業界の中には古くからの勘違いが定着し、間違った考え方・方法のまま、21世紀の今でも行われていることがある。
例えば、ドラッグストアでは花粉症関連商品、水虫薬など、季節商品を持ち出して展開することが行われているが、商品によっては定番コーナーから持ち出して特設コーナーを作っても定番コーナーの売上の方が大きいというケースもある。実際に実験を行ってデータをとり、検証している企業の話を聞くと、定番コーナーの印象が強いために、買う時には知らず知らずのうちに定番コーナーへ行ってしまうということである。
このようなケースでは、特設コーナーへ持ち出すよりは定番コーナーでフェイスを広げた方が有効である。
多ヶ所展開が向くといわれる商品も、少しずつ分散して置くよりも、1ヶ所にまとめた方がよく目立ち、補充も楽で欠品しにくい。さらに場所が印象的に刷り込まれることもあって、こちらの方がはるかに販売数量が伸びるというケースも多い。確かに5~10個ずつ、5ヶ所、10ヶ所といろいろな場所に商品展開すれば、補充の手間もかかるし、1ヶ所ずつ見れば目立たない。それを考えれば1ヶ所に50~100個を目立つように大量陳列した方がはるかに印象に残るし、補充も楽で欠品しにくい。
特に他社が多ヶ所展開して目立っていない商品でやる場合には、より印象に残るから効果も高い場合が多い。過去に乾電池、自治体指定のゴミ袋などで試したことがあるが、確実に大量陳列の方が売上が伸びている。
レジ前や後ろエンドなど、エンドと平台などの山積みの使い分けも重要である。単品大量販売をするから同じようにとらえているケースもあるが、明らかに商品のタイプによってエンドと平台では販売量が変わる。
いろいろな商品を用いて、どのような陳列形態が向いているかという向き不向きの実証実験をやったことがあるが、山積みに向いている商品はエンドでは売上が伸びない。特にパッケージの大きい商品の場合、エンドでは陳列できる数量が限られるため、すぐにボリューム感がなくなってしまう。もちろん商品特性による違いはあるが、多くの商品が大量陳列によってほぼ確実に売上が伸びることが分かっているから、大量に販売したい場合には思い切った陳列をすることも必要である。
エンドが本来のプロモーション的な使い方ではなく、多くのアイテムによって定番的に細かくフェイスが分かれていることもあるが、エンドでアクセントをうまくつけている売場があまり見られなくなっている。
エンドについては諸説あり、考え方によって50アイテム以上置かないとだめだと言い切るコンサルタントもいるようだが、商品特性と売場全体の構成から単品大量で面を構成し、定番コーナーの細かなフェイシングとは見ためを変えて売場のアクセントとするのか、定番の本数が足りない分をエンドでカバーするのか、季節定番のコーナーとするのか、…等、売場の状況に応じて使い分けるべきだろう。
また、レジ前の第1エンドが非常に目立つから良い場所という認識もあるようだが、食品スーパーやドラッグストアのように壁面に主通路がある場合には、入口から主通路に沿って店内を回り、最後にレジ前に来るため、直接レジに向かえば全く目立たないのが第1、第2エンドということになる。
中島什器の並びが8列以上ある場合には、エンドをフラットにせずに多少前後にずらして3列に一つくらいの割で大きなエンドをつくるとアクセントになる。全部を同じように作ると目立たないし、全部が同じように売れるわけではないから、変化をつけることは有効である。
いずれにせよ、商品はお客の買い方、商品のイメージや販売数量、価格、購買頻度などにより、定番コーナーで展開した方がよい商品、持ち出しで展開した方がよい商品、エンドで展開した方がよい商品、平台で展開した方がよい商品などがある。
多ヶ所陳列した方がよい商品もあるのかもしれないが、実験結果からは必ずしも従来から言われているような効果はないような気がしている。特に分散することのデメリット=全体としては多くの在庫を持っていても1ヶ所当たりの在庫が少なく、ボリューム感がなくて目立たない、補充の手間がかかる、場合によっては手が回らずに商品が薄く、売場の鮮度が落ちる・欠品を起こす、…等を考えると、現在のスタッフが少ない売場には合った方法ではないのだろう。
小売業に携わって40年以上経つが、けっこう昔から言われていることには嘘も多いし、時代とともに昔の常識では全く通用しないことも増えている。
経験的(実証実験)には、お客の買い方、商品の特性を考慮して適した陳列方法、売り方をすれば、販売実績が上がることは確認できている。
昔から言われている古い考え、言い伝え(もちろん全てが間違っているわけではないが...)よりも、実際に売場で試し、自分の目で確認してみることが重要だろう。
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