「爆買いバブルが2017年までに崩壊する理由」「三越伊勢丹、「爆買」訪日客単価3割減で急失速」 いずれも東洋経済onlineに掲載された記事のタイトルである。
もともと神風的な要素が強く、「のど元過ぎれば…」という小売業特有の体質から、せっかくの経営変革のチャンスを逃すのではないかと危惧していたが、いよいよ分からなくなってきた。
「百貨店売上3か月連続減少」「インバウンド低調」「高額商品に陰り」など、速報値が発表されるたびに様々に報道されるが、ポイントはいくつかあるだろう。
リピーターの増加、「sightseeing」から「sight doing」というように「物販」から「体験型消費」への移行、LCCによる地方空港への移行、….など、マーケットの状況が変わりつつあることは重要な変化要因の一つである。
それ以外にも、マイナス要因、プラス要因として考えられることはいろいろと指摘されているが、あまりにも中国一辺倒で迎合しすぎていることに対して、「まるで日本ではなく、中国に来ているみたい」という観光客の声もあるというからインバウンドへの対応の仕方、活かし方をどこか間違えているのかもしれない。
確かに京都の寺院を見に行って中国語とハングルの看板ばかりでは、???…となっても不思議はない。我々が海外に行って日本語の表示や看板を見ると、どこか安心するようなこともあるだろうが、それも程度問題であり、どこへ行っても日本語の看板ばかり、どこへ行っても日本語ばかりでは、興ざめしてしまうだろう。
何事も「過ぎたるは…」ということだろうが、こういうことに慣れていないと、日本人は親切心からどんどんエスカレートしていってしまう。
観光は重要なマーケットであることは確かだが、いつまでも「物売り」から抜け出せない小売業の業界体質の問題が全く議論されていないことも大いに気がかりである。
小売業の人間は、古くからアメリカ視察に行っているから分かるはずであるが、昔はみな決まってお酒とタバコ、化粧品、ブランド品などを買ってきたものである。数十万円買い物をする人も珍しくなかったが、毎年のように行っていると、そのうち買えるものがなくなってくる。
お決まりの観光地に飽きてくると、あまり観光客がいかないようなニューヨークの裏通りを散策してみたいという気持ちにもなる。また、その頃になると、そういう穴場的な場所や店を紹介した本も出てくるから、徐々に動き方、お金の使い方が変わる。
自分たちがどのように変化していったかを考えてみれば、今後我国のインバウンド消費がどのような方向に向かっていくべきかはある程度イメージできる。
メーカーは、中国人のアドバイスを受け、中国人が好むパッケージに切り替えるなどの取り組みもしているというし、多くの免税コーナーでは専門スタッフを配置して言葉だけではなく、感覚的にも分かりやすい対応をしているという。あちこちに中国語、ハングルなどの看板もついているから、観光客はどこに行ってもあまり困ることはない。
そのうち、あらためて「日本とは何か」「日本らしさとは何か」という議論が聞かれるようになるのかもしれない。
日本政府観光局(JNTO)が6月15日に発表した2016年5月分の訪日外客数(推計値)は、前年同月比15.3%増の189万4千人、2016年1-5月の合計値は972万8千人となり、昨年の同期間を約29%上回っているという。(http://inboundnavi.jp/monthly-number-may2016)
すでにテレビでは1千万人を超えたと言っていたから、どこまで伸びるか分からないが、中国、台湾、韓国などアジア中心で欧米が伸びていないのが気がかりである。
一歩舵取りを間違えると、日本がどこの国だか分からなくなってしまい、本当の意味での観光立国から遠ざかってしまうのでないかという危惧もある。
いまは急成長でみな熱くなっているが、冷静な視点から長期的な展望を持つことが必要だろう。
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