最高益をとらえたソニー 復権の象徴としてAIBOを使ったプラットホームはどうだろうか⁉

◆ソニー復活 ?
5月23日、ソニーは経営方針説明会で、平井一夫社長が20年ぶりの営業利益5,000億円達成(2017年度グループ連結)に自信を見せたという。
この発表を受けて、過去最高益である1998年3月期 5257億円を超える可能性が言われる一方で、果たしてソニーは本当に再生され、この業績が今後とも継続していけるものなのか、と懸念を表す声も聞こえてくる。
たしかに、この20年の間にVAIO、ウォークマンなど、ソニーらしさを象徴するブランドは影を潜め、画期的とも思えた犬型ロボットAIBO、二足歩行型ロボットQRIOはチームもろとも消失した。(様々な状況については、日経ビジネスONLINE「オレの愛したソニー」にインタビュー記事としてまとめられており、参考になります)

振り返れば、かつてソニーはウォークマンという音楽プレーヤーによって若者のファッション、ライフスタイルを大きく変えるほどの影響力を持っていた。街中、通勤・通学、ジョギングなどのスポーツシーン、…等々、あらゆる場面に音楽を持ち歩くことを可能にし、消費者の生活シーンと音楽を融合させてしまった。
ところが、その後アップルは、iPod、iPhone、iPadなどの機器(物)をiTunesというアプリによって束ね、ソニーがウォークマンによって生活シーンの中に浸透させた音楽の世界全体をまとめ上げてしまった。
ソニーが一つ一つの機器(物)を販売していたのに対し、アップルは個々の機器とアプリによってプラットホームを構築し、音楽シーンと共に機器を持つ消費者全てに網をかけてしまったことになる(機器、ソフト、決済、個人情報、購買履歴、…等々)。

また、かつてソニーはAIBOという犬型ロボットでも、世界中を沸かせている。長年空想の世界でしかなかったロボットの実物を一般消費者の家庭の中に送り込んだことで、多くの人々は来るべき時代への夢を大きく膨らませることになる。
AIBOは、コアなソニーファンの心を鷲掴みにしただけでなく、生産、フォローが終了した後々までもオーナーたちの心にいつまでも深く愛され続けている。
部品生産が終了し、修理が難しくなったいまでも、元ソニーの技術者らが作った「株式会社ア・ファン(習志野市070(4014)7955)」が、自作部品や代用品、あるいは同社に送られてくる壊れたAIBO(献体)から抜き取った部品で修理をしており、ソニースピリッツを持つ元社員たちが使命感を持ってケアしている。
また、2015年11月19日にAIBOの集団葬も行われている。

ソニーがAIBOの生産をやめたのが2006年というから、わずか10年の間に時代は大きく変わり、現在ではAIやロボットが話題にならない日はないくらいに、次世代を支える重要テーマとして注目されている。
そう考えると、なぜソニーがロボット分野から手を引いてしまったのか疑問が残る。
ソフトバンクのPepperをはじめ、人と会話するAI、人型ロボットは珍しくなくなり、急速に進化し続けている。しかも当時と違って、iPhoneやPepperはオープンイノベーションによって、その使い勝手、技術、ソフトなど、あらゆる側面で日々向上し、進化し続けている。単独企業が単独機器を創り出すのとは本質的に違い、様々な視点からマーケットを拡大する知恵が集まってくる仕組みが支える進化である。
マーケットの中心に居続けることができるか否かを決定づける重要な要因といってもよいだろう。
現在は、AmazonのEcho(AIアレクサ搭載)、Google Home、Microsoft(AIコルタナ)、Apple(AI Siriベース)、HP(AIコルタナ)、Line、…等々、AIスピーカーの開発は目白押しであり、それらと個々の家電製品などをつなぐ上でオフィスや住宅向けOSが必要になったとも言われている。
今後、オフィス、住宅などにおける様々なシーンの中心をどこの製品・仕組みが押さえるのかという巨大マーケットの奪い合いが始まっているといってもよいだろう。

◆ ソニー復活の象徴が見えない…..欲しい!
このような歴史を見てみると、失われた20年といわれるこの間、ソニーはいつも初めに手を付け、可能性ある形を創り出しているにもかかわらず、その可能性を育てることができず、他社に大きなヒントと共に、大きなマーケットチャンスまでも提供してきたように思えてならない。
失われた20年は、モノ創りではなく、時代=マーケットが読めず、経営に負け続けた歴史といってもよいだろう。もし、ソニーがこれらのチャンスを有効に生かすことができていたなら、Appleとここまでの差はついていなかったと考えるのは筆者ばかりではないだろう。(ソニーの時価総額はアップルの約20分の一)

2018年3月期には、いよいよ最高益に迫るというが、残念ながらそこにかつての「ソニーらしさ」が感じられない。もし、それが本物の復活なのであれば、「ソニーらしさ」も同時に復活させてもらいたいものである。
筆者は、これまで新聞、雑誌などでも提案してきたが、ソニーの象徴の一つであるAIBOをプラットホームとした新規ビジネスを立ち上げて欲しいと考えている。(何年か前に新しい体制になり、様々な新規事業を検討しているということでソニーに提案したこともあるのだが…)
現在は、AIBOが生まれた時代とは比べものにならないほど、AI、デジタル技術、ネットワーク技術が発展し、また、消費者の状況も大きく変わっている。
高齢化・過疎化・非婚化が進み、全国には年齢を問わず一人暮らし世帯が溢れている。高齢者はペットを家族代わりとし、またアニマルセラピーなどの効用も認められているが、ペットの高齢化に伴い飼育を継続することも難しくなっている。
このような環境与件を考えると、AIとホームコントローラー機能を搭載したコンパニオンロボットニーズは非常に高まっている。高級おもちゃではない実用と癒しを兼ねたロボットへのニーズである。
仮にAIBOというソニーの象徴をベースにしてプラットホームを構築すれば、様々な点で多くのメリットがある。AI搭載は当たり前として、自分で動くことができ、小型である必要がないから多くの機能を搭載することも可能になる。ペットにも、話し相手にもなる情報端末であれば、少人数化した世帯の様々な生活シーンを幅広くカバーすることが可能になる。
各種センサー、カメラは一人暮らしの高齢者、赤ちゃん、ペットなどの監視や留守宅のセキュリティになり、コンパニオンとしての役割、話し相手、映像や音楽の他、情報端末として様々な機能を果たすことができる。自分で充電や自己診断、アップデートもできれば、面倒なケアはあまり必要ない。
ネットワークにセキュリティ企業を加えて安否確認や防犯、各種小売業、飲食業、給食センターなどを加えて日常的な物品、食事などの発注端末、医療機関を加えて健康状態の確認、テレビ電話での問診等も可能になるだろう。
もちろん、AIスピーカーのように家中の家電製品とつなぐこともできるから、機能をモジュールユニットに分けて組み合わせるような形になるだろう。
企画とアイデア次第で一大ビジネスに発展する可能性もあるが、問題は「物」ではなく、様々なサービスを提供する「システム」としてビジネスモデルに仕立てることである。
物創りへのこだわりを如何にその物を生かすための新たなシステムへとつなげるのか、ソニーの復活、新たな進化を占う上での重要な課題といってもよいだろう。

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