売場の仕事は、毎日の単純な作業の繰り返しでしかないから、ややもすると機械的で殺伐としたものになる。まして、今では売場から人が減り、シフトの関係でスタッフ同士でも顔を合わすことも少ないから、同じ店舗、同じ売場で働いていたとしてもも「一緒に仕事をしている」という実感はなかなかわいてこない。
一人当たりの担当坪数などの指数で測ってみることもあるが、営業時間と勤務時間の関係を考えると、勤務時間、休憩、休日などすべてが交代制だから同じ売場、店舗に所属しながら、まともな会話もせずに1週間が終わることも珍しくない。
ある時、ドラッグストア店舗で実際の売場で行われている個々の作業レベルについて調べたことがある。
マニュアルもあることはあるが、細かすぎれば読まないし、基本しか書いてないと個別に解釈しなければならない。
そこで問題になったのが、ベテラン社員とのコミュニケーションの問題である。
営業時間が長く、週休2日で1日4-5時間のパート比率が高いと、分からないことがあって、たとえ訊ける人がいたとしても時間的にコミュニレーションを図ることができない。結果的に各自が職場の中で孤立した状態になり、分からないことは個々人がそれぞれで判断するようになる。
組織の決め事があったとしても、それがあることすら伝わらず、いつの間にか個々に判断したやり方がその店の中に定着していく。
個々に判断してやっている人たちは、いつまで経っても正しいやり方、理屈が分からず不安を抱えた素人のまま経験年数ばかりが経ってしまう。
多くの場合、このような店では店長は仕事のできる人、早い人に頼むことが多いから、仕事が早く、できる人はいつも忙しく、それ以外の人は何を、どうしてよいかわからないのに加え、指示もあまりないから手持無沙汰にしている。
それぞれがストレスを抱える難しい状況にあると、売場は殺伐としてくる。さらに売場に手が行き届かないから欠品も多く、乱れるから業績も悪化する。売場の殺伐感は一段と増すことになる。
売場が崩れていく組織の典型的なケースである。
一方、売場に活気がある店は全てが違う。
一つは、それぞれがやるべきことが明確でポイントをつかんでいる。作業のやり方、理屈、なぜそれは、そのようにやるのかという理由、目的が分かっているから無駄がない。
分からないことは、相談しながら考え、試し、修正するから、精度が上がるだけでなく、仮説、実験、評価・修正、理屈の普遍化という帰納法的なサイクルが自然と定着し、やることに無駄がなくなる。
成功は多くの効果をもたらす。
管理レベルが高いきれいな売場は、分かりやすく、欠品もないから業績が上がる。
その結果は、スタッフの「自分たちがこの売場をつくっている」というブライドにつながり、モチベーションが高まる。
指示がなくても、自分たちの目で見て問題点、課題を見つけ、さらなる高みの目標を設定して自主的に取り組む。
さらに楽しめる売場では、いろいろな試みがなされるから「お客にとっても楽しめる売場」になる。
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