データ分析に使えないデータ設定、システム???

データ分析をしようとしても、使えない情報システムを、膨大な金額を投資して使っている企業は多い。
昔、ベテランのシステムエンジニアに、どの業態も商品を仕入れて、在庫し、販売するだけであるし、もとになる情報も商品の売価、原価、数量だけだから、まったく同じ標準的なシステムさえあれば、すべての業態、すべての企業が同じシステムを使うことができるのでは?と疑問を投げかけたことがある。
その時の彼の答えは、そんなことをしたら各企業からのカスタマイズがなくなるから、この業界の規模、膨大な数のシステムエンジニアなどの人材を維持することができなくなる、というものだった。
「業界を支えるためのカスタマイズ」という彼の説明がどこまで本当かは分からないがシステムに合わせて業務を標準化すると考えるよりは、自社の業務の仕組み・やり方に合わせて情報システムをカスタマイズしたがる企業は多い(というより、そういう企業ばかりである)。
小売業にとって必要なデータ、情報処理はある程度限られる。
情報システムもアレコレいじらずに基本をベースに設定すれば、必要なことは確実にできるし、その方が開発もメンテナンスも早く、安く、楽にできる。しかも使いやすい。しかし、なぜかどの企業もカスタマイズしたがるから不思議である。複雑なものほど高度で優れているという錯覚でもあるのだろう。ある意味、鞭の極みともいえる。
しかも、多くの時間と費用をかけて作ってしまった重たく、使いにくい、あるいは使えない情報システムは、簡単に捨てるわけにはいかないから、何年も付き合うことになる。悲惨である。
情報システムを更新するには、投資金額に見合った期間使う必要がある。その間、必要なデータ、欲しいデータが取れないから、企業のマネジメントやオペレーションのレベルは信じられないほどの低レベルから抜け出すことができない。
業務システムとは何か、情報システムとは何か、データ分析とは何か、という最も基本的なことが理解できていないまま意思決定をしたツケは少なくとも10年単位で影響する。

■数値の基本
数値は項目、単位、期間という3項目からなる。
項目は、売上、在庫、仕入の数量、金額が基本である。それに売価、原価、売価変更(値上・値下)・値入・粗利などの金額と率。客数(精算件数)・客単価・買上単価・買上点数、商品回転率や交叉比率、粗利率相乗積など、数値はいろいろあるがそれらは、売上、在庫、仕入、客数(精算件数)、買上点数など基本的な数値から算出することができるから、基となる数値は限られている。
知りたい情報も時系列変化、部門・ライン・クラスなど単位の系列で分解、統合して内訳や構成を見ることが中心だから、そんなに複雑で難しい処理も必要はない。
むしろ重要なのは商品構成であるが、残念なことにPOSのコード設計が元々事務処理であるため、単品の識別にしか使えない。
商品名、商品コード、JANコード、どれをとっても類似する商品を識別することは難しいから、商品が持つ特性のうち、どの特性が支持されて商品がよく売れているのか分からない。
例えば、チョコレートをタイプ別や成分別に売上(金額・数量・構成比)/在庫/仕入/値入/粗利/商品回転率などを見ようと思っても商品マスターを一つ一つチェックして集計しないと分からないから、そんなことに手間をかけて分析をすることはほとんど不可能といってもよい。
ビッグデータの時代でも、単品の識別は可能でも集計するためのフラッグがなければ肝心な集計ができない。ABC分析はできても様々な切り口での集計ができないデータでは、1つ1つ見るか、数百アイテムをまとめて合計として見ることしかできない。
例えば、週別に時系列でサイズ比率、色比率が変化することは分かるかもしれないが、色×サイズ別比率がどう変わるかはわからない、素材×デザイン、素材×デザイン×色×サイズなど、商品によって知りたい内容は異なるが、商品構成における最も重要な要素間の比率が分からない。

情報時代、データが重要と言いながら技術ばかり進歩しても肝心のデータ分析とは何か、データ分析のためにデータをどのように持てばよいかという最も基本的なことの理解がなければ、技術もシステムも生かせない。
そのことすら気づいていないとなると手のつけようがない。
本当の意味でデジタル化時代と言えるようになるには、実態を本質的に見直して変えていかなければならない。
データ分析からプログラミングまで一人でこなせるデータサイエンティストが必要とされるのも分かるような気がする。専門的なスーパーマンを養成するしかないが、まずは体制を整えることから始めるしかないのだろう。
対応が急がれる。

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