「産業用ロボットとは何なのか」を考える時、重要なことがいくつかある。
一つは、加工組み立て型工業が、装置工業化したことである。
当然、生産性に対する考え方、評価の仕方も根本的に変わるから、ロボットというものの活用が経営そのものを大きく変えることになる。
基本的に変わっていないのは、ロボットは人の動き=人が加工し、組み立てた部品を代わりに加工、組み立てることを前提としているために、その動きは、従来、人間がやっていた動きと大きく変わることがない。
これは、製品の設計(個々の部品・ユニット、加工・組み立て工程)が、人が加工、組立てることを前提としているからであり、部品加工、部品・ユニットの組み立て工程を前提とした形状になっているからである。
仮に3Dプリンターで作ればどうなるのかと考えると、設計、あるいは設計に際しての制約が根底から変わるから、製品の形状そのものも理想的なデザインやサイズに変わるはずである。
そこでロボットによる製造をどのように考えるかである。
動く速度、精度などロボットが持つ能力、可能性を考えた時、はたしてロボットは人間が加工、組み立てを行う動作、工程を前提とした動きしかできないのであろうか。
仮にロボットが人間とは異なる動き、加工ができるとすると、加工・組み立て工程=製品・部品設計そのものを変えることができ、それによって生産性が著しく高まる可能性もある。また、デザイン、サイズ、形状などが理想とするものに変えることができれば製品そのものの概念も大きく変わるから、そこからさらに発展する可能性もある。
今後、産業用ロボットが大きく進化する可能性があるとすれば、製造=加工・組み立てそのものを根底から変えるように製品設計の思想を変えることだろう。
同様にAIの進化の問題も人間との関係を考えると、現状は多くの点で矛盾している。
すでに情報処理能力は人間の能力をはるかに超えていることは明白であるが、人間がロボットを操るために多くのモノ・コトを学ぶ=インプット~処理(加工・分析)~理解~応用するには、残念ながら文字・画像・動画・音声といった情報形態しか持ち合わせていない。
コンピュータのようにデジタル信号を脳に直接入力・処理するようなことができない限り、人間の脳がインプット、処理できる情報量は生体としての認識能力を超えることはない。
「思考」の元となる情報の「量」と認識する「速度」に限界があることをどのように克服するかは大きなテーマである。
文字・画像・動画・音声よりも情報量が多い、あるいはそれらの情報を包括して処理できるような「概念」とでもいうような処理システムをつくり出さない限り、どこかで限界を迎えてしまう。
どんなスーパーコンピュータを道具として用いたとしても、そこで行われるプロセスから始まる一連の処理がブラックボックスでは「思考」そのものが追い付かない。
大きな課題である
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