新型コロナウイルス対策で見えてこないコンサルティングファームの顔

新型コロナウイルス対策に関しては、誰が見てもぎこちないとしか思えない動きが目立つが、冷静になって考えてみると、本来であればプロジェクトマネジメントが得意なはずのコンサルティングファームの顔が全く見えてこない。
今回の新型コロナウイルス対策は当初から「戦争」という言葉を使って表現されていたにもかかわらず、国という総合的なシステムをマネジメントすることに対して、的確な助言・実施指導能力を有するはずのコンサルティングファームの存在が生かされていない。
本来「戦争」ということであれば昔からロジスティックス、後方支援の重要性は認識されているはずである。しかし、現状を見れば通常9割ともいわれる後方支援、マネジメント、現状分析、戦略・戦術策定、人員・物資、各種システムなどの提供、供給が追い付かず前線は疲弊している。
NHKが盛んに過去の新型ウイルスに対する特集をテレビで流しているが、それを見れば何をどうすればよいのかという方向性だけは理解できる。
ただし、以前からパンデミックに対応しているのは公衆衛生や感染症、医療分野の人たちだけという偏った分野の人たちばかりである。
要するに現象が起こっている現場と統計的に処理したマクロデータ、それらと現実、実態としての世界を結び付け、現実の世界をコントロールするための戦略を練る部隊と実施組織が不足しいる。
今回の厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策を見ても分かるように当初から厚生労働省を主幹部署として取り組まれてきた。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーを見ても医療、感染症分野の専門家ばかりである。
先日、NHKスペシャル新型コロナウイルス「瀬戸際の攻防 感染拡大阻止最前線からの報告」という厚生労働省の対策チームの活動を追ったドキュメントを放送していたが、戦略立案から実際の分析、様々な部署への説明、交渉、記者会見まで、あらゆることを担っているのはまさに医療分野の専門家たちである。
具体的な実施は各都道府県市区町村の保健所や医師会、病院などであるが、彼らのほとんどはこのような事態に対して訓練を受けていない。しかも一つの組織として統制の取れた行動をとることなど不可能な状況にある。スーパーバイザーのような人材、システムが必要になる。
不足するマスク、手袋、防護服、消毒剤、人口呼吸器、ECMOなど、様々な物資とともに医療に関係する人員、訓練された人材の不足が問題化している。
これらは専門家会議の範疇とは言い切れないまさに後方支援、ロジスティックスの問題である。しかもこれらの多くは、事態が悪化する前、そのようなシナリオが描けた時点ですでに様々なリスクを想定し、事前に準備しておくことが可能であったものばかりである。(要するに万が一、こうなった時にはこうするという予測に基づき、あらかじめ準備をしておくことが非常時には重要になる)
どんな形態の店を重点的に閉め、どのように保証するかも同様である。具体的に社会・経済活動に対し、どのように対処するべきか、具体的にどんな問題が起き、それに対してどのような支援が必要になるかは、具体的に企業を指導する経理・会計のプロやコンサルティングファームの方が明らかに詳しいから的確な答えが出る。
資金の不足に関してはクラウドファンディングなどIT系の企業やコンサルティング企業の方が詳しいし、実行する術を数多く持ち合わせている。
現状は、それら我が国の中に埋もれている数多くの様々な資源を生かすような組織的動きをリーダーシップをもって主導するような組織が存在していない。
大阪で防護服の代わりに雨合羽が必要だといえばすぐに10万着もが集まった国である。誰かが良いアイデアを出し、投げかければ形になるのは早い。不足しているのは、新型コロナウイルス対策という一つの目的のもとに整理された「場」である。
個々に見ていけば、マスクをつくりだした企業、消毒薬をつくりだした企業などバラバラに企業独自の動きはあるが、体系的に整理されていないからまとめるとどうなっているかわからないし、流通経路もバラバラである。
マスクに関しては、台湾などが合理的な形で国民に届くような仕組みをつくりあげているのに対し、日本では相変わらず中国人が何回も並んで買いあさっている、お客が販売員に悪態をつく、…などの報道がみられるから、製造の問題もさることながら流通の問題をどうにかすれば少しでも解決に近づけることができる。
SBG孫正義氏が月間3億枚のマスクを確保したように、商品の確保は企業に割り振ることで計算できる。
重要なのは、それを病院や公共性の高い仕事をしている人達にいかに優先して配布するかであり、一般の人たちには公平に届けるかである。
すでに小売店での販売に難しさがあるのであれば、年齢や家族構成、職業、健康状態など個人の特性に応じた優先順位(買う権利)を明確にし、健康保険証などでチェックするなど販売の仕組みも必要になる。
物事には、工程の前後関係があるものと、パラレルで同時並行して進められるものがある。今回の新型コロナウイルスに関する様々なモノ・コトの推移をみると、同時並行でできた後方支援の準備が、事態が進んである程度の結果が見えてから初めて動いたためにどうしても後手後手に回ってしまったということが数多く認められた。
プロジェクトマネジメントでは少なくとも複数のシナリオを描き、最悪の状況に対する準備に関してはあらかじめ準備をしておく。特に前後関係がなく同時並行でできるものはあらかじめ手を付けておく。仮に多少の無駄が生じたとしても、多くの場合その準備は後々無駄にならない。

いずれにせよ、現状は、感染を防ぐという医療分野の専門家チームだけですべてを賄い、あとは放置状態にあるようにしか思えない。医療分野の後方支援もノーコントロール、個々の行政の知恵・工夫に委ねているから、品質がバラけるだけでなく、考える時間や試行錯誤が無駄になる。まさにフランチャイズシステム、チェーンオペレーションのようなシステムが有効になる。しかもまとめてやった方が重複が避けられるばかりでなく、つくる際に必要な人材の質・量も確保しやすい。
体系的に実施レベルでの後方支援が行えるような多分野を総合的に扱える組織、IT、AI、ロボットなど各種デジタル技術やSNS、あるいは本業が止まっても現状に応用できるような技術や設備、人材を有する企業・個人など、現在ある資源をすべて洗い出し、それらを有効活用して状況改善が少しでも進むようなプロジェクトマネジメントができるプロ集団が必要である。
仮に現在ある技術、設備、人材などの資源とそれを現在困っていることに使うためのアイデアが分からなければ、広くSNSで情報やアイデアを募ればよい。
こんな事態に有用な資源を埋もれさせておくなどもったいない。生かす知恵とともに「場」、そしてそれを動かす組織が必要である。

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