商品には形があり、モノとして触ることができる。ただし、商品は、昔から経済学で「お客は商品という物を買っているのではなく、商品を通して得られる効用(消費者のニーズを満足させる度合)を買っている」と言われている。
そのような視点から商品を見ると、商品の持つ「機能」について理解する必要がある。
機能は、物の持つ有用な性質、はたらき、作用などのことである。具体的には、ライターは「熱を発生する」ことで火をつけることができるし、ハサミは対象とするものを「分離する」ことで切り分けることができる。これが機能である。
改めて、消費者にとって商品が持つ意味を整理してみると、大きく分けて基本機能、二次機能、三次機能というとらえ方ができる。
◆基本機能 : 基本機能は、機能の中でも「その物が物として存在・成立するために具備する必要のある必要最低限のはたらき」である。
例えば、ライターの場合、タバコに火をつけることを前提とすれば、少なくとも紙の発火点まで熱を発する必要があるし、ハサミは一般的な用途から考えれば紙や布を切り分けることができる必要がある。また、テレビは音声と映像の両方があって、はじめてテレビとして成り立ち、仮に映像がなければテレビではなく、ラジオになってしまう。
このように、どんな商品にも「その商品が存在・成立するために必要最低限具備すべきはたらき」があり、それによってはじめて「商品として存在・成立」することができる。
◆二次機能と三次機能
一方、商品には基本機能以外にも様々な「はたらき」がある。例えば、テレビはチューナーの数によって同時に見られる(或は録画できる)番組の数が決まるし、4Kテレビのように画素数が多くなることで映像を極端にきれいで鮮やかに見ることができるようになる。これらは、テレビがテレビとして成り立つ上で必要となる「音声」と「映像」という条件とはまた違った機能であり、ある意味基本機能を満足した上でさらに付加された機能ということができる。
このような基本機能以外の副次的機能が物理的に付加されるものを二次機能という。左右どちらの手でも使える利便性を増したハサミ、重ねても膨らまないように針が真っ直ぐ止まるスタープラー(ホチキス)など、様々な分野の商品で二次機能が重要な役割(差別化のキーを握る)を果たすようになっている。
基本機能、二次機能は製品改善、新製品開発を効果的に行うために生まれた概念であり、「物としての商品」が対象であったが、状況は大きく変わり、「物としての商品」とは別に「意味としての商品」が無視できないほど大きなウェイトを持ちはじめている。ブランドである。
例えば、ブランド商品と同じ工場で全く同じ仕様でつくられた商品でも、ノーブランドであればブランド商品と同じに評価されることはない。
ブランドは、「物としての商品」とは異なり、消費者の心理の中で固有のイメージ、価値を形成している。消費者は「物としての商品」とは別にブランドというフィルターを通して「意味としての商品」を見るため、全く同じ仕様の商品であったとしてもブランドの有無で価値が全く変わる。
ブランドの持つイメージ、価値を通して商品を見れば、基本機能、二次機能だけで商品の価値は測れない。有名人が使っている商品、プロスポーツ選手が使っている〇〇モデルのスパイクやグローブ、〇〇仕様の用具類なども全く同様である。
このように機能には「基本機能」以外に「物としての商品」が持つ二次機能、「意味としての商品」が持つ三次機能があると考えられる。
これら3つの機能が相互に影響し合いながら「物としての商品」と「意味としての商品」が重なり合い、「商品」が形成される。
「物としての商品」と「意味としての商品」、どちらのウェイトが高いかは商品によってマチマチだが、どちらか一方が欠けても商品として成立することは難しい。
単に商品を価格だけで評価しているのでは、良い商品を創ることも販売することもできない。消費者の心理、マーケットの変化をよく観察し、理解する必要がある。
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