我々が商品を研究する目的はさまざまであるが、基本的には①売れる(売れない)商品を探す、②現存していない、開発する意味のある商品を探す、③商品タイプごとにどのような売り方が有効なのか探す、…等々、事業として有効な商品開発、商品構成、販売・販促方法を探すことが基本である。
むやみやたらと商品を開発するのでも、品揃えするのでもなく、必要な時に、必要な商品を、必要な量、適正価格で、適切な販売方法・チャネルによって消費者に提供するという最も基本的なことの精度を高めることが重要になる。
そのためには、いろいろな角度から商品を科学(事実の相互関係から仕組みや法則性を見出す)することが大切である。
◆買い方(売れ方)による商品の分類
我々は生活をしていく上で、いろいろな商品を必要としている。例えば、卒業式や入学式に着る服は、何年に一度しか着なくても特別な日に着る服なのでとても重要な意味を持つ。一方、毎日着る肌着や靴下などは、1日でも欠かすことができないという意味では大切であるが、卒業式や入学式に着ていく服のように特別な意味を持つものではない。
このような商品のもつ意味の違いは、買い物の仕方の違いとなって現れる。大切な時に着る服であれば、多少高くても自分の気に入ったデサイン、長く着られるような品質のよい商品、好きな店・納得できる店・販売員を選ぶだろうし、商品を選ぶために十分時間もかける。一方、毎日着る肌着・靴下などは、毎日着るものであるから、複数枚持つだけでなく、傷みによる買い替えも頻繁に起こる。単価もそれほど高くはなく、買う数も多いので、いろいろな色・柄・素材・デザイン・価格のものを試してみたいという心理も働くだろう。
例え同じ範疇の商品であっても、商品の使用目的、使用場面、使い方、買う量・頻度、価格などが違えば買う店、購入金額、デザイン・素材など買い求める商品に対する要求も変わる。お客にとってその商品がどんな意味を持つのか、どのような位置づけの商品なのかによって、全く同じに思える商品であっても商品の買い方=売れ方は大きく変わることになる。
買い方によって商品のタイプを分けると次のようになる。
①同じ人が繰り返し継続して買う商品/その都度買うものが変わる(一度買うと二度同じ商品を買わない)商品
a. 同じ人が繰り返し継続して買う商品
例えば、ビールやタバコなど習慣性のある商品は、同じ銘柄の商品を継続して買う傾向が強い。調味料なども料理の基本となる味を決めるものであるので、似た傾向にある。化粧品ではスキンケアを中心とした基礎化粧品がこのタイプに入る。
b. その都度買うものが変わる(一度買うと二度同じ商品を買わない)商品
食品では菓子、化粧品ではパヒューム、メイクアップなどがこのタイプである。流行に敏感でライフサイクルが短く、入れ替わりが早くて商品の種類も多い。メーカーは多くの商品を次から次へと発売し、さまざまな商品を試してみたいという消費者心理を刺激する。常に新しい商品に入れ替えていかなければ、売上を維持することが難しい商品である。
②頻繁に買う商品/一定間隔で買う商品/一度買うとしばらくは買わない商品
a. 頻繁に買う商品
牛乳、卵、納豆、豆腐などは、多くの人が毎日のように使う商品であるが、鮮度の関係から例え安くても一定量以上はまとめ買いをせず、なくなったら必要量だけ買うという買い方をする。チラシなどで客数が増えれば、客数に比例して販売数量が増えるため、チラシなどに合わせて集中販売するか、継続的にじっくり売っていくのに向く。
b.一定間隔で買う商品
味噌・醤油などの調味料、トイレットペッパー、衣料用洗剤、食器洗剤、粉ミルク、紙オムツなどは、一度買うとなくなるまでに一定の期間がかかる。商品がなくなりかけるか、なくなってから次の商品を買うので一定間隔で買う商品である。特売商品として用いられることが多く、いつでも必ずどこかの店でチラシ・特売にかかっているため、ストックが利く商品でありながら余程安くならない限りは大量にまとめ買うことはない。お客はいろいろな店のチラシ・特売のタイミング、価格などを調べて、いつでも安く買っている。
c.一度買うとしばらくは買わない商品
テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、パソコンなどは価格も高く、長く使えるので、一度買えばしばらくは買い換えは起こらない。もし買ってみて気に入らない、あるいは不便だったとしても、すぐに買いかえることはできない。また、廃棄する際に費用もかかるため、買う時点でさまざまなリスクがある。
③安くすると売れる商品/高くないと売れない商品・安くしても売れない商品
a.安くすると売れる商品
牛乳、卵、ティッシュペーパー、洗剤などは価格を安くすることでお客に訴求して客数増を図る。また、季節商品も処分価格にすることで販売促進をする。日常よく使う商品、欲しいとは思うが価格が高いために躊躇していた商品などは、価格を下げることで販売量を増やすことができる。
b.高くないと売れない商品・安くしても売れない商品
化粧品やブランドバッグなど、高額であることが一つのステータスになっている商品は、例え原価率が低くても価格を安くし過ぎてしまうと、価値が認められず販売量枷伸びないことがある。
例えば、片方は有名メーカーがつくってテレビCMも流れ、綺麗なパッケージに入って5000円、もう片方は無名メーカーがつくり、無包装で200円という基本的に成分が同じ化粧水が2種類あったとする。この2つの商品を比べると、高い方の化粧水には有名メーカーの名前や5000円という価格に対して無意識の内に何らかの効果を期待してしまうが、安い方の化粧水には、まず効果を期待することはないだろう。価格の高いことがステータスであると同時に商品への信頼にもつながるケースでは、価格の高い方がよく売れ、安くするとかえって売れない。
④皆が同じものを買う商品/人によって買うものが違う商品
a.商品格差が少なく、他の商品で代替が利く商品
衣料洗剤やティッシュペーパーなどのようにメーカー数、ブランド数、アイテム数などが限られ、商品の品質/価格もほぼ同様な商品場合、使用する上でも個々の特徴が明確に認識できるほど大きな差は認められない。どの商品でも、それほど極端な差がないことから、商品格差に対する認識はあまりなく、その時々で安くなっている商品を購入する傾向にある。
b.皆が同じものを意識して買う商品
お客の心理として、自分も流行の中にいるという『安心感』を得るために、皆が同じものを意識して買うということはよくある現象である。ブームが極端であればあるほど限られた商品に集中するが、逆に短命で終わる可能性も高い。
c.人によって買うものが違う商品
キッチンツール、工具・道具類、ペット用品(フードを除く犬関連用品)のように、比較的マーケットサイズが小さく、中小零細企業が数多くシェアを分け合っているような商品、ブームになりにくい商品、あるいは明確なブランドがなく流通チャネルも限定されるような商品に多い。
⑤常備する商品/必要に応じて買う商品
a.常備する商品
常備する商品は、大きく3つのグループに分けることができる。
一つ目は、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、食器洗剤、衣料洗剤、米、調味料など、毎日のように使うので、いつでも切らさないようにしておく商品。
二つ目は、卵、ダイコン・ニンジン・タマネギなど用途が広く、いろいろな料理に使える食材。使い回しが利くので、あれば何かと便利な商品である。
三つ目は、レトルト食品、インスタント食品、乾電池、電球、頭痛薬、胃腸薬、風邪薬など、万が一のことを考えてあらかじめ用意しておく商品。家庭における使用頻度、切らした場合の影響度合などを考えると、一番重要なのが一つ目の毎日使う商品、次が二つ目の用途の広い商品、最後が三つ目の万が一のことを考えて常備する商品だろう。商品構成や売り方にもこのような商品の位置づけを考慮して行うべきである。
b.必要に応じて買う商品
例えば、カレーのルーは夕食メニューが決まった段階で買い求めればよく、必ずしも常備する必要はない。同じカレーでも、急に夜中に食べたくなったという場合のレトルトカレーとは基本的に意味が違う。
使うことが決まってから使うまでに準備する時間的余裕がある商品ということができる。
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