イトーヨーカ堂は立地の良さに甘んじていたのか?

総合スーパー(GMS)の中で唯一駅前立地に集中しているのがイトーヨーカドー(店舗の標記 企業の場合はイトーヨーカ堂)であり、業績低迷はこの立地の良さに甘んじていたためであるから、立地を生かしていけば、他社よりも有利で回復しやすいというような記事をどこかで見かけた。
イトーヨーカ堂が立地に甘えていたかどうかわからないが、自社物件が少ないことを考えれば、立地を放置していたのは大家さんということになる。
また、駅前立地が果たして郊外立地と比べて有利かというと、よほど大掛かりな再開発で道路からすべてをつくり直すのであれば別だが、普通に考えれば必ずしも駅前立地だから有利だとは言えない。
イトーヨーカドーは2000年以降、店舗を南関東一都3県に全店舗の6割を集中させているが、なぜかその後に岡山に出店するというちぐはぐなことをやっている。
ザ・プライスに業態転換したのは、全て古くからある駅前立地の店舗であるが、問題は、一都3県の駅前立地だから、立地が良いということにはならないということである。
そもそも買い物難民が初めて言われたのは横浜市栄区の公田町団地であるし、イトーヨーカドーからザ・プライスに業態転換した五香店近くの常盤平団地は孤独死で注目された団地である。
つまり、関東圏の駅前立地であっても、ベッドダウンの行きつく姿は地方のそれと変わらない、もしくはもっと悲惨なのかもしれない。
最近発表になった閉店店舗を見ても、かつての大型店(もちろん駅前立地)や地方に後から出店した店舗である。
人口推計を見れば分かるが、①現在の人口規模に関係なく、都市によって年齢構成(≒人口ピラミッドの形)には10~20年の差が見られる。②現在、高齢化が進み、人口も減少している都市は、将来の老年人口増加率が小さい。③現在、老年人口比率が低く、人口が増加、あるいは人口減少が少ない都市は、将来老年人口の増加率が非常に高い。
要するに、現在、人口が減少し、高齢化が目立つ地域は年齢構成の変化が小さく、人口が増加、あるいは減少幅の小さい都市は年齢構成の変化率が高い。現状では都市のタイプによる年齢構成の違いが大きく見えるが、今後20~30年の間に収束し、多くの都市が似たような形(人口ピラミッド)になる。
ざっと大枠で見ると、我国の人口は、1950年代の9000万人から50年かけて12800万人になり、その後また50年かけて9000万人まで人口が減少する。前半の50年で都市タイプによる様々な違いが顕著になり、後半の50年で一定の形に収束していくような感じなのだと思う。
問題は、鉄道をベースに発展してきた都市の多くが、ターミナルかベッドタウンであり、サラリーマンが住むという意外何の産業も持たないベッドタウンが高齢化(定年退職後)すると、人の移動がなくなり、活力が著しく低下して八方ふさがりになることである。既にそのような危惧を口にする市長もいるように、「人口」をキーワードに状況を見ていけば容易に推測できることである。

タイムフリー、ロケーションフリー、セクションフリー、コストフリーが当り前の時代であることを考えれば、問題は「どこに立地するか」ではなく、「どのようなマーケットを対象にするのか」に移っている。
新商品や新業態など未だに「物」をベースにしか物事が理解できない人には、いつまで経っても理解できないかもしれないが、マーケットは物ではない。
マーケットは、消費者にとっての意味であり、それによって消費者の消費行動が変わらなければ、いつまで経っても既存マーケット内での新陳代謝、シェアの奪い合いにすぎない。新商品や新業態の危うさは、マーケットそのものが他へ移ったことに気づかず、いつまでも同じマーケットに留まれば、いずれ限界を迎える。
「イトーヨーカドー駅前立地論」なるものも、残念ながらマーケットが全く見えていないと言わざるを得ないのではないだろうか。
本質を見誤ると、いつまで経っても迷路から抜け出すことはできないが、キチンと見定めることさえできれば、意外とシンプルに次のステージに移行することができるだろう。要は見えるかどうかということになるだろう。

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