売場の科学

◆売場を科学する

「売場は生きもの」であるから難しい。良くなるとドンドン良くなっていくし、崩れだすとドンドン悪くなる。だから面白い。
理由はいろいろと考えられるが、売場をつくっているのが「人」、利用する・買っているのも「人」だからだろう。
ただし、残念なことに、この面白さが分かる人、知っている人、楽しめる人がどんどん減っているように思えてならない。

本部でバイヤーが売場展開マニュアルをつくって売場に流しても、実際にどこまでやれるかは売場次第(知識・技術・経験などのレベル+モチベーション+総人時を含めた職場環境=要するにヤルベキことができるだけの人員・時間が確保できるか否か)だから、出来栄えも様々になる。
店としての販売力、競合状況などもあるので一概には言えないが、良い売場を創って、それにお客が反応すれば、業績は上がる。機械的な作業に終始すれば、殺伐とした売場になり、お客もそのような状況には素直に反応する。
セルフサービス、チェーンストアが我が国に生まれて半世紀以上も経つのに、未だにどうにもならないところが何とも言えない。
「人的(特に伝える人)」な運営に終始しているが、人を育ててない(現場だけでなく、仕組みをつくったり教育を行う側の人も)からレベルがマチマチになる。
実際に売場を経験してみれば、時系列管理とそれぞれのタイミングにおける商品構成がポイントであることは分かる。
売場表現(レイアウト、陳列・演出)や販売促進は時系列で変化する商品(の意味)を上手く表現・演出する手段であるし、それらを実現するために様々な売場作業が必要になる。
したがって、作業もスケジューリングも上位の目的ではなく、あくまでも上位にある様々な目的を達成するための一手段にしか過ぎないことになる。
これらを整理すると、➀期間売上・利益を最上位の目的として、⓶それを達成するための時系列(目標の細分化)での予算(ダラー=金額)、⓷その額を達成するための手段としてタイミングごとに適正な商品構成(Σ単価×数量=ユニットとダラー)、さらに⓸それらを目的とした売場表現と販売促進、そして⓹それらを目的としてのその手段としての作業・スケジューリングという体系が成り立つ。
ところが、実際に見てみると、これらの目的=手段の体系が上手くつながり、仕組みとして確立し、運用している企業、店舗はほとんどないと言ってもよい。
誕生して半世紀以上たつにもかかわらず、最も基本的な仕組み=システムもないままに、人手をカットし、教育も表面的にしか行わずに運営されていることになる。
ローコストオベーレーションとは名ばかりの人件費カットの結果、最後に残ったのは最低限必要な発注、補充、レジ精算だけになる。
これでよい結果が出れば不思議と言うしかないだろう。

よくあるケースが「発注」教育である。発注と言っても発注器具の操作や手続きの説明しかなく、どのような状況で、どのような商品を、いくつ持つ必要があって、だからどのようにして発注数量を算出すればよいのか、…という「発注量算出の基本的な考え方や具体的な場面と算出方法」については教えていないケースが圧倒的に多い。時間や教える側のスキルの問題で教えられないといった方が正しいかもしれない。
売場づくりや商品の陳列・演出方法についても同様である。
商品の特性、時期によっての商品の持つ意味に応じた展開方法、見せ方、演出方法などが理解できなければ、どんなに売場に商品を並べても、それは商品ではなく、ただの物でしかない。このように本質的なことが理解できなければ、いつまで経っても物売りからは抜け出せない。
よく事例として取り上げるのが卓上ガスコンロとボンベである。
冬は鍋用、春は花見、ゴールデンウィークや夏のレジャーシーズンにはバーベキュー、そして地震など万が一の時に備えては非常用というように、その時々で意味を変える。同じ商品でもその時々で意味が変わるから商品構成、陳列や演出、包装形態、販売価格帯など、様々な要素をその時々に合わせて変化させる必要がある。
ただPOPに商品名と価格を表示し、売場に置いているだけでは、その時=場面における商品の本当の意味が伝わらない。
お客が商品を買うには意味がある。だから同じ商品が同じ価格で売っていても、その時々で売れ方が変わる。
売場の科学は奥が深い。
その奥の深さを理解し、追求することは非常に重要であるはずだが、それが単に時代のブームでしか起こらなかったことが小売業界が上手く進化できなかった大きな理由なのだろう。
大手企業のカリスマ経営者の思い付きが長年かかっても「科学」になれなかったことがどこか象徴しているような気がしてならない。

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