地域別の品揃えがブームになりそうだが、一歩間違えると大きな混乱を招くことになるだろう。本来、地域特性に合わせて品揃えを変えること(個々の状況に合わせて対応すること)と「標準化」「システム化」とは相反する概念ではないが、どうも対立する概念といった理解が主流であるような気がする。
小売業では「標準化=画一化」という間違った理解、解釈が長年支配的であり、「モジュール化」という標準化の応用形を知らないまま現在に至っているケースが多い。
レゴなどのブロック玩具をみれば、ベースにあるパーツは複数の標準化された形をしているが、それらを組合せることで家でもクルマでもロボットでも、好きなものをつくることができる。出来上がりの姿を標準化するのではなく、要素となるユニットを標準化し、出来上がりの姿には自由度を持たせている。
自動車メーカーが同じ製造ラインで赤いクルマと白いクルマを一緒に流しているのと同じ理屈であるから、すでに何十年も前から当り前にあった概念である。事実30年以上前、筆者がバイヤーをやっていた時には、このような考え方に基づいて店ごとに品揃えを変えていた。。
レゴの仕組みに従えば、例えば什器3本パターンをつくる場合、3本をまとめてセットにし、Aパターン、Bパターン、Cパターンとするのではなく、1本目の什器用にa1、a2、a3、2本目用にb1、b2、b3、3本目用にc1、c2、c3というように細かく分けてパターンを持つ。それぞれの什器に3つずつ合計9パターンを持っていれば、組合せの数は3×3×3=27通りになる。実際の運用では、3本パターンであればa~eの5本分というように余分に持つ(3×3×3×3×3=243通り)、あるいは什器単位ではなく、棚板単位で更に細かく分けるというようにすれば、どんなに店数が多く、地域差があったとしてもほぼ上手くいく。
標準化したままでも十分個々の店の特徴に合わせた品揃えが実現できることになる。
問題は、情報関連部署も、実際にバイイングをする人達も長い間このような発想、手法を持っていなかったために、システムがモジュール化に対応できるようになっていないことだろう。
マーチャンダイジングを変革するには、設計思想から変えていく必要がある。
やろうとしていることは決して難しいことではないが、情報システムの設計思想が違っているから実現には時間がかかる。(Excelを使えばパソコンで簡単にできるのだが…)
製造やIT分野の進化に対し、小売の現場はまるで浦島太郎状態といってよいほど遅れている。人材交流を含めハイブリッド化しないと、すぐ目の前にある新たな時代に対応できない。
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