47都道府県を含む全国1858の自治体の人口減少と高齢化の状況 

 国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の地域別将来推計人口」で取り上げた47都道府県、および市区町村(福島県は県のみ、市区町村はナシ)を合わせた1858の自治体について、2010年を100とした時の総人口指数(横軸)、および老年(65歳以上)人口指数(縦軸)を用いて2025年、2040年の散布図を作成してみた。全体としては、2025年、2040年とも総人口指数が高くなるほど老年人口指数も高くなる(グラフは右肩上がりの正比例の形)。また、人口減少に伴い、2040年には2025年と比べて総人口指数が100を割り込む自治体数が大きく増加し、全体も右上から左下へと大きくシフトする。
 2025年、最も多いのが、総人口指数80―90/老年人口指数100―120、および総人口指数90―100/老年人口指数120―150という自治体であり、その次に総人口指数70―80/老年人口指数100―120、総人口指数70―80/老年人口指数90―100、総人口指数100―120/老年人口指数120―150、総人口指数90―100/老年人口指数100―120が続く。
 2040年になると自治体数が集中するマスが、総人口指数が同じでも老年人口指数がワンランク上へとシフトする。最も自治体数の多いのが、総人口指数80―90/老年人口指数120―150、総人口指数70―80/老年人口指数100―120であるが、1マスの中に位置する自治体数は2025年に比べ半分くらいに減少する。自治体固有の状況により、人口構成が分散していると考えられる。
 2040年までしか推計値がないため、2050年、2060年と時間が進んだ時にどのような状況になるのか、現時点では想像の域を出ないが、可能性として考えられるのは、①左下に位置する自治体のように日本全体が高齢者の減少とともに総人口も減少し、やがて人口を維持することができなくなって消滅する、②ある時点で年齢構成、人口規模とも一定範囲内に収束してバランスし、その状態が維持される、などが考えられる。
◆左下に位置し、人口が大きく減少する自治体は、年少人口、生産年齢人口に加えて老年人口までも減少することで相乗的に人口減少が加速する。
 2025年と2040年のそれぞれについて、総人口指数の減少幅が大きい上位100の自治体を抜き出し、その中から①2025年の総人口指数がほぼ同じでありながら老年人口指数が異なる自治体、②老年人口指数がほぼ同じでありながら総人口指数の異なる自治体、をいくつか抜出し、比較をしてみた。
①2025年の総人口指数がほぼ同じでありながら老年人口指数が異なる自治体
宮崎県西米良村(2010年人口1241人、2025年総人口指数73.4、老年人口指数78.8)、愛媛県愛南町(同24061人、73.1、107.4)、北海道音威子府村(同995人、73.1、124.4)である。
 サンプル数、人口の大小、自治体の立地環境、産業、周辺都市との関係など様々な要素があるので一概に人口動態データの比較でどうこう言うことは難しいが、ここで取り上げた3町村に関しては、総人口指数と老年人口指数の比率が西米良村73.4:78.8➡53.8:54.2、愛南町73.1:107.4➡49.6: 81.2、音威子府村73.1:124.4➡49.5: 86.6というように、2025年、2040年ともほぼ同じ比率になっていた。 
 大きく変わるのは総人口に占める年少人口、生産年齢人口、老年人口の割合であり、音威子府村だけが、総人口が30年間でほぼ半分になっているにもかかわらず、年齢3区分の比率はほぼ同じで推移している。他の2自治体は年少人口比率が減り、生産年齢人口比率も大きく減少して、その分、老年人口の比率が高まるという変化をしている。
②2025年の老年人口指数がほぼ同じでありながら総人口指数の異なる自治体
和歌山県北山村(2010年人口486人、2025年総人口指数72.6、老年人口指数66.9)、高知県大豊町(同4719人、60.4、69.1)の比較では、特に目立った傾向は見られなかったが、北山村が①の音威子府村と同様に年齢3区分の総人口に占める割合がほとんどなかった。
 この2自治体に共通しているのは、非常に人口が少ないということであり、年少人口比率がほぼ30年間一定ということが年齢3区分の比率を安定させていると考えられる。 (音威子府村11%前後、北山村6~7%であるから年少人口比率の高低に関係なく、一定であることが重要と思われる)
◆左下に位置する自治体の変化(総人口指数、老年人口指数とも100でグラフを上下左右に分けた)
 左下に位置する自治体は、年少人口・生産年齢人口が減少して老年人口が増える、あるいは、年齢3区分の人口比率が30年間ほぼ変わることなく一定という大きく分けて2つのケースが考えられるが、いずれのケースも人口は確実に減少し、2025年の時点で2010年比70%を切る自治体が58、80%未満では448にのぼる。
 皮肉なことに人口減少幅の大きい自治体ほど老年人口の増加が少ないから、人口の少ない自治体ほど年齢構成のバランスが維持された状態で人口だけが減少していくことになる。
 過疎化する地域で小売業と言えば、コンビニエンスストア、ボランタリーチェーン加盟の地元資本の店舗、生協、Aコープ、道の駅などが中心であり、大きく資本が投下されていない。また、ライフラインとして行政、地元住民、NPOなどが維持することに協力して取り組むため、何らかの形で維持されると考えてよいだろう。
問題があるとすれば、一定規模以上の人口を抱え、近隣自治体を含めて複数の中大型店舗が存在する自治体ということになるだろう。
◆左下から中間に位置する自治体
 左下から中間に位置する自治体の状況を整理するため、2010年人口が3万人、5万人、7万人、10万人、15万人、20万人、25万人、30万人規模の自治体の中から2040年の総人口指数(2010年=100)が100超(人口が増える)と60~70の自治体をランダムに選んで比較してみた。
 選んだのは◇3万人 愛知県幸田町2010年37930人、2040年総人口指数110.5、岡山県備前市37839人、60.4、◇5万人 沖縄県豊見城市57261人、123.7、富山県南砺市54724人、63.7、◇7万人 滋賀県守山市76560人、112.8、大分県佐伯市76951人、64.9、◇10万人 沖縄県浦添市110351人、105.2、大阪市北区110392人、110.4、岩手県花巻市101438人、70.6、◇15万人 川崎市幸区154212人、106.3、川崎市麻生区169926人、107.5、栃木県足利市154530人、70.3、◇20万人 東京都港区205131人、105.2、福岡市博多区212527人、108.9、静岡県沼津市202304人、71.7、◇25万人 東京都墨田区247606人、100.6、長崎県佐世保市261101人、74.3、北海道函館市279127人、62.6、◇30万人 横浜市港北区329471人、104.7、秋田県秋田市323600人、72.8 である。
 これら20都市について見ていくと、2040年の総人口指数が100を超えている自治体は人口規模に関係なく、ほぼ全て2040年老年人口指数が200前後であり、総人口指数が60~70にある自治体は老年人口指数が80~100という結果になった。
ただし、総人口に占める老年人口の割合は後者が2040年38~43%であるのに対し、前者は27~30%、後者の2010年前後の割合とほぼ同じ割合になっていた。
 老年人口比率で見ると、ほぼ20~30年、あるいはそれ以上の違いがあることになる。
2040年の総人口が増える自治体は、年少人口の割合が高い、あるいは年少人口の割合が高くない場合は生産年齢人口の割合が、総人口が減少する自治体よりも10%くらい高い。
◆各自治体の状況から分かる状況
 まず、人口減少、高齢者の増減については、自治体の人口規模とは関係ないことが分かったことは、いろいろな意味で大きい。
これまで政府は、地方における人口流出のダムとする中核都市を人口規模によって設定しようとしてきた。小売業が店舗を配置する際にも人口規模は重要な要素であった。しかし、どうやら「現在の人口規模だけで将来の自治体の姿をイメージすることはできない」ということが、これらの分析からは言えるようである。

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