結局は、相乗積、交叉比率、OTB(open to Buy)、そして52週と商品構成(クラシフィケーションマトリックス)。基本は限られている。

このホームページには、コラムという形で多くの原稿を載せている。その中でもPV(ページヴュー)が集中するのが相乗積、交叉比率、そしてOTB(open to Buy)である。
長年、このような業界で仕事をしてきて思うのは、何と雑音が多く、本質を外すことの多い業界であるのかということである。
いろいろと目新しいモノがアメリカから紹介され、マスコミはそれをあたかも素晴らしいモノであるかのごとく取り上げる。しかし、この何十年の小売業の歴史を見ても、コンサルタントと称する人達がアメリカから持ち込み、マスコミが騒いで企業が取り組んだテーマで、まともに完成し、残っているモノは一つもないと言ってよいだろう。
ワークスケジュールと称して作業計画もどきが入ってきた時も、作業が標準化されておらず、負荷もコントロールされていない状況で、アメリカでは….とやって大騒ぎしたが、結局成し遂げた企業はなかった。
製造業におけるスケジューリングの基本と照らし合わせれば、おかしいことはすぐに分かるのだが、そうはならないところが小売業の小売業たるゆえんなのかもしれない。
ワークサンプリングという標準時間設定に際して余裕率を算定するための稼働分析手法で要員計画をやりたいという企業に対して、それではできないというプレゼンをやりに大阪まで行ったこともあるが、その後その企画は白紙撤回されたから、その程度のものでしかなかったということだろう。3つの団体に声を掛けてあったというが、一番初めのプレゼンで白紙撤回になったから、まだ良かったと言うべきだろう。
ミニキャリーとコンテナシステムも流行ったが、何段にもコンテナを重ねれば必ず取り置きが発生するし、少ない数では腰を曲げて押さなければならず、挙句の果てに中が見えないから不都合が多い。
ある企業で青果のバックヤード改善をやった時には、真っ先にミニキャリーとコンテナを排除し、大型の多段トレーに全て置き換えた。加工作業、ストック、品出しの全てが多段トレーで済むし、トレー1枚にコンテナ1つ分が入るから多段トレーは数台もあれば済む。使わない時にはトレーを重ねておけばよい空コンテナのようにかさばることもない。
バックヤードのスペースを広く使えるから、生産性も大きく改善し、人件費1万円当りの粗利高は4万円超まではね上がった。
メーカーが取り組んでいたIE(Industrial Engineering)の初歩的な考え方で簡単に解決する問題である。
「開店時100%品揃え」といって騒いだ時も、早出残業し、朝早くから刺身のお造りをたくさん並べて鮮度を落していたが、イトーヨーカ堂が「売れる時に売れる商品を売れるだけ品揃えするのか100%」と言っただけで終わってしまった。
一時のブームで終わるようなモノの多くは、概念だけで結局は実践では役に立たない、使えないモノでしかないから、誰かが「王様は裸だ」と言ってしまえば、そ個で終わってしまう。
日本にセルフサービス、チェーンストアという形態が紹介されてから60年以上が経つ。商品を仕入れて在庫を持ち、店舗に並べて販売するという小売の本質は変わっていないから、その本質をつかめば普遍的な理論と技術、仕組みが確立していてもおかしくはない。
様々な分野でITが当たり前になっても、デジタルで対応するのは表層だけで、小売というものの本質は何ら変わっていない。(ただし実店舗以外は多くの点で違ってきているが….)
実際にデジタルマーケティングなどの情報収集のために様々なセミナーや展示会などに顔を出しても、進んでいるのはデジタル技術だけであり、対象とする基本的な中身については「如何に顧客に注目させるか」「ストレスなく買い物をさせるか」など昔から大きく変わってはいない。
どんなに最先端を行っているように見えても、はじめは「技術」だけ進んで、その技術の応用しやすい分野で普及していくが、やっていることは試行錯誤で、どこまで本当に使えるのかはやっている本人でさえ、よく分かっていないというケースも多い。
そのように考えるとどんなに技術が発展したとしても「相乗積、交叉比率、そしてOTB(open to Buy)」など最も基本的なことが理解できていないと地に足の着いたことができないということなのだろう。
デジタルの時代だから、このような計算はブラックボックス化してしまい、なかなか触れることがなくなる可能性も高いが、このような時代であるからこそ、基本的な理屈をキチンと身につけることが重要になる。
どんどん機械化されて人的要素が関与するところが減ってくれば、ポイントとして押さえる必要のあるところは、非常に限られてくる。そこさえ押さえてしまえばあとは単純な世界である。
アマゾンが商品・サイトと押さえた後、物流を押さえにかかったことを見れば大枠で向かう方向は想像がつく。
それと比べると、実店舗の向かう方向は全く見えてこないから、実店舗を数多く展開する企業にとって本質、ポイントは何処にあるのか、未だ試行錯誤の状況にあるということなのだろう。
Amazon Goのような店舗ができてくると、買い物からレジというモノ(レジスター、人員、工程)が全て消え去ってしまう。一方、無店舗販売側からのアプローチであるにもかかわらず、店舗、売場、現品商品、什器と棚割りというモノは残っているから、実店舗を展開する企業がどのように対応するのかも見ものである。
基本として最後に何が残るのか、楽しみである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください