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台形の面積を求める公式は?

「台形の面積を求める公式は?」という質問をすると、一瞬戸惑う人は多い。
むかし習ったことだから、もう忘れてしまったというのが理由である。
多くの人が公式を覚えてテストを乗り切ってきたから、テストが終われば必要のない知識として忘れ去られてしまう。特に算数に対して苦手意識を持つ人には訳の分からない公式はテスト用に覚えることはしても、用が済めばただの意味のない記号に過ぎないから忘れるのも早い。
台形の面積を求める式は、(上底a+下底b)×高さh÷2  何とも不思議な公式である。
しかし、これを (上底a×高さh÷2)+(下底b×高さh÷2) とすると、上底aを底辺とする三角形と下底bを底辺とする三角形、二つの三角形を足したものであることが分かる。
実際に台形の図を描き、対角に一本線を書き加えて三角形二つに分ければ、なんということはない。直感的に理解できる。
頭の中にどのように入ってくるかで、その後の処理の仕方は変わる。
直感的に分かり、理屈としても理解できた状態で入ってくるか、ただの意味のない記号としてとにかくその場しのぎで覚えたかの違いである。

同様に「2.25×2.25-1.75×1.75を5秒で求めよ」というと、ほとんどの人は、そんなことは出来っこないという。
昔はよく一番初めの授業で学生に質問したものだが、大学生でもほぼ全員が無理だという反応を示す。
小数点第2位同士の掛け算をすれば、結果は小数点第4位になる。その計算を二つやった上で、なおかつ引き算までしなければならない。それはどう考えても無理というように結論付ける。
5秒で求まるというのは大きなヒントなのだが a×a-b×b=(a+b)×(a-b) など因数分解に当てはめて考えないのだろう。
2.25+1.75=4  2.25-1.75=0.5  4×0.5=2 誰がやっても5秒で答えは出せる。そういう問題である。

算数に対する苦手意識は、思考そのものを止めてしまう。
重要なことは、どのような形で頭に入れるかのはずだが、思考法、論理の組み立て方は小学校から大学まで、ほぼすべての教育項目の中に入っていない。
知識を与え、求めて、思考法を教えないのは、魚を与えて魚の取り方、増やし方を教えないのと同じである。
こんなことを続けていては、小学校から英語やプログラミングをやっても何も変わることはない。

なんで読んだのか記憶が定かではないが、「IQ(intelligence Quotient 知能指数)の高い子よりもEQ(Emotional Intelligence Quotient 心の知能指数)の高い子の方が大人になってから出世し、収入も高い傾向にある=社会に適応している)」という記事を読んだことがある。
別に出世し、高い収入を得ることだけがよいことだというつもりはないが、少なくとも子供をどう育てるかを真剣に考えないと、標準偏差という机上の物差しばかりに縛られて、実社会、実態に適応できない人間をたくさん作りだしてしまう。
まして、シンギュラリティ(Singularity技術的特異点)が言われる時代であることを考えれば、旧態依然とした価値観、制度のまま、教育をしていくことのリスクを真剣に考え直す必要があるだろう。