商品と商品構成の科学

◆「商品とは何か?」を整理する
商品が持つ要素・意味を整理すると次のようになる。
➀物理的な形 ⓶機能(具体的な働き) ⓷所有・使用することで得られる付加価値(効用・満足度) 
➀物理的な形は⓶機能を達成するための原理を具現化するための構造をベースとして作られるから、大きさや形状、素材、構造、作り方など、この2つの間には明確な関係がある。
⓷付加価値は商品の所有、あるいは使用によって得られる効用、満足度であるから、客観的な尺度と主観的な尺度があり、人によって評価が変わる。
これと関連してコスト価値、使用価値という考え方がある。
コスト価値は、モノがつくられる過程で投入されたコストの分だけ価値があるという考え方であり、使用価値は、使うことによって得られる効用、満足度の分だけ価値があるという考え方である。
作る側と消費する側、それぞれの立場から見た時の価値ということができ、この二つがバランスすることで、モノと貨幣の交換が成り立つ。それが交換価値ということになる。
つまり、いろいろな商品がつくられ、流通して消費されるが、個々の商品は、これらの意味を前提として流通していることになる。

◆商品構成
商品構成は、前述の商品を「構成する」ことによって成り立つ状況である。
構成には、目的に従って、様々な要素を集め、一つの統一的な全体に総合するという意味がある。したがって、商品構成には、「目的」「構成要素」「構成要素の選択基準」「総合する上での比率や位置づけなどの規則・法則」が必要になる。
そう考えると、多くの店舗、売場で、商品構成ではない、昔、ホームセンターでよく言われた「品集め」状態にあることが分かる。
商品構成には思想や理屈、技術があるから、厳密にとらえようとすると非常に難しいが、それだけにキチンと理解し、使いこなせば、こんなに面白いこともない。
科学的な法則によって、売上や粗利率、商品回転率などが変わるから、簡単には無視できない重要な要素である。
しかし、残念ながら、この技術、法則性は普遍化されておらず、一つの法則として伝承されることもない。
チェーンストアが生まれてから半世紀を優に超える時間が経っているが、科学的研究がなされてこなかったために、個人の経験・ノウハウとして時間の経過と共に消えていってしまう。
多くの店舗、売場で先人が経験した失敗を何度も繰り返すというムダが発生し、大きなロスが生まれている。

デジタル技術が発展し、様々な消費者の行動がダイレクトに測定できるようになったことで、あたかも科学的なマーケティングがなされているような錯覚に陥っているが、残念ながら仮説のない所で結果だけを計測していたのでは、モノ・コトの因果関係及びその結果が生まれた環境条件等までは知ることができない。
POSがID-POSになっても使えないのと同様に、個々の結果をいくら集めてみても因果関係は分からない。
商品構成は、商品が売れる理由=因果関係であるから、そこを科学的に解明しない限り、「何故、その商品が売れたのか、売れなかったのか」までは理解できない。
科学的「論」「方法」を間違うと、大掛かりな設備と膨大な費用、時間を使っても、結果、結論はは科学的ではない。
たくさんのデータを集め、高度な数学、デジタル技術を使って処理したからといって科学的であるということにはならないから難しい。

商品がたくさんあると、似たような商品で価格が違うケースが出てくる。単純に考えれば安い商品の方がよく売れるように思えるが、必ずしもそうはならない。高い方が売れる場合もあるし、高い商品、安い商品の両方とも売れずに中間に位置する価格の商品の方が売れる場合もある。
商品が売れるかどうかを決定づける要素は単に価格だけではなく、ブランドやCMなど商品によって様々に変わるし、売場のつくり方(陳列場所、フェイス数、在庫量、演出方法)、売り方(試食、試供品配布、タッチアップなど)、POPのつけ方ひとつでも変わることがある。
いろいろなケースがあるから、それらを全て網羅して法則を見出すことは難しいと考えるのかもしれないが、そのくらいの知恵がなければ、商品構成という高度な技術を使いこなすことはできない。
筆者はクラシフィケーション(classification)という概念を用いて説明しているが、古くには製造業が多品種少量生産に対応するためにGT;Group Technologyというシステム的手法を開発している。たくさんある異なる性質のものを、類似する要素によってまとめ、処理することで効率化を図るというものであり、この手法を用いれば、多くの異なるものを整理することも容易になる。

デジタルの時代であれば、それを使いこなす知恵が一層必要になると考えるべきだろう。

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