帰納法と演繹法という2つのアプローチがある。帰納法が様々な事象を通して一般法則を導くのに対し、演繹法は一般法則を用いて個別の事象を展開しようとするアプローチである。
分析をベースにした改善活動では帰納法的アプローチが主体になり、ある程度改善事例が蓄積し、改善法則が理解できてくると演繹的アプローチをミックスして使うようになる。
それに対し、現在のサービス科学のように全く新しい発想から、これまでにないモノを創り出そうとする場合には、どうしても演繹法的アプローチが主体になる。
いずれにせよ、物事の歴史を考えれば、基本的には帰納-演繹という手順で物事が進化しており、様々な事象と一般法則の関係を理解するにもこのような順序が分かりやすい。
以前、ある食品の製造販売企業で現場改善に取り組もうとした時、どうしても本から入りたがる人がいた。優等生がよく言う「よくわからないから勉強してから…」「よく調べてから…」「皆の意見を聞いてから…」「皆で検討してから…」ということが身体に染みついているのだろうが、そのようなケースでは、まず実現しないケースの方が多い。
理屈としては分からないでもないが、目の前に「現場」という何物にも代えがたい、素晴らしい「題材」があるのに、それを避けて本やセミナーなどの知識に頼ろうとしていたのでは、いつまで経っても主体的に実態を変えることは難しい。
しかも、現場で起こっていることの多くは、特別な知識を必要とせず、常識的に判断していけば、ほとんどのことが解決できる。重要なことは「物事の道理」に従えば、ほとんどの問題が解決できるということを「経験的に分かっていること」「身体で知っていること」である。
人間には知恵があるし、現場には知恵がある。本に書いてあるような特別なことが無くても、その知恵を活用すれば、多くの物事は改善される。本には書いていないようなことも現場ではたくさん起こっているし、本を書いた人も知らないようなことが現場では数多く起こっている。
総てのヒントは現場=事実にあるから、五感を研ぎ澄まして現場=事実に学ぶべきだろう。演繹的アプローチよりは帰納法的アプローチで、現実から一般法則を導くというプロセスを体験すべきである。一度体験し、身につければ、一生の財産になる。
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