チームプレーで成り立つスポーツを見ていると、組織として強いチームとそうでないチームがはっきりと見て取れる。
面白いのは、スポーツの世界では単に年齢や経験ではなく、能力が重要視されることである。たとえ中高生でもワールドクラスであれば、インタビューに答える内容、話し方、態度は下手な大人よりもよほどしっかりしているし、高校を出たばかりの20歳の選手が物怖じすることもなく、チームの中心となってタクトを振ることも珍しくはない。
能力を認められ、それなりの仕事を任せられると、早くから能力は開花する。若くして経験を積むことができればそれなりに進化もする。
若いから…、まだ早い、…と何もさせてもらえないよりは、持てるポテンシャルを十分に引き出すことができるから、本人にとっても組織にとってもメリットがある。
できる人でも一匹狼的な動きをしてきた人は、そのようなタイプのプロ集団なら能力を発揮する(それ以外は辛い)。同じようなタイプ、価値観の人達だけで結果を追求すれば、知らず知らずのうちに最善の方法を選択していく。理屈抜きで最後はどうにか結果を出すプロ集団である。
問題は、できない人、できるのに任せてもらえな人などが混在した混沌とした集団で、「規律」が与えられないケースである。
プロ集団は暗黙の了解という規律を持っているし、能力を認められ、若くして第一線で活躍する人も一定の秩序を見出している。相互にリスペクトしているし、阿吽の呼吸も持ち合わせている。
規律を与えないと自らを制御できない人達に規律を与えなければ、ただの寄せ集めでしかないから組織としては成立しない。
このような寄せ集めの共通点は、リーダー不在で規律がなく、組織以前に集団としても成り立っていないことである。
例えは悪いかもしれないが、「カリスマドッグトレーナー シーザー・ミラン」というアメリカのテレビ番組(YouTubuなどで見られる)に、この辺の真理が凝縮している。
すぐに吠えたり、噛みついたり、すぐに喧嘩を仕掛けたり、いじけていて他の犬と触れることができなかったり、…という問題を抱えた犬が、明確な規律と躾を与えらることで、とても穏やかな犬に変わり、他の犬とも仲良く一緒に過ごせるようになる。組織における自分の居場所とふるまい方を身につけることで安心できるのだという。
もともと社会的な動物であるから、群れのリーダーや序列が曖昧な状態でいると精神的に不安定になり、そのことが原因で問題行動を引き起こす。精神的に不安定な結果が問題行動として現れる。
まさに現代の人間社会、学校やママ友のいじめといった現象のメカニズムと解決法を「犬」の世界を通して解説されているような気がする。
群れをつくる社会的動物に共通する真理なのだろう。
この番組を見ている(シリーズはたくさんあってなかなか奥が深い)と、少なくとも強い組織を作るには、①リーダー、②規律、③自制という意味での躾、そして④相互にリスペクトできる状況が必要だということが分かる。
ポジティブな環境の中にいれば、黙っていても人は向上するから、無駄に「教育だ」「マニュアルだ」などと騒ぐよりは、組織としての良い環境を整備することに集中した方がはるかに有効と考えることもできる。
勉強は「工夫すること」だから、常に問題意識をもって工夫できる環境さえあれば、組織も個人も大きく進化する。下手に枠にはめ込んで強制しなくてもモチベーションが多くの物事を解決してしまう。
構成する人の能力を最大限引き出すことができる組織が強い組織と考えれば、まだまだ組織の能力を高め、強い組織を作ることはできるだろう。自分で進化できるだけでなく、組織の能力を引き出すことも重要な要素である。
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