次世代型アパレル流通へビジネスモデルをシフトしよう!


様々なマクロデータを分析してみると、マーケットの変化から、各種商業施設が今後どのような状況になるのか、おおよその見当はつく。
港北ニュータウンの人口推計など、別項で具体的なデータを挙げて解説しているが、現在のビジネスモデルのままでは、人口減少・高齢化という最も重要なマーケットの変化に多くの商業施設が対応することが難しくなるだろう。大量閉店が発表された総合スーパーと似た構造にあるショッピングセンターは、いずれ同じような状況に陥ることは容易に想像がつく。しかもシェアリング・エコノミーなど、デジタル化の急速な進展が消費のあり方、ビジネスモデル=産業の在り方を根底から変えていけば、なおさらである。

ポイントはいくつかある。
一つは物理的な商圏概念だけでは成り立たなくなった商品流通構造である。多くのケースで商圏は道路や競合店などを参考に半径◯kmというようにして設定される。商圏内の世帯数、人口、年齢構成、産業別就業人口などからおおよその売上可能な数値をはじき出す。しかし、出店に当たって将来の推計人口、マーケットの変化などネガティヴな要素はあまり考えない。考えれば出店できなくなるというのが本当のところかもしれないが、撤退を想定して出店することはほぼないから、将来のマイナス要因よりもプラス要因を中心に考える。広域商圏を前提とする商業施設と足元商圏を前提とする商業施設で条件は異なるが、特に足元商圏の誤算は日常的にベースとなる売上に直接影響する。

もう一つは現在の小売業が抱える「損益分岐点が高く、経費が固定費的に発生する」という経費・利益構造、そして日本という国全体の高齢化に伴う消費構造の変化である。
特に都市部では広域型の大型ショッピングセンターが多いため、テナントもアパレル中心のテナント構成になっている。しかも日経ビジネス2016年10月3日号に「買いたい服がない」と特集されたようにマーケットに業界(構造)がついていけていない。さらにどのショッピングセンターもテナント構成は似通っているから、差別化を図ることは難しい。また、インターネット通販を強化している商品ラインとも被るから、対象年齢層の人口が減少しているにもかかわらず、競争はより激化する。
マクロデータからは、高齢化によって衣料品の消費支出が半減することが分かっている。さらに高齢化によってクルマという移動手段を失えば広域型ショッピングセンターの集客力は確実に低下する。

シェアリングエコノミーなど消費概念の変化は販売以外のチャネルの多様化を促す。すでに店に在庫を持って販売するだけが商品供給の手段ではなくなっている。物の充足によるソリューションから機能充足、状況改善のソリューションへと大きく変化していることは重要なポイントである。
このようなマーケット構造の大きな変化に対して、商品を供給するメーカー、卸、小売、全ての段階で対応ができているとは思えない。
場合によっては、TUTAYAや蔦屋書店を経営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)が、現在の店舗網、システム、ビジネスモデルを活用して、アパレルのシェアビジネスをフランチャイズ展開したら、いまのアパレル小売は消滅してしまうかもしれない。
コンビニエンスストアを見れば分かるが、一つのシステムを構築したことは、一つの業態の物販店舗網を構築したのとは全く意味が違う。システムには、物販を含む様々なサービスを提供する柔軟性と汎用性がある。システムは様々な商品・サービス、ビジネスを載せることができるプラットフォームである。それに対し、固定的な商品を、固定店舗で販売する小売業には、店舗/立地/商圏、商品在庫、販売方法などの組合せが固定化されており、変化に対応できる柔軟性は持ち合わせていない。
CCCが、メーカーから新発売されるDVDをまとめて提供してもらい、消費者ニーズの高いホットなうちにレンタルの稼働率を確保した方法(商品代金ではなくレンタルによって得た収益を分配)は、多くのファッションアパレルのシェアビジネスに応用できる有効な手法である。メーカーは一定量の生産を確保でき、一定の収益を確保した後に中古流通、海外に販売するような仕組みを確立すれば、いまの固定的なアパレル流通は崩壊する(領域は限られる)。ただし、視点を変え、上手く活用すれば、いまの流通形態も形を変えて生き返ることが可能になる。
Tポイントカードを活用したビッグデータの強みは、商品開発、生産、在庫コントロールなどに幅広く活用でき、従来のアパレルとは比べものにならない精度を実現するだろう。(理屈通り上手く活用すればという条件付きだが、、、)

 

 

 

 

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