般的な食品スーパーのように無機質な直線レイアウトとは違い、IKEAのような商品のコーナーを強調したつくりになっている。インショップのようにコーナー化された売場のバックヤードでは多くの専門職スタッフが商品を作る様子も見られるようになっており、お客は商品ができる様子を見ながら売場を回り、「出来たて」「新鮮」を肌で感じながら買い物をする。牛乳も同様であり、牛の人形が愛想を振りまくバックには牛乳プラントがあり、牛乳がパックされる様子をガラス越しに見ることができる。
 様々な商品が作られ、つくりたての状態で提供されていることで、店全体が理屈抜きに新鮮さを主張している。お客は商品それぞれに応じたストーリーによって演出された売場をワンウェイで歩きまわりレジへと向かう。はじめて訪れた人は、次は何が出てくるのか、ワクワクしながら歩き回ることだろう。
 筆者が提案するテーマパーク型ストア、アミューズメント型ストアの一つの典型的なモデルと考えている。
 HPやSNSからも読み取れるが、テーマパーク型ストアは、ただ店内で商品をつくり、売っているだけではなく、お客を虜にするような様々な企画が必要である。
 Stew Leonard`sもバレンタインデー、ハロウィン、サンクスギビングデー、クリスマスなど大きなイベントはもちろん、日常的に子供を対象とした様々な料理教室やダンスパーティなど地域のコミュニティともいえる様々なイベントが行われる。
 日本でこのような店舗を志向する際に不可欠になるのは、企画・プロデュースを行う組織、人だろう。形をつくっただけではすぐに飽きられる。テーマパーク型ストアは、すでにただの物売りとは違い、テーマパークであるということを認識する必要がある。

■変化の時
多くのSMが人件費をコスト削減の中心に置いたことで、結果として管理レベル・売場レベルは著しく低下している。量販と安売りにこだわるあまり、取扱商品を限定し、さらにレジ精算までを消費者に依存するセルフレジになれば、そこはすでに「物」を入手することだけを目的とした無人倉庫のような存在になる。
全体がそのような方向に向かえば、テーマパーク型ストア、アミューズメントパーク型ストアの相対的価値(楽しめるという店としての価値ばかりでなく、希少価値も)は確実に高まるだろう。消費者の変化を理解し、すべての要素が上手く噛み合えば、マーケットにおける価値の向上とともに、経営効率も高まり、戦略的には一石何鳥もの相乗効果が得られる。
例えば、Stew Leonard`s では、多くの商品を店内で加工・製造することで、店全体がSPA(製造小売)型ディビジョンの集合体のような構造になっている。原価率は抑えられ、お客の目の前で製造することでリードタイムは短縮して需給調整もしやすい(もちろん製造ロットという制約はついて回る)。その結果、チャンスロス、値下げ・廃棄ロスへの対応が柔軟にできるというメリットがある。
さらに多くの製造工場を店内に持つ構造は、物流工程(工場から店に運ぶ横持)を省くことができ、物流コスト削減という大きなメリットもある。しかも、加工・製造スペースが工場見学のような役割も果たしているから、常に「出来立て=鮮度」をアピールしながら、テーマパークやアミューズメントパークのようにパフォーマンスを見せる演出も可能になる。
多くのSMがコストダウンのために(もちろん、衛生管理など安全上の要素も大きいが...)プロセスセンターや協力工場、バックヤードなどで加工・製造を行い、商品ができる様子をお客から見えなくしているのに対し、一方では工場見学、あるいはパフォーマンスとしてモノができる様子を見せ、試食を提供すること(出来立てでなければ本当の意味でのおいしさを味わえない商品も数多くある)で様々なメリットを実現している。
あらためて国内の「食」関連店舗を見直してみると、作る場面を見せることで、付加価値を高めている店舗は実に多い。
例えば、大丸東京店のねんりん家は、わざわざバームクーヘンを作る様子を見せるためにガラス張りにしているし、パパブブレ東京大丸店は、周囲3方から飴づくりのパフォーマンスが見えるようガラス張りのブースが作られている。様々な色の飴を組み合わせ、伸ばし、リズムに合わせて素早くカットするパフォーマンスは、企業のアイデンティティであり、商品価値そのものである。
また、カフェコムサはその日提供するフルーツケーキのデコレーション作業を客席に面したブース内で行うことでお客に作り立てであることを印象付けているし、シュークリームにカスタードクリームを注入する様子をお客から見えるようにしたシュークリーム専門店、焼き立てのパン、クロワッサンなどをお客から見えるように提供する焼き立てパンの店、麺の湯切りをパフォーマンスとして見せるラーメン店など、「つくる」シーンをパフォーマンス、企業のアイデンティティ、付加価値として見せる企業は多い。
それに対し、我国のSMでは、店舗設計段階で作業場の中が見えるように計画していても、実際に運用がはじまると、ほとんどの店舗で前面のガラスを商品で覆い隠し、中を見えなくしてしまう。
効率を優先するというよりは、ところせましとどこへでも商品を並べてしまう、整理整頓できない作業場を外から見えないようにするというのが主な理由であるから残念である。
Stew Leonard`s と日本のSMを見比べて、そこに感じる大きな違いは、Stew Leonard`s では、ディズニーキャストのようにスタッフが楽しそうに商品を作り、それを買うお客も買い物を楽しんでいるように思える。それに対し、日本のSMは、あくまでも作る所はお客に見せない、従業員も黒子だから顔が見えない、店頭に並ぶ商品も仕様通りに作られた既成品だから作る人の顔が見えず、人が感じられない。当然、お客も機械的に買い物をこなすだけになるから、一言も会話をせずに買い物が終わることも珍しくない。楽しさとは程遠い機械的な補充作業のようになる。
テレビで商品づくりの裏側を紹介する企画があると、その翌日にはとり上げられた商品の売上が大きく伸びる。ふだん知ることのない業界の裏話は消費者の興味、購買意欲を掻き立て、トライユースへと向かわせる。
このような消費者心理を理解すれば、SMの裏側も有効な販促手段となるはずだが、なぜかそうする企業は見当たらない。

「つくる」ことに「見せる意味・価値を付加する」のと、あくまでも「お客に見せてはいけない裏の作業として隠す」のでは大きな違いがある。
例えば、スポーツビジネスとして大きく変貌を遂げる大リーグ(MLB)をみると、ヤンキース球場のグランド整備はYMCAの音楽に合わせてグランドキーパーが踊り、グランド整備をパフォーマンスとして見せる(別にグランド整備だけを専門に行うもスタッフもいる)。
グランドキーパーはあくまでも黒子、目立ってはいけないという考え方から、どうせお客の目につくなら、いっそのこと観客も楽しませながら、本来のグランド整備もこなせばよいというように変わると、いつしかお客も一緒にYMCAを口ずさむようになり、やがて一つのイベントとして定着する。
いまでは、様々なデジタル技術によって、お客は手元のスマホを通していろいろなモノ・コトを楽しむことができるようになっている。今後、ますます興味の範囲を広げていくことだろう。
純粋スポーツとしてストイックに野球を追い求めるだけではなく、スポーツの持つ様々な側面をエンターテイメントとして掘り起こし、ボールパークと呼ばれるように家族連れで一日中楽しめる、あるいはビジネスの商談場所としても使えるというように、その対象・オケージョンを大きく広げることでマーケットの意味を根底から変え、ビジネスとしての可能性を大きく広げている。
同じベースボール、野球でも、観客の目を楽しませる、興味を引く切り口をたくさん持つのと、ただ黙々と勝敗を競うのでは、ビジネスとしての質、レベル、可能性が大きく違う。人がたくさん集まり、ビジネスの規模が大きくなることでプレーヤー、ゲームの質も高まるから相乗効果によってビジネスは大きく成長する。
筆者は、いま、まさにこれと同様な変化への対応が、小売業には求められていると考えている。

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