手乗り錦鯉を創ろう

泳ぐ宝石、錦鯉は海外で人気があり、37億円が輸出されている。実に9割が輸出というから、国内に流通する魚は一握りでしかない。実際に身の回りを見ても、ペット・ショップはあるが錦鯉を売る店はほとんどない。また、大きな錦鯉が泳いでいる池を探しても一部の料亭や公園など限られているから、日常的に眼にすることもほとんどなくなっている。
住宅事情もあるが、残念ながら昔のように金魚屋さんで金魚や鯉を買ってきて、自宅の庭にある池で飼うという身近な存在ではなくなってしまった。
流通ルートも店からヤフオクへと移り、すっかり表舞台から消えているから、余計に一般の人からは見えない存在になっている。産地も海外から買付けに来るバイヤーに顔が向いているから、改めて国内のマーケットを開拓するという発想にはならないのだろう。しかし、美しく、一匹一匹の色柄が違い、しかも長生きして、人に慣れて手から餌を食べるという特性を考えれば、ペットとして脚光を浴びてもおかしくない。様々なマーケット環境を考えても大きな可能性を秘めているペットと考えてよいだろう。
最近では、「アートアクアリウム」という形で金魚が注目されるようになっているが、いくら注目されても日常生活の中に金魚を飼うという習慣が浸透するわけではない。
江戸川区の金魚祭りに行くと、多くの家族連れが金魚すくいに興じており、金魚を飼い求める人も多い。産地という地域特性もあるのだろうが、金魚が「特別なモノとして見る対象」ではなく、生活の中の一部としてしっかりと居場所を確保しているように思える。
文化の違いと言ってもよいのだろう。
ポイントは、日本の住宅事情でも十分飼えるような条件を揃えること、表舞台で「錦鯉は良いものだ」と機会あるたびに数多く露出することだろう。
そのためには、錦鯉の小型化は欠かせない。池で飼う魚から、水槽でも飼えるというように範囲を広げても、錦鯉のポジションがただ鑑賞するだけでは限界がある。
犬が小型犬中心に室内飼育が主流となり、日常生活の中で触れ合う機会、時間が増えたことからコンパニオン化していったように、錦鯉も餌を手からもらって食べながら、人との距離を近づけることができれば、従来の観賞魚というポジションとはまた違ったポジションで受け入れられることも可能である。
多くの商品がブレークする、一度去ったブームが再燃する時には必ずポジションが変わっている。かつての園芸ブームはマニアの趣味からグリーンインテリアとして一般に広く普及し、さらにクラフト的なイングリッシュガーデニングとなって何度も蘇っている。アクアリウムブームもインテリア水槽や水草ができたことで、従来の品種改良や品評会という一部のマニアのものから、リビングのインテリアに意味を変え、多くの人に受け入れられた。
錦鯉も同じである。鑑賞という意味、ポジションから、もっと人との距離を縮めて生活空間に入り込んだ存在になれば、再び文化として多くの人に受け入れられる可能性もある。
現在の状況を考えると、日本全体が高齢化し、しかも単独世帯が増えたことで、一人で生活する人が増えている。しかも地縁、血縁も疎遠になっていることから、犬・猫などのペットが家族として重要な位置づけになっている。集合住宅でも飼いやすいということから爬虫類を買う若い女性も増えている。ただし、動物愛護法改正の関係から高齢者が改めて10年以上生きる犬・猫などを飼い始めるにはハードルが高くなっている。
そのような環境変化を含めて、動物ではなく人工知能に相手を求める傾向も見られるようになっており、ロボット掃除機や電子レンジなど言葉で反応する機械に名前を付けて会話をする独り暮らしの高齢者も増えているという。
このような現在の環境与件を考えると、心の拠り所となるような話し相手や世話をする対象を求める傾向は益々強まっていくだろう。まして高齢者の一人暮らしの多くは女性であるからなおさらである。
ペットを飼い、世話をすることが認知症予防に良いことも分かっているから、多くの点で意味のある方法ということになる。
錦鯉は、個体の識別ができ、色・柄も美しく、人に慣れるというペットとしての多くの特徴を備えている。YouTubeを見れば犬・猫や言葉をしゃべるインコなど飼い主が多くの人に見てもらい、自慢したい動画が溢れている。同様に数は少ないが飼い主の手からエサをもらい、手のひらに載ってくる金魚や錦鯉どの動画もアップされている。
もし、錦鯉が「手乗り錦鯉」というようなペットとしてのポジションを確立することができれば、従来の錦鯉とは異なるもう一つ別のマーケットを確立する可能性は高い。それが実現すれば、日本の新しい文化を生み出す、あるいは回復させると言うこともできるだろう。それだけの可能性を秘めたテーマだと考えている。

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