今後、食のマーケットがどう変化するのかは、重要なテーマである。 考えられるポイントは、大きく分けて3つである。 ①農業を中心とした第一次産業の6次産業化推進によって、食品スーパーから直売所、道の駅などへ生鮮食品の販売チャネルのシェアシフトが起こる。 ②高齢者夫婦・高齢者単身世帯、非婚者の単身世帯の増加、あるいはサービス付き高齢者住宅への住み替えなどによって、食材を買って自宅で調理をする世帯は減少する。 生鮮食品からレトルト食品・惣菜などへの移行、弁当の宅配、サービスとして食事の提供を受ける世帯の増加が起こることで、食品販売チャネルや消費財から生産財へのシフトなどが起こる。 ③Kitchike(https://ja.kitchhike.com/)のような外国人観光客、あるいは国内在住の外国人家庭と日本人家庭の日常的な食事のマッチングサイトが生まれたことを考えると、食の世界がグローバル化し、新たな出会い・交流の「場」として新しく意味を持ち始めている。食材、調理法、レシピといった「物」だけで完結し、成り立っていた食の世界が、人が時間・経験を共有する「交流の場」に変わる意味は大きい。 レストランの食事ではなく、従来とは全く視点を変えて、世界の家庭料理が見直される可能性もある。その時には、食材、調味料、調理器具などの他、文化としての食にまつわる様々なマーケットが新たに生まれる可能性が高い。 このような変化を考えると、従来の食品スーパーは、人口減少・高齢化による商圏の縮小・商圏密度の低下、食に関する意味・チャネルの多様化によるシェア低下など難しい局面を迎える可能性が高い。特に食品スーパーのアイデンティティとも言える生鮮食品は、初期投資、運用コストともに高いので、調理をしない世帯の増加、専門性の高い海外の食材・調味料など従来とは全く異なるニーズが高まった場合にはアキレス腱となる可能性が高い。 高齢者世帯、単身世帯が増えることを考えると、単に腹を満たす、栄養を摂取するという物理的な意味の食事とは別に、「食」を通して参加・体験・交流など、よい時間を創りだし共有するといった「メンタルを満たす」マーケットの重要性が増すだろう。
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